【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

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前半、ハリー・ポッター護送作戦。
後半、騎士団本拠地での出来事①。

※1/11、サブタイトル変更。


#68.確執【前編】

 アクシデントだらけの2日の夜から4日後。

 ハリーを不死鳥の騎士団本部へと護送するメンバーが出発した。構成メンバーは固定者五人のムーディ、シリウス、ルーピン、トンクス、キングズリーの他数人が護衛として就き、フィールも加入者となった。

 ムーディ曰く、「ベルンカステルが居ればポッターも安心するだろう」とのことだ。

 フィールは了承し、ダーズリー家に訪問する時間帯になったら彼等に『付き添い姿くらまし』をして貰って共にハリーを迎えに行く。ちなみにダーズリー一家はトンクスが郵便で出した手紙の『全英郊外芝生手入れコンテスト』で最終候補に残ったと言う、ハリーを連れ出すための虚偽の話を真に受けて現在留守中だ。

 と言うことで、ハリーしか居ないダーズリー家の玄関口にやって来た護送班は、施錠を解除する呪文『アロホモーラ』で無断侵入した。

 マグルの家に入るのは大半が初なのか、電化製品をあれこれ触ったりと興味津々な様子だ。

 

「本来の目的を忘れてるな………」

「全員警戒を怠るな」

 

 フィールはやや呆れ気味に此処に来た意味を忘れてる大人達を横目に肩を竦め、ムーディは警戒心を緩めずに杖を構える。

 次の瞬間、2階からドアを開ける音がした。

 その物音に未だ面白そうに会話してた人達もハッとし、全員が一斉に音がした方向を見る。

 

ルーモス(光よ)

 

 フィールが『照明呪文』でホールを照らし出すと、非常に警戒した様子で杖を構えたハリーの姿をハッキリと浮上させた。彼は階段下で自分を見上げている数十人の大人を見てビックリする。

 

「おい、坊主。杖を下ろせ。誰かの目玉をくり貫くつもりか?」

「ムーディ先生?」

 

 ハリーが半信半疑で訊いてきた。

 まあ、去年『闇の魔術に対する防衛術』の担当をしたムーディが実は自分とフィールを陥れようとしたバーテミウス・クラウチ・ジュニアだったので無理もない。

 

「『先生』かどうかはわからん。何せ教える機会がなかっただろうが? 此処に下りてくるんだ。お前さんの顔をちゃんと見たいからな」

「大丈夫だよハリー。私達は君を迎えに来たんだ」

 

 まだ訝しい表情で見下ろしていたハリーはルーピンの声を聞き、

 

「ルーピン先生? 本当に?」

 

 と、ようやく緊張が解けて下りてきた。

 トンクスはハリーの顔を間近で見ると、

 

「わぁぁぁ、私の思ってた通りの顔をしてる! よっ、ハリー!」

 

 楽しげな声音で気さくに声を掛けた。

 

「うむ、リーマス、君の言ってた通り、ジェームズの生き写しだ」

「眼だけが違う。リリーの眼だ」

 

 キングズリーの言葉にエルファイス・ドージが半ば同意してる間にも、ムーディはハリーが本物のハリーかを見極めてるのか、怪しむようにじっと見つめていた。

 

「ルーピン、ベルンカステル。確かに本物のポッターだと思うか? ポッターに化けた『死喰い人』を連れて帰ったら、いい面の皮だ。本人しか知らないことを質問してみた方がいいぞ。誰か『真実薬(ベリタセラム)』を持っていれば話は別だが?」

「ハリー、君の守護霊はどんな形をしている?」

「牡鹿」

 

 ハリーは緊張気味に答えた。

 

「マッド・アイ、間違いなくハリーだ」

「いや、まだわからないぞ。闇の陣営のことだ。ポッターの守護霊がどういうモノか諜報員を通じて熟知してる可能性がある。ベルンカステル、今度はお前がポッターに質問してみろ」

「私………ですか」

 

