【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

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賢者の石編ラスト。


#18.アキダクト(時の流れに身を任せて)

「はぁ………はぁ………」

 

 ヴォルデモートの魂が何処かへ逃走したのを見届けたフィールはなんとか立ち上がったものの、凄まじい疲労に襲われ、肩で息をした。

 自分ではまだ大丈夫だと思っていても、いざ緊張感が解けたら身体の力が抜け、意識が遠退いていく。

 が、唇を強く噛み、肉体的な痛みで無理矢理にでも繋ぎ止め、気だるい身体に鞭を打ち、重い足をなんとかハリーの元まで運ばせた。

 

「………よかった………」

 

 ハリーと賢者の石、どちらも無事なことにまずはホッと胸を撫で下ろす。それから、屈んでハリーの手元にある血のように赤い石―――賢者の石を手にして、観察した。

 

「これが『賢者の石』か。まさに、永遠の命を与えるのに相応しい色だな」

 

 彼女は賢者の石を見つめながら個人の感想を呟くとそれを手にしたまま、後ろに振り返り、

 

「さて、そろそろ出てきたらどうですか? 全てを見ていた、ダンブルドア校長?」

 

 フィールは閉鎖している炎へ向かって声を張り上げると―――炎を潜り抜けて、校長のダンブルドアがやって来た。

 

「やはり、君にはバレておったかのう」

「当たり前です。生徒である私が気付いたことを校長である貴方が気付かない訳ないでしょう?」

「そうじゃな。………よくやってくれた。わしら教師は賢者の石を賊から護るために数々の罠を仕掛けた。それらを全て突破することは少しばかり心配しておったが………どうやら、わしの杞憂じゃったな」

「………ところで校長。最後の仕掛けを考えたのは貴方ですね?」

「うむ。あれはわしの中でも飛び切りのアイディアでの。石を見つけたい者だけが手に入れられるんじゃ。使いたい者には決して渡らぬ」

「だから、仮に私達が来る前にクィレルが此処に来たとしてもどのみち入手不可能だった………ってことですね」

 

 フィールは一人納得し、ふと、気になったことを質問した。

 

「先に行かせる薬を2つ用意していたのって、ハリーだけでなく、私をヴォルデモートと対面させるためだったんですか?」

 

 フィールが思いきって此処に来るための薬が多めに用意されていたのを尋ねると、ダンブルドアは真面目な表情となった。

 

「そうじゃ。今回の賢者の石を巡るこの事件で君にもわかったと思うが、ヴォルデモートはまだ生きておる。ヴォルデモートは肉体を喪失してるために力が弱ってるだけじゃ」

「………ヴォルデモートが復活した時のことを見据え、アイツと対峙したエルシー・ベルンカステルの孫である私に人相を覚えさせるためだったんですか?」

「そうとも言えるし、違うとも言える。ヴォルデモートは真っ先にヤツに反抗した君の祖母エルシーを殺した張本人じゃ。そして闇の陣営の者達からすれば、ベルンカステル家の者は脅威と殺害の対象でもある。君とミス・メモリアルの後見人達は大人で抗う術もあるが、君はまだ幼い子供、命を狙われる危険性があるというのを自覚して貰いたかったからじゃ」

 

 フィールはクィレルに寄生していたヴォルデモートのおぞましい顔を思い出し、あんな顔なのかと思いつつ、ダンブルドアを見た。

 

「………校長、私からも一つ訊いてもよろしいでしょうか?」

「なんじゃね?」

「ヴォルデモートが逃走する前………ハリーに触れたクィレルは灰塵となり、後に消滅した。アレはハリーの血の中に施された、愛する者を護るための自己犠牲によって発動される『護りの魔法』の効果ですね? 母親の命を賭してでも息子を護りたいという想いが闇の帝王を打ち破り、彼はこうして生きていられる。だから、マグルの家に置いたんですね。彼の母の血縁者の元で生活させることで『護りの魔法』の継続させるために」

 

 フィールは、微笑んでいた。

 何を考えているかわからない無表情が多い彼女が、笑みを浮かべていた。

 

「ハリーはちゃんと母親の愛に護られていた。そして、父親の愛にも………彼にとって、亡き両親は何よりの誇りでしょうね」

 

 境遇や経緯はそれぞれ異なる。

 だけれど、ハリーと同じように、両親の愛に護られてこの世を生きるフィールだからこそ、どこかわかる気がした。

 ダンブルドアは彼女の言葉がピッタリ当てはまっていることに僅かに眼を見張っていたが、流石はエルシーやクラミーの血族者だと、彼女に笑い掛ける。

 

