【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

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#60.第二の課題

 ホグズミード週末の土曜日。

 村は辺り一面白い雪に覆われ、雪化粧した美しい白銀の世界を作り出す。

 ありとあらゆる店が建ち並ぶホグズミード村の道を、二人の美男美女が並んで歩いていた。

 

「最初は何処行く?」

「寒いし、『三本の箒』に行かないか?」

「そうするか」

 

 ハッフルパフ寮生の指定マフラーを首に巻いた茶髪の青年は、スリザリン寮生の指定マフラーを首に巻く少女へ提案する。彼女は特に異を唱えることなく、あっさりOKした。セドリックはホッとし、フィールと共にパブ『三本の箒』に続く道中を進む。

 二人は三本の箒に辿り着き、扉を開けた。

 店内は既に多くの人々で賑わっており、込み合っている。セドリックとフィールは何処の席に座ろうかとキョロキョロ見回していると、ロンとハーマイオニーが二人で居たのを発見した。

 

「ロン? ハーマイオニー?」

「あ、フィール―――」

「ディゴリー先輩と来たの?」

 

 ロンとハーマイオニーは、フィールの隣に居るのがクシェルではなくセドリックなのを見て、両眼を剥いている。セドリックからすれば深入りされたくないので、彼は二人へ咄嗟に笑いかけた。

 女の子がメロメロになるような爽やかスマイルではなく、営業スマイルならぬ建前スマイルで。

 

「やあ。君達も此処に来てたんだね。ポッターはどうしたんだい?」

 

 セドリックが逆に質問すると、ロンとハーマイオニーは不審人物を見るような眼差しで、バーテンのマダム・ロスメルタから一番遠いカウンターの隅に視線を向けた。二人がそちらを見てみれば、ハリーと何やら熱心に話し込んでいるルード・バグマンの姿を捉えた。

 セドリックとフィールは顔を見合わせ、それからロンとハーマイオニーを見る。二人は二人の疑心の瞳から疑問を感じ取ったのだろう。簡単に説明してくれた。

 どうやら、バグマンが大勢の小鬼(ゴブリン)に囲まれて、あちら側とは違う薄暗い隅の方に座り、バグマンは小鬼に向かって低音の声で早口に捲し立てていたらしい。小鬼は全員腕組みして、恐ろしげな雰囲気だったみたいだ。

 二人はそれを聞き、ロクでもない話だなと詳しいことは知らないが、大方察した。数分後、バグマンが急いでパブを出ていき、小鬼達は全員椅子から下りて、彼の後を追った。疲れた顔でハリーが戻ってきて、セドリックとフィールは軽く会釈したら、アイコンタクトして違う店に訪問しようとドアへ行こうとしたが、

 

「お、わ」

 

 ロンが入り口を見つめて声を上げた。

 入ってきたのは、リータ・スキーターといつも従えている腹の出たカメラマンであった。前者はバナナ色のローブを着ていて、長い爪をショッキング・ピンクに染めていた。飲み物を買って、カメラマンと二人で他の客を掻き分け、近くのテーブルにやって来た。近付いてくるスキーターに、ハリー達一行とフィールはギラギラと睨み付けた。

 スキーターは、何かとても満足げに早口で喋っていた。聞こえてきたのは、ルード・バグマンのデタラメな中傷記事の見出しに合う話を見つけようとのことであった。

 これには正義感の強いハリーが黙ってなどいられず、

 

「また誰かを破滅させるつもりか!」

 

 と、大声で叫んだ。

 何人かが彼の方を振り返った。スキーターは声の主を認めるが否や、宝石縁のメガネの奥で眼を見開いた。

 

「ハリー! 素敵ざんすわ! こっちに来て一緒に―――」

「お前なんか、一切関わりたくない。3mの箒を中に挟んだってイヤだ」

 

 ハリーはカンカンに怒り、感情の赴くままに怒りの言葉を吐き捨てた。相手が親友であり恩人のハグリッドの中傷記事を書いた新聞記者張本人のためか、その激昂は荒れ狂う獣のようで、彼の憤慨に酒場内がシンと静まり返った。

 スキーターの視線は怒れる黒髪の少年に向いていたのだが、目敏く、黒髪の少女と茶髪の青年の存在に気付き―――キランと瞳が輝いた。

 

「貴女、フィール・ベルンカステルざますね? どうざんす? 此方に来て―――」

 

 最年少選手の一人で以前取材し損ねたフィールがこの場に居るチャンスを逃しはしないと、スキーターは彼女に近付こうとしたが、そこでハーマイオニーが前へ進み、

 

「貴女って、記事のためなら何にも気にしない、最低の女よ」

「お黙りよ。バカの小娘のクセして。わかりもしないのに、わかったような口を利くんじゃない」

 

