【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

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騎士団本部での出来事②。

※1/11、サブタイトル変更。


#69.確執【後編】

 ハリーが騎士団本部に来てから数日が経過。

 8月6日に大喧嘩したフィールとハリーは、互いに顔を合わせようともしなければ、一切口も利かなかった。

 前者は後者を警護するのが役目だ。

 なので出来るだけ早く仲直りして貰いたいのが騎士団員達の本音である。

 組織の中で最もハリーと近い人物なのだ。

 彼女が彼の傍でガーディアンとして働いてくれれば大助かりなのだが………確執による亀裂が生じたすれ違いというものは、そう簡単には修復されない。

 誰もが譲れない私情があるのは仕方ない。

 人間という生き物に生まれた以上、人間との関わり合いが上手くいかなくて関係がひび割れてしまうのは、一度や二度は必ずしも経験する、人生における通過地点だ。

 

「もう~っ! フィー! ハリー! ギスギスした雰囲気で此処に居ないでよ!」

 

 ある日、刺々しい空気を発したまま、部屋の隅と隅で顔を背けるフィールとハリーへ、寒々しい空間に耐えかねたクシェルがそう言った。

 

「「クシェル煩い。黙っててくれ」」

 

 同時にフィールとハリーがクシェルを見て、同時に辛辣な発言をかました。

 あ、ハモった。

 なんて呑気なことは言えない。

 

「ヒドイ! 二人共、なんでそういったことだけは考えること一緒なのさ!」

「………………」

「………………」

 

 刹那、交錯する蒼と緑の視線。

 その僅か1秒後には双方がパッと外し、自室で本でも読もうと、二人はドアに向かう。

 

「………………」

「………………」

 

 扉前で立ち止まるフィールとハリー。

 どちらも口は開かず無言だったが、このままでは埒が明かないので、

 

「さっさと行けよ」

 

 冷たい言い草でフィールが先を譲った。

 ハリーはキッと鋭い目付きになるが、

 

「ご親切にどうも」

 

 素っ気なく礼を言って、ドアを開ける。

 ハリーはフィールが退室する前に、バタンッとドアを閉めて仕返しした。

 チッ、と舌打ちしたフィールは至って普通にドアノブに手を掛けて軽く押し、廊下に出たら5階の自室まで階段を上がった。

 

「はぁ~………これ、完全にダメだね………」

 

 二人が居なくなり、どっと全身に張っていた緊張感が解けたクシェルは頭が痛いとばかりに額に手を当て、深いため息をつく。

 

「ええ………早く仲直りして欲しいわ」

 

 それまで黙って成り行きを見守っていたハーマイオニーがベッドの上に座って壁に背を預けながら、膝の上で甘えてくるペットのクルックシャンクスの頭を撫でる。

 

「なあ、何かいい方法ってないのか?」

 

 ロンがダメ元でも構わないから良案はないかとハーマイオニーとクシェルに振ってみるが、二人は渋顔になる。

 

「あるんだったら、とっくに動いてるわよ」

「うん………なんて言うか、もう少し時間を置いてからにすればよかったんだけど、タイミング間違えちゃったせいで、余計二人共顔合わせしづらいんだと思う」

 

 あの日―――不死鳥の騎士団の総司令官・ダンブルドアに事情を説明し、ハリーを初めとする団員じゃない彼らにも組織が持ち得る全体的なインフォメーションならば告げ知らせても問題は無いかと、判断を仰いだ。

 結果としては『許容範囲ならば了承する』との指令だったので、1時間後にフィールとハリーを厨房に連れてきて、そのことを伝えた。

 半信半疑であったハリーにシリウスが何が知りたいかと質問すると、一瞬で真実だと知った彼は多くの質問をぶつけた。

 1ヶ月間、溜まりに溜まったものを吐き出すように『ヴォルデモートは何処に居るのか』『何を企んでいるのか』『何か事件は起きていないか』『騎士団は何をしているのか』等を訊くハリーにメンバーは丁寧に回答した。

