【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士 作:Survivor
本章で遂に5/7になりました(8巻の孫世代を書いた呪いの子を除外して)。
前章はハリフィー(選手同士)、ハーフィル(女の友情)、セドフィル(恋愛関連)とオリ主が原作キャラとの絡みがかなり多かったですが、本章は原作キャラ達とオリキャラ達との関わりがメインとなります。
#66.再結成・不死鳥の騎士団
「フィール、準備はいいかしら?」
トランクの中に生活必需品、学校の教材等も含めて必要な物を全て詰め込んでいる黒髪の少女へ水色髪の少女―――クリミア・メモリアルは自分の持ち物を全て詰め終えたトランクを手に、義妹のフィール・ベルンカステルに確認を確認を取った。
「ああ、問題無い」
二人が大荷物を持っていくのは、残りの夏休み中、ベルンカステル城に戻って来られなくなるかもしれないからだ。『不死鳥の騎士団』のリーダーであるアルバス・ダンブルドアが本部に居る間に一時帰宅しても構わないと許可は得てるが、そう簡単には帰れないだろうし、メンバーの一員になった以上、周りから反対の声が上がるのは火を見るよりも明らかだ。
そのため、余計な面倒事は嫌いだと同感の二人はこうして準備万端の状態で出向くのだ。
「それと、ライアン叔父さんから貰ったアレ、つけてるわよね?」
「当たり前だろ」
ハイネックを掴み、その下のチョーカーを見せる。ちゃんと着用している、との意味だ。
一見すると何処にでも売ってるようなアクセサリーだが、その実これには『17歳未満の者の周囲での魔法行為を嗅ぎ出す呪文』、通称『匂い』と呼ばれる魔法省が未成年の魔法使いを探知する仕組みを無効化してくれる、魔法界でバレたら即犯罪となる便利な品物であった。
夏季休暇に入って2週間が経過したある日、叔父のライアンからプレゼントされたのだ。ライアンは
3歳年上のクリミアは成人魔法使いなのでもう『匂い』の心配は必要ないのだが、フィールにはこれが学校外で魔法行使をするのには絶対必要なのだ。
今年の6月、ヴォルデモート卿が復活した。
フィールとハリー・ポッターの二人は多勢に無勢の戦況の中、互いに互いを庇い護りながらホグワーツまで生還してみせた。
が、生還後、ヴォルデモートが復活したという話を信じてくれる者達は少なく、フィールやハリー、ダンブルドアを異常者扱いする魔法使いが続出し、更には魔法大臣のコーネリウス・ファッジが『日刊預言者新聞』に圧力を掛け、三人が戯れ言を言っているという報道をさせた。
魔法省と言う敵が増えたこの時勢。
未成年魔法使いのフィールとハリーは、特に魔法省から目の敵にされている。
二人が少しでも法律違反を犯したら彼らはその弱みにつけ込み、こちらに都合の悪いアクションを起こすだろう。
英国魔法省の闇祓いに勤めているフィールの友人の父親イーサン・ベイカーによれば、魔法法執行部に関係のある人物には細心の注意を払えとのことだ。
そのことを聞いたライアンが、万が一学校外で何かアクシデントが発生しても対処出来るよう姪のフィールの身を案じて作ってくれたのだ。
「絶対にそれを外して魔法を使ってはダメよ」
「そんなことはわかってる。ほら、早く行こう」
フィールとクリミアは当初の予定よりもずっと早く騎士団の拠点―――グリモールド・プレイス12番地、ブラック家の屋敷という極秘情報は現在その屋敷の『秘密の守人』ダンブルドア直々に教えられ、一度だけ彼に連れられて下見しに行った。真夜中だったので家の中は暗かったし、あまり長居は出来なかったが。
「それじゃ、フィール。手」
「うん」
差し出されたクリミアの手をフィールが掴んだ瞬間―――『付き添い姿くらまし』で二人の姿は一瞬にして消え去った。
♦️