 ムーディに肩を掴まれ、ハリーの前まで押し出される。

 フィールは顎に手を当てて考えた。

 所属寮や友人の名前等も没になるだろう。

 それらの情報くらい、あちら側もちゃんと把握してるはずだからだ。

 ならば魔法界関連以外の質問ならどうかと、フィールはハリーにこんなクエスチョンをした。

 

「ハリー、アンタの従兄は4日前の夜、なんてあだ名でダドリー軍団から呼ばれてた?」

「ビッグD」

 

 ハリーは早口でアンサーする。

 ダドリーのあだ名の一つ『ビッグD』はフィールも聞いていたので、ムーディにハリーが本物であると伝えた。

 

「間違いない。正真正銘のハリーだ。彼の従兄のダドリーのそのあだ名は私も聞いたので」

 

 フィールが断言すると、全員が安堵の息をついて改めてまじまじとハリーを見つめた。

 ハリーは杖をジーンズの尻ポケットに仕舞おうとすると、

 

「おい、そんな所に杖を仕舞うな! 火が点いたらどうする? お前さんよりしっかりした魔法使いがそれでケツを失くしたんだぞ!」

「え、それマジ? 誰々?」

 

 トンクスはキラキラした瞳で尋ねた。

 

「誰でもよかろう。とにかく、尻ポケットから杖を出しておくんだ。杖の安全の初歩だ。近頃は誰も気にせん。………それに、わしはこの眼でそれを見たんだからな」

 

 ムーディは義眼を動かし、調子が悪いのを感じたのかしかめっ面になる。ルーピンは順番に此処に居るハリー・ポッター護送チームの中で初対面の人物を紹介した。ハリーは名付け親のシリウスと会い、嬉しそうにハグする。

 

「くそっ………また動きが悪くなった。あのろくでなしがこの眼を使ってからずっとだ。ハリー、コップに水を入れてくれんか?」

 

 ムーディがハリーにそう頼むと、彼は義眼を取り出した。

 

「マッド・アイ、それって気持ち悪いわよ。わかってるの?」

「仕方ないだろう。―――や、どうも」

 

 ムーディはハリーから水の入ったコップを受け取り、魔法の眼を水に浸け、指でつついて浮き沈みさせる。

 

「帰路には360゜の視野が必要でな」

「どうやって行くんですか? ………何処へ行くかは知らないけど」

「箒だ。それしかない。君は『姿現し』には若すぎるし、『煙突飛行ネットワーク』は見張られている。未承認の『移動キー』を作れば、我々の命が幾つあっても足りなくなる」

「リーマスが君はいい飛び手だと言うのでね」

「ああ、素晴らしいよ。とにかくハリー。部屋に戻って荷造りした方がいい。合図が来た時に出発出来るようにしておきたいから」

「………とのことだ。行くぞハリー」

 

 フィールはハリーを促し、2階に行く。

 ハリーは慌ててフィールの腕を掴んだ。

 

「なんだ?」

「あ、いや、その………僕の部屋、結構散らかってるから………」

 

 ハリーは4日間自室に閉じ籠っていたので、後片付けなどする気にもなれなかったのだ。同級生の女の子にそんな部屋を見られたくはないとハリーは引き留めるが、

 

「なんだ、そういうことか。安心しろ。私がアンタの散らかってるっていう部屋、整理整頓してやるから」

 

 フィールは事も無さげに階段を上がっていき、ハリーの部屋だと思われる扉を開け、問答無用で明かりを点けて中に入る。

 本はほとんど全部床に散らばっていて、ペットのフクロウ・ヘドウィグの鳥籠は掃除していなかったのか、悪臭を放ち始めている。トランクは開けっ放しで、マグルの服やら魔法使いのローブやらがごちゃ混ぜになって周りの床にはみ出していた。

 フィールは杖を引き出し、一振りする。

 すると、部屋全体の物が魔法の力でひとりでに動き出し、あっという間に綺麗になった。トランクからはみ出ていた衣類を丁寧に畳み、その中に学用品も詰め込んだ。ついでにヘドウィグの鳥籠の中も清潔にする。

 

「これでよし。忘れ物はないな?」

 

