【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士 作:Survivor
作中の組分けの仕方は『原作版のABC順番に呼ばれて姓・名前』ではなく、『映画版のランダムに呼ばれて名前・姓』。
※9/12、一部文章修正。
湖を渡り終え、城の長い階段を登って行くとエメラルド色のローブを羽織った黒髪の魔女―――ホグワーツ魔法魔術学校の副校長兼『変身術』担当、ミネルバ・マクゴナガルが立っていた。
長身で四角いメガネを掛け、レンズ越しからこちらを見据えるその緑の瞳の奥を窺い知ることは初見であるにも関わらず不可能に等しいと思わざるを得ないくらい、貫禄と言うか滲み出るオーラと言うか、とにかく迫力が凄まじかった。
「マクゴナガル先生。
「ご苦労様ハグリッド。ここからは私が預かりますので、貴方は先に向かっていてください」
黒い髪を小さなシニヨンにしているマクゴナガルはハグリッドが奥の扉の向こう側に姿を消したのを見届けると、ホールの隅にある小さな空き部屋に新入生を引率した。此処が多分、待機室なのだろう。多くの生徒は不安と緊張で落ち着きがない。
「ホグワーツ入学おめでとう。これから新入生歓迎の宴が行われますが、その前に皆さんには所属する寮を決めるための組分けを行って頂きます」
静かな、それでいて室内全体によく響き渡る声でのマクゴナガルの挨拶が始まり、ざわざわと騒がしかった室内は一瞬でシンと静かになった。
「組分けはとても神聖な儀式です。これから皆さんが7年間過ごす寮を決め、そこに所属する生徒は皆が家族のようなものです。教室でも寮生と共に勉強し、寝るのも寮、自由時間も寮の談話室で過ごすこととなります」
そこで一旦言葉を区切り、マクゴナガルは一息入れて再度説明に入る。
「寮は4つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン。それぞれに輝かしい歴史があり、偉大な魔法使いや魔女が卒業していきました。ホグワーツにいる間、皆さんの行いが寮の点数になります。良い行いをすれば所属する寮の点数になり、反対に規則を破れば減点されます。学年末には最高得点の寮に大変名誉のある寮杯が与えられますから、どの寮に入るにしても皆さん一人一人が寮の誇りになるよう望んでいます」
長い説明を終え、マクゴナガルは生徒達を見回す。身だしなみをチェックしているのか、服装が乱れている者を見たら厳格そうな顔を更に険しくさせた。
「間もなく、全校列席の前で組分けの儀式が始まります。待っている間、出来るだけ身なりを整えておきなさい。準備が出来次第、戻って来ますから静かに待っていてください」
マクゴナガルが部屋を出て行くと、途端に生徒達はソワソワし始めた。どんな風に組分けをするのだろうと、周囲の人と意見を交換し合う。ハーマイオニーは今までに覚えた呪文を早口で繰り返し、ロンはハリーに試験のような物だろうと言って彼を余計不安にさせた。極度の緊張と不安に苛まれる新入生がほとんどの中、相変わらず無表情を崩さないでフィールはワイシャツの襟を整えている。
「フィールは冷静だね。知ってるの?」
「知らない。でも、緊張する必要はないだろ。入学する新入生にいきなり魔法を扱ってみろって言うはずがない。魔法学校というのは、魔法を使うための知識や技術を0から学ぶ場なんだし」
「だ、だよね」
フィールを除いて他の生徒が緊張感を漂わせる中、突然悲鳴が上がった。何事かと見てみると、背後の壁から20人近くのゴーストが現れるところだった。ナーバスになっていた新入生達は急にゴーストが出現してビックリしたのだ。
