【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

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ライト様から頂いたリクエスト回第4弾。
リクエスト内容は「姉世代トリオの雪合戦」。
ここ最近色々あって昨日のクリスマスまでに更新間に合いませんでした……すみません。
それでは1日遅れましたが、Survivorサンタからのクリスマスプレゼント、どうぞお受け取りください。
読者の皆様、ハッピーメリークリスマス!


リクエスト④.ブラッディ・メアリー(断固として勝つ)

 雪合戦。

 そう聞けばシンプルに雪を丸めて投げ合うのを想像するのが一般的……なのだが、これに魔法が絡めば最早マグル式とは程遠いガチのバトルになるのが決闘大好き魔法族のあるあるで。

 

「っしゃー! 気合い入れていくわよ!」

「試合前の運動部のティーンズみたいな掛け声ね」

「これが運動会だったら学ラン着て応援団の団長務めてそうだわ」

 

 よく晴れた空の下、きっちり防寒具を着込んだ姉世代トリオは辺り一面白銀の世界となっている森の中に居た。

 ウォーミングアップを終え、身体を解した三人は不敵な笑顔を浮かべて見せる。

 今日は前々から約束していた雪合戦の為に集まっていた。

 

「それじゃあ、最後にルール確認よ」

 

 今回は2対1のターゲットとハンターに分かれた追走劇形式の対戦でソフィアとアリアは逃げる者、クリミアが二人を狩る者だ。

 前者の勝利条件は制限時間(=1時間)までにどちらか一人でも逃げ切るorハンターを2回攻撃する事、敗北条件は制限時間以内に両者が脱落する事。

 後者の勝利条件は制限時間以内にターゲット二名にそれぞれ一撃を与える事、敗北条件は二人を撃破出来ずに制限時間を超過or2回攻撃を喰らう事。

 使用して良い魔法及び攻撃手段は雪合戦の名目に従って雪や氷に関係するものだけであり、ルールを破った場合、その時点で違反者の反則負けとする。

 

「―――とまあ、大体こんな感じかしら。何か他に気になる事はある?」

「気になる事ねえ……。あ、そういえば私達の内、撃破された人は戦闘不能って扱いになるの?」

「いや、あくまで制限時間までにどちらか一人でも生き残れば貴女達の勝ちだから、相方が生き延びてる限りは攻撃するなり逃走するなり自由にしなさい」

「なるほど。相方の役に立つべくハンターを撃破するか、若しくは相方の盾になるかはその時の自分の判断次第って事ね」

「それともう一つ。私達が両面鏡で連絡を取り合うのはダメかしら?」

「いいわよ。私の方も撃破次第連絡するから」

「分かったわ。あと他に訊きたい事はないわね?」

「ええ、ないわ」

「よし。それじゃ、今から10分後に雪合戦スタートよ!」

「私達ターゲットが逃げ切るか、ハンター・クリミアがターゲットを狩るのが先か、見物ね」

「ではまた会いましょう」

「「「散開!」」」

 

 その言葉を最後に三人はそれぞれ別方向へ姿を眩まし……クリミアとアリアと別れたソフィアは集合場所から遠く離れた場所、一際大きい樹木の下に背を預け、早速両面鏡を取り出した。

 

「あ~こちらソフィア。応答お願いします」

『はいはーい、聞こえてるわよ~』

 

 アリアと対の両面鏡に向かって呼び掛ければ、彼女はすぐに応答してくれた。

 

「単刀直入に訊くけど、アリアは今のところこの雪合戦どう乗り切る予定?」

『制限時間まで逃げ延びるか、クリミアに2回攻撃を与えれば勝ちなんでしょう? 後者はともかく前者に徹すれば案外勝ち目はあるんじゃない?』

「う~ん、果たしてそう上手くいくかしら……」

『敵対する方がよっぽど勝ち目は薄くない? 1回くらいならタッグを組めばワンチャンあったけど、正直2回以上は厳しいわよ。何せ相手は元女子首席(ヘッドガール)で私達のお師匠様なのよ? だったらここは逃げるが勝ちよ』

