【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

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今日はハリーの誕生日じゃないか!
ハリー、誕生日おめでとう!


#62.虎視眈々

 レイブンクロー生との恋のトラブルから数日が経ち、その間、誰一人としてセドリックやフィールに何があったのかと質問してくる生徒はいなかった。

 お姫様抱っこでフィールがセドリックに医務室に運ばれたという噂は、あの時その場に居なかった生徒達にも瞬く間に知れ渡り、好奇の眼は向けつつ、流石に自重してるみたいだ。

 と言っても、大抵の生徒は原因が何かを察したらしい。それもそのはず、リアルタイムでレイブンクローが何故か50点も減点され、マリエッタを初めとするレイブンクロー女生徒数人に罰則が与えられたのだから、変な所で頭の回転が速いホグワーツ生は皆白い眼を向けるようになった。

 その反動かどうかは知らないが、左手に包帯を巻くフィールに心配の声を掛ける生徒が続出したが、彼女は掌返しもいいところだと、ガン無視を決め込んだ。

 あれだけ魔法界に発刊されたセドリックと付き合ってるとのデタラメな記事を見た時、セドリックファンの人々に陰口叩かれたというのに、傷害を受けた途端に心配して近寄って来るなど、心中穏やかでいられる訳がない。

 ………そういえば、最近、セドリックから人生初の告白を貰った。

 一人の女性として、恋愛対象の人物として好きだと。

 その時は、どう返事すればいいかわからず硬直してしまったが、彼から「返事はいつでもいい」と言われた。

 いつでもいい………だが、いつまでもほったらかしには出来ない。なるべく早めに………少なくとも、第三の課題を終えたら、時間を見つけて返事を出さなければ―――。

 

「………ん? あれ―――」

 

 朝食時間帯のある日。

 大広間に行く前、数日前に手当てをして貰った礼をまだしてなかったことから校医のマダム・ポンフリーに感謝の言葉を述べに医務室に寄ったフィールは、遠く離れた先にこちら側へ走ってくる少女の存在に気付いた。

 眼を凝らして見てみると―――見慣れたボサボサ茶髪の少女が、顔を伏せがちにダッシュしてるのを認める。

 

「………ハーマイオニー?」

 

 茶髪の少女―――ハーマイオニーは突っ立ってるフィールに気が付かないまま疾走し続け、ドンッと彼女にぶつかった。

 

「きゃっ! ご、ごめんなさ―――」

「ハーマイオニー、どうしたんだ?」

「え………フィール?」

 

 わざと立ち止まり、このまま突っ走ってハーマイオニーが壁などに衝突しないよう阻止したフィールは、顔を上げた彼女に呼び掛ける。

 

「な、なんで此処に………?」

「この間治療してくれたマダム・ポンフリーにまだ礼を言ってなかったから、それで。ハーマイオニーは?」

「………ッ」

 

 ハーマイオニーは言いにくそうな表情で顔を逸らすと、慌てて両手を後ろに隠した。フィールはチラッと見えた彼女のそれを見過ごさない。

 

「………手、見せて?」

 

 フィールがそう言うと―――ハーマイオニーは震えた腕をゆっくりと前に出した。

 彼女の両手は大きな黄色い腫れ物がブツブツ膨れ上がっており、まるで分厚いボコボコの手袋を嵌めているようで痛々しかった。

 

「おい………まさか、『腫れ草(ブボチューバー)』か?」

「………ッ、そうよ………」

 

 ハーマイオニーは涙声で小さく呟く。

 

「わ、私もう行かなきゃ。ごめんなさい、引き留めて………」

 

 けれど、今来た道を戻ろうとしたハーマイオニーの腕を、フィールが掴み、引き戻す。

 

「馬鹿言うな。この階に来たってことは、医務室に寄るつもりだったんだろ」

 

 振り向くと、フィールの顔があった。

 心配そうな蒼瞳で、じっと見てくる。

 

「何があった? 私でよければ話を聞くぞ」

 

 緩く結んでいるネクタイの色は、緑と銀。

 いつもいつも『穢れた血』と罵倒してくるスリザリン生が所属する、蛇寮のシンボルカラー。

 その彼らと同じ寮に所属してる証なのに、気付けば彼女がスリザリン生だというのを忘れるくらい、フィールは………他のスリザリン生とは違い過ぎて。

 

「う………う………ああぁぁぁ…………」

 

 次の瞬間、ハーマイオニーはフィールの胸に飛び込んだ。同時、堪えていた涙が溢れんばかりに溢れ出す。フィールはまだ包帯が取れない左手でハーマイオニーの頭を抱えて言った。

