【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士 作:Survivor
第二の課題が終了してから数日が経過した。
第三の課題が発表される5月24日までは特に何もする必要は無いため、久方ぶりに休息を与えられた気分である。ここずっと試合へのプレッシャーがのし掛かりっぱなしだったので、選手四人は各自レストを満喫―――は、残念なことに出来ない人もいた。
第2試験終了から約1週間ほどが経った日。
授業の魔法薬学が行われる教室の階段を下りていくと、教室のドア前でスリザリン生のみならずグリフィンドール生がざわざわして落ち着きが無かった。
その視線の行き先は―――スリザリン生はハーマイオニー、グリフィンドール生はフィールである。
ハーマイオニーとフィールが揃って怪訝な顔をしていると、後者の同僚同輩、パンジー・パーキンソンが意地悪そうな笑顔で、新聞を二人の前に見せつけた。
そこに書かれていたのは、やはりリータ・スキーターによる記事で、中身は二人の恋愛事情を集った内容であった。
ハーマイオニーは以前と然程変わらずの魔法界の英雄ハリー・ポッターと付き合ってるガールフレンドという認識で、そこに新たな要素を加えてきた。フィールとセドリックを交えて。
ホグワーツ1の美女と名高いフィールはホグワーツ1のイケメンと呼ばれてるセドリックとは実は秘密の愛で結ばれており(要は二人は付き合ってると言ってる)、第二の課題前にはこっそりお忍びデートをしていた。
しかし、それを邪魔しようとする者がいる。
『生き残った男の子』ことハリー・ポッターだけでは不満を感じるハーマイオニーがフィールのボーイフレンド・セドリックを奪おうとしており、そしてフィールはその仕返しとしてハーマイオニーのボーイフレンド・ハリーを奪おうと計画立てている………とのことだ。
「グレンジャーはわかるとして………ベルンカステルがまさかそんなヤツだったとはねえ………」
パンジーは邪悪な笑顔を浮かべていた。
彼女は純血思想に傾倒している典型的なスリザリン生で、マグル生まれのハーマイオニーを激しく毛嫌いしている。そして、スリザリン生なのにマグル生まれの生徒と仲良くするフィールへ嫌悪感を持っていた。
そのため、彼女を奈落の底に叩き落とされるチャンスだと言わんばかりに、フィールへ次々と悪口を言ったり、嘲笑したりした。セドリックファンのグリフィンドール生も例外ではなく、パンジーと負けず劣らずにヒソヒソ話をしてフィールの陰口を叩く。
クシェルは俯くフィールの手を取り、さっさと教室へ入ろうとしたが、その前にグリフィンドールの女生徒が立ち塞がり、進行を妨げた。
「ベルンカステル、セドリックと付き合ってるって本当なの?」
「セドリックがアンタをパートナーに誘ったって時から薄々感じてたけど………まさか本当だったなんて………」
彼女らは困惑と好奇心、嫉妬を瞳に宿してあれこれ言い、イライラのボルテージが最高潮まで達したクシェルが追い払おうとした、その時。
「おい、君達、退けろよ」
彼女らに棘のある口調でキッパリ言った人物に場はどよめいた。
意外や意外、ロンであったのだ。
これにはグリフィンドール生だけでなく、スリザリン生も衝撃を隠せない。
スリザリン嫌いの彼がスリザリン生を庇うように同級生へ「退け」と言ったのだから、尚更インパクトが強かった。
「な、なによ………アンタ、私達と同じグリフィンドール生でしょ? なんでスリザリン生のベルンカステルを庇うのよ!」
「ああ、僕はスリザリン生が嫌いだ。大嫌いだ。だけど―――」
ロンは驚いてるフィールとクシェルの顔を一瞥後、スッと大きく息を吸い、静かに言った。
「フィールとクシェルは別だ。その二人はハリーとハーマイオニーと同じ、僕の親友だ」
奇妙な静寂と謎の沈黙が流れた。
此処に居る全員が、ロンの言った言葉の意味を理解するのに時間が掛かってるのだ。あのマルフォイですら、開いた口が塞がらないという状態でロンを見ている。
ハリーとハーマイオニーも瞠目していたが、次第に彼の勇姿に感化されたのか、戸惑いの表情でその場に突っ立っている皆へ、
「そうだ。フィールとクシェルは僕達の親友だ。その親友を傷付けるヤツは許さないぞ」
