【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

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選手選定の回。


#54.炎のゴブレット

 今年4年生になったフィール達の宿題量は半端じゃないくらいだった。

 来年の5年時にはいよいよ『普通魔法レベル試験』、通称『OWL(ふくろう)』と呼ばれる魔法試験があり、その成績は将来的にも重大で大きく影響がある。

 更には成績次第で6年生以降に受講する教科が決まるのでとても重要なことだ。

 そのため、各教師は1年前の今から万全を期して準備するため、授業の量・質を数段上跳ね上がらせた。

 中でも『闇の魔術に対する防衛術』は厳しく、なんと教師が生徒相手に許されざる呪文の一つ『服従の呪文』を掛け、抗えるかをテストするとのことだ。当然これには誰もが難色を示したのだが、それを平然とやってのけるのだがらその精神力が凄い。

 

 この呪いを掛けられた者は皆おかしな行動を取り始め、『服従の呪文』による完全なる支配という恐ろしさを身に染みてわからされた。

 クシェルは椅子の上に立ち上がり、ダフネはその場でタップダンスをした。パンジーは犬の鳴き真似をし、ミリセントはシャドーボクシングし、クラッブとゴイルはマイムマイムしてスリザリン生の笑いを誘い、マルフォイはムーディの前で跪いた。

 

 そして、最後にフィールの番が回ってきた。

 受けた瞬間、この上ない幸福感に身も心も包まれ、思わず全てを委ねたくなった。全身が快感に溺れ、心の底から気持ちいいと思える。緊張感が取り払われ、安心感に飲み込まれる。

 だが―――。

 

『この場で制服を脱げ』

 

 ………は?

 今、声の主は何と言った?

 制服を脱げ?

 同級生達の面前で?

 

 それまで極上の気分だったフィールは、頭の中で甘く囁くような声でその命令が響き渡った瞬間―――自分が感じている快楽感は偽物………フェイクだと、危うく自分自身の身体と精神を縛り上げようとした鎖から逃れ、同時に激しい嫌悪感を覚えた。

 全身を包む快感に濁り掛けた蒼瞳が鋭く光る。

 そしてヒップホルスターから杖を抜き出してクルリと一回転させると、フィールは術者と言う名の敵と認識したアラスター・ムーディ目掛けて杖先を突き付けた。

 

「待て! よくやった!」

 

 ムーディは呪いを打ち破ったフィールに驚いた顔をしたが、慌ててストップを掛け、彼女のそれ以上の行動を阻止した。

 今のフィールは『攻撃呪文』を撃ちかねない。

 それだけの、濃厚な臨戦態勢の眼光炯々の目付きをしていた。

 

「お前達、見たか? ベルンカステルは闇の魔術に打ち勝った! それも完璧にだ! ベルンカステルの眼を見ろ。そこに鍵がある!」

 

 それからムーディは数回フィールを実験台として用いり、その度に彼女は杖を構えて応戦的な態度を見せた。

 スリザリン生は単純に流石は反則レベルの学年首席様と誉めているが、唯一クシェルだけは気付いていた。

 フィールに異変が起きていることを。

 荒い息遣いが徐々に目立ち、明らかに身体に異変が起きている。冷や汗が微かに額に滲み、端正な顔も蒼白していく。

 4度目でフィールを解放したので、これで終了したかと思った、が。

 

ステューピファイ(麻痺せよ)!」

 

 『服従の呪文(インペリオ)』ではなく『失神・麻痺呪文(ステューピファイ)』を唱える鋭い声が突如として教室内に響き渡った。

 ムーディは目前に立っていたフィール目掛けて紅い閃光を放ち、彼女は咄嗟に『盾の呪文(プロテゴ)』で防御する。

 

「ムーディ先生!? 何してるんですか!?」

 

 クシェルは奇襲攻撃を仕掛けたムーディへ堪らず声を上げた。他のスリザリン生もそうで、突発的に発生した事件に悲鳴が沸き起こる。

 『服従の呪文』の苦痛が抜けずに肩で息をするフィールも、いきなり攻撃してきたムーディへ眼を剥いていた。

 全員が愕然とする中、騒ぎを起こした張本人のムーディは続け様に杖を振るって数多くの呪文をフィールだけに絞って連発する。

 フィールは同輩達に危害を及ぼさぬよう強力な防壁を展開すると、やむを得ず反撃を決意した。

 