 

「今は存分に泣け。これまで、泣きたくなるのを堪えてたんだろ。泣き止むまで待ってやるから、この時くらい、全部吐き出せよ」

 

 相変わらずぶっきらぼうな言い方なのに、そこに滲む優しさは、紛れもなくフィールだけが持つもので。

 ハーマイオニーはフィールの胸に甘え、彼女の胸元を熱い涙で濡らし続けた。

 

♦️

 

 マダム・ポンフリーに両手を包帯でグルグル巻きにされたハーマイオニーは、『遮音呪文』を掛けた空き部屋でフィールに朝の出来事を伝えた。

 現在『薬草学』の授業中なのだが、大広間に来るのが遅いのを心配してやって来たクシェルに「スプラウト先生には欠席すると言って」と頼み、彼女は「ハリーとロンにも伝えておく」と快く引き受けてくれた。

 ハーマイオニーは申し訳なさそうにしてたが、フィールからすれば別にどうってことはなかった。

 

 さて、それはさておき―――。

 朝食時間時、ハーマイオニー宛てに嫌がらせメールが何十通と膿の薄めてない『腫れ草』を仕込んだレターが一通、送られてきたそうだ。

 手紙は、手書きではなく『日刊預言者新聞』を切り抜いたような文字が貼り付けてあったみたいで、あのデタラメ記事を読んだ魔法使い達から批判の言葉の集中放火を浴びた。

 『ハリー・ポッターにはもっといい子が相応しい』『友人の彼氏を取ろうとするなんて最低なマグルだ』等………発送された郵便物全てがそのような内容だったとか。

 

「あの女こそが最低なヤツだろ。アイツら、頭のネジでも吹っ飛んでるのか?」

 

 空き部屋にあった椅子に座って詳しい話を聞き及んだフィールは、自分の友人がそんな卑劣な行為をするなんて絶対に無いと相当ご立腹である。

 ハーマイオニーは涙ぐみ、フィールの肩に頭を乗せた。

 

「とにかく、事情はよくわかった。………あの女のせいで、色々ぶち壊しだ。これは早々にスキーターの化けの皮を剥がしに動くか」

 

 ハッとしたハーマイオニーはフィールの顔を見上げる。

 彼女の瞳には揺るがない決意と激しい怒りを表す色が浮かんでいた。

 

「これ以上続いたら、学校生活はおろか社会的にも抹殺される。私達を散々痛め付けてきたんだ。それ相応の代償を払って貰うのは当然だ」

 

 だから、とフィールは続ける。

 

「―――近々、リータ・スキーターの素性を暴いてやる。あの粘ついた笑顔の下に隠されてる素顔をこの手で剥ぐまで標的(ヤツ)は逃がさない。何処までも何処までも追い掛け、そして追い詰めてやる。決して逃がしはしない」

 

 フィールからの力強い宣言に。

 ハーマイオニーは暗い現状の中で、一筋の希望の光が差した気がした。

 

 嫌がらせメールはそれから1週間、途切れることなくハーマイオニーに届いた。『魔法生物飼育学』で代理のプランクからハグリッドに戻った際、彼から言われた通りハーマイオニーはもう開封しなかったが、嫌がらせメールの中には『吼えメール』を送り付けてきた者もいた。

 グリフィンドールのテーブルでそれが爆発し、大広間全体に聞こえるような音でハーマイオニーを侮辱した。これで『週刊魔女』を読まなかった生徒でさえ、今やハーマイオニー、ハリー、フィール、セドリックの噂の恋愛関係を全て知ることになった。

 ハリーはうんざりしてきたし、セドリックも眉間に皺を寄せていた。ハーマイオニーはイライラがMAXになり、フィールは―――

 

「…………………………」

「フィ、フィー………?」

 

 隣に座っていたフィールの友人・クシェルは、彼女から発せられる不穏な空気を敏感に察知し、恐る恐る声を掛けると、

 

「もう、我慢の限界だ。あのクズ女を叩き潰す」

 

 ガタンッ! とゴブレットをテーブルに荒々しく置いたフィールの声は低音で、威厳さと不機嫌さを物語っていた。

 クシェルはビクッとし、今のフィールの言葉はマジだと、生き生きした顔を青くさせ………スキーターの命運は彼女がどこまで誠心誠意の謝罪を見せるかによって左右されると、久々に発揮される友人の殺気立たせる威光に、ゾクリと背筋に悪寒が走った。

 

♦️

 

 その日の放課後。

 フィールは午後最後の授業でクシェルと別れ、一人で静かな時間を過ごしていた。

 壁に背を預け、難しい言葉とわかりやすい図が記載された魔法書を見るとはなしに眺めていたがそれは唐突に終わりを告げる。

 

