【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士 作:Survivor
12月25日、
普段は黒色のローブに緑色のネクタイと同じ制服を着た蛇寮の生徒達は、今夜はそれぞれドレスやドレスローブに身を包んでいるためか、談話室の光景はおろか、雰囲気そのものが上品さで溢れていた。
スリザリンは名家出身者が多く、そういう人達は幼少期からパーティーや食事会等で礼服を着こなしてきたため、緊張感といった空気はあまり身に纏っていない。が、強いて言うなれば、滅多に関わらない他国の人間と接することへのプレッシャーは少なからずあるのだろう。特に接点が多い人同士、身だしなみをチェックし合っていた。
「うぅ~………緊張してきた………」
しかし、全員が貴族の子息、令嬢という訳ではない。当然ながら、一般家庭育ちのスリザリン生もいる。その人達はフォーマルな服装に着慣れていないため、さっきから何度も鏡を見てはおかしな点が無いかを確認していた。
クシェルもその一人で、鏡を目の前に初めて着るドレスとそれに身を固める自分自身に視線を慌ただしく移していた。
着ているグリーンのドレスは初心者でも大丈夫な標準的デザイン。だが、制服と比較すれば背中や首筋の露出は多くてスースーし、シルクの手袋も肌に馴染んでいない。
「いつまで恥ずかしがってんのよ。もっとシャキッとしなさい」
「だって、あまり慣れないし………」
「いつもみたいに振る舞いなさいよ」
「それが出来ないから困ってるんじゃん!」
「あ、戻ったわね」
瞳の色に映えるグレーのドレスに盛装するダフネは、やれやれと肩を竦める。クシェルはダフネのドレス姿に、思わず見とれた。割りと身近に居る友達なのでこれまで意識はしてこなかったが、彼女もまたグリーングラス家という由緒ある家柄のお嬢様なのだと、改めて思い知らされた。見た目が鮮やかな黒髪に高貴な印象を与えるグレーの瞳なので、元々ノーブルな彼女の風貌を際立てるには十分だった。
「ところで、フィールはどうしたよ?」
「んー………わかんない。なんか、着替えてる所を見られたくないって言ってたし、今は着替えの最中なんじゃない?」
「だから、クシェル、私達の部屋に来たのね。着替えてる所を見られたくないなんて、フィールらしいっちゃフィールらしいけど」
別段珍しくないなと、ダフネはそう言った。
と、その時だ。
突然談話室に沈黙と静寂が流れ、数秒後、ざわざわとざわめきが起きた。
何事だろう、とクシェルは振り返る。
そこに居たのは、見慣れた友人だった。
しかし、今の風姿を例えるなら―――女王。
淡い青色のドレスを華奢な身に纏い、ウルフを連想させる髪型を施していた黒髪はルーズアップシニヨンで結い上げていた。
両腕は白いロンググローブに覆われ、肩と鎖骨を大胆に露出し、同性ですらその雰囲気に惑わされそうな、大人で妖艶な色気を優雅に漂わせる。
透明感のあるルージュを薄く塗った唇が形作る微笑みは、触れたら儚く消えてしまいそうで。だけど触れずにはいられない、一人の女性としての魅力に自然と眼も心も奪われる。
「まさにスリザリンの女王君臨ね」
「前々から思ってたんだけど、なんで女王って言ってるんだ?」
「あら? 正真正銘の女王様になっても、口調は相変わらずなのね」
ダフネは至って普通に話し掛けるが、これまで何度も豪族同士のパーティーで他人のドレスコーデに見慣れてきたはずの生徒達ですらフィールのドレススタイルに釘付けとなり、目線の標準を外せない。
そんな彼らが放心状態となるならば、初見の一般生徒達は倍の衝撃を受けた。一番フィールの側に居るクシェルも例外ではなく―――一言で言えば、不用意に入り込んではいけない聖域を前にしている気分であった。
「………とにかく、フィーはホグワーツの制服だけで充分だってわかった」
クシェルが小声で呟くと―――微かに耳にしたフィールが「ん?」と首を傾げ、俯きがちのクシェルの顔を覗き込んだ。
(ちょっ、なんでこんな時に?!)