「そうじゃな。………では、もう休みなさい。ハリーはわしが運んでおこう」

「そうですか。なら、任せます」

 

 どのみちこれ以上動く気は殊更ない。

 彼女が手にしている賢者の石は、ニコラス・フラメルとの話し合いの結果、破壊することを決めたらしい。

 フィールは右手に握っている賢者の石をダンブルドアに投げ渡すと、彼はすぐさま『完全粉砕呪文』で木っ端微塵にした。

 血のように赤い賢者の石が細かい破片となって砕け散っていくのを見届けたフィールは素直にスリザリン寮に戻ろうと、ダンブルドアの脇を通り過ぎ、まるで夜の闇に溶け込むよう、その場から霧のように姿を消した。

 

♦️

 

 賢者の石事件から3日が経過した。

 全校生徒の間では、ハリーとその友人二人が賢者の石を護ったということで知れ渡り、フィールの活躍は発表されていない。

 グリフィンドール生にスリザリン生が協力したなんてことを公に晒せば後々何かしら言われるのは火を見るよりも明らかだし、あれこれ質問攻めに遭うのも避けるため、フィール自身が三人と校長に堅く口止めした。

 

 さて、それはさておき、今学期の学年末パーティーが開かれようとしていた。

 大広間はスリザリンのシンボルカラーのグリーンとシルバーで装飾され、テーブルのバックにはスリザリンのシンボルアニマルの蛇が描かれたビックな横断幕が垂れ下がっている。

 スリザリン生はワイワイ騒いでいるが、フィールは騒ぐ気が沸かない。サプライズ大好きなダンブルドアは最後の最後でグリフィンドールに駆け込み点数を与えるだろうと、これから先の結果がどうなるかを予め察しているから、冷静でいられるのだ。

 

「フィー、7年連続で寮杯優勝だよ!」

「………そうだな」

「なんで、そんなテンション低いの?」

「いや、別に」

 

 クシェルは、さっきからどんちゃん騒ぎするスリザリン生でただ一人、妙に喜んだりする様子を見せない友人に首を傾げるが、フィールはなんでもないとばかりに、ゴブレットを傾ける。

 ハリーが今日この日まで医務室で絶対安静だったため、彼が大広間まで来ると途端に静まり返った。

 だが、その数秒後、生徒達は会話を再開した。

 勿論、その内容は言わずと知れたハリーのことについてだ。

 ハリーがロンとハーマイオニーの間に座ると、タイミングよくダンブルドアは声を上げた。

 

「また1年が過ぎた! ご馳走にかぶりつく前に老いぼれの戯言をお聞き願おう。なんという1年だったろう。君達の頭も以前に比べて少しは何かが詰まっていればいいのじゃが………新年度を迎える前に、君達の頭が綺麗さっぱり空っぽになる夏休みがやって来る。それではここで寮対抗杯の表彰を行う。点数は以下の通りじゃ。4位グリフィンドール、312点。3位ハッフルパフ、352点。2位レイブンクロー、426点。そして1位スリザリン、482点」

 

 結果発表の終わりと共にスリザリン生は総立ちになり、割れんばかりの嵐のような大歓声と大拍手で大広間に波動を生み、空気を揺らす。

 しかし、不思議なことにそれをさらりと受け流しているスリザリン生が一人居た。

 自分が手にしているゴブレットを口元に傾けたまま、涼しい顔で歓喜に満ち溢れたスリザリン生達を冷ややかに眺めているので、ハリー達三人以外の3寮の生徒は疑問顔で、唯一着席していることから一際目立っている彼女の姿を、遠目から観測する。

 その彼女がゴブレットをテーブルに置き、ダンブルドアに顔を向けると、これまたタイミングを見計らったように彼は次のセリフを告げた。

 

「よし、よし、スリザリン、よくやった。しかしつい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」

 

 意気揚々だったスリザリン生のテンションは一気にブリザード級のムードへと激変し、それまでの笑顔が嘘のように綺麗さっぱり何処かへ消え失せた。

 ダンブルドアは、オホン、と咳払いを一つし、

 

「駆け込みの点数を幾つか与える。えーと、そうそう………まず最初は、ロナウド・ウィーズリー。ここ何年かホグワーツで見ることの出来なかったような、最高のチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに50点を与える」

 