 ポカーン、と突っ立ってたハリーは慌てて大きく頷き、「ありがとう」を何度も礼をする。

 フィールは小さく頷き、トランクとヘドウィグの鳥籠を持って部屋を出る。ハリーは2年前にシリウスからクリスマスプレゼントで贈られてきた最高級の箒・ファイアボルトを右手に、後に続いて階段を下りた。

 キッチンには義眼を戻したムーディが居て、キングズリーとスタージス・ポドモアは電子レンジを調べ、ヘスチア・ジョーンズは引き出しを引っ掻き回してる内に見つけたジャガイモの皮を剥くピーラーを見て笑っていた。

 今からハリーを味方本拠地までエスコートする重大な任務が始まるっていうのに、なんなんだろうか、この緊張感の無さは。

 ………まあ、肩の力を抜くのは悪くないが。

 もう少し危機感を持って欲しいな、とフィールは思った。

 

「よし、あと約1分だと思う。庭に出て待った方がいいかもしれないな。ハリー、叔父さんと叔母さんに心配しないよう手紙を残し―――」

「心配しないよ」

「君は安全だと―――」

「ガッカリするだけだよ」

「そして、君がまた来月の夏に帰ってくるって」

「そうしなきゃいけない?」

 

 ルーピンは微笑んだが、何も言わなかった。

 それを尻目にフィールは、4日前騎士団との連絡手段で役立った両面鏡を取り出し、本部で待機しているクリミア達に「今からそっちへ向かう」と前もって伝達し、ハリーのトランクとヘドウィグの鳥籠を、彼が割り当てられている部屋に配送した。

 フィールが一息つき終えた頃には、ムーディがハリーに『目くらましの術』を掛け終えたところであった。透明マントだと飛行中に風の影響を受けて脱げてしまうからだ。

 

「行くぞ」

 

 フィールは気配でハリーが何処に居るかを察知しながら、杖を右手に、ファイアボルトを左手に裏庭へのドアを開けたムーディに続いて月夜の外に出る。

 

「ポッターの荷物はどうした?」

「さっき、ブラック邸で彼が割り当てられている部屋まで配送しました。私達の誰かが持っていても、ただの足枷になるだけなので」

「うむ、その通りだな。中々気が利くでないか」

 

 ムーディとフィールがそんなやり取りをしていると、どうやら全員が芝生に出たようで、いつでも飛び上がれるようスタンバイしていた。

 

「明るい夜だ。もう少し雲で覆われていればよかったのだが………。よし、ポッター、来い」

 

 ムーディは大声でハリーを呼んだ。

 

「わしらはきっちり隊列を組んで飛ぶ。ベルンカステルは先頭を飛べ。お前なら問題無かろう。トンクスは真ん中だ。しっかり後に続け。ルーピンは下、シリウスは上をカバーする。わしは背後に居る。他の者はわしらの周囲を旋回する。何事があっても隊列を崩すな。わかったか? 誰か一人が殺されても―――」

「そんなことがあるの?」

「―――他の者は飛び続ける。止まるな、列を崩すな。もし、ヤツらがわしらを全滅させてお前が生き残ったら、ハリー、後発隊が控えている。東に飛び続けるのだ。そうすれば後発隊が来る」

 

 心配そうなハリーの問いはスルーされた。

 

「全員箒に乗れ、ファーストシグナルが来た」

 

 先頭で立って見上げていたフィールが赤い花火が打ち上がってるのを見て、前衛隊全員に聞こえるよう声を張り上げた。

 その合図に皆は箒に跨がる。

 続け様に今度は緑の花火が真上に高々と噴き上がったのを捉えた瞬間、先陣切ってフィールは地面を強く蹴り出し、時折夜風が吹く大空へと飛び立った。

 そのまま上空を昇っていき、用心深いムーディの指示で進路を変えながら飛び進む。何事も慎重に物事を進める彼のことだから、予め安全ルートを下見して飛んできたのかもしれない。

 そう考えるフィールは身体が凍えてきたのを肌で感じた。この季節と言えど、山と同じで上空はかなり冷える。

 フィールは少し急ぐかと、ファイアボルトの性能を最大限発揮して一直線に飛ぶ。

 そして下降開始の時間になり、一気に急下降して小さな広場の芝生の上に着地した。トンクスに続いて急降下したハリーも箒から降り立ち、寒そうに震えながら、

 

