【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

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叫びの屋敷へレッツゴー。


#44.真相の解明

 夕食真っ只中の大広間は、試験勉強と学年末試験という地獄から解放された生徒達の活気で賑わっていた。

 これで勉強する必要は無いと、ここ最近は趣味などに没頭出来なかったがために皆の顔には満面の笑顔が浮かべられており、残りの学期をどう楽しもうかと友人達と話し合う姿がちらほらと見られた。

 

「フィー、談話室に戻ったら、一緒にチェスしない?」

「ああ、やるか、せっかくだし」

「今度こそ勝つからね!」

 

 クシェルがフィールに意気込みを伝えると、

 

「フィール」

 

 と、ソフィアの声が後ろから掛かった。

 フィールとクシェルは、振り返る。

 彼女の手には、封筒が握られていた。

 

「ソフィア? どうかした?」

「ハリーとその友人二人から、フィールにこれを渡してって頼まれたのよ」

「ハリー達から? わかった、ありがとう」

 

 フィールはソフィアから封筒を受け取り、彼女はハッフルパフのテーブルへ歩いていった。

 フィールは封を切って便箋を広げる。

 そこには、バックビークの処刑が無しになったのと、ハグリッドが自分にも礼を言いたいそうだから、夕食を食べ終わったら玄関ホールに来て欲しいと書かれていた。

 

「なんて書いてたの?」

 

 クシェルに尋ねられたフィールは、簡単かつ簡潔に説明を施した。

 

「へえ……エミリーさん、大活躍したね」

「ああ。エミリー叔母さんには感謝だな」

「ってか、夕食後に呼び出しって………」

「まあ、それは仕方ない」

「………あ、そういえば、バックビーク、ハグリッドの小屋の近くに居るかな? 居るなら、久しぶりに私も会いたいな」

 

 ハーマイオニーにお願いされる前―――フィールとクシェルも、バックビークをどうにかして救えないかと、図書室に籠ってハリー達と共に過去の事例を調査した。

 そのため、クシェルにもバックビークには思い入れがある。無事に無罪放免となったのを喜ばずにはいられなかった。

 

「なら、クシェルもついてくる?」

「うん。私も行く」

 

 その返事に、フィールは小さく頷いた。

 そうして、二人は食事に手を伸ばした。

 

♦️

 

 夕食後、フィールとクシェルは玄関ホールにやって来た。ハリー達一行は既に居て、後者の姿を見ると僅かに眼を見張った。

 

「クシェル? なんで、此処に?」

「フィー宛ての手紙に書かれてたのを見て、私もバックビークと会いたいなって」

「そっか。クシェルも手伝ってくれたんだよね」

 

 ハリーは納得したのか一つ頷いてると、ハーマイオニーは満面の笑顔でフィールに抱きついていた。

 

「フィール、本当にありがとう!」

「落ち着け、ハーマイオニー。礼をするのは、エミリー叔母さんにだろ?」

「でも、貴女がエミリーさんに伝えてくれたじゃない。だから、ありがとう」

 

 背中に腕を回したまま、更にギュッと強く抱き締めてきたハーマイオニーを、フィールは淡い微笑みを浮かべて、抱き締め返した。

 それから少しして、ハグリッドが来た。

 バックビークの無罪放免の祝いで酒を飲んできたらしく、顔が紅潮している。暗くなってきた道中を歩いていくと、小屋の外に見覚えのあるヒッポグリフが生肉のご馳走を平らげているのが見えてきた。

 

「バックビーク」

 

 フィールはお辞儀をし、バックビークもお辞儀をし返したのを確認したら、近付いて嘴を慣れた手つきで撫でた。バックビークはフィールになついているのか、彼女が来たのを嬉しそうに身体を擦り付けてくる。

 

「フィー、なつかれてるね」

 

 クシェルが優しげに笑みつつ、彼女もバックビークに近付き、嘴を撫でる。

 

「………私はバックビークと会えたなら、それでいい。ハリー達、先に城に戻ってる」

「うん、わかったよ」

 

 ハリーが頷くと、ハグリッドがフィールに声を掛けてきた。

 