「もう許してなされ。彼にもう一度チャンスを与えましょうぞ」
新入生の方にはほとんど見向きもせず、何やら議論を交わしながらスルスルと部屋を横切っていくゴーストの内、太った小柄な修道士らしいゴーストがそう言った。
「修道士さん。ピーブスには、アイツにとって十分過ぎるくらいのチャンスをやったじゃないか。我々の面汚しですよ。しかも、ご存知のようにヤツは本当のゴーストじゃない―――おや、君達、此処で何してるんだい?」
ひだがある襟付きの服を着て、タイツを履いたゴーストが新入生達に気付いて声を掛けたが、誰も答えなかった。
「新入生じゃな。これから組分けされるところか。ハッフルパフで会えるとよいな。わしはそこの卒業生じゃからの」
太った修道士が1年生の緊張を解すように優しく言った直後、これまた唐突なタイミングで厳しい声が振り下ろされた。
「さあ、行きますよ。組分け儀式が間もなく始まります」
マクゴナガルは戻って来ると、新1年生を並ばせ、大広間へ連れて行った。
そこは壮大な大広間で、名家のベルンカステル家で育ったフィールさえも感嘆するものだった。
何千という蝋燭が空中に浮遊し、広大な大広間内を明るく照らす。4つの長テーブルには寮別に在校生達が座っており、どんな新入生が来たのかと凝視していた。
上座にはもう一つ長テーブルがあり、そこに座っているのはホグワーツの現校長、アルバス・ダンブルドアを初めとする教師陣だ。
ダンブルドアは長い銀色の髪と顎髭、キラキラと淡い輝きを放つブルーの瞳が特徴的で、半月形のメガネを掛けていた。鼻は高いが、途中で二回くらい折れたように曲がっている。
ふと、フィールは天井を見上げた。
『ホグワーツの歴史』と言う本に載っていたのだが、大広間の天井は外に広がる本物の空と同じように見えるよう魔法が掛けられているらしく、プラネタリウムのように曇り一つない満天の星空が輝いていた。
美しい光景にフィールやその他大勢の新入生は思わず見とれていたが、マクゴナガルが4本足のスツールを置き、その上にボロボロで継ぎ接ぎだらけの古ぼけた帽子を置いたため、そちらに意識を移らせる。
あの帽子こそ、新入生が向かうべき寮を決めてくれる『組分け帽子』だ。椅子の上に置かれた組分け帽子はピクピク動き出し、鍔の縁の破れ目がまるで口のように開いて、4つの寮の特色を歌い出す。
私はきれいじゃないけれど
人は見かけによらぬもの
私を凌ぐ賢い帽子
あるなら私は身を引こう
山高帽子は真っ黒だ
シルクハットはすらりと高い
私はホグワーツ組み分け帽子
私は彼らの上をいく
君の頭に隠れたものを
組み分け帽子はお見通し
被れば君に教えよう
君が行くべき寮の名を
グリフィンドールに行くならば
勇気ある者が住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール
ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない
古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友を
必ずここで得るだろう
スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ
被ってごらん! 恐れずに!
興奮せずに、お任せを!
君の私の手に委ね(私は手なんかないけれど)
だって私は考える帽子!