インペディメンタ(妨害せよ)!」

 

 フィールは『妨害呪文』を唱え、杖先から眼にも止まらぬ速さで駆け抜けるスパークはムーディにヒットした―――ように見えたが、彼は至近距離からでも素早く撃ち落とし、すれ違い様に新たな呪文を撃ち込む。

 それを身体を斜めに引いて直前で躱すとフィールはフリーハンドの手を活用して片手バク転し、ムーディとの距離を十分に取った。

 

(ったく、一体なんてことをしてくるんだ!? やっぱり、ムーディは何かおかしい………)

 

 最早敬称略になったフィールは、頭を必死に回転させる。場所柄を考えれば、あまり派手にやらかす訳にはいかない。クシェル達はガードしてるので大丈夫だろうが、室内が酷い有り様になってしまう。

 そうなると、後片付けが面倒だ。

 と言うより、全ての責任は元凶のムーディへ向けられるだろうが………。

 フィールは視線を走らせ―――ある物が、眼に止まった。

 それは、先程『服従の呪文』を掛けられたクシェルが上った際に使用した椅子だ。

 遠くはないが、近くもない。

 中距離にあるそれと、杖を振り上げるムーディを一度見たり来たりしたフィールは、

 

(こうなったら、一か八かだ!)

 

 ある一つの賭けに打って出た。

 

ペトリフィカス・トタルス(石になれ)!」

アクシオ(椅子よ、来い)!」

 

 ムーディが『全身金縛り呪文』を詠唱したのに対し、フィールは『呼び寄せ呪文』を詠唱。

 青い光はフィールの胸を狙って走り抜ける。

 しかし、命中する前に飛んできた椅子が割り込んできた。

 フィールは眼前に来た椅子を魔法の中でも最も複雑で危険なものの一つ『変身術』で椅子を素材が全く異なる鉄板に変えてみせる。

 青色の光線は鉄板に直撃し、モロに喰らった部分は深く抉られ、天井に届きそうなほど空中を高く舞い上がった。

 ムーディはフィールの4年生とは思えぬ速業に唖然とし、一瞬だけ意識が椅子から姿を変えた鉄板に移る。

 ハッとした頃には、もう遅かった。

 

エクスペリアームス(武器よ去れ)!」

 

 戦闘に変身術を交えて陽動作戦が成功したフィールは『武装解除呪文』を鋭く唱える。

 真紅の閃光が迸り、ムーディの手元にある杖にヒットし、放物線を描くように宙を舞うそれをフィールの細くしなやかな手がキャッチした。

 あろうことか、戦闘のエキスパートが14歳の魔女に杖を取り上げられたのだ。

 

「形勢逆転………だな。さて、さっさとこんなふざけたマネをした理由を教えてくれません? ふざけた理由ならば、許しませんけどね?」

 

 杖を向けての発言。

 教師に対する礼儀がまるで伴っていない態度だが、そもそも先に手を出してきたのは教師であるはずのムーディからだ。

 

「まあまずは杖を下ろせ」

「奇襲者が言うセリフではありませんけど?」

 

 クールだが最近は徐々に柔和してきたフィールの豹変ぶりにスリザリン生は喫驚し、これは怒らせたら相当マズいタイプだと再認識した。

 

「すまんな。スネイプと互角に渡り合えると噂されているお前の力がどれほどなのか試してみたくてな。まさか、これほどまでとは予想以上だ。だから、まずは杖を下ろせ。そしたら話す」

 

 フィールは内心仕打ちしたが、このままでは話が進まないと渋々杖を振り下ろし、クシェル達の前に張っていたバリアを消滅させると、ムーディへ杖を投げ渡した。

 ムーディは杖を仕舞い、静かに口を開く。

 

「さて………単刀直入に言おう。見事だ。反射神経、戦闘技術、咄嗟の機転、度胸。防衛術を身に付けるにおいて必要不可欠の要素が全て抜かりなく、完璧だ」

「………それはどうも」

「そこで、だ。ベルンカステル、三大魔法学校対抗試合は知ってるだろ?」

「知ってますが、それが何か?」

「お前は、三大魔法学校対抗試合に出場する気はあるか?」

「は………?」

「お前の辣腕をわしが認め、成人魔法使いと匹敵する実力者だとダンブルドアに伝えよう。………もう一度訊くぞ」

 