「そのイカれた頭のネジ、早く治したらどう?」
クシェルに手を取られているフィールの肩を押しながらそう言い、ロンが睨みを効かせてそれ以上の邪魔を制圧しながら、五人は教室の中に入った。
「三人共………ありがと」
フィールは窮地から助けてくれたグリフィンドールの友人三人に心からの感謝を述べると、
「フィール、何言ってるんだ」
「私達は、友達でしょ?」
「友達を助けるのは当たり前だろ」
三人はフィールの背中を優しくさすり、満面の笑顔を彼女に向けた。フィールは思わず涙ぐみそうになったが、慌てて圧し込み、淡い笑みを浮かべて手を握るクシェルの手を握り返した。
♦️
「ちょっといいかしら?」
その日の放課後。
一人で行く当てもなくブラブラと歩いていたフィールの前に三人の女子学生が立ちはだかり、足止めを食らった。ネクタイの色からレイブンクロー生だと見てわかり、センターの赤みが掛かったブロンドを巻き毛にする女子学生はなにやら憤ってる様子だが、フィールからすれば「コイツ誰だよ?」とまず顔すら知らなかった。
「………アンタ、誰だ?」
「マリエッタ・エッジコムよ。……って、そんなことはどうでもいいとして―――」
「いや、どうでもよくないんだけど」と心の中でフィールが突っ込んでる間にも、そのマリエッタとか言う女子は、
「アンタ、自分がしたことわかってんの?」
と、フィールに問い掛けてきた。
当然、いきなりそう言われても何のことだかさっぱりなフィールが「は?」としか思えないのも無理はない。
「去年、ピンチヒッターでシーカーとして参戦したんなら、レイブンクローのシーカーのチョウ・チャンを知ってるわよね?」
ポカーン、とするフィールに構わず続けたマリエッタの発言から、どうやら彼女はレイブンクローのクィディッチチームでシーカーを務める学校の人気者で、西洋国では珍しい東洋人―――チョウ・チャンの友人みたいだ。
フィールは「そういやそんなヤツいたっけな」と思い返しつつ、一々思い出すのもダルいなと他人事のように聞き流した。
「で、そのチョウ・チャンとかいう人が何?」
「ふざけないでちょうだい。アンタ、チョウの恋心を弄んだクセに………」
「弄んだ?」
「チョウは勇気を出してセドリックにダンスのパートナーを申し込んだのよ。だけど、アンタがそれを奪った。なのに、全く気付かないでヘラヘラして―――ちょっと見た目がいいからって、調子に乗ってるんじゃないわよ」
―――はあ、めんどくさいな、女って。
態度には出さないが、フィールは物凄くダルい気分になり、内心舌打ちした。
マリエッタからすると、友人の勇気を無慈悲に踏みにじったイヤなヤツ―――という認識でフィールを捉えているらしい。
フィールは不快な思いを抱きつつ、さっさと目の前から消えて欲しいなと、
「恋心を弄んだとか、そんなこと言われたって、私が困るんだけど。私はセドリックにダンスパーティーに誘われたからそれを了承しただけで、アンタの友達の恋心とかやらなんて、これっぽっちも知らないんだけど?」
いい加減解放されたいがために、少し嫌味な言い方になってしまった。マリエッタは喧嘩を売ってると捉えたのか………憤怒の表情で一発パンチしてきた。
「………ッ」
突然頬を殴られ、口元の端が切れて、そこから血が滲んだ。マリエッタは口元を押さえるフィールの胸ぐらを荒々しく掴み、大声で叫ぶ。
「なんでアンタみたいな女がセドリックと付き合ってるっていうのよ? 去年、何度も何度もぶっ倒れて嘲笑の的にされた、こんな女と!」
あのでっち上げの新聞を見たのだろう。
それで、フィールへ対する怒りのボルテージが最高潮に達したのかもしれない。
マリエッタは他寮の後輩に暴力を振るっただけでも大問題なのに、またまた殴った。今度は頬ではなく、腹部に強烈な衝撃が走った。
「うっ………ゲホッ、かはっ………」
フィールは堪らず腹部を押さえ、咳き込む。
マリエッタは胸ぐらを掴んでた手を離し、身体を丸くして苦痛に端正な顔を歪めるフィールを冷ややかに見下ろし、他二人もニヤニヤと彼女を蔑みの眼差しで見下す。
「どう? ちょっとはわかった?」
「イヤ………さっぱりなんだけど。いきなりふざけたこと抜かしてきたと思えば、いきなり殴ってきて」
決して怯まず、体勢を立て直して、フィールは睨み付けて言う。