 

 学生時代、クシェルやダフネを鍛え上げたのがフィールであるように、ソフィアとアリアを魔改造したのはクリミアだ。

 今でこそ足手纏いにならないくらいに決闘の腕は上がったものの、成人した今も三人の中で一番強いのはクリミアである事に変わりはない。

 

「もしエンカウントしたらどうするの?」

『その時は全速力で逃げるわ。下手に対峙する方が無謀だもの。一番ベストなのは一度も見つからずに制限時間が過ぎて勝利する事だけど……逆にソフィアはどうするつもりなの?』

「私? 私は貴女が嫌でなければ互いの死角をカバーする形で一緒に行動するのもアリかな~と考えているわ。その分見つかったら一気にやられるリスクも高いけど」

『そうなのよねえ……。二人で行動すればどちらか一人が片方を逃がす事に専念出来るけど、その前に二人同時にやられる可能性大なのよね』

「どうするアリア? 最初は別行動で少しでもクリミアを疲弊させる作戦で行く?」

『そうね……。二人で行動するのはどちらかが攻撃を受けた時にして、今はそれぞれ単独でどうにか頑張りましょうか』

「了解。じゃ、またね。健闘を祈るわ」

『ソフィアもね』

 

 アリアとの連絡を切り、両面鏡を仕舞ったソフィアは一つ息を吐く。

 クリミアの強さは何度も彼女と杖を交えた事のあるソフィアがよく知っている。

 だからこそ一番確実な勝利方法は逃走で、勝つなら不利な戦闘は極力控えるべきと言う理性とは別に、1回でいいからクリミアに一撃を与えたいと言う個人の感情が入り雑じり、複雑な心境であった。

 

(ま、今はアリアとチームを組んでるし……私だけ撃破されたら、その時は何も気にせずクリミアと対戦すればいいわよね。どうせ逃げたところでその頃には既に無意味だし)

 

 自分の中でそう結論付けたソフィアが腕時計を見れば、もうすぐ10分が経過しようとしていた。

 とりあえず暫くは此処で過ごそう、と決めた彼女は無意識に杖を握り締める手に力を加えるのだった。

 

❄️

 

「10分経過……さて、狩りの時間ね」

 

 散開してから10分後、魔法界式雪合戦がスタートした。

 ハンター役のクリミアは杖を振るって氷魔法の応用で妹の守護霊と同じ姿をした大きな狼を作り出し、その背中に跨がる。

 氷の狼はクリミアを背に乗せると雪で覆われた森の中を駆け出した。

 普通に移動するよりも早いスピードで景色が変わっていき、冷たい空気が頬を撫でる。

 広い森の中を隈無く探索したクリミアは軈て視界の隅に人影を発見して狼にストップを掛け、身体ごとそっちに向けて見れば、ソフィアが眼を丸くしてこちらを凝視していた。

 

「はーい、獲物一人発見~」

「だぁーっ! そんなのアリ!? ズルくない!?」

「ズルくないわよ。氷魔法で作った狼なんだから」

「ハイハイ分かってますよ!」

 

 まさかこんなにも早く見付かるとは思わなかったソフィアは一瞬「ガッデム!」と内心叫びつつ、油断無く杖を構えてクリミアを見据える。

 狼から飛び降りたクリミアもすぐには手出しせず、しかしソフィアから視線は外さずにジリジリと迫り……。

 ドスンッ、と何処からか木の枝に積もっていた雪が落ちる音が聞こえた瞬間、最初にクリミアが雪玉や氷弾をソフィア目掛けて撃ちまくり、先手を打たれた彼女も慌てず落ち着いて樹木の裏に回り込み、難を逃れた。

 

(ハア~……参ったわねえ。このまま逃げ出しても狼に乗ったクリミアに追い付かれてやられるのがオチだし……流石にこんな早くに一撃喰らったらアリアに迷惑よね。ここはどうにかして耐え凌ぐしかないわ)