クシェルはあたふたした。
目の前に居るのはフィールのはずなのに、今の現実離れしている容姿や色気を間近で見てしまうと、わからなくなってしまう。
「なんだ? その反応は」
フィールは天然なのかそうじゃないのか。
ふわりと柔らかく笑い―――それを見たクシェルは頭がパンクして、ボーッとしてしまった。
ダフネは「マズいわね」と慌てて、「しっかりしなさい!」とクシェルの肩をバシバシ叩いて現実世界に引き戻した。
クシェルは「………ハッ!」と我に返り、周囲を見渡す。
すると、どうだろう。
スリザリン生のほとんどが、茫然自失としているではないか。
クシェルは「え? え?」と先程の記憶がパンクの弾みで綺麗さっぱり吹っ飛んだのか、疑問顔で談話室内を見回した。
「フィール、貴女、早めにパートナー探しに行った方がいいんじゃない?」
ダフネはなんとかしてフィールを談話室の外へ出さなければヤバいと考え、彼女が代表選手なのを上手い具合に取り入れて咄嗟にそう提案した。
そして、それは英断だった。
フィールはあっさり「それもそうだな」と寮から姿を消した。トドメの一発としてスリザリン生全員がその後ろ姿にクリティカルヒットしたのは言うまでもない。
「………フィー、綺麗だったね」
「アレはもう綺麗なんて言葉を上回ったけどね」
一番平常心を保っているダフネであったが、危うくクシェルと同じ羽目になりそうだったのはここだけの話だ。
今のフィールは、気を緩めば同性ですら魅了されかねない。こうして見てみると、自分達はとんでもない人を友人に持っているなと改めて認識した。
とにかく、今夜の聖夜の舞踏会が幕を閉じるまでは最低限
♦️
大広間が開放される午後8時前。
玄関ホールは、パートナーを探し合う生徒達で混雑していた。他校や他寮の生徒がお相手の人達は互いに互いを探索し、人混みの中をさ迷っていた。
「代表選手、及びそのパートナーはこちらへ!」
三校の代表選手は他の生徒全員が着席してから入場することになっているため、それまでドアの脇で待機するよう指示を出された。
ダームストラング代表のクラムと彼のパートナーのジニーは早くも待機しており、ボーバトン代表で従兄のルークとその彼のパートナーで義姉のクリミアを発見したフィールは、優しげな笑みを讃えた。
二人がカレカノ関係になったのは、既に知っている。その時フィールとシレンは「末永くお幸せに」と二人の恋を応援した。フラー・デラクールというクリミアの恋敵がいるため、厄介事にならなければいいなと、少しばかりフィールとシレンは懸念しているのだが………。
「フィール、セドリックはどうしたの?」
ライトブルーの髪をプリンセスカールにし、純白のドレスを着込むクリミアは、フィールが一人で此処に来たのを心配した。
「そろそろ来ると思うけど―――」
「ごめん、フィール。遅れて」
寮を出て早々大勢の女の子に囲まれて出遅れたセドリックの謝罪する言葉が背後から聞こえた。
フィールは振り返り、安堵の表情を浮かべる。
セドリックは息を呑み、落ち着き無く、視線を合わせては外して………を繰り返した。
「フィール、とても綺麗だよ。………君をパートナーに誘って本当によかった」
「そう言って貰えるのは光栄だな。………今更だけどパートナーに誘ってくれてありがとう」
フィールは微笑みながらセドリックを見上げ、彼は更にその笑顔に心を奪われる。が、彼女の手前、余裕ある年上の男の図をぶち壊しにしないよう、キリッと表情を引き締めた。
それを見ていたフィールとセドリックのファンの男女は苦々しげに、そして忌々しそうに前を通り過ぎる。ルークとクリミアは邪魔者にならぬようスッと身を引き、前者は後者にこそっと尋ねた。
「なあ、クリミア。あのセドリックとか言う男、まさか―――」
「ええ、その通りよ」
従妹を見る茶髪の男の眼差しがあまりにも優しかったので、それだけでルークは察したのだろう。自分の彼女で従妹の義姉のクリミアは小さく頷いた。
「やっぱりか。フィールにも遂にカレシが登場か?」
「………………」
少し興味津々なルークに反し、クリミアは無言で談笑する二人を見つめた後、一般部門のペアの一組で二人の前を通り過ぎる際にセドリックに視線を向けている一人の女性に目線だけを動かした。