「此処は何処?」

 

 と誰にともなく問い掛けた。

 が、誰もその質問には答えず、「あとでね」とルーピンが言った。

 ムーディはマントの中からダンブルドアから拝借した『灯消しライター』という外見は普通のライターだが鳴らすと近くにある灯りを吸収することが出来るダンブルドアが設計した品物で広場の街灯が全部消えるまで、カチッを繰り返した。

 

「ダンブルドアから借りた。これで窓からマグルが覗いても大丈夫だろうが? さあ、行くぞ」

 

 ムーディは『灯消しライター』をポケットに仕舞うとハリーの腕を掴み、道路を横切って歩道へと引っ張っていく。ムーディ以外の護衛員は全員杖を掲げて磐石を固めた。

 

「ねえ、リーマス。フィールって、見た目に反して結構度胸あるんだね」

 

 トンクスは陣頭で杖を掲げながら歩いていくフィールに、隣に居たルーピンにヒソヒソと小声で話し掛ける。

 

「ああ、あの娘は大人顔負けの勇気と度胸がとてもある。責任感も強いから、彼女がもしもホグワーツ卒業していたら、今頃は危険な軍事任務に着任し、遂行していただろう」

 

 フィールへの評価は非常に高い。

 ルーピンはどこか惜しい気持ちで彼女の背中を見送る。

 一方、ムーディも彼と同じ気持ちであった。

 

(ベルンカステルがポッターと同い年だとは信じられん………本当に齢15歳の学生かどうかを疑うレベルだ。もしも闇祓いになるとなったら、スピード昇格はまず間違いない………)

 

 胸中で、フィールがもう少し上の年齢だったら即戦力として心強かったと、まだ学生の身分故に掛けられている制限条件に歯噛みした。ムーディとしては今すぐにでもフィールをデンジャラスミッションに出向かせたいのだが、後2年間は学業最優先事項なのでこればかりは諦めるしかない。

 

「急いで読め、そして覚えてしまえ」

 

 気持ちを切り替えたムーディはブラック邸の前に立ち止まると、『目くらましの術』が掛かったままのハリーの手元に羊皮紙を押し付け、自分の杖明かりを手渡したそれの側に寄せて見えるようにした。

 

「何ですか? この騎士団って―――」

「此処では駄目だ! 中に入るまで待て!」

 

 ムーディはハリーから羊皮紙をひったくり、火を点けて完全燃焼する。ルーピンが11番地と13番地の間に現れたブラック邸の扉を杖で叩くと大きな金属音が中から聞こえ、黒塗りの扉が開いた。

 

「早く入るんだ、ハリー。ただし、あまり奥には入らないようにね。後、何にも触らないように」

 

 ルーピンはハリーを急かす。

 ハリーは敷地を跨ぎ、ホールに入った。

 その後を騎士団員が進み、フィールも中に入り最後にムーディが盗んだ街灯の明かりを元に戻してドアを閉める。

 これにて、ハリー・ポッター護送作戦はミッションクリアだ。

 

「皆、じっとしてろ。わしが此処に明かりを点けるまでな」

 

 ムーディは壁についている蝋燭を灯した。

 玄関ホールが蝋燭の弱い光で照らされる。

 急ぎ足にやって来る音がして、ホールの一番奥の扉からモリーが現れた。

 

「まあハリー、また会えて嬉しいわ!」

 

 モリーはハリーを強く抱き締めた。

 

「痩せたわね。ちゃんと食べさせなくちゃ。でも残念ながら、夕食までもうちょっと待たないといけないわね」

 

 モリーは後ろの魔法使い一団に言った。

 

「あの方が今しがたお着きになって、会議が始まっていますよ」

 

 それを聞いて彼らはハリーの脇を通り過ぎて先程モリーが出てきたドアへと入っていく。ハリーはシリウスとルーピンについていこうとしたが、モリーが引き止めた。

 

「駄目よ、ハリー。騎士団のメンバーだけの会議ですからね。ロンもハーマイオニーも上の階に居るわ。会議が終わったら夕食だから、それまでお待ちなさい」

 