 

 ベストなのはクリミアに一発お見舞いするか、若しくは逃げ切る事だが現状を考えればどちらも難しい。

 ならば少しでも長い間、クリミアを此処に食い止めて時間を稼ぐ。

 それが今の自分に出来る最大限の行動だと決心したソフィアは気持ちを切り替え、周辺の雪を利用してアナグマや鹿、キツネなどの動物を大量量産する。

 

「行きなさい!」

 

 ソフィアの命を受けた雪アナグマ達は一斉に飛び出し、クリミアに襲い掛かった。

 その間にもソフィアはクリミアの周辺に生えている木に積もった雪を氷柱に変え、反撃のチャンスを与えないよう奮闘する。

 隙を見て逃げるかと思いきや、陽動作戦なのか数多の動物達が牙を剥いて集団襲撃してきて、更には氷柱が降り注いでくるものだから、意表を突かれたクリミアは「これは予想外」と呟きつつ、横っ飛びで地面を転がって氷柱を上手く回避し、口笛を吹いて狼を呼ぶ。

 そして走り寄ってきた狼に急いで飛び乗ると、器用に残りの氷柱を避けながら狩人よろしく氷の矢や槍で雪アナグマ達を次々と仕留め、粉砕していった。

 

「貴女その気になれば自給自足の生活出来るんじゃないの?」

「それはどうも。あ、今ので思い付いたのだけれど、夏になったら今度は無人島でサバイバルゲームしましょうか?」

「遠慮しておくわ」

「あら、つれないわね」

「おあいにく様、ジャングルでサバイブする自信が無いのよ私は。どう考えても無理ゲーでしょ」

 

 軽口を叩き合いながらも両者は杖を振るうのを止めない。

 これが一般の魔法使いであればとっくに決着が付いていたが、未だに一撃を貰わずに粘り続けられるのは嘗て学年首席と次席に相応しい優秀な成績を修め、且つ互いに互いの技量を熟知しているからこそだ。

 あとは此処が森と言うのも一つの理由だろう。

 これが視界を遮り合戦の妨げにも防塞にもなる物が何も無い平坦な地だった場合、今より軍配が上がっていたのはクリミアだったから圧倒的に彼女が有利だったのは言うまでもない。

 その後も二人は腕時計を見る暇も無く攻防と逃走と追走を繰り返し、時間だけがどんどん過ぎていく。

 

「それにしてもソフィアも強くなったわよね」

「嫌味のつもりかしら?」

「失礼ね、純粋に褒めてるわよ」

 

 どれだけ信用無いのよ私、とわざとらしく肩を竦めるクリミアの氷狼に対抗するべく生み出したソフィアの雪ライオンが一人と一匹に向かって突進する。

 臆する事無く真っ直ぐ見据えたクリミアは衝突寸前、ジャストタイミングで高くジャンプ、身体を縦に一回転させるのと同時に氷の剣を生成し、斬りかかった。

 落下による加速度と回転の勢いが重なった剣の凄まじい衝撃を、ソフィアは同じく空気中の水分を凝固させて早業で作った氷の剣で受け止める。

 

「頑張れ私、負けるな私……!」

 

 身を屈め、片膝をつき、どうにか踏ん張ったソフィアは己を鼓舞する。

 フッと微笑んだクリミアはがら空きになっている彼女の側面に強烈な蹴りを入れ、ろくに受け身を取れなかったソフィアはボスッと音を立てて身体が雪の中に埋まった。

 

「しまった―――!」

「貰った」

 

 時既に遅し。

 ソフィアが体勢を立て直した頃には目と鼻の先にいたクリミアがニヤリと笑っていて、雪玉を顔面に押し付けられた。

 ハンター・クリミアの先制点だ。

 

「ふぅ……やっと一人倒せたわ。思ったより時間が掛かってしまったけど、残り時間はまだあるし、まあ何とかなるでしょ―――」

 

 

 

 

 

「はーいそのセリフはフラグよクリミア~」

 