長い艶々した黒髪の可愛らしい女の子で2歳年下の、レイブンクローのクィディッチチームのシーカーを務めている女生徒だった気がする。名前は確か―――
「やあ、フィール、セドリック」
深緑色のドレスローブを羽織ったもう一人のホグワーツ代表・ハリーと彼のパートナーで薄青色のドレスを纏ったハーマイオニーがやって来た。
二人はフィールとセドリックの美形さがより一層跳ね上がっているのに一瞬眼を丸くしたが、すぐに気を取り直した。やはり、普段から関わりを持っているために、美形に対する耐久性は他人よりも高かったらしい。
「フィール、貴女、とても似合ってるわね」
「それを言うなら、ハーマイオニーもだろ」
いつもはボサボサ茶髪のハーマイオニーは、滑らかな髪を優雅なシニヨンでアップし、薄く化粧を施したその顔は、磨けば光るタイプの彼女の魅力を存分に引き立たせた。
身をくるむ薄青色のドレスはとても似合っており、普段抱えている本の山が無いためにまさしく勉学に没頭してます感が0で、代わりに優美さだけがあった。
「皆さん、準備はよろしいようですね。それでは入場しますよ」
マクゴナガルの指示で会話を切り上げ、正面玄関口に向き合った。そこにセドリックが手を差し出し、フィールは彼の力強いそれを取り、歩き出す。
代表選手達は入った瞬間に拍手を送られ、マクゴナガルの後に続いて審査員が座っている大きな丸テーブルの方へと歩いていく。
大広間の中はガラリと風変わりしていた。
会場の壁は銀色に輝く霜に覆われ、星の瞬く黒い天井には何百というヤドリギや蔦の花綱が装飾されている。各寮の長テーブルは撤去され、代わりにランタンの仄かな明かりに照らされた10人ほどが座れる小さなテーブルが100あまり近く置かれていた。
審査員テーブルに近付くと、ダンブルドアは選手達に微笑みかけ、ルード・バグマンは生徒達に負けないほどの拍手で彼らを出迎えた。クラウチは居らず、代わりにパーシー・ウィーズリーが代理で出席している。マダム・マクシームは上品に拍手し、カルカロフは驚いた顔だった。
ダンブルドアの隣に座ったフィールに続き、セドリックも腰を降ろす。
「さて………」
目の前にあるのは、金色に輝く皿と小さなメニュー。
それらは一人一人の前に置かれてはいるが、まだ何のご馳走も載せられてはいなかった。フィールはメニューを手に取り、横からセドリックは覗いて首を傾げる。
「これ、どうすればいいのかな?」
「………校長がそれを教えてくれるみたいだな」
フィールはダンブルドアに視線を向け、セドリックも見てみると、彼は自分のメニューを眺めていて、程無くして皿に向かって「ポークチョップ」と注文した直後に金色の皿の上にポークチョップが現れた。
皆はこの斬新な方法になるほどと思いながら、各自注文し始めた。
「僕達も食べようか」
「そうだな」
だが、その前に。
二人はメニュー表に記載されたドリンクのページを眺め、それぞれ飲みたいものを注文したら、
「「乾杯」」
とゴブレットを掲げ、口元に傾けた。
冷たい飲み物で喉を潤した二人は次に料理を要求し、食事の時間を堪能した。
ルークとシレンは初々しいカップルなだけに楽しげな様子で談笑し、ハリーはハーマイオニーの『
途中、クラムが母校の特徴について口を滑らせそうになったのをカルカロフが笑いながら口を挟み、秘密主義的な彼の発言に険悪そうなムードになりかけた所をダンブルドアが下品なジョークで霧散させたのだが、食事中にするような話ではなかったため、別の理由で場の空気は悪くなった。
「………フィール、今のは忘れようか」
「………ああ、そうだな」
ダンブルドアの発言から8階の必要の部屋のことを指していると察知したフィールは、セドリックの言葉に同意した。
………とまあ、ちょっとしたトラブルが挟みつつ、セドリックは本命の女の子の隣に居て話をするだけでこんなにも嬉しいことはないと、甘酸っぱくて幸福感に満ちた心だった。
「………あのさ、フィール」
「なんだ?」
「あとで話があるんだけど、いいかな?」
「? 別に構わないけど」
フィールが了承すると、セドリックは顔を綻ばせた。彼女はよくわからない表情だが、深入りはしなかった。