 スキーターが冷たく言い、意識がフィールからハーマイオニーへ移った隙に、彼女は肩越しから小声で、

 

「フィール、貴女は早く此処から出なさい。此処にずっと居たら、あの女に何書かれるかわかったものじゃないわ」

 

 ハリー同様ハーマイオニーもスキーターによる名誉毀損の被害に遭っている。

 フィールは即頷き、セドリックは見るからに悪人そうな辣腕記者に険しい面持ちとなる。フィールは踵を返して出口に向かい、なるべく音を立てないよう静かにドアを開けて店を出た。

 

 数分後、セドリックも三本の箒から出てきた。

 同時に外に出て面倒事を起こさないためにタイミングをずらしたのだろう。しかし、あの女のことだ。このまま見逃すとは思えない。

 フィールとセドリックはパブの前にいつまでも居るのは得策ではないと、早足に誰も居ない場所目掛けて足を進めた。

 

「……最悪なヤツ居たな」

「うん、そうだね………」

 

 フィールとセドリックは顔をしかめ、パブとはかなりの距離を取ってから、二人は後ろに振り返る。せっかくのホグズミード週末なのに、楽しい気分をレダクトされてしまった。

 

「………城に帰ろっか?」

 

 セドリックはぎこちない笑顔を浮かべて城が在る方角に眼を向けたが、

 

「その前に、ハニーデュークス寄らないか?」

 

 ハニーデュークスとは、ホグズミードに在るホグワーツ生に大人気のお菓子屋だ。

 店内はヌガーの甘い香りが漂い、棚には噛んだらジュッと甘い汁の出そうなお菓子が所狭しと並べてある。

 売っているお菓子は、食べると元気が出る最高級板チョコの他、激辛ペッパー、イチゴムースやクリームがいっぱい詰まっている大粒のふっくらチョコレート、砂糖羽ペン、黒胡椒キャンディー、浮上炭酸キャンディー(フィフィ・フィズビー)、ドルーブル風船ガム、歯みがき糸楊枝ミント、ブルブル・マウス、ヒキガエル型ペパーミント、綿飴羽ペン、爆発ボンボン、ナメクジゼリー、ねっとりとしたヌガー、ピンク色に輝くココナッツ・キャンディー、蜂蜜色のぷっくりとしたトッフィー、すっぱいペロペロ酸飴、血の味がするペロペロ・キャンディー、ゴキブリ・ゴソゴソ豆板、砂糖浸けパイナップルなど、沢山売られている。

 そして、この店の地下室とホグワーツ4階が秘密の通路で繋がっているらしい。これは1年前にハリーがホグワーツから抜け出した際に利用したみたいなので、本当なんだろう。

 

「せっかくのホグズミード週末なんだ。楽しまなきゃ損だろ?」

「ハニーデュークスか………じゃ、行こうか」

 

 セドリックはフィールの提案に賛成し、穏やかな笑顔を浮かべた。

 フィールはこれが彼にパートナーに誘ってくれた礼と気分転換になればと思いながら、セドリックと共にハニーデュークスへと向かった。

 

♦️

 

 第二の課題当日まで2週間を切った日。

 図書室の一角で、一人の怒れる少女と縮こまる少年が居た。

 

「卵の謎は解いたのに、なんでその対処法を決めてないって今まで黙ってたのよ!」

 

 荒れる獅子同然に憤るハーマイオニーと、その前で弱々しく顔を伏せるハリー、そしてそれを黙って見守るロンとクシェルが居た。

 何故ハーマイオニーがここまで怒ってるのかというと、先程述べた通り、ハリーは第二の課題の突破方法を今までほったらかしにしていたのを秘密にし、いよいよ切羽詰まったから助けを求めてきた―――からだ。

 フィールの助言から金の卵の謎は解いたものの肝心なのはそれからだった。

 

 次の試練は、水中である。

 湖に潜り、1時間以内に『大切なモノ』を取り返すのがセカンドプロブレムの内容だ。

 呪文の技量や選手の度胸を試される地上での試合ではない上に、約1時間前後潜水するのは絶対条件………これはもう、ハリー一人でどうにか出来る問題ではなかった。

 

「理想的な手段は『変身術』で貴方が水中移動出来る生き物になるのがベストだけど、それは6年生からだし………誰にも扱えないわ」

 

 変身術を競技で用いる。

 確かに良案だが、それが可能であるならば苦労はしない。変身術は科目の中で一番困難で危険であるのだから、4年生のハリーでは完璧に扱えない。いや、現時点の変身術で人を使用する所までは進んでいないから、完璧にやれるやれないとかの技術点は当てはまらない。

 とにかく、一大事であるのには変わらない。

 ハリーには手札が明らかに少ないというのが現実であった。

 