マリエッタは醜悪に顔を歪め、フィールにアッパーをかませようとした………が。
「マリエッタ、貴女、その娘になんてことをしたのよ!?」
焦ったような声が響き渡り、声がした方向から艶やかな黒髪を持つ可愛らしい女子生徒が割り込んできた。その人はまさしく、今話題となっていた人物の一人―――チョウ・チャンであった。
「チョウ、私は貴女が傷付いているのを―――」
「マリエッタ、止めて。その娘は悪くないわ」
チョウはマリエッタを窘めつつ、腹部に手を当ててるフィールを見て、
「ごめんなさい、フィール。私の友人が貴女を殴ってしまって。でも、これだけは言わせて。私はね、セドリックのことが好きなのよ。貴女が入学してくる前からずっと。………だから私、ダンスパーティーで一緒に踊れたらいいなって思って、私の方から誘ってみた。だけど彼はキッパリ断ったわ。私、思わず『どうして?』って訊いたの。そしたら―――」
チョウは一瞬言葉を詰まらせ、俯いた。
だけどすぐに顔をしっかり上げ、フィールの目線を外すことなく、告げた。
「『好きな女の子がいて、その娘を誘いたいから』って。……すぐに誰なのかわかったわ。セドリックは貴女と―――フィールと一緒に踊りたいんだって。だって、セドリックが貴女を見る時の眼、他の女の子には決して見せないような、優しい眼差しだから。……わかってはいたけど、少しショックだったわ。でも、それと同時にお似合いだなって。私がセドリックの心の隙間に入れるなんて……一ミリもないんだなって……ッ………」
最後ら辺の所は嗚咽を堪えるように、眼に涙を光らせ、絞り出すような声で伝えてきた。
マリエッタと両サイドに居た女子は泣き出した彼女の背中をさすりながら、まるで戦犯を見るような眼差しでフィールにガンを飛ばした。
フィールは肩を竦め、怒りを通り越して、呆れてしまった。
喧嘩勃発になりかけたのを阻止してくれたと思えば、真逆の結果を招いてくれたチョウへ余計なお世話だと、自分でも酷いものだと思うが、被害者はこっちの方だと、一言で言えば、レイブンクロー生に対する印象が悪くなった。
無論、そんなことを彼女らの前で口にしたら、火に油を注ぐどころかガソリンを撒くなと、結構失礼な本音を内心で渦巻かせつつ、この人達をどう蹴散らそうかなと物騒な思考を巡らせてたら、
「ボケッとしてないで、早くチョウに謝りなさいよ!」
本日3度目のパンチをモロに食らった。
マリエッタの拳はフィールのみぞおちにクリティカルヒットし、彼女は鈍痛と圧迫感に一瞬息が詰まり、呼吸が止まり掛けた。衝撃に気圧され、フィールは尻餅をつき、痛みに呻く。
「マリエッタ! もう止めて!」
「チョウ、貴女は黙ってなさい!」
チョウはハッとして我を忘れたマリエッタに呼び掛けたが、彼女に従えていた二人に押さえ込まれてしまう。フィールは「シャラップ!」と元はと言えばこんな事態を引き起こした張本人であるチョウに怒りの叫びを心で訴えた。
(ったく………なんて日だよ………)
今日は厄日だわ、と制服越しにみぞおちを押さえながら運の無さに歯噛みしている隙にも、マリエッタは更に痛め付けようと冷ややかに見下ろしていた。革靴を履いている右足がフリーハンドの左手のすぐ近くにあり、杖を抜き出せないよう抑圧してる。
………そうでなくても、彼女は意地悪な女だ。
フィールの左手を踏みつけ、痛みを与えた。
「痛ッ………」
彼女は左手の痛覚に呻き声を上げる。
マリエッタは快楽とばかりに、彼女の白くて艶かしい左手に更なる深手を負わせた。
3回も強く殴られ、次は手を踏みつけられ。
フィールはなんでこんなに目に………と、理不尽な扱いに精神的にも肉体的にも苛まれた。
冷たく見てくるマリエッタからは、躊躇というものを感じない。苛めることへ、快感を覚えてるようにフィールは思った。
味方が誰もいない、この現状。
絶望に飲み込まれそうになった、その時。
「君達、フィールに何してるんだ!?」
明らかに激怒してるのがわかる男の声が、嫌な雰囲気が漂うこの空気を鋭く切り裂いた。
全員がそちらを見てみれば、黒に近い茶髪にグレーの瞳のハンサムな男子生徒が怒りに震えた様子で床に倒れているフィールの元まで駆け寄って来た。
マリエッタはサッと顔を青ざめ、慌てて飛び退く。
介入してきたのはセドリック・ディゴリーだった。