グリモールド・プレイスと言う廃れた住宅街。
その住宅街の11番地と13番地に、目的地はある。
ベルンカステル城から遥々やって来た二人は建物と建物の間に立ち、『忠誠の術』も施されたくらい厳重な本部には特殊な方法で入ることを知っているため―――『不死鳥の騎士団の本部はロンドン グリモールド・プレイス12番地』と強く念じると、11番地と13番地に建つ家が横に移動し、新たに出来た空間に年季の入った黒塗りの家が現れた。
これこそが、秘密裏に活動している『不死鳥の騎士団』の本拠地―――ブラック邸だ。
フィールとクリミアは敷地内に入り、後者が扉を杖で叩くと中から鍵が外れる音がし、二人がドアを開けると、
「久し振りじゃな。夏休みは楽しめたかの?」
ダンブルドアが笑いかけながら出迎えた。
それなりには、とクリミアは返事し、フィールは軽く会釈し、ドアを閉める。
前に入室した時は、壁紙等が所々剥がれかけていたりクモの巣が張られていたりと長年手入れされていなかったため、ライアンの妻・セシリアと妹・エミリーが仕事の合間を縫って掃除してくれたおかげで今は随分マシな内装になり、所有者のシリウス・ブラックや騎士団メンバーは感謝していた。
とはいえ、ブラック家は代々スリザリンの家系で尚且つ闇の魔法使いの輩出も多数。見渡す限り全ての家具には蛇の形をモチーフにしているのが一目でわかった。
「あ、シリウス」
階段下りてきた背の高い男性―――シリウスに気付いたフィールは彼を見上げる。
一昨年無実を証明したシリウスは当時の骸骨みたいだった痩せ細った面影はもう無く、むしろ誰が見ても見惚れるようなイケメンへと激変している。まともな食事を摂り、伸び放題だった髪を短く切り髭も剃ったため、写真で見た時のような美青年に限りなく近かった。
「久し振りだな、フィール、クリミア」
シリウスは明るく笑むと、フィールとクリミアに割り当てている部屋を改めて案内するべく、二人を手招きした。
二人は階段を上がっていく。
以前階段の壁にはブラック家の伝統で歳を取って働けなくなった屋敷しもべ妖精の首を刎ねらせて萎びたそれがズラリと並べられていたのだが、掃除をしている最中気味が悪かったセシリアとエミリーがシリウスに了承を得ると、即刻に全部撤去した。
ブラック邸全体が陰気で眼に悪いので、セシリアとエミリーがシャンデリアを増やしたり豪華絢爛な絨毯に張り替えたりと、水面下で行動する組織の拠点を上品な内装にして、ちょっと楽しんでいた。
ライアンは「妻も妹と昔から変わらないな」とオシャレ好きで何事にも意気投合し和気藹々とする二人に苦笑いと言うかなんと言うか………。
でもシリウスからすれば喜ばしいことらしく、彼が「もっと明るくしてくれ」と頼めば、二人はキラキラした瞳であちこち見て回っては、派手過ぎない程度にソフィスティケートなインテリアをエンジョイしていたので割愛する。
フィールとクリミアはシリウスに5階の一室に案内された。室内は二人部屋として使うのには十分過ぎるほどの広さだった。安全が確認出来ている数少ない部屋らしいので、他の物には不用意に触れない方がいいと注意された。
会議を開いてるから後で来てくれ、とシリウスは再び階段を下りていき、フィールとクリミアは2つあるベッドの上にトランクを置いて蓋を開けて忘れ物が無いかをもう一度念入りにチェックすると、パタンと蓋を閉めた。
「………行くか」
「ええ、行きましょう」
フィールとクリミアは部屋を出、階下の会議室へ向かう。廊下奥の部屋から話し合う声がだんだん大きくなっていき、クリミアは深呼吸すると、コンコン、とノックをした。
室内が静かになったので、
「失礼します」
と言ってから、ガチャッと開けた。