 これは、マッド・アイ・ムーディ―――否、バーテミウス・クラウチ・ジュニアが、主人に『生き残った男の子』と共に連れて来るよう命じられて動いた、一つの賭け事。

 

 

 

「―――三大魔法学校対抗試合(トライウィザードトーナメント)に出場する覚悟と勇気はあるか?」

 

 

 

♦️

 

 

 

 10月30日、ハロウィーン前日。

 1週間前、『三大魔法学校対抗試合』を告知する貼り紙にボーバトンとダームストラングが来校してくるとの知らせがホグワーツに届いてからあっという間にその1週間が経過し、現在、いよいよホグワーツ生全員が待ちに望んだその当日を迎えた。

 大広間は既に飾り付けが終わっており、各寮を示す巨大な垂れ幕が掛けられていた。教職員テーブルのバックも同様でホグワーツの紋章の『H』の周りに獅子、穴熊、鷲、蛇が団結している絵が飾られている。

 

 宵闇が濃くなる、秋の夕暮れ時の午後6時。

 ホグワーツ生達は城の前で整列し、今か今かと二校の到着を待っていた。期待感やワクワクといった空気に覆われていてそれなりに喧騒としていたが、ダンブルドアが「ボーバトンの代表団が近付いてくる」と言えば、瞬く間にシンと静まり返る。

 そしてダンブルドアの一声と同時に顔を上げてみれば、ホグワーツ城に向かって飛んでくる天馬が率いる馬車が見えてきた。

 

 館ほどの大きさを誇るそれは轟音を立てながら地面に着陸し、馬車から淡い水色のローブを着た少年達が飛び降りて踏み台を用意する。

 すると、その踏み台にハイヒールが乗せられ、持ち主であるボーバトン魔法アカデミーの女校長―――マダム・オリンペ・マクシームが姿を現した。

 小麦粉色の滑らかな肌にキリッとした顔付き、大きな黒い潤んだ瞳に、鼻はツンと尖っている。

 デカイ、の一言に限るマダム・マクシームはフランス語鈍りの英語でダンブルドアと挨拶を交わした。

 彼女の背後には数十人の男女が立っている。

 何人かはスカーフやショールを巻いているが、彼らの多数は薄手の絹のローブだけを羽織っていてブルブルと寒そうに震えていた。

 そんな、準備不足なボーバトン生が周囲に居るせいで目立つのだが、二人の男女は、ちゃんと暖かいコートを着込んで寒さを凌いでいた。

 

「へえ、あの人達はわかってたんだ」

 

 フィールの隣で思わず感心するクシェルだが、その二人がコートをちゃんと用意したのは、黒髪の彼女が前もって『ホグワーツに来る時は厚手のコートを持ってきた方がいい』と伝言していたからだ。

 金髪オッドアイの美男美女。

 あの二人こそ、フィールの母方の従兄・従姉のルークとシレンである。

 二人はキョロキョロとホグワーツ生の集団を見回している。従妹であり恩人のフィールを探しているのだろう。しかし、中々に人が多すぎるため見つからず、少ししょんぼりしていた。

 フィールがそれに苦笑していると、マダム・マクシームが天馬をダンブルドアに預けて優雅に城内へと入場し、その後をボーバトン生が追い掛け、ルークとシレンも波に乗って歩いた。

 

 それから数分後―――ダームストラングの代表団が来校してきた。

 ボーバトンの代表団が空中来校してきたのでてっきり同じ手口かと思ったが、その予想は大きく外れる。

 湖の湖面が揺らめき、巨大な渦が現れた。

 その中から顕現したのは、巨大な船だ。

 闇の魔術を教える魔法学校の名に相応しい、幽霊船のような雰囲気を纏う船が下船し、ボーバトン生とは真逆の分厚い毛皮のコートを着た集団が上陸し、最後に銀色のコートを着込んだ銀髪の男―――ダームストラング専門学校の校長、イゴール・カルカロフが登場した。

 カルカロフはダンブルドアと一通り挨拶をしているため、フィールはそろそろ戻ろうかと踵を返した………が、なにやら瞳を輝かせたクシェルに腕を掴まれ、無理矢理引き留められた。

 

「フィー! クラムだよ! ビクトール・クラムだよ!」

「クラム? ……ああ。あのブルガリア選手か」

 