セドリックはフィールのすぐ側に膝をつき、彼女を抱き抱える。
「フィール、大丈夫かい?」
「………大丈夫…………」
フィールは小声で返答し、セドリックは意識がちゃんとあるのを確認して、ホッと安堵の息を吐く。
が、それも束の間。
鋭い目付きで、レイブンクローの女子生徒達を見上げた。
「君達………フィールになんてことをしたんだ」
「べ、別に………私達じゃ………」
「それだったらなんで、フィールはこんな怪我をしてるんだい? 唇の端は切れてて、左手は赤く腫れてて………どう考えたって、君がやったっていう証拠じゃないか。ついさっきまで、フィールの左手に足を乗せてたんだし」
普段は絶対に見ることのない、心優しく寡黙なイメージのセドリックの怒気に、マリエッタとチョウを押さえ付ける二人は顔面蒼白して突っ立っていたら、
「こ、これはどういうことですか………?」
セドリックが来た方向から、副校長のマクゴナガルが慌てた感じで近付いてきた。
彼女は目の前の光景に、緑眼を剥く。
同僚をホールドする二人に、青い顔で視線を泳がせる女生徒、そして何故か怪我をしている少女にその彼女を抱き抱える青年。
此処に来たばかりのマクゴナガルが、事態を上手く理解出来ないのも無理はない。困惑の色を厳格な顔に帯びながら、謎の深手を負ってるフィールへ尋ねた。
「ミス・ベルンカステル、一体何があったのですか?」
「………………」
しかしその問いには答えず、顔を伏せる。
今ここで教師に助けを求めるのは簡単だ。彼女はスリザリン寮監のスネイプみたいに、自分の寮の生徒であろうと依怙贔屓は無しで規則を破った生徒には平等で減点し、場合によっては罰を与える。
同じ学舎で学ぶ生徒………それも年下に過激な暴力を振るったとなれば、マリエッタは減点だけでは済まされないだろうし、最悪の場合、退校処分となるだろう。
だが、今度は別の人間から後々反感を買う恐れがある。今回はマリエッタとその子分が突っ掛かってきたが、本当は彼女らと同じことを思ってる女子が少なからずいるはずだ。その人達からの仕返しが先行く学校生活で待ち受けているのが、フィールには目に見えている。
でも、だからといって教師の誰にも教えなかったら、それはそれで後々問題だ。『気が弱く、言い返したくても言い返せない生徒』と思われて、今みたいなことが長々と繰り返されるのも考えられる。
結論の出ない思考に苦悩していると、フィールは答えられないと判断したマクゴナガルが、訊き先をチョウに変更した。
「ミス・チャン、此処で何が起きたんですか?」
「………私の友人、マリエッタ・エッジコムが、フィール・ベルンカステルを殴りました」
「チョウ………!」
余計なことを! とマリエッタは慌てるが、チョウは驚愕に凍り付かせるマクゴナガルの顔をしっかり見上げ、ポツリポツリ告げた。
「そ、それは本当なのですか………?」
「はい……でも、マリエッタは悪くありません。全て私が悪いんです」
「………どういう意味ですか?」
マクゴナガルが気を取り直して質問すると、チョウは口を噤んだ。
流石に恋愛絡みが原因でこんな事態が発生したとは簡単に言えないようだと、その点はフィールも察しているのか、口を挟む気はなかった。
困惑と戸惑いの空気が流れるこの場。
マクゴナガルはしばらく沈思黙考し―――一つの判断を下した。
「理由はどうであれ、同じ学舎で学ぶ生徒に暴力を振るう行為は許せるものではありません。よって、レイブンクローから50点減点とします。罰則については、貴女方の寮監であるフリットウィック先生に判断を仰ぎます。詳しいことは別室で伺いますので、そのつもりで」
マクゴナガルはピシャリと言い、それからフィールとセドリックに視線を移すと、
「ミスター・ディゴリー、ミス・ベルンカステルを医務室までお運び頂いてもよろしいですか?」
「勿論です、先生」
「では、頼みますよ」
マクゴナガルはレイブンクロー生達をフリットウィックの所まで連行しようと踵を返し、渋々といった感じに彼女らはついていく。チョウは一度振り返ると、フィールを横抱きにして抱え上げたセドリックの所まで走り、「ごめんなさい」と謝って、すぐに戻っていった。
「フィール、大丈夫かい?」
「………大丈夫…………」