 モリーはハリーを引き連れて2階へと上がって案内した。

 フィールは一団に続き、厨房へと入る。

 上座にはダンブルドアが座っていて、ほとんどのメンバーが着席していた。

 

「ポッターの護送は無事完了だ。支援班から聞いた話では死喰い人の姿は何処にも居なかったらしいが、無論油断大敵だ」

 

 ムーディが代表でダンブルドアに報告した。

 

「皆のもの、よくやってくれた。ハリーの身柄は此処不死鳥の騎士団本部で匿う。警備の者は引き続き警戒を解かないように。他の者は自分の任務に戻ってよろしい。さて、ムーディよ。ハリーの護送時の様子を詳しく教えてくれんかの」

 

 ダンブルドアの言葉にムーディが口を開こうとした瞬間、上の階からハリーの大声がこちらまで響き渡った。ほどなくして、モリーが厨房に入ってくる。その顔は、不安げだった。

 

「大方、溜め込んでいたストレスをロンとハーマイオニーにぶちまけてんだろ。………ま、無理もないけどな」

 

 椅子に座ったフィールが腕を組みながら天井を見上げて眼で示し、厨房全体を見渡す。

 

「静かにさせてくるわ。気が散るもの」

 

 エミリーが率先して椅子から立ち上がり、厨房を出て2階へ上がっていく。それを見て、フィールやライアン達は久々にエミリーの雷が落ちるかもしれないと、怒ったら滅茶苦茶怖い彼女の剣幕を思い浮かべてどこか遠い眼差しで仰ぎ見ながら「御愁傷様」と心の中で呟いた。

 

「フィールよ、君には感謝せんといけない。4日前の君の行動が、我々騎士団の動きを維持するよう守ってくれた。後はゆっくり休みなさい」

 

 フィールは無表情で、一応は頷く。

 ………これから先、休む暇なんてないだろう。

 騎士団の一員である以上、避けては通れぬ道なのだから。

 椅子に深く座り直すと、フィール達の予感は命中し、今度はエミリーの怒鳴り声がビリビリと響いてきた。流石にその迫力にはハリーも鳴りを沈めたらしく、シンとした。

 

「………やっぱり、あの人が怒ると怖いよな」

 

 普段が普段なだけに、一度怒るとヤバい。

 背筋に冷や汗が流れたフィールの呟きに、同じくヒヤヒヤしていたライアンやクリミアは同感なのか、小さく頷いた。

 

♦️

 

 その後、本部で待機していた団員達が護送チームが帰還してくるまでに会議をしていた議題の説明を施したところで夕食の時間となった。

 夕食の準備が出来て、一同は食堂で食事を進める。食事中でも話題として上がったのは、ハリーの護送中のことだ。異常事態はなかったか、怪しいヤツはいなかったか等。話題の中心になっているハリーは、次第にシリウスとの会話が少なくなったことと重なって、酷く不機嫌な顔になっていった。

 デザートの時間も終わり、モリーは就寝時間だと言ったが、シリウスがそれを遮り、ハリーと向き合った。

 

「驚いたよハリー。てっきり私は、君が此処に着いたら真っ先にヴォルデモートのことを訊いてくるだろうと思ったのだが」

「訊いたよ! ロンやハーマイオニー、クシェルに訊いた。でも、皆は騎士団に入れて貰えないから詳しいことは何も知らないって」

「皆の言う通りよ。貴方達はまだ若すぎるの」

 

 シリウスの疑問にハリーは憤慨しながら答え、モリーが口を挟んだ。

 

「モリー、騎士団に入っていなければ質問してはいけないと、いつ決まったんだ? ハリーはあのマグルの家で1ヶ月間も閉じ込められていたんだ。何が起きているのか知る権利がある」

「ちょっと待った! なんでハリーだけが質問に答えて貰えるんだ? 僕達だってこの1ヶ月間、皆に散々質問してきたのに何一つ教えてくれなかったじゃないか!」

 