会議をしていた人達は話を止めてこちらを見ており、部屋に居る大人達で顔見知りの人もいれば初対面の人もいた。前者はともかく後者は驚いた顔で二人を見つめている。紫髪の女性は水色髪の少女を見て懐かしそうな表情になり、彼女は眼が合うと軽く頭を下げた。
「おっ、二人共、来たんだな」
「此方に来て座る?」
ライアンとエミリーが小さく手を振り、まじまじと不思議そうな眼差しで眺められて居心地悪かったフィールとクリミアはそそくさに保護者組が着席してる所へ向かう。
この場に似つかわしくない年齢の少女二人にモリー・ウィーズリーは、何故此処に、とダンブルドアに眼を向けると、
「騎士団を再結成する際にも言ったが、二人にも騎士団へと参加して貰う。勿論、フィールはまだ学生である以上任務に就くことは出来ないが、騎士団が持ち得る情報等は聞かせることになる。クリミアはその両方じゃ」
その言葉に、黒人の男性は渋い顔になる。
モリーなんかは、フィールを指差して抗議の声を上げた。
「この娘達はまだ若いのですよ! 騎士団に参加させるには早すぎます! 特にその娘は!」
それからしばらく、抗議するモリーと説得するダンブルドアの討論が続いた。途中、モリーはライアン達保護者に叔父や叔母である貴方達が何故参加させるのに賛成したのかと訊くと、
「フィールは闇の魔術に抗う実力があるし、自分達が見守ることを条件に加入を許可した」
と姪の有能をキッパリと言明した。
防衛術の実力については、3年前の決闘クラブにて対峙したセブルス・スネイプと2年前の防衛術の教科担当の関係で授業様子や成績を見てきたリーマス・ルーピンが証人として、並外れたフィールの才能に太鼓判押すよう証言する。
最終的にはモリーが折れることとなり、最低限の条件として騎士団で得た情報や秘密は騎士団以外の者には決して漏らさないこと、直接的な任務には参加しないと釘を刺すように言い、ここで反論しても逆効果だし話が進まないので、フィールは素直に頷いた。
と言うかフィール自身、学生の身分である自分が在校中に外部で事件が起きても急行は不可能だろうと、今回ばかりは大人しく身を引く。
そんなこんなで、
ついさっきまで議論中だったとは思えないほどの沈黙が会議室に流れ、その起因であるフィールは思春期にありがちな、いつまでも子供扱いをする大人達へ反感を抱いた。
そんな時、沈黙に煮え切らなくなったマッド・アイ・ムーディが杖を一突きし、奇妙な静寂を打ち破る。
「何をやっとるか。ベルンカステルとメモリアルをチームの一員として認めた以上、必要な情報を2人にも話してやれ」
「そうは言いますがね、アラスター。私はまだ納得した訳ではないのですよ。『例のあの人』はその娘のことも狙っているのでしょう? 彼女に我々の情報を教えて万が一捕らえられたらどうするのですか?」
カチン、ときたフィールは片眉を上げる。
そういう理由も含まれてるのかと知り、随分自分は舐められたものだと腹立たしくなった。
「ベルンカステル、ちょっと此方に来い」
モリーの言葉を聞き流したムーディは何故だか知らないがフィールを呼んだ。フィールは怪訝な顔で腰を浮かし、ムーディの所へ歩いていく。
「お前は復活したヴォルデモートと戦い、生き延びたとダンブルドアから聞いたぞ。本当か?」
「ハリーもですけどね。アイツと戦ったのは、紛れもなく事実です。あと、3年前は秘密の部屋で一時的に実体化したトム・リドルとタイマン勝負しました」
名を呼ぶことすら恐れられているヴォルデモートをアイツ呼ばわりするフィールへ、何人かのメンバーはうっと面食らう。とてもではないが、15歳とは考えられないほど肝の据わった少女だと思った。
「ふむ。お前は成人魔法使いを凌いで正式なるホグワーツ選手に選ばれたそうでないか。して、ベルンカステル。お前は何処まで防衛術の技能を身に付けておる?」
「『守護霊の呪文』の実体化&伝達可能やその他諸々」
何だと?