横抱き―――所謂『お姫様抱っこ』をしながら医務室まで足を進めるセドリックは心配そうに声を掛け、フィールは力無さげに笑った。この時ばかりはフィールも強がりはせず、黙ってセドリックの腕の中にいる。セドリックは身長と体重が比例しない、あまりにも軽すぎるフィールに怪訝な顔になった。
「ちゃんとご飯食べてるのかい?」
「失礼だな………ちゃんと食べてるよ………」
「それでこの細さって………」
そんなやり取りをしていると、唐突にざわざわと喧騒に包まれた。
セドリックは顔を上げ、廊下に居る生徒達が全員こちらを見ているのに気付く。
彼らは近くに居る人とヒソヒソ話をし、興味本位に接近してきたが、セドリックに抱かれているフィールが唇や左手に血や傷痕が滲んでいるのを発見すると、パニック度が格段にアップした。その騒然は瞬く間に広がり、ゾロゾロと人が集まってくる。
皆、なんでフィールがそんな状態なのか、と疑問符を浮かべている。邪魔な包囲網を退かそうにも退かせない状況にセドリックがイライラしてると、
「フィー?」
「フィール?」
廊下の騒ぎに駆け付けたクシェルとハリー達一行が人混みを掻き分けて姿を現し、早々に眼を見開かせた。
セドリックがアイコンタクトで道を開けてくれと頼むといち早く彼の心境を悟ったハーマイオニーが「皆、退けてあげて」と呼び掛け、ハリー、ロン、クシェルの三人もそれに倣って周囲を半ば強引に退かせる。
そうして医務室に辿り着いたセドリックはドアを開けて中に入り、ハーマイオニー達四人は余計な人間が入室しないように詰めかけてきたホグワーツ生を出入口前で追っ払った。
数分後、四人は誰も居ないのを確認してから、医務室に入室した。
ベッドには、口の端が切れた患部にバンドエイドが貼られていて左手には包帯が巻かれているフィールが座っており、そんな彼女の前に膝をつくセドリックが居た。
「フィー、大丈夫?」
「ああ、今はなんとか………」
左手の甲に包帯が巻かれているのが痛々しい。
傷薬を塗ってあるが、数日は包帯は取れないだろう。
「フィール、一体何があったの?」
ハーマイオニーがそう尋ねると、
「レイブンクロー生のチョウ・チャンは知ってるかい? レイブンクローのクィディッチチームでシーカーを務めてる」
セドリックが何故かそう訊いてきた。
「え、ええ、知ってるわ。まさか彼女が?」
「いや、違う。チョウが言ってたんだ。彼女と同じレイブンクロー生のマリエッタ・エッジコムって女子生徒がフィールを殴ったって」
それを聞き、四人は眼を見開かせた。
「フィール、本当なの?」
「……………ああ」
「信じられない………年下の女の子に暴力を振るうなんて!」
ハーマイオニーは怒りに唇を震わせた。ハリーとロンはしかめっ面をし、クシェルは今すぐ医務室を飛び出したい衝動に駆られた。
「でも、なんでそんなことを………?」
ハリーが最大の疑問を呟き、全員がフィールの方を見た。だが、フィールは注目を浴びて唇を結び、言いにくそうに顔を逸らしたが、セドリックをチラリと見て、すぐにまた背けた。
それだけで、彼女の胸中を察したのだろう。
「私達ギャラリーは一旦出ましょ」
ハーマイオニーがそう提案した。
三人も「自分達が居たら話しづらいのでは」と察したらしく、ハーマイオニーの言葉に素直に頷き、四人は医務室を退室した。
そんな彼女が機転を利かせてくれたおかげで、ようやく本題に入れた。
「フィール、もしかして、さっきの出来事には僕も関与してるのかい?」
先程フィールが自分をチラリ見した時、セドリックは自分も関係してると察知したらしい。
フィールは小さく首を縦に振った。
「やっぱり………で、なんでなんだい?」
「………セドリック、幾つか訊いてもいいか?」
「え?」
「………さっきの出来事と関係あるから」
その言葉にセドリックは了承の首肯を見せる。
フィールは意を決して、質問した。
「マリエッタとチョウが言ってたんだけど………アンタ、チョウにダンスパーティーのパートナーに誘われたらしいな」
「………そうだよ。君を誘う前、チョウから『ダンスパーティーで一緒に踊らない?』って誘われた。でも、僕は断ったよ。僕は君を誘いたかったからね」
「………それで、チョウがこんなことを言ってたんだけど、本当なのか?」
フィールが言おうとした言葉の続きは、