 興奮気味なクシェルとは裏腹に、フィールの反応は薄い。けれど、あちこちからざわめきが起きたのは無理もないことだ。

 なんと言っても、ダームストラングの集団の中に世界的トップスターである超有名人が居るのだから、周囲からは黄色い歓声が上がった。

 今年行われたクィディッチ・ワールドカップ決勝戦で、弱冠18歳でブルガリア・ナショナルチームのシーカーを務める天才プレイヤー。

 色黒で黒髪の、大きな曲がった鼻に真っ黒なゲジゲジ眉、育ちすぎた猛禽類のような顔付きをしている青年―――ビクトール・クラムだ。

 これには当然の如く、クィディッチファンの人達は黙っていられるはずがない。ホグワーツ生達は、終始興奮しっぱなしであった。

 

♦️

 

 大広間に着くと、レイブンクローのテーブルにはボーバトン生が既に陣取っていた。ホグワーツ生も各寮のテーブルへと向かい、ダームストラングの代表団―――というより、クラムが自分達の寮へ来るのを祈った。

 

「………ん?」

 

 フィールも他スリザリン生と同じくスリザリン寮の席に行こうとしたが、ダームストラングの代表団が入り口で固まっているのを見て振り返る。

 校長のカルカロフはどうしたのかと見渡してみると、彼はとっくに教員席に追加された席に座っていた。引率の仕事は放置かと、フィールは額に手を当てる。

 このままでは彼らが可哀想だと思い、フィールはUターンし、

 

『何かお困りですか?』

 

 とブルガリア語で尋ねた。

 彼らは英国の人間がブルガリア語を話せることに驚いた顔で見下ろした。

 しかし、それを気にせず、

 

『もしよろしければ、私達のテーブルへどうぞ』

 

 そう言ったら、パアッと驚愕から輝きへ変え、リーダー格であろうクラムが代表として礼を言ってきた。

 

『ありがとう、助かったよ』

 

 フィールの後に続いてクラム達はスリザリンテーブルへ向かい、椅子を引いて座った。

 

「フィー! ナイス!」

 

 座ったフィールはクシェルに背中をバシバシ叩かれながら誉められ、他のスリザリン生も「よくやった!」と言わんばかりの歓喜に満ちた表情であった。

 それに相反するよう、他寮の生徒はせっかくのチャンスを踏みにじられ、嫉妬の炎をメラつかせながらフィールの背中を睨んだ。

 当の本人は嫉妬の視線などどこ吹く風、といった感じに涼しい顔で受け流し、ダンブルドアの挨拶が終わると、食事会に入った。

 4つのテーブルの上には、他国から来たボーバトンとダームストラング生達のために、海外料理が混じっていた。

 

「ブルガリア料理って美味しいんだね」

「単にイギリス料理が不味いだけだと思う」

 

 母国の料理に対して辛辣な毒を吐きつつ普段は滅多に食べられない海外料理の数々を堪能していると、隣に居たクラムがブルガリア語で話し掛けてきた。

 

『さっきはありがとう。ホグワーツでブルガリア語を話せる人が居たなんて驚きだよ』

『読書が趣味なのと、ヨーロッパにある三校の魔法学校何処に行っても上手くやれるよう勉強したので。ま、ホグワーツは両親の母校だから此処の入学はほぼ決定事項ですけどね』

『勤勉なんだな。感心するよ。僕ももう少し英語の勉強をしてくればよかったな』

『ありがとうございます。次会った時は英語でも話を出来たらいいですね』

『そうだな。その時は是非よろしく』

『ええ。こちらこそ、よろしくお願いします』

 

 出会って早々意気投合したクラムとフィールは誓いの握手を交わす。有名人との固い握手に、クィディッチファンのジェラシームードが格段にレベルアップしたが、フィールは風に吹かれる絹のようにさらりと流した。

 

 歓迎会パーティーも終わり、ダンブルドアが立ち上がった。

 いよいよ、本題に入るのだろう。

 全ての生徒が姿勢を正し、一斉に注目する。

 校長は全員の視線が向けられているのを確認すると、穏やかに笑った。

 

「時は来た。三大魔法学校対抗試合はまさに始まろうとしている。『箱』を持ってこさせる前に二言、三言説明しておこうかの」

 

 ダンブルドアが語ったのは、対抗試合の簡単な補足説明であった。

 

