【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

39 / 130
#38.フラッシュバック

 いよいよ、学校中が待ちに待ったクィディッチ初戦、グリフィンドールVSスリザリンが開幕する当日を迎えた。

 が、天候は最悪としか言い様がなかった。

 風は吹き荒れ暴風と化し、数多の野獣が唸るかのようだ。時折ひんやりとする空気を鋭く切り裂く風音と豪雨の雨空で低く轟かせる雷鳴に、各選手は大なり小なり不安と緊張を持つ。

 

「落雷する恐れがある。皆、気を付けろよ」

 

 試合開始前のスリザリンチームのコート―――そこには、今年だけクィディッチに参戦を表明したフィール・ベルンカステルを初めとする先輩選手六人が居た。ちなみに、本来のシーカー、ドラコ・マルフォイはキャプテンのマーカスが欠番としてベンチに放り出したため、今年はシーズンオフだ。

 まあ、去年のクィディッチ初戦では、せっかくマルフォイのすぐ近くに金のスニッチが飛んでいたにも関わらず、彼はブラッジャーに追い回される宿敵(ハリー)を嘲笑した結果、スニッチに気付くのが遅れて最終的には9割方マルフォイのせいで試合に敗北したので、常に気を抜かないフィールをシーカーポジションに押し通したのだろう。

 

「これは出来るだけ早く、スニッチをキャッチした方がいいな………」

「ああ、頼むぞ。ベルンカステルと、その箒がある俺達は今や最強だ。何も恐れる必要はない」

 

 マーカスはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、フィールの肩を叩く。

 彼女の手にある箒は炎の雷(ファイアボルト)だ。

 マーカスが引き抜いた最強の切り札に最新鋭の箒。

 ハッキリ言って余程の事が無い限りはスリザリンの勝利はほぼ確実と言える要素しかなかった。

 

「いよいよだ! この一戦から、俺達は全力を尽くすぞ! 今年こそ、優勝奪還だ!」

 

 キャプテンの宣言に、スリザリンチームは一致団結。2年分の惨敗も雪辱も今年こそは晴らしてみせると、気合いは十分だ。

 

「ベルンカステル。俺達はお前が言ったことを必ず守る。だから、存分に暴れてくれ!」

「ああ、わかった」

 

 一昨年、スリザリンのクィディッチチーム六人からクリスマスプレゼントとして贈られてきたゴーグルを着用する前、緑色のローブユニフォームを纏ったフィールは、真剣な雰囲気を漂わせた。

 

「優勝に導けるかはまだわからない。だけど、私は全力尽くしてこのチームと、そしてスリザリンに、勝利を取り戻してみせると約束する」

「よく言った!」

「それでこそ、我らがエースだ!」

 

 メンバーはフィールからの力強い言葉に鼓舞され、バシバシとビーターを務めるデリックとボールは彼女の背中を叩いた。

 そろそろスタンバイしろとの伝令が来たため、スリザリンの選手六人はニンバス2001に跨がり、フィールもファイアボルトに跨がって飛翔した。

 豪雨の中を飛び上がり、各ポジションにスタンバると、空中で二人のシーカーが対峙した。

 

「フィール。僕と勝負だ」

「望むところだ。ハリー」

 

 遂に始まる、魔法界の英雄と稀有の逸材―――グリフィンドールのヒーローとスリザリンのクィーンのデュエルが、幕を開けるのだ。

 

 空中で向き合う、紅と緑のシーカー。

 普段は友達だが、今は対敵する同士。

 

 

 

 次の瞬間―――開戦のホイッスルが、高らかにクィディッチ競技場内に響き渡った。

 

 

 

 暴雨の中、試合開始のシグナルと同時にシーカー以外はそれぞれの役割を全うすべく、一斉に動き出した。同時、観客席から白熱とした熱狂と声援と応援が沸き上がった。

 

「本当にシーカーになったんだね」

「まあ、しつこいくらいにせがまれたし」

 

 スニッチを見つけるまでの間、ハリーとフィールは至って変哲もない話を交わしているが、前者は後者の箒と腕前に、勝機はあるのかと不安を抱いていた。

 なんといっても、フィールは箒に関する才能は『天才』と評されているハリーと互角に渡り合える、あるいはそれ以上の実力者なのだ。それに、彼女が扱う箒はプロのクィディッチ選手さえも愛用するレベルの、特別なウエポン。

 故に、それにニンバス2000で対抗するハリーは、勝ち目は完全に0ではないが、それでも限りなく少ない。

 しかも、彼は今、眼鏡が濡れているせいで視界が悪い。フィールや他スリザリン選手みたいにゴーグルを着用していないため、近くにスニッチが飛んでいても、すぐには気付けない状態なのだ。