 

 ここまでは、まだよかった。

 タイミングを間違えたのは、最後の最後だ。

 ラストに、ヴォルデモートが前回猛威を振るっていた時には持っていなかった物。それを求めて極秘に動いているとシリウスが告げ、当然の如くハリーは追及したのだが、これ以上の情報を教えるのは許容範囲ではないとモリーに遮られ―――そこからまた、未成年魔法使いのフィールへ対する不公平さを蒸し返してしまい、険悪なムードに逆戻りしてしまったのだ。

 

「あー………それは言えるかもな。ママ、あんなにもガミガミ言わなきゃよかったのに」

 

 フィールとハリーが仲違いする原因を作った一人が母親のモリーなので、息子のロンは無意識の内に申し訳ない表情になる。

 

「………でも、モリーさんの気持ち、少しはわかる気がするわ。モリーさんはハリーとフィールのことを自分の子供同然に思ってるから、きっと二人を危険な目に遭わせたくないのよ。もしも私が同じ立場だったら、過剰なくらい保護的になると思うわ」

 

 モリーはハリーとフィールのことを息子・娘みたいに可愛がっている。

 前者はともかく、後者に対しては最初、兄弟二人を殺した死喰い人や闇の帝王・ヴォルデモートの出身寮と同じ寮に所属している関係で嫌悪感を持っていたが―――3年前、秘密の部屋関連の事件で一番の被害者となった娘・ジニーをハリーと共に救ってくれたことでフィールへの見方が変わったモリーは『娘の命の恩人』と心底感謝し、今ではすっかり温かく接するようになった。

 

「そうだけどさー………あんまりしつこいと、イヤになるぜ?」

「それでもよ。モリーさんは両親がいないハリーとフィールを気に掛けてるのよ」

 

 クシェルとロンは「あ………」となる。

 ホグワーツではそれぞれ『グリフィンドールの英雄』『スリザリンの女王』と人気が高いハリーとフィールだが、実は二人は悲惨な過去の持ち主なのだ。

 ………あの二人は、他の生徒には無い闇を抱えてるのだ。モリーはそれを気に掛けているのかもしれない。

 

「………ルーク、言ってたわよね。『昔のフィールは笑顔が多くて明るかった』『お母さんにべったりの甘えん坊さんだった』って。今でもちょっと信じられないけど………そういう娘だったフィールがあんなにも豹変したってことは、それだけフィールはショックだったってことよね。………今なら、どうして自分を大切にしないかの真意がわかる気がするわ」

 

 ルークから聞いた昔のフィールと現在のフィールを比較し、ハーマイオニーは暗い面持ちになる。

 

「………フィールは、自分が誰かの身代わりになるのが当たり前って思ってるのかもね。例え自分の身体が壊れても、大怪我をしても、心配してくれる人は誰もいないって思い込んでるから、危険に身を投じることに躊躇しない………」

 

 そこまで言ってハーマイオニーはハッとし、慌ててぎこちない笑みを作る。

 

「ごめんなさい、今のは忘れて」

「………ああ」

「………うん」

 

 ロンとクシェルは何とも言えない表情で、ハーマイオニーが言った言葉の意味を探る真似は自重して控えた。

 

「………止めましょ、この話は。今はハリーとフィールが仲直りする方法を考えましょ」

「そうだな、そうしよう」

 

 重くなった空気を払拭しようと、ハーマイオニーの最優先事項の提案に、ロンがパンと手を叩きながら賛成する。

 流石はムードメーカー的存在のロンだ。

 彼のおかげで、息苦しさを感じるほど重苦しかった場の雰囲気がガラリと変わった。

 

「どうやって仲直りさせる?」

「それを今から考えるのよ。最低でも、新学期に入る前には仲直りさせましょ」

 