 一つ、審査員は三校の校長に加え、国際魔法協力部部長のバーテミウス・クラウチと、魔法ゲーム・スポーツ部部長のルード・バグマンの五人が担当すること。

 

 二つ、代表選手は各校からそれぞれ選ばれた三人であること。

 

 そして………なんとここで、一つの『一部の例外』を言い渡した。

 それは―――

 

 

 

「―――ある条件を全て満たした者のみ、17歳以下の生徒でも各校の代表選手に立候補することを特例として認めると、此処で皆に発表しよう」

 

 

 

 大広間から、一切の音が無くなった。

 が、その数秒後には、嵐のような大歓声が渦巻き、それだけがこの場を支配した。

 ダンブルドアの話によれば、ある教師が未成年魔法使いでも成人魔法使いに匹敵する生徒がいると主張し、校長を初めとする全教師が品行方正、文武両道と認め、4年生以上と言う条件ならば参加の許可を許せないかと申し込み―――審査員五人で再び議論をした結果は、もしもこれで上手くいけば、次回以降の対抗試合からは年齢制限を撤廃するきっかけになれるとのことで、ルールを一部変更に決めた。

 それを聞き、最初は激怒していた4年生以下の生徒も、渋々納得したようだ。

 ダンブルドアは再び補足説明を施す。

 

 課題は3つあり、代表選手は1年間に渡りあらゆる角度から試される。

 魔法の卓越性、果敢なる勇気、論理・推理力、危険に対する能力。

 その総合力が最も優れていると判断された一人が、その学校を代表する選手となり、二校と競い合う。

 代表選手を選ぶのは公正なる選者『炎のゴブレット』。

 立候補する志があるならばこれから24時間以内にその名をゴブレットに提出しなければならない。

 そして、前述全てに共通する―――軽々しく名乗りを挙げないこと、だ。

 一度ゴブレットに名を呼ばれたら、魔法契約によって拘束され、1年間戦うことが義務付けられる。

 一度踏み込んだら最後。

 途中棄権なんて言語道断。

 心底戦い抜く覚悟と勇気がある者でなければ、待っているのは『死』である。

 

 重要な説明を終え、歓迎会は幕を閉じた。

 寮へ帰ろうとする人達が多いが故に、フィールは大広間で少し待機しようと残った。

 数分くらい経ってもあまり人が減らず、ちょっと疲れ始めてきた時。

 

「フィール!」

「見つけた!」

 

 ボーバトンの制服に身を包む金髪の美男美女が抱きついてきた。

 紛れもなく、ルークとシレンだ。

 二人は満面の笑顔でギュッとハグしてくる。

 

「ちょっ、ルーク、シレン……」

「フィール、元気にしてたか?」

「貴女のおかげで助かったわ。ありがとね」

「ハイハイ。時間も無いし、もうおやすみ」

「ああ、おやすみ」

「おやすみなさい」

 

 ルークとシレンはフィールから離れると、最後に彼女の右頬と左頬にそれぞれ口付けを落として去っていった。

 相変わらず愛情表現が過剰でその分二人からのぬくもりを肌で感じるなと思い、フッと息を吐いて表情を和らげる。

 ふと、周りがやたら静かだなと気付き、見渡してみれば、クシェル達がポカーンと突っ立ちながら、金縛りにあったみたいにフリーズしていた。

 その様はまるで『凍結呪文』を掛けられた人間そのものである。

 

「………どうした?」

「いやいやいやいや! フィー! あの人達と知り合い!? てか誰!? 普通に頬にキスしてたんだけど!?」

 

 真っ先にクシェルが爆発し、フィールの両肩に手を置いてぐわんぐわんと激しく揺らす。それを皮切りに他生徒もあれこれ詮索してきた。

 フィールはその勢いに気圧されながらも、ルークとシレンが母方の従兄と従姉だと教えると皆はビックリ仰天し「ええーっ!?」という絶叫が、静寂に包まれたホグワーツ城内に大反響した。

 

♦️

 

 翌朝のホグワーツで、フィールは注目の的を浴びることとなった。その訳は言わずともわかるボーバトン生の金髪オッドアイの非常に顔立ちが整った双子の兄妹が、彼女の従兄と従姉であると言う衝撃事実に、皆は面白い噂として瞬く間に広めた。