「………来たか」

 

 フィールの目線の先には、本来であれば此処には居ないはずの、角ばった顎の顔に宝石で縁取られたフォックス型メガネを掛けた派手な女。

 ハグリッドの中傷記事を書き、ハーマイオニーを傷付けてきた張本人―――リータ・スキーターだった。

 スキーターはフィールの姿を認めるが否や、粘ついた笑顔で彼女へ近付いた。

 

「貴女、フィールざますね。どう? お元気にしてたかしら?」

「ああ………ちっとも元気じゃないな」

「そう、それはよかったわ。落ち込んでるんじゃないかと心配してたのよ」

 

 フィールの言葉を無視してスキーターは馬鹿げた発言をあろうことか、不機嫌度がピークに達してる彼女の前でかました。

 黒髪の少女はチッと舌打ちするが、それに気が付かないまま、スキーターは続ける。

 

「どうざんす? 私と一緒にお茶でもしないかしら?」

 

 お茶会という名の情報収集のため、スキーターはフィールへ建前の台詞(言葉)で誘った。普通、スキーターの性格を知る者は、

 

「だが、断る」

 

 と言うだろう。

 だがしかし、フィールは何を考えてるのか、やたら爽やかな笑顔を浮かべ、

 

「ええ………構いませんよ?」

 

 パタン、と本を閉じ、指を鳴らして分厚いそれをどこかに仕舞った彼女は、なんとその誘いをYESと了承した。

 スキーターはちょっとの違和感は覚えつつ、これで新しい情報を得られると、本心を隠すための営業スマイルをフィールに見せる。

 

 対し、フィールも笑みを見せていた。

 スキーターには、わからないだろう。

 この笑顔は、仮面のスマイルだと。

 そして、貼り付けた微笑みの下に、スリザリン生の素質の一因、『目的のためならば手段を選ばない』という彼女の潜在的なる狡猾さが、ひっそりと見え隠れしているのを。

 

 敵とみなした人間を射抜くフィールの両眼は本気だ。

 そう、それはまさに、己の野望を遂げるべくじっと機会を窺う虎のように―――虎視眈々と。

 狙った獲物は逃がさぬ、狩人の狼のように。

 今のフィール・ベルンカステルの蒼い双眸は、眼光炯々の如く鋭くギラつかせた目的意識をその瞳に宿していた。

 

「そう。なら何処か―――」

「―――此処では狭すぎるから何処(どっ)かへ行こうか今から」

 

 ニヤリ、と形が整った淡い桜色の唇の端を微かに上げながら、フィールはウキウキな様子のスキーターの言葉をあからさまに遮る。

 怪訝な顔になるスキーターへ、フィールは平然とした態度で、

 

「なんだ? イヤなら別にそれで構わないが?」

 

 痛い目に遭いたくないなら、今の内にさっさと私の目の前から消えろ。

 言外にそう重みを含めたその言葉(セリフ)に、気付く者は果たしているだろうか。

 スキーターは慌てて笑顔を形作り、何事もなかったようにコクコクと首を縦に振る。

 

「そ、それじゃ、何処かゆっくり話せる場所へ行きましょ?」

「ああ………そうだな」

 

 そうして、スキーターとフィールはもう使われることがない古い一室まで行き、前者は入室した途端、サッとドアを閉めて外から誰も入れないよう鍵を掛けた。

 これで、フィールを閉じ込められた。

 あとは彼女から有益になりそうなインフォメーションだけを集め、何食わぬ顔でこの部屋を出たら、彼女のみならずあのマグル生まれの娘もまとめて人生を台無しにしてやる。

 フィールに背を見せているのをいいことに、スキーターはほくそ笑む。

 

 故に、この女は全く持ってわかってない。

 彼女に自分の顔が見えてないということは、その逆もまた然り。

 フィールが今どんな表情で立っているのか、わかってないという意味だ。

 フィールもまた、ほくそ笑んでいる。

 これで、クズ女と二人きりになった。

 そしてどういう思考回路をしているのか、自ら鍵を掛けて誰も来ないよう閉塞した。彼女はそれを利益なものと考えてるだろうが、実際にやったことは、ただの大馬鹿者が行う行為だ。

 

 何故なら―――これで、自分を邪魔する者が誰一人として入ってこられなくなったのだ。それは即ち、化けの皮を剥ぐのには絶好の場を自ら提供してきたのも同然で。

 フィールは爆笑したくなるのを堪えつつ、杖を一振りし、部屋のど真ん中より少し先の場所に()()()のスツールを出現させた。

 同時、スキーターがドアから離れ、振り返る。

 フィールも咄嗟に表情を取り繕って後ろに身体全体を向かせ、訝しい面持ちをペーストさせてカチャカチャとドアノブに手を掛けた。

 