 ロンとクシェルは、ハーマイオニーが座っているベッドに腰掛ける。クルックシャンクスの頭を優しく撫でながら、ハーマイオニーは思考をフル回転させた。

 

「まずハリーがフィールへ対してあんな発言をしたのは、どちらとも『あの人』から狙われているのに、1ヶ月間も親戚の家に居て何も知らされなかった自分と違い、此処で匿って貰っていたことに不公平さを感じてるから。これだけは決定的よね」

「でも、それは仕方ないだろ? ダンブルドアから『ハリーには何も伝えるな』って言われたんだからさ」

「確かにそうだけど、ハリーからすれば自分は除け者にされてるって捉えてしまうのよ」

「だね。それにフィーは騎士団の一員だけど、ハリーは騎士団に入れない。そういうのもあって仲間外れにされてるって思っちゃうんだよ」

 

 ハーマイオニーとクシェルの言葉に、ロンは難しい顔になる。頭ではわかるが、心では納得しづらいという感じだ。

 

「とにかく………ハリーとフィールは、闇の陣営だけじゃなく、魔法省からも異端児扱いされているわ。クシェルのお父さんやフィールの叔母さんが言ってたじゃない。『あの吸魂鬼は「あの人」が派遣したんじゃなくて、魔法省に勤めている誰かかもしれない』って」

 

 8月2日、午後9時23分。

 アズカバンから遠く離れたマグル界のリトル・ウィンジングでハリーは吸魂鬼に襲われた。

 吸魂鬼は魔法省が管理しており、彼等と手を組んでアズカバンの看守をしているが、ヴォルデモートが復活した今、既に数体は闇の陣営に寝返っているとの情報だ。

 しかし、まだ大半は闇の陣営に加担してない。

 英国魔法省に勤務するイーサンやエミリーは、もしかしたら自分達の勤務先にハリーを退学させるきっかけを作るためリトル・ウィンジングで彼を襲うよう命令した役人がいるかもしれないと、現在騎士団からの任務で調査中だ。

 

 ………実はリサーチしている二人には、もしかしたら『あの人』が派遣したのではないかと、粗方予測は立っているのだが。

 それを説明するには、ある出来事を片っ端から話さなければならないので、二人以外にも大体予想している人達は、暗黙の了解で胸の内側に仕舞って敢えて今は何も言わなかった。

 

♦️

 

 上階で三人が話し合っている一方―――。

 地下にある厨房もとい会議室では、数人の大人達が集まっていた。

 ライアンとシリウスは死喰い人を少しでも減らすため駆除しに危険を冒して出向き、イーサンとエミリーは魔法省で調査中、ライリーとクリミアは聖マンゴ魔法疾患傷害病院で前者が後者の試用期間を手伝っている等、各自諸事情がある彼らは此処には居なかった。

 

「早く二人共和解して欲しいわね」

「ああ………そうだな」

 

 万が一トラブルが起きた場合にすぐ動けるよう待機組のセシリアとルーピンは向かい合わせに座り、いつでも対処出来るようスタンバイしつつ、天井を仰ぎ見て顔を見合わせた。

 

「あの二人がケンカをするなんて予想外だから、ビックリしたよ」

「私もよ。あんなにも仲良しだったのに、大喧嘩するなんて驚いたわ」

 

 ルーピンとセシリアは同い年で学生時代は他寮の同級生という関係だ。

 当時、グリフィンドールの男子監督生とハッフルパフの女子監督生に選ばれた二人は5年時に知り合い、ハッフルパフ男子監督生に選ばれたライアンとはその前から知り合ってた。

 

「しっかし、ジェームズの子供とクラミーの子供が友達関係だって本人達が聞いたら、どんな反応をしたんだろうな」

 

 悪戯ばかりして素行が悪かったジェームズ。

 誰もが尊敬する超優等生であったクラミー。

 ジェームズがスネイプに理由の無いイジメをした時は先輩のクラミーが他寮の彼を窘め、同寮の後輩を庇ったことがしばしばあった。

 お世辞にも仲が良かった訳ではない二人だったのだが………その二人の子供は何故か仲が良いのだから、不思議な因縁があるものだ。

 