 フレッドが大声で文句を言うが、モリーはそれを無視してシリウスとまた口論する。シリウスはハリーに騎士団やヴォルデモートのことを教える必要があると言い、モリーは未成年で騎士団にも入っていないのだから不用意に教えるべきではないと主張。正反対の意見がぶつかり合い、時間経過と共に言い争いが激化していくように感じられた。

 

「ちょっと待ってよ! 僕が駄目なら、どうしてフィールは一員なんだ? それに学校外でも普通に魔法を使った! そんなのは不公平だ!」

 

 ハリーはフィールを睨み、巻き込ませた。

 彼女は大きくため息をつく。

 

「確かにフィールは君達と同じ未成年だ。でも彼女の場合は強力な闇の魔術に対抗する実力者だとダンブルドアが認めているから、特例として加入が許されている」

 

 ルーピンが窘めるように言うが、

 

「だから魔法を扱っても許されるっていうの? 僕には駄目だって―――」

「未成年魔法使いが魔法行為を学校外で使用してはいけないのは知っているだろう? それは『匂い』と呼ばれる『17歳未満の者の周囲での魔法行為を嗅ぎ出す呪文』がつけられているからだ。成人魔法使いになれば消えるものだが、君はまだ17歳を迎えていない。君がもしも4日前にリトル・ウィンジングで『守護霊の呪文』を使っていたら、今頃は魔法省に不当な扱いを受けていただろう」

 

 匂い消しチョーカーの発明者・ライアンが、わかりやすくハリーに教えた。

 

「今の時勢、君とフィールは特に危ない状況下で生活している。もしもフィールが何処かほっつき歩いていたら、それこそ魔法省の人間や死喰い人に狙われていたかもしれない」

「じゃあなんで僕にはダーズリー家で1ヶ月間も過ごせっていう扱いなんだ! フィールと僕はまるで皆からの扱い方が違う! フィールは騎士団の近くで守られてるし魔法を使っても咎められない! 4日前、フィールは僕に言った! 『決して皆はアンタをほったらかしにしてる訳ではない』って! なのにこの有り様だ! 結局は口先だけ―――」

「煩いッ! 黙れッ!」

 

 バンッ! とフィールはテーブルを叩いた。

 目の前で口論する光景に呆れていたところに自分も巻き込まれ、挙げ句の果てにウソつき呼ばわりされて、我慢の限界がピークに達した。

 ハリーはビクッとし、この場に居た人達もフィールの剣幕に驚きを隠せない様子で黒髪の少女を見た。

 

「ハリー、アンタの気持ちは痛いほどわかる。私だって騎士団に加入した当初は子供扱されて正式に一員として認められなかったんだぞ。いつまで経っても幼稚な扱いをされるなんて、こっちだってゴメンだ。だけどな………こっちの事情を何も知らないクセして、ウソつき呼ばわりされる筋合いはない!」

 

 感情の赴くままに叫び、椅子を蹴るように立ち上がると、呆然としながら注目する彼らを尻目にフィールは厨房を出ていこうとした。

 が、そんな彼女へ向かって、ハリーは思わず、こんな発言を口走ってしまった。

 

「だったら、僕をほったらかしにしてくれてたらよかっただろ! 君だって本当は皆で此処に隠れて吸魂鬼に襲われた僕を笑い者にしてたんだ! そうだろう!?」

 

 その言葉に―――フィールは立ち止まった。

 拳を握り締め、歯をギリギリ食い縛る。

 だが、心に受けた衝撃には覚めなかった。

 

「………ああ、そうかよ。だったら、もう私に話し掛けてくるな。お前を笑い者にしてたっていう私なんかに」

 

 低く冷たい声音でフィールは振り返らず、バタンッ! と荒々しく厨房から出ていった。

 ハリーは肩で息をしてフィールが出ていった方向を見ていたのだが………やっとのことで思考が追い付いたハーマイオニーが、今にも泣きそうな顔で腕を掴んだ。

 

「ハリー! 貴方、フィールになんてこと言ったのよ!? フィールが貴方を笑い者になんてする訳ないじゃない!」

「そうだぜハリー! フィールがマルフォイみたいなヤツなんかじゃないって3年前に僕に言ったのは君だろ!?」

 