「あの、なんで鍵を………?」

 

 何故監禁同等の行動をしたのかその訳がわからない少女を演じながら、フィールはスキーターが椅子に向かうのを肩越しから見届ける。

 

「あらあら、そのようなことは気にしなくて大丈夫よ。用が済んだら、すぐに此処から出してあげますから、それでいいざますね?」

「ああ、そうですか………」

 

 声音は不安げだが、その表情は別物。

 フィールはハッと、更に嘲笑いたくなった。

 用が済んだら、すぐに此処から出してあげると言ってきたヤツに、肩を竦めてしまう。

 この女は、自分を狩る気満々のようだ。

 フィールはスキーターへ、

 

()()()()の間違いじゃなくて?」

 

 と、そう問いたくなった。

 獲物を自分の領域へ取り入れたとまだ思い込んでいるスキーターは、一脚だけ用意されたスツールに、首を傾げる。

 

「貴女、自分の椅子はどうしたんざますか?」

 

 スキーターの質問に、フィールは「は?」と薄ら笑いした。

 

「誰もアンタに用意したなんて、一言も言ってないんだけど?」

 

 先程とは打って変わってガラリと豹変したフィールの物言いに―――スキーターもまた、今までの装いと仮面をかなぐり捨てる。

 

「年上に向かってその言い方はなんだい? 目上の人は敬うべきだと教わらなかったのかしら?」

「敬える年上、だったらの話だけどな?」

 

 スキーターがキッとしてフィールの方を見てみると、彼女は冷ややかな眼差しの色を浮かべていた。その有り様は、まるでさっきまでの怯えた少女の振る舞いが一ミリも感じ取られない。

 馬鹿にしたような笑みで、こちらを見ていた。

 

「これまで何度も誰かの人生を滅茶苦茶にしてきた挙げ句、私の友人達に散々な名誉毀損の損害を与えてきたお前に敬意を払うなんて真似、死んでもするかよ」

「あんまり調子に乗るんじゃないよ、馬鹿女が。ホグワーツの最年少選手の一人だがなんだか知らないけど、これ以上お友達共々、私に社会的にも抹殺されたくなかったら、大人しくしてな」

「えっ、抹殺する? 抹殺()()()の間違いじゃなくて?」

 

 スキーターはたちまち、カチン、ときた。

 片眉を釣り上げ、フィールを睨み付ける。

 

「………アンタは本当に馬鹿な女だよ。いいよ、教えてあげるさ。私に逆らったらどうなるか、それを教えてやらないといけないようだね」

 

 スキーターはイライラとストレスを持ち、フィールが座ろうとしてたスツールを蹴り飛ばそうと背を向けた、次の瞬間。

 

ペトリフィカス・トタルス(石になれ)

 

 獲物を狩るにおいて背を向けたら、それはその瞬間に狩られるのを意味する。

 敵が背後を見せるその刹那を、狩人は見逃さぬようジリジリと待ち構えている。

 そして、無防備なその背を捉えたら、瞬殺。

 フィールは冷たい声で『凍結呪文』を詠唱。

 青い閃光はスキーターの背中を撃ち抜き、彼女は両腕・両足が身体にピッタリとくっつき、身体が一枚板のように硬直化してしまった。動けなくなったスキーターは仰向けで冷たい床に倒れる。

 

「ハンティングするとか言ってたクセに、そのターゲットにバックを見せるとか、お前こそ、正真正銘の馬鹿な女だな」

 

 フィールは冷淡な笑みで、ゆっくりと足を進める。身体は動けなくとも意識と思考は残るのが『全身金縛り呪文』の効果だ。

 視線だけを慌ただしく動かすスキーターは、こちらに歩み寄ってくるフィールへ恐怖という感情を覚え始めた。

 そんな彼女を蔑むように、フィールは彼女のある部分に一発強力な蹴りをお見舞いした。今のキックの標的場所は、スキーターによるあの記事のせいでレイブンクロー生に怪我を負わされる羽目になった、あの左手だ。

 

「今の一発は、お前が散々傷付けてきた人達の恨みだ。よく覚えておけ」

 

 目の前で友人が殴られていたら、殴っているそいつを殴り倒して救うしか方法がないように。

 それ相応の代償を払って貰わなければ、と思うフィールはストンとスツールに腰掛け、足を組んで冷たい眼で足元に倒れている彼女を、冷たく見下ろした。

 