 グリフィンドールのテーブルから、煩いくらいの歓声が上がる。ロンの兄で監督生のパーシーは「僕の兄弟さ! 一番下の弟だよ。マクゴナガルのチェスを破ったんだ!」と真っ赤になりながらも胸を張っている弟を盛大に誉め称え、誇っていた。

 

「次に、ハーマイオニー・グレンジャー嬢。火に囲まれながら、冷静な論理を用いて対処したことを称え、グリフィンドールに50点与える」

 

 ハーマイオニーは嬉し泣きで顔を腕に埋め、グリフィンドール100点の加点にスリザリン生の顔が引きつっていく。

 

「3番目はハリー・ポッター君………その完璧な精神力と、並外れた勇気を称え、グリフィンドールに60点を与える」

 

 耳を塞ぎたくなるような大騒音がスリザリン生を絶望寸前まで追い詰め―――ダンブルドアは、最後の駆け込み点数者の名を告げた。

 

「勇気にも色々ある。敵に立ち向かうには勇気が必要じゃが、味方の友人に立ち向かっていくのにも、同じくらいの勇気が必要じゃ。よって、ネビル・ロングボトム君に10点を与えたい」

 

 大広間がまるで大爆発したかのような、大歓声と大拍手が沸き上がった。スリザリンと同時優勝だが、独占されずに済んだことをスリザリン以外の寮生は皆祝福していた。

 

「従って、飾り付けをちょいと代えねばならんのう」

 

 ダンブルドアが手を叩くと、飾り付けの半分がグリフィンドールカラーの真紅と黄金に変わって横断幕が半分消え、そこにグリフィンドールのシンボルアニマルである獅子が現れた。

 フィールは肩越しにグリフィンドールのテーブルを見る。先程述べられた四人はグリフィンドール生から英雄&勇者扱いされ、もみくちゃにされているが満面の笑顔だった。

 なんとなく、ダンブルドアの方に顔を向けてみる。すると、何故かこちらを見ていたダンブルドアと眼が合い、彼はニッコリとフィールへ微笑み返し、杖を取り出して一振りした。

 

 すると―――突然、太腿に重みが来た。

 

 フィールはダンブルドアから視線を外し、スカートへと移らせる。

 そこにあったのは、プレゼント箱だった。

 綺麗にラッピングがされ、軽く振ると、カタカタと音が聞こえる。

 

(え………?)

 

 ラッピングのリボンに挟まれていた紙にはメッセージが書かれていた。

 

『フィール・ベルンカステル穣へ

 褒賞無用、と告げられたのはわかっておるが、賢者の石を護り抜いてくれた勇猛果敢な若者の一人である君に何か褒美を与えぬのは、わしの気持ちがサッパリせぬ。

 これはわしと、ニコラス・フラメルからのささやかなプレゼントじゃ。是非とも使ってくれ。きっと彼も喜ぶであろう。君には本当に感謝しておるぞ。

              byダンブルドア』

 

 読み終えたフィールはプレゼント箱を開けてみる。

 中身は見事なまでの蛇の彫刻が施されたゴブレットであった。

 フィールは蒼の眼を瞠目させ、手に取って360゜回転させながらまじまじとゴブレットを見つめていると、

 

「わあっ、それスゴくない!?」

 

 絶望と屈辱に打ちひしがれたスリザリンのテーブルに突然弾んだ声がフィールの隣に居たクシェルから発せられ、その声は静寂に包まれていた蛇寮のテーブル全体へ響き渡る。

 スリザリン生達はその声に釣られて一斉に顔を上げ、一声の発信地へ視線を走らせると、自分達が手にしているゴブレットとは全く格が違いすぎるゴブレットが眼に飛び込んできたのだから、全員が驚倒し、凝視した。

 

「それどっから手に入れたの!?」

「さあ? どっからだろうね?」

 

 わかっていながら、曖昧に言葉を濁して追及を逃れようとするが、クシェルのみならず他のスリザリン生も揃って激しく問い詰めてきた。

 だが、フィールは決して口を割らなかった。

 

(全く………食えない狸爺だな)

 

 褒賞無用、と口止めする際に言ったはずなのだが、それをスルーして、まさかこんなにも良い褒美を与えるとは………絶対大事にしよう。

 フィールは苦笑混じりにダンブルドアに顔を向け、軽く頭を下げると、彼は笑って頷き返してきた。スリザリン生から詮索攻めにあったものの、皆は気分転換という名のやけくそで学年末パーティーのご馳走を口に運んだ。