「きっと微妙な顔をしたでしょうね。ジェームズもクラミーも。リリーは喜んだと思うけどね。ジャックだったら………まあ、半々かしら?」

 

 セシリアは想像した光景を思い浮かべてひとしきり笑い、ルーピンも笑った。

 ………しかし、その笑みはたちまち消える。

 ジェームズもクラミーも………リリーもジャックも………皆、もうこの世には居ないのだ。

 大事な親友二人と大切な家族二人を失ったルーピンとセシリアは、重いため息を吐く。

 やるせない気持ちが渦巻き、気分が沈んだ。

 

♦️

 

 夕食時間には必ず顔合わせしないといけないのが、フィールとハリーにとっては辛いことで。

 美味しそうな料理を前にしても尚、二人は長テーブルの端と端でぶすくれた顔をしながら椅子に座って腕組みしたり、頬杖をついてる。

 険悪なムードが厨房全体に充満していて、そこに居座る人達は自然と無言だった。状況が状況なだけに誰も手をつけようとせず、中々食事が始まろうとしない。

 そんな雰囲気を和らげようとしたのか、

 

「おいおい、せっかくの楽しい時間なんだぜ? 辛気臭い空気はこの場に似合わないだろ?」

「そうだぜ。ほら、早く食べようぜ! 美味しそうな料理が俺達を待ってる!」

 

 フレッドとジョージがいつもの調子で明るく取り繕い、ホグワーツみたいにバイキング形式の大皿に盛り付けられたパンやソーセージを取ってガツガツ食べる。

 二人のおかげで幾分厨房内は和み、皆は内心で感謝しながら、彼らもそれぞれ食べたい料理を取り分け用の皿の上に載せて食べ始めた。

 フィールとハリーは黙ったまま、ジュースを半分ほど飲み、遅れて料理を口にする。

 ウィーズリーツインズを中心に賑やかに食事を進める一方で、テーブルの隅と隅が暗いのに堅苦しいことが大嫌いなフレッドが、頬張っていたパンを飲み込んでズバリ言った。

 

「お前ら、まだ仲直りしてないのかよ? お前らがそんなんじゃ、料理が不味くなるだろ」

「おい、フレッド、それは流石に―――」

 

 ウィーズリーツインズのフレッドとジョージは家族でさえ見分けがつかないほど瓜二つの外見だが性格には若干違いがある。

 フレッドは弟よりも行動的で積極的、ストレートに毒舌を吐くヤンチャな性格だが、ジョージは兄よりも冷静沈着で、周りを気遣う発言が多い温厚な性格だ。

 ジョージはフレッドがフィールとハリーに吐いた毒に慌てて宥めようとしたが、

 

「………わかった」

 

 部屋に戻る、とフィールとハリーはジュースを一気に飲み干し、ガタッと椅子から腰を浮かしてドアに向かう。

 皆唖然とする中、扉に近かったフィールが先に厨房を出ると昼間の仕返しとして、ハリーが出る前にバタンッと扉を閉めた。

 ハリーはイライラして小さく舌打ちしつつ、再びドアを開けて廊下を突き進み、階段を駆け上がった。

 

「フレッド、お前のせいで余計悪くなったぞ」

「オレは事実を言ったまでだ」

 

 そうは言うものの、フレッドはしかめっ面で唇を噛み締めていた。

 

「………やっぱ、もうちょい別の言い方をすればよかったかもな」

 

 今更後悔しても、済んだことは仕方ない。

 フレッドは少しシュンとして肩を落とした。

 

「ほっとけ、ほっとけ。しばらくすりゃ、アイツらも機嫌直るって」

 

 重い空気を吹き飛ばすようにライアンとセシリアの息子・ルークが笑い、双子の妹のシレンも「そうよ」と頷く。

 