「参考までに訊くけど………クシェル、フィールはどんなやり方で挑もうとしてるか知ってる?」

「フィー? ………さあ、わからない。練習中の時は基本的に一緒に居ないから」

「そう………まあ、フィールのやり方を訊いたところでそれをハリーがやれる訳ではないから、無意味ね」

「何気に悪口言ってない?」

 

 ハーマイオニーの辛辣な発言に実力不足だと遠回しに言われたハリーが苦々しげに突っ込むが、彼女は華麗にスルーし、顎に手を当てて考える。

 

「私達で使えるような呪文では到底不可能だし、だからといって他の方法もないわ………どうしましょう………」

 

 このまま時間だけが刻一刻と過ぎていくのか。

 打開策のない現状に、誰もが絶望し、諦めかけた、その時―――

 

「何か困ってるのか?」

 

 此処には居ないはずの少女の声に四人はビクッとし、勢いよく振り返った。

 そこに立っていたのは、フィールだった。

 ついさっきまで2週間後の課題へ向けて猛特訓していたのか、若干髪の毛がまだ濡れていた。

 

「フィール! それが―――」

 

 ハリーはすぐに悩みを打ち明け、フィールは深くため息ついて肩を竦めた。

 

「全く………ホグズミードに居たのを見て薄々そう感じてたけど、やっぱりそうだったか………」

 

 フィールは肩に掛けていたショルダーバッグに手を突っ込み、ある物を探し始め、彼女は右手に握り締めた物を彼の前に差し出し、彼はそれを両掌で受け取った。

 

「こ、これは………?」

「『鰓昆布』って言う貴重な魔法植物。聞いたことないか?」

「………あっ! そういえば、ネビルが本持ってた!」

 

 前に友人のネビルがムーディに『地中海の魔法水生植物』という本を貰い、それを少しだけ見た覚えがあった。まさか、あの本に記載されている植物の一つがこんなところで役に立つとはとハリーは呆気に取られた。

 

「これさえあれば! でも、なんでそんな貴重な物を………?」

「なんでって………それがフェアだろ? これで選手全員が対等の立場で挑めるようになったんだから」

 

 フィールはハリーの肩をポンポンと叩きながらそう言った。ハリーはフィールのスリザリン生らしくないほどのフェアプレー精神に唖然としたが次第に顔を綻ばせ、彼女に何度も頭を下げて礼を言った。

 

♦️

 

 2月24日、第二の課題当日。

 代表選手や審査員、観客は校庭の敷地内に広がる湖に建造された舞台に集まっていた。

 選手四人はそれぞれの学校の校章や寮のエンブレムが入ったパーカーを着用している水着の上から羽織っており、各々の思いでそこに立っていた。

 クラムは静かに揺れる水面を見つめ、ハリーは寒さと緊張でガタガタ震え、ルークは冬の空を遠い眼差しで仰ぎ見、フィールは深呼吸して平常心を保っていた。

 選手四人が各ポジションにスタンバったのを確認したバグマンは試合を始めようと、自分の喉元に杖を当てて『拡声呪文(ソノーラス)』を唱えた。

 

『さあ紳士淑女の皆さん。お待たせいたしました。ただ今、全選手の準備が出来ました。第二の課題は、私のホイッスルの合図で始まります。選手達は1時間以内に奪われたモノを取り返さなければなりません。では………1………2………3!』

 

 ホイッスルが冷たく静かな空気に鋭くも高らかに鳴り響き―――選手は全員、一斉に湖へダイビングした。

 冷たすぎる湖に潜った瞬間、肌を突き刺すような寒冷に襲われるが、慌てず騒がず、フィールは右手に構えていた杖を素早く振るった。

 『泡頭呪文』『耐寒呪文』『水圧軽減呪文』『視界良好呪文』『変身術ver人魚』の計5つの魔法を使用したフィールは途端に息苦しさや冷たさが無くなった。あとは効果が切れる前に無事に生還すればオールクリアだ。

 フィールは周囲を注意深く観察し、杖が北を指す『四方位呪文(ポイント・ミー)』で方角をリサーチして、目的地を目指して一気に泳ぎ抜いた。

 

 スタートを切ってから約30分が経過し―――祭り用と思わしき目標地点に、フィールと嘆きのマートルの道案内を受けたハリーの二人がいち早く辿り着いた。周りに水中人(マーピープル)が浮かんでいて、広場の中心には4つの杭があり、そこに四人の人質を縛り付けていた。

 フィールは一目で、誰が誰の『大切なモノ』なのかを察した。

 ちなみにその人質がそれぞれ誰かというと、

 

 フィール→セドリック

 ハリー→ハーマイオニー

 クラム→ジニー

 ルーク→クリミア

 