食事が粗方終わると、ダンブルドアが立ち上がって大広間に居る人達へ起立を促す。彼は杖を一振りして全部のテーブルを脇に寄せ、部屋の中央にスペースを作った。
この日のために呼ばれた『妖女シスターズ』が拍手で迎えられ、代表選手とそのパートナーはダンススペースに移動する。
そして、スローで物悲しい曲に合わせ、ゆっくりと踊り出した。
第二の課題を前にしての風流あるクリスマス・ダンスパーティー。
フィールはセドリックと音楽に合わせてステップを踏みながら、聖なる今宵に開催された伝統行事も悪くないと、淡い笑みを溢した。
♦️
パーティーも終盤になってきた頃。
校庭に作られた庭園へ、フィールはセドリックに連れてこられた。
セドリックは何やらソワソワしており、フィールの顔を見ては視線を足元に泳がしてと、中々話を始めない。
「セドリック、話ってなんだ?」
フィールがストレートにそう訊くと、
「その………フィール。今度のホグズミード行きの日って、用事ある?」
「今度のホグズミード行きの日? 特に無いけど?」
「そう………なら、よかった」
「ん? 何か言った?」
「あ、いや………なんでもない」
セドリックは言いにくそうな表情を崩さないでフィールの疑問を宿した瞳を見ていたが、やがて決心を固めたようにキリッと端正な顔を引き締め、静かに言った。
「あのさフィール。もし、誰かと一緒に回る予定が無かったら、僕と一緒に行かないか?」
「は………?」
眼をぱちぱちさせたフィールは思わず訊き返してしまった。
所謂『デート』のお誘いにセドリックが発した言葉の意味を飲み込むのに時間が掛かったフィールはやっとのことで理解すると、
「………なんで私を誘うんだ?」
フィールは怪訝そうな表情を浮かべながら問い返した。
質問に質問で返されたセドリックは一瞬言葉を詰まらせる。
「なんでって………僕はフィールとホグズミード村に行きたい。ただそれだけだよ」
いや、違う………それだけじゃない。
―――君をデートに誘いたかった。
本音はそうなのだが、彼女の前でそれを告げられるはずがなく………セドリックはそう言うことしか出来なかった。
フィールは少し考え込み―――程無くして、セドリックを見上げて返事した。
「………いいよ」
「え?」
「ホグズミード行きの日、一緒に行こうか。パートナーに誘ってくれた礼、まだしてなかったし」
答えは―――YES。
セドリックは舞い上がりたい気分で有頂天になりそうになったが、寸前でグッと堪えた。
「ありがとう、フィール」
「………どういたしまして」
セドリックはすっかり満面の笑顔だ。
フィールはクールフェイスを保ったまま、今度のホグズミード村で彼にどんな礼をしようかと既にそちら側に思考を移動させた。
♦️
冬季休暇が終わり、新学期に突入した。
休暇明け早々、ハグリッドが半巨人だったという事実が証明し、彼は自宅に引き込もってしまった。
そのため、彼の代用としてグラブリー・プランクという魔女が『魔法生物飼育学』の授業を進行した。彼女の授業はとてもまともで、非の打ち所がない。それはただ単にハグリッドの授業―――特に『尻尾爆発スクリュート』の死ぬほど嬉しくないプロジェクトが滅茶苦茶過ぎたから尚更そう思うのだと、誰もが同感だった。
「プランク先生のままがいい」
「右に同じ」
フィールは手触りのいい
「クシェルの守護霊はユニコーンだし、親近感沸くんじゃないか?」
「うん。親近感沸いてるよ」
優しい笑みでユニコーンのしなやかな身体を撫でるクシェルは、満足げだった。フィールもユニコーンの喉を擦り、ユニコーンは彼女へ顔を擦り付けてきた。
「それにしても………なんでリータ・スキーターはハグリッドが半巨人だって知ったのかな」
苛ついた口調でそう呟いたのは、ハリーだ。
近くにはハーマイオニーと、第一の課題終了後にハリーと仲直りしたロンも居る。
基本的にグリフィンドールとスリザリンは合同授業で一緒になるので、自然的な流れでこの五人が集まるのは最早お決まりだった。
ハリーは先程ドラコ・マルフォイが投げ渡してきた、主にハグリッドへの誹謗中傷の記事が記載された『日刊預言者新聞』をビリビリ破り、無数の紙片となったそれを踏みつけた。