「私としては、これでわかったことがあるわ」

「ん? なんだ?」

「フィールも些細なことで友達と喧嘩するようになったんだなあって。ほら、言うじゃない? 『喧嘩するほど仲がいい』って。お互いに興味や友情がなかったら、そもそも喧嘩しないわよ」

 

 些細かどうかは別として、シレンのポジティブ発言に、皆は「そうだな」とネガティブばかりな物事ではないと思うようにした。

 

「それはそうと………あの二人、全然食べてないじゃないか。お腹空いてるだろ」

 

 空になったグラスを見ながらルークが言う。

 15歳という食べ盛りの年頃なんだから、まだまだ空腹感は残っているはずだ。

 

「もう………意地っ張りな所、本当にクラミーそっくりだわ」

 

 ライリーが思わずといった感じに呟き、ライアンとエミリーも懐かしそうに苦笑する。

 

「ああ、フィールはクラミー姉さんの子供だ」

「やっぱり、フィールはお姉ちゃんの娘よね」

 

 亡き姉とその娘をオーバーラップした兄妹は、二人が心許した女性に頼む。

 

「ライリーさん、フィールをお願い出来ますか?」

「貴女なら、頑固なフィールも少しは耳を傾けると思うから」

 

 頭を下げて懇願してきた二人に、ライリーは少し考え込み―――「いいわよ」と頷いた。

 

「何処まで説得出来るかはわからないけど………私でいいなら、なんとかしてみるわ。ライアン、貴方はハリー君をよろしくね」

 

 去年エミリーが夏季休暇中に提供してくれた別荘で泊まった際、それぞれ夜の対談をした二人は椅子から立ち上がり、一対一で会話してみるとのことで、厨房から出ていった。

 

♦️

 

 コンコン。

 静まり返った5階の一室に、ノックする音が響き渡る。

 

「フィールちゃん、入るわよ」

 

 断りを入れて、ライリーはドアを開ける。

 ドアを閉めて中に入ると、大きなベッドに腰掛けるフィールをすぐに見つけた。

 ライリーは優しく声を掛ける。

 

「お腹空いてない? 大丈夫?」

「………………」

 

 返事はない。

 ずっと無言のまま、見向きもしない。

 軽く嘆息しながら、ライリーはフィールの前に来て上から見上げる形で視線を合わせた。

 

「………なんですか」

「フィールちゃん。ハリー君と仲直りしよ?」

「………そんな必要ありません」

「じゃあ、なんでそんな暗い顔なのかな?」

「………………」

 

 上手い口実が見つからず、口を噤む。

 沈黙をライリーは肯定と捉えた。

 

「ハリー君にもフィールちゃんにも、二人にはそれぞれ落ち度があるわ。自分の悪かった所を素直に謝ればいいのよ」

「………仲直りなんて、しなくていい」

「嘘が下手ね。私は昔から貴女のことを見てるのよ? 嘘ついてもバレバレよ」

「部屋から出ていってください」

 

 フィールはライリーの肩を押し出し、プイッと顔を背けた。頑なに歩み寄ろうとしない親友の忘れ形見に「やっぱりクラミーの娘だわ」と苦笑しつつ、ここで退くことはしなかった。

 

「こういうのは、どちらからでもいいから、普通に話し掛ければいいのよ」

「………気まずいから、無理です」

「このままだと、ハリー君と疎遠になっちゃうかもしれないわよ?」

「………え? いや、流石にそんなことでそれは………」

「フィールちゃんは今、『そんなこと』で悩んでいるのよ」

「あ………」

「フィールちゃんは魔女でしょ? 勇気も立派な魔法よ。だから―――」

 

 ライリーはフィールの頬を包み、

 

「頑張って」

 