「ベルンカステル。お前さんと、お前さんの叔母のエミリーには感謝してもしきれねえ。エミリーには、お前からよろしく言っといてくれや」

「ああ、わかった。エミリー叔母さんに、ハグリッドが『ありがとうって言ってた』って伝える」

 

 フィールは小さく頷いて、クシェルと共に元来た道から城に向かって歩いた。

 

「バックビーク、元気そうでよかったね」

「そうだな。私も安心した」

 

 二人は、玄関には向かわず、別の入り口から城の中に入り、気配を隠しながらそのまま寮に戻ろうとしたが―――。

 

「! クシェル、隠れろ!」

「え? う、うん!」

 

 小声でフィールが早口でそう言い、クシェルも小声で首を縦に小さく振ると、二人は咄嗟に身を潜めた。二人が息を殺して隠れていると、人の気配を敏感に察したフィールの予感が的中し、寮監のスネイプが何かを手に持ってある所へ行くのを見掛けた。

 

「はぁ~………危なかった………」

「此処で見つかったら、絶対に何処行ってたか訊かれるよな」

 

 そしたら、夕食後に無断外出したのがバレて減点されるなと、クシェルとフィールはヒヤヒヤしつつ、普段は研究室に籠るようなスネイプが何かを持って何処かに行くのを見て好奇心と興味が沸いたため、後を追い掛けてみることにした。

 

(フィーは物好きだね)

(クシェルもだろ)

 

 前にも同じやり取りをしてデジャブを感じる二人は、やがてスネイプがルーピンの部屋へ入っていくのを、驚きに満ちた瞳で遠目から観察する。

 

「ルーピン先生に用? 珍しいね。ってか、スネイプ先生が持ってたアレ、なんだろ?」

「今夜は満月の日だ。だから、多分だけど『脱狼薬』じゃないか?」

「脱狼薬? それって確か―――」

 

 と、その時だ。

 勢いよくスネイプが部屋から飛び出してきた。

 完全なる不意打ちにクシェルはビックリして声を上げそうになったが、フィールが口元を押さえてくれたおかげで、なんとか耐えた。

 

「ふぅ………行ったな」

 

 扉を閉めるのも忘れて駆けていくスネイプの姿が見えなくなると、フィールは深く息を吐き、手を下ろした。

 

「ビ、ビックリしたぁ………」

 

 未だに心臓がバクバク鳴っているので、クシェルは胸に右手を当てて気持ちを鎮める。

 

「スネイプ先生、スゴい慌ててたね………」

「何かあったのか?」

 

 フィールはそっと部屋を覗いた。

 そこには、誰も居ない。

 机にはゴブレットが置いてあり、青色の煙が立っている。そして、その側には地図らしき物が広げられていた。

 

「ん? あれ、これって―――」

「『忍びの地図』じゃないか?」

 

 忍びの地図。ホグワーツ魔法魔術学校の全てを露にする魔法の地図。教室、廊下、城内、校庭を隅々までカバーし、壁に隠された秘密の通路すら表示することが出来る。地図上を動く小さな点が誰が何処に居るかを示してくれる便利な品物だ。

 以前、ハリーはこれを、1年時にフィルチの没収品から盗み出したウィーズリーツインズから貰い、それを使ってホグズミードまでの抜け道から城を抜け出したらしい。そして、ロンと共にホグズミードに行って城に戻った途端、スネイプに捕まり、尋問中に忍びの地図を持っているのがバレたが、最終的には、ルーピンが没収したらしい。

 その際、ルーピンは、

 

「君のご両親が命を賭して遺してくれた賜物に、あまりにもお粗末じゃないか」

 

 と、こっぴどく叱ったそうだ。

 それには流石のハリーでも、もう何も言えなくなったらしい。

 これらの出来事を聞いた二人は、

 

「ルーピン先生の言ってることは正しい」

「抜け出しは感心しない。二度とやるな」

 

 と、ルーピン以上に強い語気で返した。

 さて、それはさておき―――。

 

「! フィー、これ見て」

 

 忍びの地図の全体をざっと見ていたクシェルはスネイプの名前が走っている黒い点を指で辿っていく。校庭に植えられている暴れ柳の所で、ルーピンの名前が表示されている点が潜ったかと思えば、そこから先、彼の名前は消えた。