 

 現在彼は戦況がどうなっているか知らないが、流れは圧倒的にスリザリンが有利でリードしていた。大雨の中だというのに、蛇寮の軍団はしっかりと連携が取れているおかげで、逆にまともに取れていない獅子寮の軍団とは、これまでにない点数差をつけていた。

 こういう天候の場合は、視界の善し悪しが勝敗の決め手となる。よって、視界がクリアなシーカーのフィールはスニッチを見つけたら速攻すればいいだけの話だ。ハリーはふらふらと空中をさ迷いの旅人のように飛び回り、フィールはそれに構わず、競技場全体を見渡す。

 しばらくして、グリフィンドール側がタイムアウトを要求し、試合は一時中断。選手達はコートへと降り立っていった。

 

「点数は70対0………勝てるぞ! これは!」

「だが、油断はするな。ベルンカステル。スニッチの確保をポッターよりも早く頼むぞ」

「ああ、勿論」

 

 フィールは一旦息を整え、大きく頷く。

 身体を少し解したら、そろそろ試合再開だと言われたため、再び箒に跨がって、飛翔した。

 

「今度はゴーグルにしたのか」

「うん。そうすることにした」

 

 グリフィンドールチームも、全員がゴーグル着用を選んだらしく、これで実力は五分五分になったと思われる。

 試合再開のホイッスルが告げられると、ハリーとフィール以外の人達はまたもや乱戦模様になり、ギャラリーの興奮や熱狂した声援や応援も上がりに上がる。

 その間、二人はスニッチを探し回り、その姿に観客は釘付けだった。

 

 と、その時だ。

 グリフィンドールのビーター・フレッドが打ってきたブラッジャーを箒に乗ったまま一回転して回避したフィールが、勢いそのままに上昇したのは。

 どうやら、彼女はスニッチを見つけたらしい。

 ワンテンポ遅れたが、ハリーもそれに気付いたらしく、フィールの背中を追い掛けた。

 

 荒れ狂う暴風と降りしきる豪雨に逆らい、手を伸ばす少女とそれに追い縋る少年に、大雨さえも打ち破る大声を上げた、その時―――。

 周囲の音が突然遮断され、暗闇に包まれた。

 そして、雨や風などによるものとは異なる寒気が迫ってくる。

 

「まさか………」

 

 フィールは下方に視線を落とした。

 下を見てみれば、100を優に越える黒く蠢く物体………。

 

吸魂鬼(ディメンター)!」

 

 吸魂鬼の群れであった。

 おぞましい姿をしたそれを認めた途端に、真夏であろうと凍り付くだろうそれだけの冷気を直に当てられた。

 辺りは一面、闇色一色。

 ホグワーツを警護していた彼らは、ダンブルドア直々に生徒を襲うことを禁じられ、幸福感や活発さに満ち溢れていた者達を前に欲求不満な日々を送っていた。

 だから………これまで我慢してきた不満を存分に満たせるのが、このクィディッチ戦を観戦しているギャラリーの活気や試合の熱狂。

 そして、この場には最悪な過去の持ち主が二人も居るという、まさに最高級のご馳走が目と鼻の先にあるのだから、わざわざ此処までやって来るのには十分過ぎるくらいの理由であった。

 

「………ッ!」

 

 手足が凍え、身体が震えてきた。

 とてもではないが、『守護霊の呪文』を唱える余裕が持てない………。

 

「ハリー! しっかりしろ!」

 

 フィールは鋭い声を発し、同じように吸魂鬼の影響力が酷く、意識が遠退きかけているハリーへ呼び掛ける。

 その声に―――ヴォルデモート相手に、必死に命乞いをした母親の泣き叫ぶ声が頭の奥から聞こえてきたハリーは数秒だけ打ち消されたのか、ハッと顔を動かした。

 

「ちっ………!」

 

 どのみち、吸魂鬼の乱入というアクシデントが発生したのだから、試合は中止になる可能性が高い。

 ならば少しでも彼らから距離を離して安全な場所へと避難しようと、フィールは舌打ちしながらスニッチの事はかなぐり捨てて上空へとまっしぐらに上昇し、ハリーも同じことを思ったのか、彼女の背中を追い掛けた。

 応援席に居た生徒達を襲おうとした吸魂鬼は二人が空高くに舞い上がっていくのを獲物が逃げたと捉えたのか、恐らくは全ての吸魂鬼が一目散に向かっていた。

 

「おい! これはマズいんじゃないのか!?」

 