組分け帽子が各寮の理念や個性を歌って教えてくれ、それが終わるとマクゴナガルは新入生リストを持ちながら、生徒の名前を読み上げた。
「ハンナ・アボット!」
金髪おさげの少女は緊張した表情で小走りで椅子の前まで向かい、椅子に座り、組分け帽子を被る。
一瞬の沈黙。
組分け帽子は高らかに宣言した。
「ハッフルパフ!」
ハッフルパフのテーブルから歓声と拍手が上がり、在校生達は笑顔を送る。ハンナは恥ずかしそうにしながらも嬉しそうにハッフルパフのテーブルへと向かった。
「スーザン・ボーンズ!」
次の生徒が呼ばれ、同じく帽子を被る。
「ハッフルパフ!」
またしてもハッフルパフが宣言され、歓声と拍手が沸き起こった。
組分けは順調に進んでいき、ロンやネビル、ハーマイオニーはグリフィンドール。マルフォイやクラッブ、ゴイルはスリザリンに進んだ。
「ハリー・ポッター!」
その名前が呼ばれた瞬間―――大広間は一斉に静まり返った。各所から、魔法界の英雄として超有名なハリー・ポッターをよく見てみようと組分け帽子を被る黒髪に丸眼鏡を掛けた少年に注目する。
数分後、組分け帽子は高らかに宣言した。
「グリフィンドール!」
グリフィンドールのテーブルから爆弾が爆発したかのような大歓声と大拍手が起こり、ハリーは嬉しそうな表情でテーブルに行き、同じ顔をした赤毛の少年二人―――フレッド&ジョージ・ウィーズリーは「ポッターを取ったぞ!」と復唱している。
フィールは横目で興奮状態の獅子寮テーブルを見て、すぐに組分け帽子に戻すと、
「フィール・ベルンカステル!」
名前が呼ばれた。
フィールはクールな表情を崩さないまま、洗練された歩き方で優雅に、そしてどこか威風堂々とした空気を身に纏いながら、椅子へと向かう。
名を呼ばれた瞬間―――あれだけの喧騒がまるで嘘のように静まり返り、全校生徒が驚愕の表情で椅子に向かい組分け帽子を手に取ってスッと椅子に座る、黒髪蒼眼の少女を見つめた。
今までの新入生とは打って変わって、動じることもなければ緊張もしていない、大人びた雰囲気と無表情の顔。
それは、緊張でガチガチになりながら自分が進む寮は何処なんだろうという気持ちが表面上に出ているのを、自分達もそうだったなと微笑ましそうに見ていた上級生達にとって、黒髪の少女の無感動そうに真っ直ぐ見据える蒼い両眼がまるで見るもの全てを見下ろしているような冷たさを宿した眼光だと、衝撃を喰らった。
そして、驚愕している理由は他にもある。
ベルンカステルという名の魔法族は、魔法界でただ一つしか存在しない。
それはすなわち、彼女は正真正銘、英国魔法界では偉大なる魔女と英雄崇拝されたエルシー・ベルンカステルの血縁者だと意味している。
多くの魔法使い、マグルを殺害してきた闇の陣営の総司令官・ヴォルデモート。いつしか名前を呼ぶことさえ恐れられてきたあの闇の帝王へ戦意を示し、その刃の切っ先を突き付けた勇敢なる魔女。
彼女の行為は、数多くの人々を救ってきた。
最後は力尽きて殺されてしまったとはいえ、その勇気ある抵抗は絶望の淵に居た魔法使い達へ、多大なる影響を与えた………。
フィールは手にした組分け帽子を被り、静かに待つ。すると、頭に声が響いた。
「ふーむ………君はベルンカステル家の者かね。難しい。非常に難しい………溢れんばかりの勇気に満ちており、聡明でいて探求心と追求心にも溢れている。人としての優しさはあるが、敵とみなした者へは瞬く間に牙を剥く残忍さが見え隠れしておる。君に狡猾さや協調性という資質はそこまでない。しかし、目的を果たすためならばありとあらゆる可能性を限界以上に引き出し、執拗なまでに追い掛けるその精神力はスリザリンにこそ相応しい………」
組分け帽子はこの上なく苦悩した。
祖母や母親と似ているフィールは完璧なまでにスリザリン生に向いてる訳ではないが、一部で言えばスリザリン生そのものだ。