 

「………フィー、これ、マズいことが起きたんじゃない!?」

「ああ………すぐに追い掛けるぞ!」

 

 フィールは、中身が脱狼薬だと思われる薬をゴブレットから魔法瓶に移し入れると、全力疾走で駆け出した。

 

 校庭に出て、暴れ柳付近に二人は到着した。

 

イモビラス(動くな)

 

 フィールが『停止呪文』を掛け、暴れ柳の挙動をストップさせるとゆっくり近付き、暴れ柳の根元に人が入れるほどの穴があるのを発見した。

 

「こんな所に、穴?」

「この先に、ルーピン先生やスネイプ先生が行ったんだな」

「フィー、どうする?」

「此処まで来たんだ。最後まで動く」

「フィーなら、そう言うと思ったよ」

 

 クシェルは同感なのか、不敵な笑みを向ける。

 フィールはそれにフッと笑い返すと、穴の中へ身体を滑り落とした。

 長い通路を数十分掛けて歩き終え、トンネルを抜けたフィールとクシェルは雑然とした小さな部屋へ到着した。壁紙は剥がれ、家具は滅茶苦茶に破損され、窓には板が打ち付けられている。

 

コンロクィウム・コル(精神の会話)

 

 フィールは心中でオリジナルスペル『精神感応(テレパシー)呪文』を唱えた。

 これは主に集団での極秘任務(シークレットミッション)などに役立つ魔法で、誰かと精神の会話、つまり自分の心の内容を言語を発することなく、直接の誰かの心に伝達することが出来る。相手がこの魔法を使用出来ない場合は一方的にテレパシーを送信することになるが、使用出来る場合は交信可能だ。

 

(便利だよね、この魔法)

(なら、よかった)

 

 ………レベル的にはかなり高位なのだが、クシェルに教えたら、なんと彼女は1週間とちょっとの期間で完璧に習得した。このことからも、クシェルには稀有な素質があるのがわかる。将来は期待の新人として活躍するに違いない。

 

(それはそうと、此処って叫びの屋敷だよな)

 

 叫びの屋敷。ホグズミード村の観光スポットの一つで、満月の晩になると不気味な叫声が聞こえることから、そう名付けられた。

 

(こんな抜け道があったんだね………)

(確か、暴れ柳が植えられたのは数十年前………なるほど、そういうことか。ホグワーツの校庭と繋がっているこの抜け道。満月の晩に此処から聞こえてくる、奇妙な叫び声。………校長のダンブルドアが狼人間のルーピン先生のためにこんなものを生み出したんだな、きっと)

(あー、なるほど。あの暴れ柳って、此処まで続く秘密の抜け穴を他の人達に気付かせないようにするためなんだね)

 

 フィールとクシェルは一般人はわからなかった謎を解かしつつ、頭上の方で、ガタンッ、と何かが倒れる音がしたことから、2階の踊り場まで階段を使うのは得策ではないと、

 

(クシェル、しっかり掴まっておけよ)

(え?)

 

 フィールはクシェルの細い腰に手を回し、箒無しで空中を自由自在に浮遊する『飛行術』で一気に飛び上がった。クシェルは慌ててフィールにしがみつき、彼女は落とさないように身体を密着させる。

 2階まで来たら、フィールはクシェルから身体を離した。

 

(フィー、さっきのはいきなり過ぎるよ………)

(ごめん。でも、音を出す訳にはいかないだろ)

 

 フィールはクシェルに問い掛けつつ、室内の会話に耳を傾ける。

 

『復讐は蜜よりも濃く、そして甘い。お前を捕まえるのが我輩であったらと、どれほど願ったか。今どれほど歓喜に満たされているか、お前にはわかるまい』

 

 中から、スネイプの声が聞こえた。

 扉の向こう側なので、こちらからは、あちらの状況は見えない。

 だが、間違いなく、今のスネイプは狂喜乱舞しているだろう。話し方の口調や声音は、愉悦に溢れている。

 

『さぞや愉快だろうな。尤も、そこの鼠を含めた此処に居る全員を城へと連れて行くなら、私は抵抗せずに大人しくついて行くがね』

 