 

 

 

 

 何処からかアリアの声がクリミアとソフィアの耳に入る。

 二人がハッとした時、ドスンッッッッッ!!! と物凄い音が辺りに響き渡った。

 音の正体は、クリミアとソフィアの頭上から飛び降りてきたアリアによって大量の雪が雪崩のように地面に激しく叩き付けられるものであった。

 ホワイトアウトに見舞われ、身の危険を感じて反射的に回避したクリミアは視界が遮られた事と休み無しにずっと動き回った疲労感から硬直し……。

 着地後、すぐに走り出したアリアはポケットに忍ばせていた雪玉を彼女の身体に思い切り叩き付けた。

 

「!!」

「知らない? 狩りは獲物を狩った瞬間が一番危険なのよ、ハンターさん?」

「ああもう……すっかり油断したわ」

 

 少しずつホワイトアウトが収まり、暫くして視界がクリアになる。

 アリアの背後で眼を見開くソフィアの視線の先には、クリミアの防寒着に雪玉が叩き付けられた事を証明する白い跡が付着していた。

 疲れたようにタメ息を吐き苦笑したクリミアは「一旦タイムアウトにしましょう」と言って冷たく白い地面に寝転がる。

 頷いたアリアは振り返り、人差し指を立てた。

 

「貸し一つよソフィア。これで私達も1ポイントゲットでリーチになったんだから」

「ハア~……マッジでありがとうアリア。と言うかずっと木の上にいたの?」

「まあね。貴女達の追走劇はバッチリ観戦させて貰ったわ。楽しかったわよ」

「それなら助けてくれても良かったじゃん……」

「最初はそうするつもりだったわ。でも二人の白熱とした雪合戦にギャラリーの私が割り込む隙はなかったし……。だからもしソフィアが撃破されたらその直後を狙う気で観戦しつつスタンバっていた訳。その方が確実でしょう?」

「なるほど……つまりはクリミアから一本取る為の生け贄になったって事ね」

「ま、要はそういう意味だわ」

 

 笑った二人はハイタッチし、それからクリミアを挟み込む形で彼女の両脇にゴロンと横たわる。

 

「いや~、前半戦はいつかの決闘を思わせる元学年首席と次席のガチバトルを観れてこっちもハラハラドキドキだったわ」

「後半戦はどうするアリア?」

「最初は不利な戦闘は避けて逃げ延びる予定だったけど……気が変わったわ。クリミアが一人で一人前なら私達は二人で一人前。ソフィア、ここは弟子コンビでお師匠様を打ち負かしてやらない?」

「奇遇ね、私もそう思ってたところよ。何かもう、ここまで来たら勝ち逃げじゃなくて堂々と勝ってやりたいって気持ちになるのが人間の性よね」

「あら、逃げなくていいの?」

「クリミアの方こそ。こっちは二人でそっちは一人、そして互いに1ポイント取られてるからもう後は無いわよ? 時間もそんなに残っている訳じゃないのに、あと一発喰らわないよう気を付けつつ私を撃破出来るの?」

「やってやるわよ。言うでしょう? 戦わなければ勝てないって」

「それでこそ元学年首席様ね。安心したわ。もしこれで自信無さげに言い切らなかったら興醒めだったわよ」

 

 休戦中の三人は今だけは敵と味方である事を忘れて寄り添い、笑い合う。

 休憩を取り、即席で作ったホットココアを飲んで身体を暖めた後は二人と一人に分かれ、中距離から杖を構えて対峙した。

 

「さて、十分な休憩も取ったところで……第二ラウンド開始よ」

「よしっ、ドンと掛かって来なさい!」

「スタートの合図はどうするの?」

「私がコインを投げるから、地面に落ちた瞬間に再開でいいかしら?」

「「はーい」」

「それじゃ、投げるわよ~」

 