 軽症のレイブンクロー生が声を張り上げ、姿が見えなくなったシーカー二人が消え去った上空に生徒達の視線は固定された。

 

♦️

 

「フィール、大丈夫!?」

「大丈夫、ハリーは!?」

「僕も大丈夫!」

 

 轟然たる雷鳴が鳴り響く雷雨の雲の中。

 横並びになって互いの安否確認をするハリーとフィールは、周囲に飛び回る吸魂鬼からどうにかして避けようと動くが、ハッキリ言ってしまえば二人の精神力は限界だった。

 

「とにかく、早く戻っ―――」

 

 フィールが言い切る前に………一時的に難を逃れた二人の目の前に、雲を裂いて一体の吸魂鬼が迫り、おぞましい顔が隠されていた布から現れ、それを見ていると、幸せという感情を奪われていく感覚に陥った。

 

「やっ…………」

 

 吸魂鬼の顔が間近に迫り………フィールの頭の中で何かが弾け飛び、彼女の脳裏で、8年前の出来事の一部が映像化して流れた。

 

 

 

「―――ふざけるな! 俺らの大事な子供を、お前らの手に渡すなんて真似、死んでもするか!」

 

 父の鋭い声が、静寂なその場に響く。

 離れた先には、杖を構えて野望に満ちた眼差しで自分を見つめる大人達が立っている。

 

「―――クラミー! フィールを連れて逃げろ!」

 

 父―――ジャックは杖を振るい、目の前に佇む数人の魔法使いを相手に単体で挑んだ。

 母―――クラミーは後ろ髪引かれる思いであったのか、その場に立ち竦んでいた。

 

「―――走れ! コイツらは俺が食い止める!」

 

 ジャックは背中越しに、クラミーへ向かって叫んだ。それを機に、クラミーは幼いフィールを抱いて、走り出す。

 

「―――フィール! しっかり掴まっていなさい!」

 

 言われるがままに、フィールはクラミーの胸にすがる。その隙間から僅かに見えるのは、どんどん遠ざかっていく父の戦っている背中。ただそれを見ることしか出来ない自分に、フィールは歯をギリギリ噛み締める。

 肌で感じるのは、母の荒い息遣いと、突然押し寄せてきた寒気。

 クラミーは謎の悪寒の正体を察したのか、振り返らず、更に加速した。

 

 どのくらい、時間が経過しただろうか。

 

「―――ッ!!」

 

 突然、母クラミーの顔が苦悶に歪み―――フィールの幼い身体は、宙を舞った。

 いきなりのことにフィールは受け身を取れるはずがなく、地面に身体を強く打ち付けられた。

 

「―――お母さん!?」

 

 フィールは叩き付けられた痛みに構わず、急いで振り返り………眼に飛び込んできた残酷な光景に、言葉を失った。

 大好きな、お母さん。

 そのお母さんが、黒く蠢く物体によって動きを封じられ、口元から青白く輝く球体が吸い出されていく。

 吸魂鬼―――人間の魂を吸い、吸われた者を新たな吸魂鬼の仲間へ引き摺り込もうとする、恐ろしい存在。

 クラミーの顔から、血の気が引いていく。

 フィールは、「お母さんを助けないと!」と立ち上がり、その場から駆け出した。

 しかし、走り寄ってきた彼女を獲物と認めた吸魂鬼がクラミーから離れると、無垢な少女の綺麗な顔に迫り、ガラガラと音を立てて、息を吸い込んだ。

 その瞬間。

 言い様のない不快感と、凍えそうになるくらいの寒気に襲われた。

 冷たい腕が、彼女の頬へ伸ばされる。

 そうして、雪のように白い肌へ触れ………吸魂鬼の、ぬくもりを一切感じられない冷たい感触が彼女の身体の芯まで染み込んできた。

 

 

 

 フラッシュバックする、封印してきた記憶。

 それを嫌になるほど思い返され、フィールは自分の身体を支え切れず、ファイアボルトから滑り落ちてまっ逆さまへ墜落していった。

 

「フィール!」

 

 ハリーは物凄い速さで落下していくフィールを追い掛けようとしたが―――数体の吸魂鬼が周りに来て、数倍のダメージを受け………ハリーもそれには耐えられなくなり、ニンバス2000から滑り落ちてしまった。

 

♦️

 

「おい! 何かが落ちてくるぞ!?」

 