 親戚揃って超美形一族、とあちこちから羨望の眼差しを貰うのだが、どうやらホグワーツだけでなく、噂を聞いたボーバトンの方でも似たようなことが起きてるらしい。

 その原因を作るルークとシレンはとにかくフィールを実の妹同然に可愛がり、フランス人の血を半分引いてるがためのスキンシップの愛情表現が顕現としている。

 フィールは人前で頬にキスされるのは恥ずかしいのだが、ルークとシレンはあっけらかんと気にすることなく普通にしてくるので、彼女は若干疲れ気味だった。

 

「フィーのイトコのお兄さんとお姉さん、滅茶苦茶目立つね」

「見た目もそうだけど………人前であんなことされたら流石に人目につくだろ」

「ってか、初耳だよ。母方にイトコいたって。しかも、あの二人の父親ってライアンさんなんでしょ? 若くない?」

「まあな………」

「と言うか、母方の従兄妹の割りにはあまり顔立ち似てないのがビックリなんだけど」

「ああ………二人はどちらかと言えば、父親のライアン叔父さんより母親のセシリア叔母さん似だからな。情熱的な性格は、父親似だけど」

 

 叔父のライアンも叔母のエミリーも、とにかく愛情過剰。自身を姪というよりは実の娘みたいに可愛がってくれるし、黒髪や顔立ちから、血の繋がりがあると実感する。

 そして、ライアンの妻・セシリアも、息子のルークと娘のシレンと同じくらい、戸籍上の姪の自分へ溢れんばかりの愛情を注いでくれた。

 ………とても幸せだと思う反面、それはフィールの心を苦しませる時もある。

 

「フィール」

 

 クシェルと話していたフィールの後ろから、ルークの声が耳を打つ。

 振り返ってみれば、彼が立っていた。

 その手には、羊皮紙が握られている。

 代表選手に立候補するつもりなのだろう。

 

「4年生以上なら参加出来るってきっかけを作ったの、フィールらしいな。噂で聞いたぞ。立候補するのか?」

「私は立候補しない………と言いたいところだけど、気が変わった。立候補するよ」

「フィールならそう言うと思った。お互い選手になったら頑張ろうぜ」

 

 と言うことで、ルークとフィールは羊皮紙を手にホールに向かった。クシェルはワクワクしながら、二人の後をついていく。かなり早い時間帯から気になるのか、多数の生徒達はゴブレットから離れた場所で野次馬になっていた。

 フィールが「先にどうぞ」とルークの背中を押し、彼は一度深呼吸して、ゴブレットの中に自分を示す羊皮紙を入れる。

 同時刻、惚れた女子続出。

 しかし、本人は既に慣れっこなのか、デレることなく、従妹の背中を押し―――続いてフィールがゴブレットに羊皮紙を提出した瞬間、拍手喝采が沸き上がった。どうやらこれが、初の17歳以下の生徒の提出みたいだ。

 

「人気者だな」

「そっちこそ」

 

 ルークとフィールはお互いに不敵な笑みを浮かべ、ハイタッチした。

 

♦️

 

 10月31日、ハロウィーンの夜。

 ホグワーツでは毎年恒例のハロウィーンパーティーも終わり、いよいよ、待ちに待った運命の代表選手選抜発表の時間となった。

 ダンブルドアは杖を一振りし、大広間の証明を全部消す。『炎のゴブレット』の青白い炎だけが輝きを放つ空間は、沈黙と緊張感に包まれていた。

 全員の眼がゴブレットに注ぐ中、ゴブレットの炎が紅く変貌し、一枚の紙を吐き出す。宙をヒラヒラ舞うそれを掴み、ダンブルドアは読み上げた。

 

「ダームストラングの代表選手は―――ビクトール・クラム!」

 

 拍手喝采が起こり、名を呼ばれたクラムは立ち上がる。彼は前へ出ていき、隣の部屋へと消えた。その直後、ゴブレットが再び紅く燃え上がり、紙を吐き出す。

 

「ボーバトンの代表選手は―――ルーク・ベルンカステル!」

 

 サッとルークが立ち上がった瞬間、女子生徒の歓声が一段と上がった。たった1日でファンを多数獲得したらしい。双子の妹のシレンは誇らしげに兄の背中を押し、ルークは笑みを溢しながら、レイブンクローとハッフルパフのテーブルの間を滑るように進んだ。