 と言った。

 何故かその笑顔を見ていると、先程までの悩みが大分薄れた気がした。

 ということで、フィールはライリーと一緒にハリーが居る部屋まで向かった。ちょうどライアンが部屋から出てきたところで、「ナイスタイミングだ」と笑い掛ける。

 扉を開けた状態なので、ライリーはフィールの背中を優しく押し、彼女は深呼吸して部屋の中に入った。

 ここから先は二人だけにするべきだ。

 ドアを閉め、ライアンとライリーは階段を数段下りて二人が部屋から出てくるのを待った。

 

「………………」

「………………」

 

 二人きりの部屋で、微妙な空気が流れる。

 フィールの目の前には、視線を泳がせたり外したりと忙しいハリーが立っている。

 双方はなんとも言えない表情でその場に突っ立っていたが―――先に静寂な空間を切り裂いたのはフィールだった。

 

「ハリー、その………あの時、私の言い方悪くて………ごめんな」

 

 ハリーは眼を丸くした。

 まさか、フィールの方から先に謝ってくるとは予想外でビックリしたからだ。

 が、気持ちを切り替えたハリーは、定まっていなかった目線を、フィールの瞳に合わせた。

 

「………僕の方こそ、ごめん。君に酷いことばっかり言って………」

 

 それからハリーは足を進め―――フィールの目の前で立ち止まると、腕を伸ばして、彼女の背中に回した。

 

「………ハリー?」

 

 突然ハグしてきた彼へ声に驚きの色を滲ませながらフィールが眼を見張っていると、

 

「………もっと早く謝ればよかった」

 

 と、小さく呟いた。

 フィールは眼を細め………ハリーの背中に腕を回し返す。

 

「………そうだな。早く謝ればよかったな」

 

 ぶっきらぼうな口調だけど後悔している思いを読み取れるフィールの言葉に、ハリーは少し身体を離した。

 

「少し話してから、厨房行かない?」

「そうするか」

 

 わだかまりが解消され、二人は笑い合う。

 最後に仲直りしたという証明のハグを交わすと二人はベッドに座り、会話を交わす。くだらない話題から、クィディッチのことまで。

 そして、いつの間にか全身の緊張が解けたことと重なって話し疲れたのか、二人共横になって眠ってしまった。

 

♦️

 

 階段の数段先で、それぞれ二人を説得したライアンとライリーは首を傾げる。

 かれこれ数十分が経つが、未だに出てこない。

 不審に思い、軽くノックしてみたが、二人が出てくる気配はなかった。

 

「フィールちゃん、ハリー君、入るわよ」

 

 ゆっくりとドアを開け、部屋に入る。

 そこでライリーとライアンが見たのは、ベッドの上ですやすやと穏やかな寝顔を浮かべながら眠るフィールとハリーだった。

 

「………二人共、疲れて寝ちゃったみたいね」

「そうみたいだな………とはいえ、この状況はどう対処すればいいんだ?」

 

 年頃の男女が寄り添って眠る光景に、ライアンはどう反応すればいいのかと首を捻る。

 

「………仕方ないわね。起こすのも可哀想だし、数十分後にもう一度来ましょ」

 

 そう呟くと、ライリーは二人に毛布を被せ、部屋を出て行く。ライアンも「そうするか」と小さく頷き、扉をパタンと静かに閉めた。




【ダブル主人公】
ただいま大喧嘩中。

【同世代三人組】
ただいま会議中。

【吸魂鬼派遣の正体】
実は既に予想がついてるオリキャラ達。

【諸事情だらけの騎士団員】
ライアン&シリウス→駆逐してやる!
イーサン&エミリー→魔法省で隠密捜査
ライリー&クリミア→試用期間ヘルプ

【ライフィル】
作者的なライリーとフィールの愛称。
作者的には1、2を争う親世代と子世代をミックスした好きなパターン。

【ダブル主人公、仲直り】
ライアンとライリーのおかげ。

【まとめ】
今回は最終的に無事わだかまりが解消されましたの回。
次回からいよいよ学校生活に突入。
ただし割りとあっさり終わる可能性大。
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