この学校の創設者の一人サラザール・スリザリンは自身の寮生に『蛇語、機知に富む才知、断固たる決意、やや規則を無視する傾向』等の才能を求めていた。
蛇語はどちらと言えば先行的な能力なので除外するが、残りの才能で言うなれば、フィールはどストライクで当て嵌まる。
臨機応変に対応が出来、非常事態においても決断力も高く、必要であればルールを破ることさえ厭わない。
これらの要素だけで言えば、まさにスリザリンでこそ上手くやっていけるだろう。事実、彼女のスリザリン出身の血縁者もそうであった。
しかし、協調性のないフィールがスリザリンを選んだからといって、上手く事が運ぶという訳でもなさそうだ。スリザリンは他3寮とは完全に決裂している状態に近いため、お世辞にも交流的な関係とは言い難い。
が、その代わり、歌でもあったようにスリザリンでは『まことの友』を得られる。故に寮生同士による結束や絆の強さ固さは、他の追随を許さない。だからこそ、寮内での団結力は人一倍ある。
そんな連帯感が強い寮で孤高を自ら選ぶような彼女が入ればどうなるかは、火を見るよりも明らかだ。まず間違いないなく、スリザリン生との間に軋轢が生まれてしまうだろう。生粋の純血の名家の出所にしては珍しいことに純血主義者でもなければマグル差別者でもないのだから、尚更だ。
「君自身、何処か希望する寮はあるかね?」
「私? 特に無いけど………強いて言うなら、母親や祖母と同じスリザリンかな」
「ふむ、スリザリンかね。しかし、それで本当にいいのかね? 素質を考えればスリザリンそのものだが、性格で考えればグリフィンドールそのものだ。無論個人の感情は優先するが、私としては母親や祖母と同じスリザリンより、父親と同じグリフィンドールの方がベストではないかと思うのだが………わかった。君自身が選んだ道だ。私は君の意見を尊重しよう。君ならば、あの二人と同等かそれ以上にスリザリンで何者よりも輝けるかもしれん。………健闘を祈っておるぞ、若きベルンカステル家の現当主よ」
組分け帽子は、遂にフィール・ベルンカステルが進むべき寮を示した。
「スリザリン!」
組分け帽子はハリー・ポッターと同等かそれ以上に声高らかに宣言した。
……が、今までとは打って変わり、大広間はシンと静まり返っている。
他寮は元より、闇の帝王を心酔していた者が大半を占めるスリザリンでもフィールを歓迎する生徒は少数派で、今日一番少ない拍手を受けてしまった。
だがしかし、当の本人は意に介した様子もなく、脱いだ組分け帽子を椅子に置いたらさっさと緑と銀のレジメンタルのネクタイを締めた生徒達が集うテーブルへと歩いていく。
嫌な静寂に包まれる中、席を立った一人の女子上級生がフィールに歩み寄ったと思えば彼女の肩を抱き寄せ、空いてた席に座らせた。
「………ありがとうございます」
「どういたしまして。私はアリア・ヴァイオレット。今年4年に進級したから、貴女の3つ年上ね。ようこそスリザリンへ。新しい家族が出来て私も嬉しいわ」
姓の通り、青紫色の瞳にフィールと同じ黒髪の女生徒―――アリアは優しげに微笑むと、少し離れた自分の席に座った。
(アリア? あれ、そういえば………クリミアが言ってたっけな………スリザリン所属の友達がいるって。確かその人の名前………やっぱり。アリア・ヴァイオレットだ。世間は狭いな)
そんなことをつらつらと思い出しながら、フィールは周囲を見回す。
ドラコ・マルフォイやその取り巻き、そして大半の上級生達は何だか嫌な物を見るような眼差しでこちらを見ていた。
軽く肩を竦めたフィールは気にする素振りは見せず、涼しい顔をして腕を組む。
果たして、スリザリン所属の学校生活はどんなものになるのだろうか。
フッと息を吐いたフィールは周囲からの視線を尻目に思考の海に沈んでいった。