といった様子で、知人以外の人達はフィールに注目した。その瞳に帯びているのが隠し切れない驚愕と半信半疑の疑惑の色が容易にわかる。
「え、でも貴女、今年で5年生になるのよね? 本当に有体守護霊を創れるの?」
「………論より証拠だな。実物見せたら嘘かどうか判明するだろ」
紫髪の女性の問い掛けにフィールはヒップホルスターから杖を抜き、肩越しからライアンを振り返る。
「ライアン叔父さんが作ってくれたチョーカー、此処で役立たせる」
学校外でも魔法が使えるようにしてくれた叔父に改めて感謝したフィールは幸福な記憶を思い浮かべ、杖を掲げて『守護霊の呪文』を唱えた。
「
杖先から大きな狼が飛び出してきた。
銀色の狼は会議室を1周し、主人の脇に礼儀正しく座った。
ポカーン、とモリーを初めとする人達はフィールと銀狼を見たり来たりしている。
「ど、どうやら本当みたいね………」
開いた口が塞がらないという様子で紫髪の女性は眼を見張り、ムーディはフィールの守護霊の詳細を観察する。ルーピンも守護霊が狼なので彼とフィールの守護霊はどの部分が異なるかを見極めていると、割りと沢山あった。
まず、フィールのは巨大な狼だ。その大きさは人一人くらいなら背中に乗せられるほどである。
額には魔法陣の紋章があり、耳にはフィールが着用しているイヤーカフと同じらしきアクセサリーを取り付けている。
これならハッキリと区別がつけそうだ。
「ほう、流石だなベルンカステル。最年少選手になっただけあって、申し分無い出来の良さだ」
ムーディは満足げに頷くが、モリーはまたしても食い下がった。
「で、でも………それとこれとは話が別だわ。有体守護霊は騎士団のメンバーにも創れる人はいるもの」
「ではそれ以外のスキルをテストしよう。その方が手っ取り早い。セブルスから聞いたぞ。お前は『服従の呪文』の呪いを打ち破れるそうだな」
「ええ、そうですが」
「ならば『閉心術』は扱えるか?」
「勿論、扱えますよ」
何当たり前のことを訊いてるんだ、と言いたげな口調で答えると、これまた身内と知人以外を除いた人達が眼を丸くした。
「ふむ、ならば話が早い。セブルス、ベルンカステルに『開心術』を掛けろ」
「ついでに『服従の呪文』もどうぞ」
フィールが更なる追加を言い渡すと、
「よかろう。ベルンカステル、我輩の真っ正面に来い。厳しくテストしてやろう」
スネイプが杖を出しながら、会議室に居る全員が見える場所まで移動する。
「で、でも『服従の呪文』は魔法界では法律で禁じられ―――」
「モリー、この組織が敵対するヤツらは違法の呪いで攻めてくるのだぞ。今更そんな悠長なことは言ってられん。ベルンカステルが服従の呪いを打ち破る瞬間を眼に焼き付けたら、二度と抗議はするでない」
ムーディがモリーの言葉を遮り、フィールはスネイプの真っ正面に立った。
スネイプは杖を構え、フィールは全ての感情を捨てて心を無にして閉じ、寮監の漆黒の瞳を真っ直ぐ見返した。
この場で試験官を任せるあたり、スネイプはかなりの開心術師なんだろう。フィールを気を引き締め、強力な『閉心術』を使う。
「
スネイプが『開心術』を使ってきた。
途端に、自分の中にスルリと入ってくる感覚がやって来る。僅かな隙間さえも見逃さないとばかりに効果は強く、精神を圧迫してくるが、大人しく圧されるほどフィールも甘くはない。天高く聳え立つ壁のような高さと堅さで、迫り来るプレッシャーを迎え撃つ。
幼い頃から感情を全て捨てることが出来た彼女だからこそ、誰にも突破することは不可能なくらいに強固な心のシャッターを下ろしていた。
「どうだ? セブルス」
「問題無かろう。我輩の『開心術』を完璧に防ぎきった。これなら闇の帝王ですらそう易々と破ることは出来ないであろう―――」
スネイプは『開心術』から『服従の呪文』へと即座に切り替えた。
「