 今度は、聞き慣れない声が聞こえた。

 声の主は、男だ。

 状況から見て、その男は―――シリウス・ブラックに違いない。

 スネイプはその言葉に鼻で笑い返すと、城まで行かずとも暴れ柳を出てすぐに吸魂鬼(ディメンター)を呼べば済む話だと言った。

 シリウスだと思われる男は、『吸魂鬼の接吻(ディメンター・キス)』の話を持ち出されて、声を震わせた。スネイプはシリウスの必死の言葉にさえも耳を貸さず、有言実行と言わんばかりに連行しようとしたが、そこで誰かが扉の前に立ち塞ぐ音がした。

 

『退け、ポッター。お前は誰に命を救われたと思っているんだ?』

『僕はルーピン先生に、何度も吸魂鬼対策の訓練をして貰った。もし、本当に先生がブラックの手先だったら、僕はとっくに死んでたし、その時一緒に居たフィールも殺されてたはずだ』

『………ベルンカステルが時々夜に談話室から居なくなってたのは、そういうことか。まあ、今はそんなこと、どうでもいい………人狼の考え方など知ったことか。もう一度言おう。ポッター、退け』

 

 スネイプは低い声でハリーに威嚇したが、ハリーは意を決したように叫び、それに対し、スネイプもまた、狂ったように叫び返す。

 そろそろ止めに入らないとマズいかと、クシェルがドアノブに手を掛け、フィールが杖を構えて部屋の中へ侵入しようとしたが、その前にハリー達一行が不意打ち気味に『武装解除呪文』を唱える鋭い声がこちらまで響き、スネイプが吹き飛ばされて壁に激突し床に倒れただろう嫌な音も、二人の耳に入った。

 

(……行くか)

(うん………)

「やれやれ………随分、派手にやらかしたな」

 

 フィールが呆れ気味に、言葉を発した。

 喧騒としていた室内が静まり返る。

 クシェルがドアノブを回し、二人は部屋の中に入った。

 そこには、縄に縛られて床に転がっている二人の男性と、獅子寮所属の友人三人、そして彼らの向こう側に気絶している寮監が居た。

 男性二人の内一人は防衛術担当のルーピンで、もう一人は骸骨のように痩せ細っている、見慣れない男だった。着ている服はボロボロで、髭は伸び放題である。

 彼こそ、シリウス・ブラック本人だろう。

 フィールはルーピンとシリウスを拘束している縄を杖を一振りして解くと、二人はすぐさま立ち上がった。

 

「クラミー? 何故此処に居るんだ?」

 

 シリウスは両眼を大きく見開かせて、フィールの母の名を呟いた。

 それほどまでに、容姿が似ていたのだろう。

 フィールは表情を少し曇らせた。

 

「クラミー・ベルンカステルは私の母親の名前。私はクラミー・ベルンカステルとジャック・クールライトの娘、フィール・クールライト・ベルンカステル。はじめまして、ですね? シリウス・ブラック」

 

 フィールは至って普通に自己紹介をする。

 突如現れた彼女達に彼らが言葉を失っているその間にも、クシェルは部屋の隅で足から血を流して怪我をしているロンと、彼を庇うように側に控えているハーマイオニーの元まで歩き、前者の患部を応急処置で施した。

 

「なんて、呑気に自己紹介してる暇はないか」

「いやいや、名前はちゃんと名乗らないとダメでしょ。あ、遅れたけど、私、クシェル・ベイカーです」

 

 クシェルはシリウスに自身の名を伝えた。

 

「フィール、クシェル。何故此処に?」

 

 ルーピンの問いに、

 

「帰り道でルーピン先生の部屋へ行くスネイプ先生を見掛けて、気になったから、クシェルと一緒に後を追い掛け―――」

「ルーピン先生の部屋の机に広げられていた忍びの地図に、貴方やスネイプ先生が暴れ柳の所まで行くのを確認して、此処まで来ました」

 

 と、二人は丁寧に説明した。

 

「いつから此処に来てたの………?」

 

 今度は、ハーマイオニーが訊いてきた。

 

「ついさっきだ。スネイプ先生が『復讐は蜜よりも甘い』とか言ってた時くらいだな」

「………君達は此処に来るべきではなかっただろう。どんな危険があるのか、わからないのに」

 