 こういうことだ。

 全員、クリスマス・ダンスパーティーでパートナーとなった人物だ。第二の課題前に開催されたあの伝統行事はこのためでもあったのかと考えながら、フィールはセドリックの元まで泳いで縄を切る。

 そうして、人質のハーマイオニーを回収したハリーへ帰還を促したのだが、彼は首を横に振って広場に留まった。

 

「何してるんだ? 早く行くぞ」

「ダメだ! 後の二人が此処に来るまで置いてはいけない!」

 

 フィールは少しイラついた口調で促すが、ハリーは頑なに拒否した。

 フィールは、ハリーが何を考えているかを悟り、どんなに言っても今の彼は言うことを聞かないだろうと舌打ちする。

 時間が惜しい。

 なので、フィールは本来ならば逆パターンじゃないかと思いつつ、囚われの王子様を救出しようと、さっさと水面へと浮かび上がった。

 

♦️

 

 セカンドプロブレムは無事に終了した。

 制限時間内に戻って来なければ、そこからどんどん減点されていくルールの第2試練。

 1位通過はフィール、2位通過はクラム。

 そして3位通過は、ルークとハリーだ。

 道に迷って遅れてしまったルークはともかく、ハリーはフィールと同時刻に到着した。

 本当であれば、フィールと同じく満点を獲得出来てたはずなのだが―――そこで彼の人助け癖という名の悪癖が出てしまった。

 普通に考えればダンブルドアが選手じゃない一般生徒を殺す訳がないのに、歌の内容であった『時間を過ぎれば二度と戻らぬ』という言葉を間に受けて他の人質も救出及び援助しようと、広場に留まった。

 自分の人質だけ助ければそれでいいのかとさっさと帰還したフィールとクラムへ怒りを渦巻かせたハリーは、ルークが来るまで待機し―――1時間をオーバーして鰓昆布の効果が切れたところで、タイミングよく水魔(グリンデロー)に襲撃されて道を迷ったルークがやっとのことで辿り着いた。遅れて着いたルークは状況を瞬時に理解すると急いで人質のクリミアを回収し、『浮上呪文(アセンディオ)』を使ってハリーとハーマイオニーも含めて派手に生還を果たした。

 

 そして審査員五人の評価は―――。

 フィールはファーストゴールと技量点、時間内クリアというオールパーフェクトで、またもや文句無しの満点50点。

 クラムは試合で用いた変身術は中途半端だったけど効果的なことには変わりなしのセカンドゴールで46点。

 ハリーは他の人質も助けようとした道徳心からカルカロフを除く四人からの高得点を与えられて45点、ルークも最下位で到着したが技術面は完璧だったことから45点を獲得。

 選手四人の第一の課題と第二の課題の点数を合わせた総合得点はこんな感じだ。

 

 第1位→フィール、100点

 第2位→ルーク&ハリー、87点

 第3位→クラム、86点

 

 これで残すは第三の課題及びラストプロブレムのみだ。

 第二の課題も無事にパスした選手四人へ生徒達はよくやったと誉める。ハリーは助けてくれたルークに感謝の言葉を伝え、彼は「気にしなくていい」と笑い、やっぱり従兄妹だと彼の従妹の同級生と彼を重ね、しみじみと思った。

 最後にバグマンから最終課題についての説明が施され、その場は解散となった。




【セドリックとフィールのデート】
スキーターのせいでぶち壊し。
そしてなんだか不吉な予感。
お前………いつか殺されるぞ。

【鰓昆布】
第一の課題同様フィールさん、困ってるハリーへ手を差し伸べる。なんかもう、スリザリン生かどうかを疑心してもおかしくない。ま、私のスタイルは『ハリー達の味方ポジション』だから仕方ないですけどね。

【第二の課題】
フィールの手段は計5つ。

原作でも出てきた『泡頭呪文』。
冬の冷水に耐久するための『耐寒呪文』。
水の抵抗を抑えるための『水圧軽減呪文』。
視界クリアのための『視界良好呪文』。
水中を素早く移動する『変身術ver人魚』。

中途半端な変身術だったクラムとは違って完璧な変身術のフィール。水中移動する魔法生物と聞けば人魚だなとのことで彼女の変身術は人魚にした。

といっても第二の課題はあっさり終了。
出てきたのは最初だけという。

【順位&得点配分②】
1位→フィール、50点(満点)
2位→クラム、46点
3位→ルーク、45点
3位→ハリー、45点

これで最終結果が決定。

第1位→フィール、100点
第2位→ルーク&ハリー、87点
第3位→クラム、86点

原作同様クラムは2位にさせたけど点数は6点プラスにさせて最終結果第2位のルークとハリーと圧倒的差が出ないようようにしたんですが、でも最終結果は第3位だからなんとも言えない……。
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