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その後の組分けも順調に進み、新入生全員の組分けを終えた後のダンブルドアの意味不明な挨拶が終わると、いよいよ歓迎会パーティーの時間になった。
テーブルの上には最初何も載っていなかった金色の皿に様々な料理が山盛りで盛られ、各自好きなように取り寄せて食べながらも皆は隣や向かい側の人と会話を弾ませる。
その中でフィールはただ黙々と食べていた。
誰かと会話をしながら食事することが少なかったが為に、無言で料理を口に運ぶ癖がホグワーツでも出ていた。
「エルシー・ベルンカステルの孫が
フィールに声を掛けてきたのはマーカス・フリントと言う5年生で、スリザリンのクィディッチチームではチェイサー兼キャプテンを務める黒髪灰色眼の男子生徒だ。彫が濃い顔で目力が強く、厳つい雰囲気を身に纏っている。
「………ああ、そう」
「何だ、緊張しているのか? そんなに気を張らなくてもいいんだぞ」
マーカスはフィールが周囲からの好奇の眼に肩幅狭い思いをしていると捉えたのか、その肩をポンポンと叩いた後、同級生の友人達との会話に交じった。フィールはマーカスに対し「別に緊張はしてないんだけど」と内心で突っ込みつつ、再度食事に手を動かす。
すると、不意に右隣から肩を叩かれ、横目でそちらを見た。
元気よくピョンピョンはねたショートカットの明るい茶髪に、瞳の色は明るい翠のアクティブ感が漂う少女。パッと見ると可愛い系男子みたいに見えるので、中々ボーイッシュな子だ。
「―――私、クシェル・ベイカー。クシェルって呼んで」
「………なら、私のこともフィールで構わない」
茶髪翠眼の少女―――クシェルにフィールは素っ気なく返答しながら、デザートの時間にしようとイチゴ味のアイスを取り寄せ、銀のスプーンで掬う。クシェルはフィールの冷たい態度に特に気にした様子もなく、バニラアイスを取り寄せ、更に話し掛けた。
笑顔で他愛もない話をするクシェルに反し、フィールは無表情で相槌を打つというのを繰り返していたら、スリザリン寮のゴースト『血みどろ男爵』がテーブルに現れ、今年入ってきた新入生を見渡す。
それから、何やら新入生達へプレッシャーを与えるようなことを言ってきたが、それを華麗にスルーしているフィールを見て、血みどろ男爵は驚愕の表情に染まる。
「お前は………まさか、
「………ええ。
「そうか………瞳の色を除いて、クラミーにそっくりだ。まあ………まさか、アイツが母親になるなんてな。元気にしてるか?」
「…………………………」
血みどろ男爵の問いに、フィールはスッと冷たい光を宿した眼を細める。それを見て、自分のやらかしたことに気付いたのか、ハッとして先程までの威張っていた口調から一変、
「………すまん。それは訊くべきではなかったな」
バツの悪そうな顔で血みどろ男爵はフィールへ謝罪し、スーッと去っていった。
少しメランコリーになったフィールは深く息を吐き、ゴブレットに入っている紅茶を一気に飲み干した。家族のことについて他人に訊かれたくないタイプのため、まさかこんなにも早く質問されるとは予想外だったから、気持ちが暗く沈んだ。
隣に居たクシェルはなんとなく家庭の事情を察し、こういうのは詮索するべきではないと思いつつ、彼女の暗い気分を明るく変えさせようと弾んだ声で他愛もない話題を振った。
「フィールは何の教科が楽しみ? 私はやっぱり飛行訓練が楽しみ! 箒に乗って空を舞うのってスッゴく楽しくない?」
「………なんだろうな」
いつまでもブルーなままでいるのは子供っぽいと思い、恐らく気分転換させようとしてくれたクシェルのためにも、フィールは投げ掛けられた質問に対して返答を考える。
「………楽しみな教科は特にないな」
今ではホグワーツで習う内容全てを自由自在に駆使出来るので、特にこれといった興味深い教科は無い。現在はオリジナルスペルの開発が何よりの楽しみなのだから。