 続いてロンもハリーへ向かって叫んだ。

 

「吸魂鬼に教われた君がまた襲われたりとかしないかが心配で、翌日の3日前から今日此処に連れてくる日までフィールが君を見守ってたって、知らないのか!?」

 

 親友の口から出た聞き捨てならないセリフに、ハリーは瞠目した。

 

「フィールが? 僕を見守ってた? そんなの、何かの冗談じゃ―――」

「いいえ、本当よ。フィールったら、寝る暇も惜しんで貴方の親戚の家の近くで、貴方や貴方の叔父さん叔母さんに気付かれないように、ずっと陰で警護してたのよ」

 

 眼に涙を光らせたハーマイオニーが肯定する。

 

「私達皆が、自分の身体を壊してまで無理をする彼女を止めようと必死だったわ。ハリー、覚えているでしょ? フィールが、吸魂鬼の影響力が貴方と同じく人一倍酷いの。あの夜、騎士団との会議が終わったら、夕食摂らないで部屋で休んだのよ」

 

 ハーマイオニーから裏側の事情を教えられ、ハリーはだんだん自分がやらかした行為の重大さに責められる感覚に陥った。

 

「寝不足で疲労とストレスが溜まってたところに貴方にあんなこと言われて………フィール、凄く傷付いてるわよ。だから、早く謝―――」

「そんなの知るか! 僕が4週間もどんな気持ちでダーズリー家に居たか、何にも知らない君らに悪者扱いされる義理なんてない!」

 

 が、それを認めたくないあまりハリーは大声でハーマイオニーの言葉を遮り、居たたまれなくなった彼も厨房を出ていき、自分が割り当てられている部屋に向かった。

 

「ちょっ、ハリー!」

「待ってくれ!」

 

 ハーマイオニーとロンが慌てて追い掛けようとするが、

 

「今はそっとしてあげなさい」

 

 と、クシェルの母親・ライリーがキッパリと言い放った。

 

「でも………!」

「君達の気持ちはわかるが、今はフィールちゃんとハリー君がそれぞれ落ち着くのを待つんだ。お互いに思うところがあったために、すれ違っただけだ」

 

 ライリーの夫・イーサンは諭すように二人へ言うが、納得はしてない顔だった。

 嫌な空気が厨房内に流れる。

 数分間は誰も口を開かないでいたのだが………最初に沈黙を破ったのは、ウィーズリー家の大黒柱・アーサーだった。

 

「………シリウス、モリー。ダンブルドアに、ハリー達にも全体的な情報であれば伝えるのは許可を願えないか、一度頼んでみないか?」

「貴方! 何を言って―――」

「………そうだな。そうしよう」

「シリウスまで!」

「モリー。元はと言えば、私達がハリー達の前で争論したのが原因だろう? フィールだって言ってたじゃないか。いつまでも子供扱いされるなんてゴメンだって。今、ハリー達は大人へ近付こうとしている年頃だ。過保護なのは悪いことではないだろうが、だからといって、これから先もずっと甘やかしていられる時期ではないだろう? ヴォルデモートが復活した以上、彼らにも現状を把握しておかなければ、後にどのような目に遭うかは火を見るよりも明らかだ」

 

 重苦しいトーンで語ったシリウスの将来を見据えた発言に、モリーは口を噤む。反論しようとするが、言葉が見つからないようだ。黙ったままのモリーに、シリウスと同意見のアーサーやルーピンがどうにかして説得し―――最終的にはダンブルドアと一度議論し、騎士団の総司令官に判断を仰ぐことを決断した。




【ハリー・ポッター護送作戦】
シリウスとフィールが追加しただけでそれ以外は特段原作と変わらない。

【プロからの評価が高いフィール】
ホグワーツ卒業してたら今頃即戦力としてバリバリ活躍してた。

【大喧嘩するダブル主人公】
互いの感情をぶつけて確執が生まれた。

【まとめ】
今回はダブル主人公絶交状態になる回。
次回は本拠地での出来事②の回。
最近クシェルの出番全然ないですが後で沢山出てくるのでもうしばらくお待ちください。
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