 ルーピンが唸るようにそう言ったが、フィールとクシェルは肩を竦めると、ほぼ同時に、ロンが抱えている鼠に眼を向けた。

 

「私としては、推測がどこまで当たっているかをチェックするチャンスを手にした気分ですけどね」

「推測………?」

「フィー、そろそろ、話そっか」

「ああ、そうしよう」

 

 フィールとクシェルは顔を見合わせて頷き合うと、これまでの推測を語り始めた。

 

「一言で言えば、シリウス・ブラック、貴方は無実の人間で、ピーター・ペティグリューが真犯人ですよね?」

 

 その問いに、クシェルを除く全員が驚きの表情になった。

 

「何故、それを………?」

 

 シリウスが声を震わせながら訊いてきた。

 

「きっかけは、クシェルと一緒にホグズミード村の『三本の箒』でマクゴナガル先生やファッジが学生時代の頃のシリウス・ブラックと、ハリーの父ジェームズ・ポッターについて話していたのを盗み聞きした時。ハリーのお父さんと貴方が兄弟同然に仲が良かったと聞いて、まさかそんな人が親友を裏切るとは到底思えなかった。で、その後にある違和感に気付いた」

「シリウスは成績優秀だったんだし、仮にも闇の陣営側の人間なら『爆死』なんて派手な殺し方をしなくても、『死の呪文』1つで終わらせれば早い話でしょ? なのに、なんでわざわざそんなことをしたかと言うと、全てを知っているシリウスに追い詰められた裏切り者のペティグリューが、貴方に濡れ衣を着せるために自分で小指だけを切り落として、死亡したと周囲に思わせて逃亡するためかな」

 

 言葉を区切り、一息ついてから再度話す。

 

「さて、そうなると、ペティグリューがどうやって逃亡したかも、シリウスがアズカバンで長年正気を保つことが出来た理由も明るみになる。それはルーピン先生の存在だな………って、そういえば―――」

 

 フィールはポケットから、魔法瓶をルーピンに投げ渡した。

 ルーピンはそれを慌ててキャッチする。

 

「これは………?」

「脱狼薬。貴方の部屋に置きっぱなしにされてたので、持ってきました。早く飲んでください。今夜は満月の日ですよ」

 

 満月、と聞いてルーピンは魔法瓶の中身を一気に飲み干した。飲み終わった後、味の苦さに顔をしかめている。フィールは口直しのためのチョコレートをルーピンに手渡した。

 

「フィール、貴女、気付いてたの!?」

「ハーマイオニーだけだと思ってたのに!」

「やっぱり、ハーマイオニーも気付いてたか」

「え、ええ。私はスネイプ先生が人狼のレポートを課題に出した時に………貴女は?」

「私もハーマイオニーと同じ。尤も、顔に傷痕あったのを見た時から、何かあるなとは薄々思ってたけど」

 

 さて、それはさておき。

 

「話が脱線したけど………皆も知ってる通り、ルーピン先生は狼人間だ。狼人間は昔から魔法界で差別されている存在………当然、周りの人達がそのことを知ったら忌避する。でも、中には事実を知った後でも変わらず接してくれる人がいたんじゃないですか?」

 

 フィールはルーピンの前まで来ると、ポーチから一枚の写真を取り出す。

 それは、トロフィー室にあったあの写真だ。

 ルーピンはそれを受け取り、眼を見張る。

 

「これは………」

「トロフィー室にあった写真です。ハリーの父親がクィディッチの代表選手だったんなら、その当時の写真が一枚くらいあるんじゃないかと、時間を見つけて探したら、それがありました」

「その写真には、ジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック、リーマス・ルーピン、そして、ピーター・ペティグリューの四人が写ってます。つまり、四人は親友同士だったと考えると、三人はルーピン先生の正体を知った後、変身後も一緒に行動出来るようにしたんじゃないかと思います。で、それは多分、動物もどき(アニメーガス)なのではというのが私達の結論です」

 

 ジェームズ、シリウスの動物もどきが一体どんななのかはわからない。だが、先程盗み聞きした会話の内容から、二人はペティグリューの動物もどきは『鼠』であると察した。

 