 ピンッ、と弾かれたコインがクルクル回転しながら落下する。

 地面に埋もれたコインの煌めきが消えた瞬間、クリミアは数的不利を補う為に氷で出来た騎馬に跨がる西洋甲冑の騎士を作り出す。

 騎兵は主人を守るかのようにソフィアとアリアの前に立ち塞がった。

 

「だからさあクリミア、それ、ズルくない?」

「相変わらず見事ねえ」

「感心してる場合じゃないわよアリア。只でさえクリミアだけでも厄介なのに更に厄介な敵が増えたのよ。貴女がやられたら私達の負けなんだから、何が何でも自分の身は死守する事。分かった?」

「ハイハイ、分かってるわよ。で、どうするのソフィア。RPGよろしくラスボスの元まで辿り着くにはまず目の前の騎兵を突破しないといけないわよ」

「それについては問題無いわ。さっきのアリアの発言からヒントを貰ったから」

「あら、何か作戦でもあるの?」

「目には目を。歯には歯をって言葉があるでしょ? だから……騎兵には騎兵で対抗させるのが一番だと思わない?」

「ああなるほど……貴女の言いたい事が分かったわソフィア」

 

 

「「クリミアが一人で一人前なら私達は二人で一人前!! さあ勝ちに行くわよ相棒!!」」

 

 

 以心伝心。

 不敵な笑みと共にアイコンタクトし、グータッチして士気を高めた二人は同時に杖を翳し、一人が騎馬を、もう一人が騎士を作り出した。

 二人の氷魔法によって誕生した氷の騎兵は目の前の騎兵を真っ直ぐ見据える。

 相手もまた、自身と全く同じ姿形をした敵を睨み付け……。

 同じタイミングで嘶いた騎馬が前足を上げた瞬間、文字通りの騎馬戦の火蓋が切られ、両者は激突した。

 ガキンッ! と剣と騎馬がぶつかり合う固い音が中央で発生される。

 力と力で押し合い、両者一歩も譲らず、それぞれの主人の為に戦いに身を晒す二体の騎兵。

 闘争の末、互いの剣が互いの胸を突き刺し、相討ちとなった騎兵は氷の破片となって砕け散った。

 しかしまだ終わらない。

 氷の結晶のように宙を舞っていたそれは瞬く間に長槍へと様変わりし、ソフィアの手に収まる。

 

「私がアタッカーとなるからアリアは後方からの援護をお願い。隙を見てクリミアを撃破するわよ」

「要はゴリ押し戦法ね。分かったわ」

「私はアリアを完全に信じているから、後ろは見ないで猪突猛進するわ」

「ソフィアを信じているから主な攻撃は貴女に任せてサポートに回るわ」

 

 お互いに攻撃と援護を任せた二人は一度深呼吸する。

 再度気合いを入れて「はっ!」と力強く掛け声を上げると、ソフィアは氷の槍を構え、脚に力を入れてその場から駆け出した。

 

(クリミアの遠距離攻撃パターンで厄介なのは氷狼や騎兵と言ったサポート要員の存在。距離を取って戦われればその分勝算は薄くなる)

 

 ならば、その前にこちらから近付いて接近戦に持ち込む。

 クリミアに勝つ方法はそれしかない。

 

(流石に今の体力で二人同時に相手するのはキツいわね……。長引くとこっちが負けるわ)

 

 一方のクリミアも、一切の回避を捨てて直線軌道に走り抜けてくるソフィアと、疾走する彼女を誤射しないよう上手いこと援護射撃するアリアの意図を察していた。

 休戦中にある程度体力は回復させたとは言え、第一ラウンド程本調子ではない今のコンディションでは残り時間の少なさも相まってスピード勝負だ。

 

(まずは目の前のソフィアを戦闘不能にさせる! そして続け様にアリアを撃破する!)