 フィールは褒美の品のゴブレットに、カクテルを注ぐ。

 注いだカクテルの名は、アキダクト。

 ウォッカ、オレンジ・キュラソー、アプリコット・ブランデー、ライムジュースをシェイクしてカクテルグラス(容量75~90ml程度)に注ぎ、最後にオレンジの果皮より精油を絞り掛ければ完成である。

 カクテル言葉は―――『時の流れに身を任せて』。

 

(今は何も考えずに生きるか………)

 

 今の時点で色々考えたって、何かが変わる訳でもない。

 ならば、波打ち際に辿り着くまでの間、肩の力を抜かし、時の流れに身も心も任せてみよう。

 フィールはゴブレットを指先で弄りながら、ゆっくりと上品に傾け、アキダクトを喉に通した。

 

♦️

 

 学年末パーティーを終え、フィールは自室でベッドに腰掛けながら本を読んでいた。ご馳走も満腹になるまで食べたため、後はシャワーを浴びて寝るだけ………なのだが。

 コンコン、と扉をノックする音が静かな二人部屋に響き、フィールと、その隣で本を読んでいたクシェルは顔を上げ、見合わせる。

 

「誰だろ?」

「さあ?」

 

 真っ先にクシェルは本をベッドに置いて扉に駆け寄り、少し開くと、

 

「クシェル、フィール、今、大丈夫かしら?」

 

 ドアの隙間から見えるのは、黒髪にグレーの瞳を持つ女生徒。フィールとクシェルが比較的よく会話する、ダフネ・グリーングラスであった。

 

「ダフネ? どしたの?」

「ちょっと談話室に来てくれないかしら?」

「え? なんで?」

「なんか、マルフォイに頼まれたのよ。フィールを呼んでくれって」

 

 ダフネはドアの隙間から、室内に設備されているベッドに座りながらこちらを見ている黒髪の少女に視線を走らせ、再度茶髪の少女と眼を合わせる。

 ダフネの口から出た意外な人物の名に、クシェルは眼を見開いた。

 マルフォイはフィールのことを軽視していたはずだ。そんな彼がフィールを呼んでくれと、ダフネに頼んできたことには何か理由があるのだろうか。

 ダフネの家系・グリーングラス家は聖28一族に登録されている名家の一つであるが、グリーングラス家はマルフォイ家と違って非マグル差別者の一家なので、同じ主義者のフィールとクシェルと仲が良いのはそこにある。

 

「………らしいよ、フィー。どうする?」

「………話だけでも聞きに行くか」

 

 フィールも本をベッドに置き、部屋を退室した。クシェルとダフネもその後に続き、三人が談話室に姿を現すと、マルフォイが何やら言いたげな表情をフィールに向ける。

 

「それで、私に何の用だ?」

 

 フィールが単刀直入に訊くと、

 

「………君が全ての教科で1番と聞いた。そのことは謝る」

 

 早口でそう言い、そそくさに背を向け、マルフォイは男子部屋へと歩いていった。いきなりのことにフィールは唖然としていたが、

 

「なんだ、そんなことか」

 

 と、こともなさげに肩を竦めた。

 

「なんなの、アイツ。あんなの、全然謝ってすらいないじゃん」

 

 クシェルはマルフォイの姿が見えなくなると、苛立った顔で前方の虚無の空間を睨む。

 

「ま、そんなのどうでもいいだろ」

「なんでそんな普通なのよ?」

「気にしたら負けだし」

 

 フィールは珍しく談話室のソファーにストンと座り、紅茶を魔法で作り、それを啜る。クシェルとダフネは向かい側のソファーに座り、フィールは二人分手早く作ったら手渡した。

 

「早いわね。しかも美味しいし」

「これでも紅茶作るの得意だし」

 

 ダフネは感想を呟きながら紅茶を飲み、クシェルもちびちびと飲む。そうして、ちょっとしたお茶会を開いていたら、スリザリン生がゾロゾロと寝間着姿で姿を現し、その場に突っ立つ。なんだか皆ソワソワして落ち着きがなく、テーブルを挟むようにして座っている女子三人の内、一人で座っている黒髪の彼女へと視線を送っていた。

 

「………あの、ベルンカステル」

「なんだ?」

 

 それまで集団で突っ立っていた生徒多数人の内、一人がおずおずと前へ出ていき、フィールにそっと呼び掛けた。

 

「………その、私、前にクシェルから聞いたの。ハロウィーンの日、恐れることなく立ち向かってトロールを倒したって。クシェルを護ったって。………ごめんなさい、私、貴女のこと避けるような真似をして」