「『好きな女の子がいて、その娘を誘いたいから』………だろ?」
セドリックによって繋げられる。
………そう、まさにその通りだ。
チョウは、セドリックがそう言ったと伝えてきた。
そして、そのセドリックが、全く同じことを言っている。
………つまり―――
「………こんな状況で、こんなことを言うのもアレだけど………フィール―――」
セドリックはフィールの両肩に手を置き―――彼女へ、自分の想いを伝えた。
「―――僕は君のことが好きだ。後輩とか友達とかではなく、一人の女性として、恋愛対象の人物として」
フィールの世界から一切の音が消えた。
流石のフィールも異性に愛の告白をされる経験は初めてだったので、どう対処すればいいのかに困った。最初は冗談かと思ったが、セドリックに限ってそれないし、この状況で嘘を言うなんて有り得ない。
今のは、正真正銘、本気の告白だ。
だからこそ、なんて返事をすればよいのか、フィールにはわからなかった。
「………アンタはなんで私が好きなんだ?」
レイブンクロー女生徒達との一悶着の件は一旦吹き飛ばし、突然の告白にフィールはセドリックへ問い掛けた。セドリックもまた、この時だけは重苦しい話題を打ち消し、彼女の問いに応える。
「………3年前、図書室で君と出会って、君の滅多に見られない笑顔を見てから、ずっと眼で追うようになった。それが恋心だって知った時、僕は君に伝えるかどうか、少し悩んだよ。フラれてしまうリスクがあるから。………でも、そんなこと言ってられないって思い直した」
セドリックはフィールの左手に視線を移す。
白い包帯に隠された彼女の白い手を取り―――左手の甲に唇を触れた。
愛おしむように、そっと。
その柔らかなキスに、フィールは恥ずかしさで顔に熱が籠る。
「は? え? おいセドリック、いきなり何するんだ!?」
「少しでも早く治るように、と思って」
上目遣いでフィールを見ると、彼女の色白の頬は紅潮していて。
セドリックはフッと微笑み、もう一度口付けを落とすと、
「僕が君に対する気持ちは、こういうことだから」
「………………本気か?」
「ああ、本気さ。ハッフルパフ生の名に誓って、君のことが好きだと宣言するよ」
セドリックはキリッとした表情で、フィールの瞳を見つめた。
「………返事はいつでもいいから。真剣に僕のことを考えてくれないかな?」
「………わかった」
セドリックは、相当な勇気と覚悟を決めて、想いを伝えてきたに違いない。
ならばその彼の気持ちを真っ正面から全て受け止め、ハッキリと答えを出さなければ。
フィールは未だに戸惑うが、自分が成すべきことだけは忘れず、決意を胸に―――白い包帯が巻かれた左手で、彼の手を握り返した。
【遂に来てしまった………】
フィールとセドリック、スキーターによる被害を受ける。中身はこんな感じ。
ハリハー&セドフィルいる→ハーマイオニー、友人の彼氏を取ろうとしてる→報復としてフィール、ハリーを取ろうとしてる
クズ女(スキーター)のことだ。
こんなでっち上げを書いてもおかしくない。
【う、嘘だろ!?】
ロンが同僚へ「退け」と言っただと!? そしてフィールとクシェルは友達と堂々と宣言。あれ? コイツこんなイケメンだったっけ?
【レイブンクロー生との一悶着】
マリエッタ、怒りのあまりフィールを殴る。
女って怖い………((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
そして………うん、なんだろ。
緊張したシーンなのに、フィールの「黙れ!」はちょっと笑ってしまった。
【セドフィル】
ここでなんとお姫様抱っこ登場。
そして………あのタイミングで!?
まさかの告白! 手の甲に口付け!
あ、告白シーンに突入したらレイブンクロー女達の話題はレラシオされました。御愁傷様でーす。
【カカオフィズ:恋する胸の痛み】
①カカオリキュール(45ml)
②レモン(20ml)
③シュガー(1tsp)
④ソーダ水(適量)
作り方:ソーダ水以外の①~③をシェイクし、タンブラーに注ぎ、ソーダ水で満たし軽くステアして完成。
タイプ:ロング
ベース:リキュール
アルコール度数:7度~11度
テイスト:中甘口
色:透明
装飾:お好みでスライスしたレモンを飾ると見た目がオシャレになります。