「さあ、な。考えられるのは、誰にも気付かれずに城に侵入する手段をあの女は持ってるってことだな。でなければ、アイツはもう此処には居ないだろ。ダンブルドア校長直々に、ホグワーツに入場するのは禁止されたんだし」
フィールの言葉に、四人は大きく頷く。
ハーマイオニーは彼女へそっと尋ねた。
「フィール。貴女はその手段、何だと思う?」
「単純に言えば、様々な方法はゴロゴロある。例えば、『目くらましの術』や『透明マント』といった消身系の呪文や道具を使ったり、諜報員的な情報提供者を通じてとか。………でも、私としては、これなんじゃないかって思う」
「………やっぱり、フィールもそう思う?」
「ああ。割りと身近に居る『あの人』の存在が、ヒントとなったよな」
「ええ………そうよね。一斉に言ってみない?」
「そうするか。答え合わせとして」
フィールとハーマイオニーは顔を見合わせ、自分が出した憶測を同時に交わした。
「「
変身術の中でも特に危険で困難な、先行的な能力ではなく訓練によって得られる、動物に姿を変えられる技術だ。その変身能力の便利さと危険性から、悪用されぬよう魔法省への登録が義務付けられている。
そして去年、脱獄不可能と評されているアズカバンからシリウス・ブラックが脱走する手段として用いた技能でもある。彼は今年、無罪を証明して闇祓いに勤務し、特例として巨大な黒い犬の動物もどきと無事に登録された。
フィールとハーマイオニーは、昨年度の非合法動物もどきのシリウスからリータ・スキーターの悪巧みは動物もどきだからだと糸口を見付けた。
「動物もどきなら、このようなことも可能よね」
「もしも本当にあの女が非合法の動物もどきだって言うなら、合点がいく。とは言え、そうと考えれば、一体何の動物もどきなんだか………」
動物もどきだと推測したら、次はどんな姿に変身するアニメガースなのかを推定することだ。
しかしながら、それは容易ではないと、二人は歯噛みする。
「とにかく………あの女は神出鬼没だ。いつ、何処でどんなスキャンダラスな記事を書くかわかったものじゃない。警戒した方が身のためだな」
「フィールも気を付けてよ? スキーターは君の記事も書きたがってたんだから」
ハリーは杖調べの際に後悔したあの出来事を思い返し、フィールへ忠告する。リータ・スキーターはハリー・ポッターの記事だけでなく、フィール・ベルンカステルについても書きたがってたのだ。特にハリーは、スキーターのせいでこれまで散々な目に遭ってるから、その友人に自分みたいな被害が及ばないかが心配だった。
「勿論、そのつもりだ。………ところで―――」
フィールはハリーを見て、話題を変えた。
「ハリー、金の卵の謎はもう解いたか?」
第二の課題の対策法はもう万全かと、ハリーへ確認すると彼は顔を曇らせた。
「それがまだなんだ………フィールは?」
「解いたよ、つい最近」
次に待ち受けているのは、水中競技だ。
恐らくは、ホグワーツの敷地内に広がる広大な湖を潜り、水中人から『大切なモノ』を取り返すという、極めて困難な課題である。
制限時間は1時間ジャスト。
そのため、フィールは解決法を思案してから数日間、必要の部屋で時間制限がある中での猛特訓に励んだ。
ちなみに1時間ジャストという意味は、それ以上を過ぎればその分減点されるとのことだと思うので、別にノークリアになる訳ではないのだろう。が、満点を獲得したいなら、1時間以内に突破しなければならない。
タイムオーバーすればするほど、点数は引かれるのだろう。下手すれば、大幅に失ってしまいかねない。それでは、例え技術点が満点に値しても無意味に終わる。
全て、水の泡になるのだ。
水中を舞台に、そんな無様な醜態は晒せるはずがない。
なんとしてでも、第一の課題でゲットした満点50点に並べるような高得点をこの手に収めなければと、フィールは練習期間中の今から気合いは十分であった。
「ヒントは……湯の中でじっくり考える、かな」
フィールは歌の内容は明かさず、ハリーにヒントを伝えた。曖昧にしたのは、『大切なモノ』とは何かがハッキリしていない状況で教える訳にはいかないと懸念したからだ。
「湯の中でじっくり考える?」
「そう。あの金の卵も忘れずにな」
ハリーは怪訝な顔ではあったが、フィールが冗談を言う人間ではないとよく知ってるため、彼女の助言を信じてみようと、「わかった」と首を縦に振った。