 フィールとハリーが見えなくなって上を見上げていた生徒達の中の一人が、いち早く競技場の地面へと降下していく存在に気が付き、声を荒げて指差した。

 指差した先は、緑色のローブを羽織った華奢な女の子が空から落ちてくる姿。

 間違いない。フィール・ベルンカステルだ。

 それに続く様、真紅のローブを羽織った男の子が雲の中から姿を現す。

 紛れもない。あれはハリー・ポッターだ。

 そして、二人に追い縋るように布をはためかせた漆黒の存在が迫る。

 会場内から、悲鳴が上がった。

 特にグリフィンドールとスリザリンの席からは二人の名を叫ぶ者が多い。

 それは、未だにフィールとギクシャクしているクシェルも例外ではなかった。

 

「フィー………!」

 

 クシェルは杖を抜き出す。

 呼び出そうとするのは有体守護霊だ。

 しかし、クシェルはまだ成功していない。

 霞みたいのを出すことは出来ても形を持った守護霊はまだ創る事が出来ないでいた。

 だが、そんなこと言ってられない。

 一か八か、全てを賭けるしかない!

 クシェルは杖を天に掲げ、

 

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)!」

 

 と、『守護霊の呪文』を唱えた。

 すると―――クシェルの杖先から銀色のユニコーンが力強く飛び出し、嵐の中を雷速の如く駆け抜けて、フィールとハリーを包囲する吸魂鬼の大群を撃退した。

 二人から引き離した後もしつこく集まろうとする吸魂鬼を追い払うように銀白色に光り輝く一角獣は駆け回る。

 

「マズい、このままじゃ………!」

 

 土壇場で初めて完全体で成功したクシェルは守護霊の形状を維持するのに精一杯である為、降下していくフィールとハリーを救出することまでは出来ない。

 どうにもならないのか、とクシェルが焦った時―――地面へと降下していくスピードがゆっくりになった。

 ハッとクシェルは教員席に視線を走らせる。

 ダンブルドアが杖を二人に向けていたので、大方彼が魔法で減速させたのだろう。

 ダンブルドアは続け様に不死鳥の形状をした実体化の守護霊を呼び出し、クシェルのユニコーンと共に数多の吸魂鬼を追い払っていく。

 100体以上浮遊していた吸魂鬼が完全に飛び去っていくのを見届けると、守護霊を消滅させたクシェルは観客席を急いで降りた。

 

「フィー! ハリー!」

 

 喧騒の中でクシェルは真っ先に駆け寄って膝をつき、地面にソフトランディングした二人の容態を確認した。

 二人共、気を失っている。

 脈を確かめてみると、危篤ではないが、異常なくらいに体温が低下しているため、『加温呪文』を施し、それ以上の体温低下を阻止した。

 

「フィール、無事か!?」

「ハリー、大丈夫か!?」

 

 箒から降り立った各チームのキャプテン、マーカス・フリントとオリバー・ウッドが真っ先に駆け付け、その後をメンバーが追う。

 そこへ、ダンブルドアがやって来て、担架を2つ出した。その上にフィールとハリーをゆっくりと乗せ、『浮遊呪文』が掛けられている担架を押しながら医務室に運んだ。

 

♦️

 

 ホグワーツ城内の医務室。

 そこへ担架に乗せたフィールとハリーを運ぶと室内には銀色の大鴉が浮遊していた。

 一体誰の守護霊だろう? と皆が首を捻っていると、大きな鳥は主人のアリア・ヴァイオレットの側へ飛び、彼女の腕に止まった。

 

「ありがとう。助かったわ」

 

 アリアが礼を述べると、大鴉は満足げに白い残像を残しながら消滅した。

 どうやら、彼女の従者であったみたいだ。

 

「アリア先輩も出せたんですか?」

「ええ。3年の時に習得したわ………って、クシェルも創れたのね」

「さっき、初めて有体で成功しました」

 

 そんな会話を交わしつつ、アリアが大鴉に伝言としてマダム・ポンフリーに状況を伝えて貰っておいたらしく、すぐに準備が出来ていた。

 癒者(ヒーラー)の娘のクシェルはマダム・ポンフリーの指示を着々とこなし、医務室内を慌ただしく動き回る。その時、グリフィンドールの選手とスリザリンの選手が入ってきた。いつもなら顔を見合わせるだけで言い争うのが彼らなのだが、今回ばかりは大人しかった。

 

「アリア。フィールは大丈夫か?」

「ええ………二人共、吸魂鬼の影響が酷くて、気絶してるだけよ」

「そうか………」

 

 そうこうしてる内に、粗方処置が終わったクシェルが戻ってきた。

 

「どちらも命に別状は無し。身体を暖めて、しばらくは安静にしておけば大丈夫です」

「よかった………」

 

 すると、医務室の扉が開いた。

 全員がそちらを見てみれば、意外や意外、ハッフルパフの女生徒が立っていた。その女子学生を見たマーカスとオリバーは「あっ」と何かを思い出したような顔になる。

 