 

 その女生徒が深々と頭を下げると、他のスリザリン生達も頭を下げてきた。ダフネとクシェルはビックリして、謝意を示す彼女らを見つめていたが………。

 

「ああ、なんだそんなことか。別に気にしなくていい」

 

 と、あっさり許したフィールに、ダフネとクシェルは相変わらずだと微笑。だが、スリザリン生の集団はフィールの器の広さに、不思議そうな、意外そうな表情で今度は見つめたが、次第に柔らかく笑み、

 

「貴女、結構イイ性格してるわね」

「それはどうも」

「………これからは、よろしくね」

「ああ、わかったよ」

 

 女生徒とフィールは互いに握手を交わし、それを皮切りに他生徒はフィールに声を掛けた。

 どうやら、ハロウィーンの日にクシェルをトロールから救い出したことをクシェル本人から聞いたらしく、それで皆はフィールに対する評価を改めたらしい。

 フィールは全員分の紅茶を作り、お茶漬けのお菓子をテーブルに並べ、ちょっとしたお茶会だったものが一気に華やかなものへと変化を遂げる。

 ダフネとクシェルは顔を見合わせて微笑むと、自分達もなんか食べようと、お菓子に手を伸ばした。

 

♦️

 

 翌朝、学年末試験の成績が発表された。

 談話室に掲示されている結果を見て、生徒達は一喜一憂している。

 フィールはぶっちぎりの点数で学年トップの成績を獲得。更には個人の得点獲得もトップだったため、今年の最優秀生徒賞を貰い、羨望の注目を浴びた。

 

「フィー! やったよ! 私10番内だよ!」

「よかったな」

 

 クシェルはトップ10位内の5位だった。

 予想よりも上だったらしく、クシェルは顔を綻ばせていた。

 

「1位はフィーで2位はハーマイオニー………流石だね。どちらかと言えば、ハーマイオニーの方がライバル関係に相応しいんじゃない?」

 

 朝食時間―――学習意欲に満ちているレイブンクロー生から、首席次席のフィールとハーマイオニーは尊敬と敵意の眼差しを向けられた。

 

♦️

 

 ホグワーツ魔法魔術学校での1年を終え、いよいよ長期の夏季休暇を迎える。

 荷物を全て詰め込んだトランクを持って汽車に乗り込み―――数時間後、ホグワーツ生全員を乗せた汽車はキングス・クロス駅に到着した。

 

「それじゃあね、フィー!」

「ああ、またな」

 

 元気に手を振りながら、反対側通路へ歩いていくクシェルに手を振り返したフィールは、駅の改札口近くにある自販機で炭酸飲料のコーラを2缶購入すると、プルタブを開けて、姉のクリミアが来るのを待つ。少しして、友人のソフィアと別れたクリミアがフィールが待機している場所までやって来た。

 

「フィール、お待たせ」

「うん。はい」

「ありがとう」

 

 フィールは先程もう1缶買ったコーラをクリミアに渡し、それを受け取ったクリミアはプルタブを開けて飲む。そうして、二人は飲み終えると改札口を出て、1年ぶりにベルンカステル城へ帰宅した。

 それぞれの自室に荷物を置き、軽くシャワーを浴びてさっぱりしてきたら、リビングへと来る。

 ミルクティーとクッキーを用意し、二人はくだらない会話に華を咲かせた。

 

「どうだった? 学校生活」

「それなりに楽しかったよ」

「ふふっ、ならよかったわ」

 

 クリミアは満足そうに笑い―――ふと、何かを思い出したのか、温厚な顔をいつになく真剣な表情へと変えた。

 

「………フィール。賢者の石の事件、本当は貴女も関わっているでしょ?」

「………やっぱり、バレてた?」

「当たり前よ。一人だけ態度があんなにも違うなんて、何かあるとしか思えないわ。話してくれない?」

「………わかった」

 

 フィールはミルクティーがまだ入っているティーカップをテーブルに置き、事の全てをクリミアに話し始める。語る間、クリミアは口を挟むことなく、黙って聞いた。

 

「クィレル先生に………いや、もう先生でもなんでもないわね。クィレルに、あの、闇の帝王の魂が寄生してたなんて……………」

 

 クリミアは軽く身震いし、フィールはソファーに深く腰掛け直す。

 

「………フィール。ライアン叔父さんに、このこと話しましょう」

「………そうするか」

 