 

 そうと決めればクリミアの行動は早い。

 片膝をつき、杖を地面に勢いよく突き立てる。

 直後、巨大な雪の腕が出現し、握り拳を作るとソフィアに襲い掛かった。

 それでもソフィアは脚を止めない。

 ソフィアに向かって殴り掛かった雪拳はもう一つ現れた雪腕の大きな手によって受け止められ、勢いを殺す事無く棒高跳びの要領で槍をポール代わりにして高く跳んだ彼女は雪腕の上を走行して強行突破した。

 クリミアの懐に入り込んだソフィアはクリミア目掛けて槍を投げたら空中で身体を捻り、四方八方に氷魔法と雪魔法を放出した。

 飛来してくる槍と氷雪魔法の無差別攻撃コンボを見極めて避けるのは困難と判断したクリミアは包囲型の氷バリアを展開する。

 これで全ての攻撃は防げる―――そう思ったクリミアだったのだが。

 

 

「うおりゃぁあああああああああああああーーーーーッッッ!!! ブッ壊れろぉおおおおおおおおおーーーーーッッッ!!!」

 

 

 腹の底から大声を上げたソフィアは今日一番魔力を込めた巨大な氷剣を生成し……第一ラウンドのクリミア同様、身体を縦に一回転させ、技の勢いに落下の加速度が合わさった強烈な一撃で氷の防壁を粉々に破壊した。

 

「な―――ッ!?」

 

 まさかの展開に眼を大きく見開いたクリミアは思わずフリーズする。

 それが今回の雪合戦で彼女が見せた一番の大きな隙であり、命取りであった。

 

「アリアーーーーーッッッ!!」

「分かってるわ!!!」

 

 粉砕の反動で身体が吹き飛び地面を転がるソフィアの叫びに、勝利する絶好のチャンスを見逃さないで駆け出していたアリアが呼応する。

 

「マズい……!」

 

 慌てたクリミアは杖を構えようとするも、ずっと一人で二人を相手にして限界が来た身体は意思に反して思うように動かず……。

 

「クリミア覚悟!!!」

 

 その言葉と共にアリアは袈裟斬りの形で杖を振り下ろした。

 杖の軌跡を表すように、クリミアの肩から脇腹に掛けてアリアの杖から放たれた雪が斜め一直線にその存在を白く示す。

 

 結果は、ソフィアとアリアの勝利だ。

 

「っっぃぃいいいよっしゃあああああああ!! 勝ったあああああああ!!」

「最初の内はどうなるかと思ったけど……意外とどうにかなったわね」

「ハア~……負けちゃったわね」

 

 勝利の雄叫びを上げるソフィアと勝利の笑顔を浮かべるアリアを見て悔しそうに、でも晴れやかに微笑んだクリミアはゴーグルを外して横たわった。

 

「疲れて暫く動けそうにないわ……」

「右に同じ。私達も疲れたわ」

「休んだら帰って皆でお風呂に入りましょう」

 

 クリミアの傍に座り込んだソフィアとアリアもゴーグルを外して一つ息を吐き、それから休戦中の時と同じく彼女の両脇に寝転がる。

 

「今回の勝負は私達の勝ちね」

「個人戦だったらクリミアが勝ってたかもしれないけどね」

「それはまあ、そうかもしれないけど。それでも勝ちは勝ちよ。そういうルールだったんだし」

「ソフィアの言う通りよ。今回は完敗だわ。……今日の夜、三人でバーに飲みに行かない? 負けた私が奢るわ」

「やった! クリミアの奢り!」

「じゃあ、私達からはお疲れ様のキスをプレゼントするわ」

「ええ、クリミア、お疲れ様でした!」

「機会があればまた三人で遊びましょう」

「遊びと言うか最早氷雪魔法限定の決闘とも言うべき雪合戦だったけどね。でもとても楽しかったわよ。二人の成長も感じられたし」

 

 両頬にキスを貰ったクリミアは自身が鍛えた弟子コンビの成長を嬉しく思いながら目元を優しく和らげ、二人をギュッと抱き寄せる。

 打倒お師匠様を達成し、褒められたソフィアとアリアは無邪気に笑って両サイドからクリミアをハグし返す。

 

 ホグワーツ卒業後も彼女達の友情と信頼は永遠に変わる事はなかった。

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