大半の生徒が満足して魔法生物飼育学の授業は解散となり、ハリー達一行とスリザリン組は別れた。ハグリッドの授業とプランクの授業、どちらが最高だったのかは語るに及ばないだろう。
昼食を摂りに大広間へ向かうがてら、クシェルはフィールへ話し掛ける。
「そういえば、フィー。今度のホグズミード、一緒に見て回らない?」
「ごめん、先約ある」
「先約?」
クシェルが小首を傾げると、
「ああ、セドリックと一緒に行くから」
「へー、ディゴリー先輩と………って、えええええええええっ!?」
クシェルはビックリ仰天し、その叫び声は廊下の隅々まで響き渡った。道行く生徒は皆何事かと訝しい眼差しを送る。クシェルは注目を浴びてハッとし、軽く皆へ頭を下げると、フィールの腕を引っ張って誰も居ない部屋まで連れていった。
「え? え? ちょっ、それ、マジ?」
「あ、ああ………そうだけど―――」
「どっちから誘ったの!? フィーから!? ディゴリー先輩から!?」
「………セドリックから―――」
「ディゴリー先輩からぁ!?」
クシェルは顔をグッと近付け、翠眼を剥く。
フィールは壁に追い込まれてるので、身動きが出来ない状態だった。
「どういう状況で『デート』に誘われたの!?」
「ダンスパーティーのダンスが終わった後、終わりが近くなってから『今度のホグズミード行きの日、誰かと一緒に回る予定が無かったら一緒に行かないか?』って。パートナーに誘ってくれた礼もまだしてなかったし、礼の品も買いに行くのも兼ねて一緒に行くことにした」
(うわぁ………本当にこれ、マジのヤツじゃん)
クシェルはセドリックの真意を感じ取りつつ、既に約束された事を今更部外者の自分が予定変更させる訳にもいかないので、今回ばかりはフィールと一緒にホグズミードに行く事を諦めてまた別の機会に行く事にした。
「………そっか。なら、ディゴリー先輩と次のホグズミード行きの日は楽しんでね」
急に穏やかな口調になったクシェルにフィールは面食らったが、
「ああ………ありがと」
微笑と共に礼を言った。
クシェルは何とも言えぬ不思議な気持ちを胸に抱いて、明るい翠眼を細めた。
【フォーマルスタイルinスリザリン談話室】
『スリザリンの女王様with人間許されざる呪文』のフィールさんのドレススタイルにスリザリン生オールノックアウト。
【代表選手のペア】
フィール&セドリック→片想い(セドリックが)
ハリー&ハーマイオニー→ハリハー誕生?
ルーク&クリミア→両想い
クラム&ジニー→傷心者同士
面白いなこの見事な4パティーン。
【セドリック、フィールをデートに誘う】
そしてアンサーはOK。
【リータ・スキーターの正体】
3章のシリウスが非合法動物もどきだったからそこから手掛かり掴むハーフィル。
なんかここのハーマイオニー頭のキレが一段と高いような気がするのは気のせいだと思おう。
【第二の課題内容】
いつの間にか解いていたフィール。
そしてハリーにも教えてあげる→これでドラゴンの貸しは返した。
原作でのセドリックもそうだったけど、何気にフィールとセドリックって似た者同士?
【ビトウィーン・ザ・シーツ:あなたと夜を過ごしたい】
①ブランデー(20ml)
②ホワイト・ラム(20ml)
③コアントロー(20ml)
④レモン・ジュース(1tsp)
作り方:①~④を氷と共にシェイクし、グラスに注げば完成。
タイプ:ショート
ベース:ブランデーorラム
アルコール度数:32度
テイスト:中甘辛口
色:淡黄色、茶色(琥珀色)
直訳:ベッドに入って
【モーニング・グローリー・フィズ:あなたと明日を迎えたい】
①スコッチウイスキー(45ml)
②ペルノ(2dash)
③レモンジュース(15~20ml)
④シュガー(1tsp)
⑤卵白(1個分)
⑥ソーダ水(適量)
作り方:ソーダ水以外の①~⑤と氷を入れ、十分シェイクする。氷の入ったタンブラーに注ぎ、よく冷やしたソーダ水で満たし軽くステアして完成。
ベース:ウイスキー
アルコール度数:10度~13度
テイスト:甘口
色:琥珀色
意味:モーニング・グローリーとは『朝顔』のことで、元々は2日通いの迎え酒として作られたカクテルであったと言われてます。