 フィールは迷うことなく頷き、クリミアは杖を取り出すと、

 

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)

 

 円を描くように杖を振り、杖先から銀色の霞みたいなのが噴き出すと―――次第にそれは、大きな鳥に形作る。

 クリミアの守護霊は、大鷲だ。

 クリミアは大鷲にフィールが話した内容を伝言として頼むと、叔父のライアンへ伝達しに勢いよくベルンカステル城から飛び去った。

 大鷲が見えなくなるまで見届けていた二人は深く息を吐き―――気持ちを切り替える。

 現在の状況で色々考えたところで、結局は何も変わることはない。

 だが、頭の片隅に闇の帝王の記憶は刻んでおこうと、フィールとクリミアは全く同じことを思いつつ、今は全て飲み込んでしまおうと、飲みかけのミルクティーを一気に飲み干した。




【フィールの立場】
ダンブルドアが言ってた通り、闇の帝王に歯向かったエルシーの行為は、闇の陣営側の魔法使いからすればベルンカステル家の者は脅威と殺戮の対象。
大人のライアン達はともかく、子供のフィールは危険性高いですね。ルークとシレンは他国に居るので幾分かは安全でしょうけど………。

【褒美の品:ゴブレット】
スリザリン生がグリフィンドール生に協力した事実を伏せて公の場で加点しない代わりに、ダンブルドアは褒賞としてゴブレットをプレゼント。
ちなみに蛇の彫刻はニコラスが施しました。
今頃は画面外でドヤ顔してるでしょう。

【アキダクト:時の流れに身を任せて】
①ウォッカ(20ml)
②オレンジ・キュラソー(10ml)
③アプリコット・ブランデー(10ml)
④ライム・ジュース(1tsp)
⑤オレンジの果皮(香り付け用)

作り方:①~④をシェイク。最後に⑤を絞り汁をカクテルに振り掛けて完成。
タイプ:ショート
ベース:ウォッカ
アルコール度数:20度~37度
テイスト:中口、やや甘口
色:黄、透明、薄黄色、薄茶色にも見える
意味:送水路、水道橋

【カクテルのタイプ】
カクテルは大きく分けて『ショート』と『ロング』の2種類に分類され、ロングの中に『コールド』と『ホット』の2タイプがあります。

【ショートとロングの違い】
★ショート・カクテル
シェイクやステア(混ぜる)をして、主にカクテルグラスに注いで出されものが多い。カクテルグラスには氷が入っていないので、時間は掛けず、出来るだけ冷たい内に味わった方がオススメです。

★ロング・カクテル
タンブラーやロックグラス(オールド・ファッショングラスとも言う)に氷を入れた状態で味わうコールド・タイプと、お湯割りを初めとしたホット・タイプのカクテルがあります。
こちらはショートと比べてゆっくりと味わうタイプですが、それでもコールドは氷が溶けない内に、ホットは冷めない内に味わった方が断然美味しいでしょう。
ロングは使用する材料や作り方などによってコールド・ホットの広義の分類の他に多種多様なタイプがあるので、それもまたカクテルを作る楽しい要素の一つになると思われます。

【安全対策万全なベルンカステル城】
ベルンカステル城周辺は外部とは完全に遮断されいて、魔法省が未成年魔法使いにつけている匂いを無効化してくれています。なので思いっきり魔法使い放題です。

【賢者の石編終了】
なんとか無事に1章終えました。
フィールの印象も、読み始めた当初に比べたらちょっとは変わったのではないかと思います。

ハリポタ二次創作では珍しいタイプの『スリザリン生らしくないスリザリン生』であるが故に、他寮だけでなく多数の同僚からも激しく嫌われ、周りからは問答無用で悪者扱いされ、挙げ句の果てには話も聞いて貰えず………精神的に限界に追い詰められて一度は「人助けはもうやらない」と決心したが、同級生が命の危機に瀕したのをきっかけに再び人助けすることを決意し、同時にこれからは友人を大切にしようと思うようになり、最終的にはハリー達と共に学校の平和を守る為、誰に強制された訳でもなく、自らの意志でヤバい事件に身を投げ出すまでの成長を見せてくれました。

特に同級生のクシェルと寮監のスネイプからの励ましの言葉や指摘は、フィールに大きな変化をもたらしたでしょう。ハリー達一行の内、ハリーとハーマイオニーとは下の名前で呼び合うほどまでになったので、これはかなりです。
さて、次回からは『秘密の部屋』編。
第2章へ続きます。また見てね、バイバイ。
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