 彼が隣の部屋へ消えた瞬間、これまでにないほどの静かな空間へガラリと変わった。

 遂に、記念すべき第1回目を開催する、ここホグワーツの代表選手は誰になるのか。

 固唾を呑んで見守る中―――青白い炎が紅く激変し、最後の名を書き記す紙片が空高く吐き出され、宙を舞った。

 ダンブルドアはそれを掴み、声高らかに宣言した。

 

「ホグワーツの代表選手は―――フィール・ベルンカステル!」

 

 フィールの名が呼ばれた瞬間、この日一番の大爆発が発生した。スリザリン生は総立ちになって拍手喝采し、床に亀裂が入るのではと思うくらいに足を踏み鳴らして、成人魔法使いを凌いで未成年魔法使いの意地を見せた彼女へ心からの称賛とエールを送る。

 名を呼ばれたフィールはスタオベするスリザリン生に微笑み掛けながら通り抜けていき、教職員テーブルの後ろの部屋へと消える。フィールへの拍手があまりに長々と続いたので、ダンブルドアが再度話し出すまでにしばらく間を置かなければならないほどであった。

 

「結構、結構! さて、これで三人の代表は決した。選ばれなかった諸君も、代表選手達を応援してくれることを信じておる。選手に声援を送ることで、皆が本当の意味で貢献出来―――」

 

 と、その時だ。

 ダンブルドアの言葉を遮るように………否、遮る事態が発生した。

 炎のゴブレットに、異変が起きたのだ。

 四度、炎の色が紅くなり、焼け焦げた羊皮紙が吐き出される。

 困惑と焦燥に覆われる大広間のど真ん中、ダンブルドアは戸惑いつつも、それを掴み上げ―――ある者の名を静かな声で読み上げた。

 

 

 

「―――ハリー・ポッター」

 

 

 




【没シーン:アンタはだーっとれい!】

~対抗試合を告知する貼り紙を見た一同~

アーニー「たった1週間後だ! セドリックのヤツ、知ってるかな? 僕、知らせてやろう」
ロン「セドリック?」
ハリー「ディゴリーだ。きっと、対抗試合に名乗りを上げるんだ」
ロン「あのウスノロが、ホグワーツの―――」
フィール「アンタはだーっとれい! ラングロック(舌縛り)!」
ロン(Nooooooooon!)
クシェル&ハーマイオニー「「ちょっとフィー(ル)、どうしたの(よ)!?」
フィール「セドリックは優秀で監督生だ! 彼を侮辱するヤツは許さんぞ!」
クシェル「そ、それってつまり―――」
ハーマイオニー「フィール、貴女セドリックのことが好きなの!?」
フィール「(友達として)ああ、好きだ」
クシェル&ハーマイオニー「「(恋愛的な意味と勘違いして)ええええええええええええええええッ!? さらっとこの人言っちゃったよ!?」
フィール「何驚いてるんだ。私がセドリックを(友達として)好きで悪いか?」
クシェル&ハーマイオニー「「あれおっかしいなあフィールってこんなキャラだったっけ!?」」

【偽ムーディ(クラウチJr.)の命令】
お巡りさん、コイツです。
服従の呪いの恐ろしさをわからせると口実つけて年頃の女の子に公衆の面前で服を脱がせようとしたド変態は。

【偽ムーディVSフィール】
まさかの奇襲&迎撃。
ルーザーは前者。
嘘やん!!ヽ(゚д゚ヽ)(ノ゚д゚)ノ!!
そしてまさかのこれが↓↓に。
片手バク転するとか、やっぱりチートレベルの身体能力を持っているオリ主。

【ブルガリア語話せるフィール】
親戚にフランス人いる関係でフランス語も話せるので実質フィールは英語、フランス語、ブルガリア語の三国の言語を喋れる。お前、万能人間か!

【三大魔法学校対抗試合のルール変更】
↑↑がトリガーで品行方正、文武両道、4年生以上が条件ならばフィール達の年齢でもOK。どうかこれを見て納得してくれたら幸いです。

【ルーク&シレン】
久しぶりのベルンカステルツインズご登場。
従妹のフィールへチークキスは最早風の流れの如く当たり前の恒例。

【選手選定】
ダームストラング代表→クラム
ボーバトン代表→ルーク
ホグワーツ代表→フィール
存在しない代表→ハリー
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