「お前は確か―――」

「クリミア・メモリアル。私の親友よ」

「ああ、それは勿論知ってるぞ………」

 

 マーカスは小声でそう呟き、気まずそうに顔を逸らす。見ればオリバーも同様にバツの悪そうな表情を浮かべていた。

 実は5年前、当時2年生だった二人は登校中のホグワーツ特急で新入生だったクリミアと対面したことがあるのだ。そのファーストコンタクトは二人にとってあまりよろしくない出来事だったので、こうしてきまりが悪い面持ちなのである。

 オリバーとマーカスが過去に記憶を巡らせている間にも、そのハッフルパフの女生徒―――クリミアは、なんでハッフルパフ生が此処に、と言いたげな表情の皆を一瞥後、すぐにフィールが寝ているベッドまで足を運ぶ。

 

「大丈夫よ、クリミア。今は安静にしてるだけだから」

「そう。なら、よかったわ………」

 

 アリアの言葉を聞き、安堵の顔になる。

 そんなクリミアへ、グリフィンドールの女選手アンジェリーナ・ジョンソンが声を掛ける。

 

「クリミア。もしかして、何年か前ホグワーツ生が貴女によく質問してた『噂の義妹』って……」

 

 雰囲気で何と無く察したのだろう。

 クリミアは答えるかどうかに悩んだが、もうバレてしまった以上は嘘ついても無意味だと、さらっと普通に返答した。

 

「ええ。その通りよ。………私の両親、私が生まれてすぐに亡くなってね。それで、孤児となった私をフィールの両親が引き取ってくれたのよ」

 

 初耳の彼女らは、ホグワーツで人気者のクリミアの辛い家庭事情を知り、口を噤んだ。

 クリミアとは一昨年のホグワーツ特急のコンパートメントで会っていたロンは「そうだったんだ……」と、何故フィールが年上のクリミア(とソフィア)と居たのかがわかり、神妙な顔になる。

 重苦しい空気に耐えかねたのか、クィディッチチームの人達は此処に残るというロンやハーマイオニー、クシェルやアリアに「よろしく言っといて」と言うと医務室を出ていった。

 人が少なくなると誰も喋らず、沈黙だけが流れていたが、それを破ったのはハーマイオニーであった。

 

「あの、クリミアさん」

「ん? なにかしら?」

 

 ハーマイオニーは初対面の先輩と話すのに若干緊張気味になりつつも、話し掛ける。

 

「家では、フィール、どんな感じなんですか?」

「どんな感じって………」

「その、フィールってなんか、ただ者ではないってオーラがあるので………つい」

 

 クリミアは少し考えるような表情になり、それから、口を開いた。

 

「別にいつもと変わらないわよ。(いえ)でも無口無表情で本読んでるし」

「そうなんですか?」

「ええ。それと、クリミアでいいわ。敬語もいらないわよ」

「え、でも―――」

「同じグリフィンドール生のフレッドやジョージには敬語無しでしょ? それと同じように、普通に話せばいいわよ」

「わかりました………じゃなくて、わかったわ。それと………遅れたけど、私、ハーマイオニー・グレンジャーよ」

「私はクリミア・メモリアル。貴女達のことはよくフィールから聞いているわ」

 

 どうやらクリミアは気さくな感じの人だとハーマイオニーは思った。

 

(呼び捨てにしていいなんて………クリミアは結構気さくな人柄なのね)

 

 まだ数回しか話してはいないが、クリミアは温厚そうな性格だと、微笑みや雰囲気から、ハーマイオニーはそう感じ取りつつ、静かに眼を閉じて寝息を立てている友人二人に視線を移らせた。




【勝負はお預けだ!】
ダブルシーカー、KO。
よって、試合中止となる。
さて、そうと決まれば、オリジナル展開始動ですね。
え? どんな展開かって?
ふっふっふ、決まってるでないか(*´ω`*)!
休暇明けのレイブンクロー戦とハッフルパフ戦に加えて、再戦もとい決勝戦という展開が!

【遂に来た! クシェルのエクスペクト・パトローナム!】
クシェル、バシッとデビューカッコよく決めましたね!
クシェルの守護霊はユニコーンでございます。

【サポート役の守護霊伝言】
悪霊退散はクシェルが飾りましたが、さりげなーく、アリアは医務室の校医に守護霊の伝言を行っていました。

【一部の人達、フィールとクリミアの関係を知る】
ロンやハーマイオニーも、3作目になってようやく事実を知りましたね。クリミアとは、5作目辺りで本格的に関わることが多くなると思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。