圧迫感が消え去ったのも束の間、今度は幸福感が押し寄せてきた。
この上なく最高な気分になり、数多の悩みが取り払われ、これぞ至極幸福だと断言してもいい快感に身も心も溺れてしまう。
が、フィールは騙されない。
自分が今感じている快楽は偽物、フェイクのハッピーだと。
脳内で『歌え』と甘い声が響く。
それに対し、言い様のない嫌悪感を覚える。
身体と精神どちらにも反逆心を燃やし―――服従背反の意志が勝り、呪いを撃破した。
「………これは驚いた。我輩の『服従の呪文』に対しここまで完璧に抗ってみせるとは」
スネイプは驚異の眼差しをフィールに送り、杖を懐に仕舞った。
それはイコール、合格という意味だ。
今度こそ、半信半疑だった人達全員が呆気に取られてフィールを見つめた。ムーディですら眼を剥き、魔法の眼は挙動を止めている。
「スネイプ、お前は本気で掛けたのか?」
「左様。少なくとも我輩はどちらとも本気でベルンカステルに掛けた。我輩の技量がどれ程なのかは、お前もよく知ってると思うのだが?」
シリウスの問いにスネイプは冷たく返す。
どうやらスネイプは、本気で掛かってきたらしい。周りの人間の反応を見る感じ、並みの魔法使い以上であるのだろう。
それを15歳の魔女がクリアしたとなれば、驚くのも無理はない。
「ふむ。これでベルンカステルは未成年レベルの者ではないと判明したな。キングズリー、そろそろ話してやれ」
ダンッ、と杖を一突きしどよめく彼らに冷静さを取り戻させると、やっと本題に入った。
クリミアや保護者組は「よくやったぞ!」と戻ってきたフィールの背中を叩き、称賛する。しかしフィールは無表情で、フッと大きく息を吐いて腕を組んだ。
途中、ダンブルドアとスネイプはそれぞれ用事があるらしく会議から抜け出したが、フィールとクリミアは現在の情勢や状況等は他の者達から聞き及び、ある程度話し終えたところで、遅れながらの自己紹介をした。
中心になって話し合いを進めているのが闇祓いのキングズリー・シャックルボルト、同じく闇祓いでムーディが一目置いている七変化(外見を自由自在に変えられる先行的な能力)のニンファドーラ・トンクス、ならず者に詳しいならず者のマンダンガス・フレッチャー等………魔法使いからスクイブ、闇祓いやならず者までと多種多様なバラエティーに富んだ団員構成にフィールとクリミアは「流石ダンブルドアが作り上げた秘密同盟」とヴォルデモートとは正反対の思想の持ち主だと改めて思い知らされた。この場には居ないけど、ミネルバ・マクゴナガルやルビウス・ハグリッドも団員らしい。
最後に、ハリーの護送について会議をした。
固定メンバーは、ムーディ、シリウス、ルーピン、トンクス、キングズリーの計五人で後数人も護衛に当たることとなった。そうして、各自役割分担が決まったところで今日は解散。
フィールとクリミアはやっと重苦しい空間から解放され、5階の割り当てられた部屋まで階段を上がろうとしたが、
「よっ、クリミア、久し振り」
部屋を出たトンクスがクリミアの肩に手を置きながら、彼女へ笑顔を向ける。クリミアは今笑う気分ではないのだが、優しいので乾いた笑みを作る。
「ええ………お久し振りです、トンクス先輩」
クリミアとトンクスは4歳違い。
前者がホグワーツに入学した際、当時5年生だった後者とは奇抜なヘアカラー仲間、生まれつき先行的な能力の持ち主同士、関わる回数が他の先輩よりも多かったのだ。
「しっかし、驚いたよ。貴女の家族ってのが、あのベルンカステル家の人達だったなんて」
トンクスはクリミアの隣に居るフィールに視線を走らせる。
「噂で聞いてるよ、フィール。あのスネイプとも互角に戦えるんだって? ムーディと戦ったら、どっちが勝つか想像がつかないね」
「ああ、そうですか………」
フィールは気の無い返事をし、階段に足を一歩踏み出す。クリミアも「部屋で休みます」と頭を下げ、フィールの後を追い掛けた。