「身体が消し飛ぶほどの呪いを当てられて、小指一本だけが残ったペティグリューの死に方はあまりにも不自然だ。だからこそ、こう考える。真犯人がペティグリューだったのなら、シリウスを嘘の犯人に仕立て上げた後、動物もどきに変身して逃亡した。そしてシリウスがアズカバンで正気を保っていられたのは、吸魂鬼が吸い取ろうとする感情を抱いていない、複雑な感情を抑制される動物もどきで回避していた。それをやってのけられたのは、自分は無実だとわかっていたから。そうだろ?」

 

 フィールはシリウスの前まで来て、背の高い彼の顔を見上げた。シリウスは瞠目して、フィールを見下ろす。

 

「グリフィンドール寮に侵入してロンを襲ったのは、ロンが飼っているペットが動物もどきのペティグリューだからなんじゃないか? と言うか、先程貴方達が話していたのを聞いて、半信半疑から確信に変わったけど」

「………何故、君達はそこまで推測しておきながら、先生達に言わなかったんだい?」

「確証が無い状況で私達が事を急かしたら、余計パニックが起きてしまうでしょう? それに、もしもこれらのことがホグワーツに居るであろうペティグリューの耳に届いたら、それこそ捕まえるのは困難になってしまう。だからこそ、知らないフリをして、ペティグリューが姿を現すその瞬間まで待ってました。それに、シリウスも此処まで来てるんだから、どちらにしろ、ペティグリューに逃げ場はありませんよ」

「ところで、私達の推理はどれくらい当たってるんですか?」

 

 クシェルがシリウスとルーピンに質問し、二人は顔を見合わせて大きく頷いた。

 

「君達の推理は大当たりだ。12年前、私は最後の最後でジェームズとリリーにピーターを隠れ家の『秘密の守人』に勧めた。そして、闇の帝王はピーターからの情報を基に、隠れ家に襲撃して、二人は殺された………私はアイツが裏切ったことを知り、追い詰めた所をアイツはマグルの人間達を爆死させ、小指だけを切り落とし、死亡したと見せ掛けて私に罪を着せて逃げたんだ。………ハリー………本当にすまなかった…………」

 

 シリウスは涙声になりながら、ハリーに深々と頭を下げて謝罪した。

 自分のせいで親友が死んでしまったことは耐え難く、10年以上経過した今でも自責の念に駆られていた。親友殺しの裏切り者だと周囲から罵られてきたシリウスは、長年抱懐してきた復讐を果たすべく、アズカバンから脱獄という前代未聞のことをやってのけたのだ。

 

「そういえば、シリウスはどうやってロンの鼠がペティグリューだと知ったんだ?」

「これだよ」

 

 シリウスは、ポケットから新聞記事を取り出した。それは、ウィーズリー一家がガリオン宝くじを当ててエジプトに行ったと書かれており、家族写真が掲載されていた。ロンの肩には鼠が乗っていて、よく見てみると、その鼠には指が一本無かった。

 

「私はアイツが変身する所を何度も見た。その上コイツには指が無い。すぐにわかったよ」

「なるほど、ねえ………。その鼠の名前は?」

「確か、スキャバーズとか言ってたな」

 

 フィールは鼠の名前を聞くと、杖を構え、

 

アクシオ・スキャバーズ(スキャバーズよ、来い)

 

 一々歩いて取りに行くのもダルいし、またロンが素直に渡すとは思わないことから、フィールは『呼び寄せ呪文』で彼が抱えている鼠を部屋の中央まで宙吊りにさせた。

 

「スキャバーズ!」

 

 ロンは悲鳴に近い声を上げるが、それに構わずフィールは簡単に説明する。

 

「ロン。もし、この鼠が本物なら傷付かない。でも、本物ではなく動物もどきのペティグリューなら、正体は顕現する。これは、事実を証明する唯一の手段だ」

 

 フィールの気だるげな説明に、はいそうですかと素直に頷けないロンだが、ルーピンにやんわりと窘められ、渋々大人しくした。

 

「あ、そうだった」

 

 フィールはショルダーホルスターから、予備の杖を丸腰のシリウスに投げ渡した。

 