余談だが、フィールは魔法薬学についてはかなり突出した才能を発揮し、既に教科書よりも効率的で製造法を独自で編み出している。そのおかげか、応用や修正などといった対応力もレベルアップしたので事前に勉強しておいてよかったと思ったのは、ここだけの話だ。
「何にもないの?」
「ああ」
「じゃあさ、得意教科になりそうなものは?」
「さあ、な。とりあえず、全教科最高得点を叩き込めればそれでいい」
「フィールって、勉強好きなの?」
「好きだよ。知識を増やすのは楽しいし」
クシェルは「勤勉で努力家なら、レイブンクローやハッフルパフが相応しいんじゃ?」と疑問符を浮かべながら、ゴブレットに手を伸ばした。
歓迎会パーティーが終了し、校長のダンブルドアが注意事項などを説明し、最後にメロディーが特に定まっていない校歌斉唱が行われたら、監督生は新入生をそれぞれの寮へ案内するために誘導した。
最後の説明であった『4階右側の廊下には入らないこと』に皆は一体どういうことだろうと言う表情をしつつ、1年生ははぐれないように監督生の後を追い掛けた。
スリザリン寮の所在地は城内の地下牢だ。
入り口は地下牢の奥、湿った剥き出しの石が並ぶ壁に寮へ続く扉は隠されており、合言葉で開くシステムである。合言葉は2週間ごとに変わり、新しい合言葉は談話室の掲示板に貼り出されるとのことだ。
談話室は石造りで細長く、天井が低い。壁と天井も荒削りの石造りで、丸い緑が掛かったランプが天井から鎖で吊るしてある。談話室の窓はホグワーツの敷地内に広がる広大な湖の水中に面し、窓ガラスからは巨大イカが見えるらしい。暖炉には壮大な彫刻が施されており、談話室に置いてある椅子も彫刻が施されている。
最後に監督生からのスリザリンに関する長い説明が語られ、それが終わると疲労が溜まっていた新入生達は、そそくさに割り当てられた部屋へと向かった。
フィールもこれから7年間過ごす女子部屋まで歩き、扉のプレートを見る。そこには、
『
と書かれていた。
2つプレートが掛けられているため、どうやら二人部屋らしい。そして同室の人の名前が『クシェル』とあったため、フィールは「ああ、あの人か」とその場に突っ立ってたら、肩に誰かの手が置かれた。振り返ると、そこにはクシェルが笑顔で立っていた。
「これからよろしくね、フィール」
「………ああ、よろしく」
慣れないことだらけで戸惑うが、ポーカーフェイスだけは崩さず、フィールは小さく頷き返し、扉を開けてクシェルと共に中に入る。
寝室には緑の絹の掛け布がついたアンティークな4本柱のベッドが設置され、その上に荷物が詰め込まれたトランクが置かれていた。ベッドカバーは銀色の糸の刺繍が施され、天井からは銀のランタンが吊り下げられている。壁は有名なスリザリン生の冒険を描いたタペストリーで覆われており、窓に打ち寄せる湖の水音は不思議と落ち着きをもたらしてくれた。
フィールは軽く荷解きをし、全部やるのは明日にしようとトランクから寝間着を取り出して早々に着替え、ベッドの中に潜り込み、眼を瞑って明日からホグワーツで生活するんだなと考えていたら―――いつの間にか夢の世界へ誘われ、深い眠りに落ちて規則正しい寝息を立てた。
【アリア・ヴァイオレット】
黒髪青紫眼。4年生。純血だけどマグル差別者などではない常識人。他寮のクリミアとソフィアの友人。他人より落ち着いた性格で人の心を見抜くのが鋭い。
【クシェル・ベイカー】
茶髪翠眼。1年生。明るくアクティブな性格でボーイッシュガール。一匹狼のフィールにどんどん話し掛けるほどめげない上にブレない。
【フィールの素質】
帽子も言ってましたが、フィールは蛇語や狡猾、協調性といった一部を除いての素質はスリザリン生、性格はグリフィンドール生という、両方の素質を兼ね備えているハリー・ポッターとかなり似ているオリ主です。
ただ単に、原作主人公がグリフィンドールならオリジナル主人公は対比のスリザリンにさせたと思うのが一番ベストかもしれません。