「さて………時間も惜しい。お前の素顔をこの眼で拝見させて頂くぞ」

 

 フィールは怯えた眼差しの色のスキーターの両眼を見据え―――他人の心から感情や記憶を引き出す能力『開心術』の名を静かに囁いた。

 

「―――レジリメンス(開心)

 

 『開心術』に対抗するには、視線を逸らす、もしくは『閉心術』を習得し、心を空にして全ての感情を捨て去らなければならない。

 しかしながら、今の混乱に心が染まったスキーターにそのようなことは出来るはずがない。成す術もなく、他人に知られてはマズい記憶がついさっきまで人生を台無しにしてやろうと企んでいた少女に探られているのを、ただただ仰向けに寝転がりながら見送る他ない。

 やがてフィールはスキーターが非合法の動物もどき・コガネムシに変身してネタ探しに1年間、ホグワーツ城内をブンブン飛び回っていたという彼女のスキャンダラスな暴露記事の終着点に辿り着いた。

 

「なるほど………やっぱり、私とハーマイオニーの推測は正しかったんだな。これで彼女も大いに喜ぶに違いない………」

 

 一人言を呟くフィールは、今更気が付いたみたいな振る舞いで、顔面蒼白のスキーターを見る。

 

「なんだ、その顔は? お前が今までやってたことはこういうことだってまだわからないのか?」

 

 恐ろしいほど、歪んだ笑みで。

 フィールは足を組み直し、言葉を続けた。

 

「生憎だけど、私は甘くない。非合法の動物もどきという証拠を掴んだ以上、どうなるかは覚悟しておけ」

 

 フィールはどこからか、スッと魔法瓶を取り出してスキーターに見せ付ける。これは、今からコガネムシに変身させ、その状態でこの中に密封させるとのことだ。

 

「私は敵と見なしたヤツには、一切の容赦を覚えない。リータ・スキーター、私は友人を傷付けたお前を許しはしない」

 

 フィールの脳裏に―――涙で顔をぐちゃぐちゃにさせて胸に飛び込んできたハーマイオニーの泣き顔が過る。

 あの時自分は、絶対にスキーターを許さないと激しく思った。

 友を苦しめるヤツは、誰であれ許容しない。

 たとえそいつが辣腕記者であろうがなんだろうが、例外は存在しない。

 

「この束縛から解放された時、私を陥れられるものならやってみろ。誰かの涙で固めた、虚飾の記事で。逃げられるものならやってみろ。何処までもしつこく追い掛け、追い詰めてやると決意してる私から。忘れたというならば、私がもう一度知らしめてやろう。お前がこれまで何重にも積み重ね、何万も生み出してきた犠牲と苦痛の代償を」

 

 杖を大きく振り上げ―――スキーターを未登録の動物もどきである太ったコガネムシに変身させたフィールは、魔法瓶という名の監獄に投獄させる前、

 

「罪の重さを思い知れ、リータ・スキーター」

 

 低音で威厳ある声で一語一語を打ち込み、完全にコガネムシ・スキーターをぶちこんだ。

 自分達を苦しめてきた罪人をこの手で捕らえたフィールは、握り締めた約束を胸に誓い果たしたと、白い包帯に覆われていた左手をかつて友人の熱い涙で濡れた胸元に、そっと当てた。




【ハーフィル】
泣きたくなるのを堪えていたハーマイオニーの心境を読み取り、胸に飛び込んできた彼女を優しく慰めるフィールはめっちゃイケメン。

【スリザリン生らしい一面を見せたフィール】
感想で『グリフィンドール寄りの性格でスリザリン生にかなりの違和感がある』と言われたのも含め、スキーターを叩き潰す際、フィールは遂に狡猾な思考回路の持ち主のスリザリン生の顔を見せた。同時に、いざとなればかなりの演技派なのもここで判明した。
あ、あのギャップは、お、恐ろしい………。

【まとめ】
今回は見事なまでのダブルフェイスを見せてくれたスリザリンの女王様ことフィールによるスキーター確保の回でございました。
蹴りを入れるかはちょっと悩んだが………ほら、どっかのアニメでいるじゃない? 犯人捕まえる際にサッカーボールやらタイヤやらを蹴る名探偵様が。どうかあれと似たものだと思ってくれ(-)_(-)。
それにしても……蔑みの眼で見下しながら足を組むという超ドSな女王様っぷりを存分に見せてくれたフィールには作者としてちょっと満足です。
スリザリン生っぽい一面見せるといったらドSとか? という考えからこのようなことになったのですが、果たしてどうなんだ……。
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