5階に辿り着き、ドアを開け閉めする音を立てながら二人は互いに疲れた顔を見合わせた。
「妙に疲れた」
「右に同じね」
少々ぐったりとしながら、クリミアはベッドに腰を掛ける。フィールも隣に座り、ため息をついてゴロンと寝転がった。
「………大人からすれば、私は無能な子供扱いされてるんだな」
「そんなことないわ。あのスネイプ先生ですら、貴女の実力を高く評価してるのよ?」
「………でも、知らないヤツからすれば、見せない限り半信半疑なんだろ」
フィールはふと、訝しい眼の表情で自分を見た大人達のことを考え、あることがわかった気がした。
「多分、ファッジもこういうことなんだろうな。自分の眼で実際に物を見なきゃ、どんなに真実だったとしても完璧な証拠とはならない。口先だけならなんとでも言える。………論より証拠って言葉はこういう意味なんだろうな」
「………………そう、ね」
クリミアは鬱屈そうに長い睫毛に縁取られた紫瞳を伏せ、フィールの顔を見る。
「だけど私は、貴女やハリー、ダンブルドア先生を信じてるわよ。たとえ記憶の光景を見なかったとしても、貴女達がこんな嘘をつくような人達じゃないってのは知ってるから」
「………そうか。………ありがと」
魔法界の多数は、信じてくれない。
しかし、信じてくれる人達もいる。
いずれ魔法界に住む住人達全員がヴォルデモート卿の復活を知ることになるのを願い、フィールは寝返りを打った。
♦️
不死鳥の騎士団に来てから数日間が経過。
ウィーズリー夫妻、ベイカー夫妻、ベルンカステル夫妻はそれぞれ自分達の子供を連れにブラック家から一時帰宅した。
フィールとクリミアはその間、主にトンクスやムーディといった闇祓い勤務の魔法使い達との会話を重ね、親睦を深めていく。
時間帯別に三家の夫妻は自分達の子供、その友人を連れて戻ってきた。シリウスは親に連れられてきた彼らにフィールとクリミアの時みたいにそれぞれ部屋割りする。
ウィーズリーブラザーズと共に連れてこられたハーマイオニー・グレンジャーは、自分達よりも先に居たフィールとクリミアに驚き、二人が騎士団の新入りになったと聞くと、当たり前だがあれこれ質問攻めした。他の皆も同様で、何故団員になれたのか、会議では何を話しているのか、騎士団はどんな活動をしているのか、しつこく詮索した。
当然、内容を教える訳にはいかないので二人はガン無視を決め込んでいる。彼等の気持ちはわかるが、極秘情報の密告は言語道断だというのは絶対の約束。告げることも話すことも許されない。
これを破るということは、メンバーからの信用を失う最悪の事態になりかねない。最低限面倒事は避けたいのだ。
8月に入り、フィールは今後の予定について計画を立てていた。
明日の8月2日はマンダンガスがハリーの監視をする担当日なのだが………付き合いが浅いフィールでも、マンタンガスが金儲け優先で無責任なヤツであるというのは、なんとなく察していた。
そんなヤツが見張りをするなんて、絶対悪いことしか起きない。ただでさえ不吉な予感は不運にもどストライクで命中するのがほとんどなので、フィールはさっきから胸騒ぎの警告音が鳴っていた。
(ちっ………考えても仕方ない。明日、ハリーの様子を見に行ってみるか)
要は騎士団の情報さえ教えなければ、接触することは問題無いはずだ。
そう思ったフィールは、どうか嫌な予想が外れて欲しいと思いながら、その夜は早く寝て明日のために体力を温存した。
【匂い消しチョーカー】
これでベルンカステル城以外でも魔法駆使可能となってしまったフィール。これは完全に犯罪だ!
【実力テスト】
試験官はスネイプ。
レジリメンスとインペリオのテスト。
結果→正式に認められた
【フィールの胸騒ぎ】
歩くフラグ建築家ハリー・ポッターのことだ。
彼女の独断は正しいと言えるだろう。