「それ、予備の杖。無実を公に証明した後、新しく杖を買うっていうなら、その時までその杖を使って構わない」

「フィール、と言ったな。ありがとう。とても助かるよ」

 

 シリウスは渡された杖を強く握り締め、宙吊りにされて狂ったように暴れる鼠を、傍から見てもわかるくらいの激昂を瞳に宿しながら、鋭く睨み付ける。

 

「シリウス、準備は?」

「勿論出来ている。リーマス、3つ数えたらだ。すまないが、フィール。そいつをそのままにしておいてくれ」

 

 フィールは頷き、ルーピンとシリウスは鼠に杖先を向けた。

 

「では、いくぞ。1………2………3!」

 

 二人の杖先から閃光が走り、鼠に直撃する。

 鼠がボンヤリと発光し、徐々に姿を変えていく。

 発光が収まり、先程まで鼠が居た場所には、小柄で小太りの男が立っていた。

 

「やあ、ピーター。しばらくぶりだね」

「リ、リーマス………シ、シリウス………。お、おぉ、なつかしの友よ」

 

 スキャバーズ―――否、ピーター・ペティグリューは、二人の名前を吃りながら口にする。

 

「さて、ピーター。今我々が何を話していたか、そして君に何を訊こうとしているか、わかるね?」

 

 ルーピンは穏やかな口調だが、その実眼は一切笑っていない。今の胸中は、シリウスと全く同じ気持ちなのだろう。

 

「わ、私には、何のことか、さ、さっぱりだ。リ、リーマス、君は信じていないだろうね? さ、さっきの馬鹿げた話を………」

「それを確かめるためにも、ピーター。二つ三つ君に確認しておきたいことがある」

 

 ルーピンはペティグリューに質問しようとしたが、そこで彼は叫び出した。

 誤解だとか勘違いだとか、シリウスはまた自分を殺しに来たとか、とにかく清々しいほどの下衆ぶりを見せ付けてきた。

 フィールは呆れて深くため息をつき、ふと、クシェルが部屋の奥で気絶しているスネイプの側へ行って止血しているのを見る。そんな彼女へ、誰彼構わず命乞いをしてきたペティグリューが近付いてきた。

 

「お、お嬢さん。ベルンカステル家のお嬢さん。き、君ならわかってくれるだろう? 君は心優しかったクラミーとジャックの娘だ、きっと理解して―――」

 

 ペティグリューが汚れた手でフィールに触れようとした、その時だ。

 

 バンッ!!

 と、突如閉められていた扉が、派手な音と共にぶっ壊された。

 この場に居た全員が一斉にそちらを向き、何事かと思う暇にも、まさに雷速を誇る速さで迸った閃光が、ペティグリューの身体に直撃して、彼を壁まで思い切り吹き飛ばした。壁に激突したペティグリューは、動かない。

 脳震盪を起こして気を失ったのだろう。

 が、そんなことより。

 

「誰だ!?」

 

 シリウスが杖を構えながら、鋭く誰何する。

 バタンッ、と鈍い音を立てながら腐蝕が進んでいる床に倒れた扉を飛び越えて現れたのは、シリウス以外の全員がよく知っている水色髪紫眼の少女だった。




【ルーピン先生の狼人間化阻止】
ワームテールの逃亡も同時に阻止。

【コンロクィウム・コル(精神の会話)】
オリジナルスペル『精神感応(テレパシー)呪文』。
言語を発することなく、心の内容を誰かの心に直接伝達可能。距離制限は特に無し。

相手も使用出来る場合→交信可能。複数でもOK。
相手が使用出来ない場合→一方的に送信することになる。

これさえあれば、テスト落第しません。
だって頭良い人に答え聞けばいいので。

【飛行術】
ここの作品でも登場。箒無しでの空中浮遊。
これさえあれば、箒なんて無くてもよくない?

【初・クシェルも主人公組との事件的な関わり】
1章は真夜中だったので爆睡、2章は毒蛇のキングの犠牲者だったからこれまでは間接的な関わりしか持ってなかったが、今作は直接的にやっと関わる。これを機にクシェルも事件に首突っ込む可能性↑。
フィール、しっかり護れよ!
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