【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士 作:Survivor
約9年前ほど前に出会った、黒髪の少女。
その少女は―――4年前の新入生歓迎会パーティーで初対面だと思って接した、フィール・ベルンカステルであったと、クシェルは今まで曖昧だった記憶の真相を思い出した。
(そうだ………私、会ったことある。お母さんに同い年の女の子と遊び相手になって欲しいって言われて………一緒に遊んだり、魔法の練習したりして………)
幼い頃のフィールと最後に会ったのはいつだったかはよく覚えていない。でも………ハッキリと覚えてるのは、フィールが泣いていたことくらいである。何故泣いていたのかは、当時も今もわからないが………。
「…………」
「………?」
クシェルは静かにフィールに歩み寄る。
不意に背後で人の気配が生まれ、伏せていた顔を上げたフィールが振り向くよりも前に、クシェルはそっと腕を回してギュッとハグした。
「………クシェル?」
困惑した表情で、フィールは横目で見る。
いきなりバックハグしてきた友人へ戸惑っている間にも、その友人は更に力を込めてきた。
「………覚えてない?」
「え………?」
「私達、昔、聖マンゴで会ったんだよ。今、思い出したけどね」
「私と………クシェルが?」
「うん。フィー………いや、フィールはいつも傷だらけでボロボロだったから、会う度に、私が貴女のケガを治した。多分、その時が一番お母さんから教えて貰った『治癒呪文』の練度を上げる環境だったんだと思う」
それから、とクシェルは続ける。
「一緒に魔法の鍛練して、切磋琢磨した。必要の部屋での訓練は、あれが初めてじゃなかったってわかったよ」
幼い頃に、護身術を伝授されたから。
本能的に、身体が扱い方を覚えていた。
「………フィール」
愛称の『フィー』ではなく。
最初に出会った時の呼び方で囁きながら。
クシェルは『フィール』を離さない。
「―――もう二度と、私から離れないで」
いつしかずっと会わなくなった、友達。
彼女と会うことは、永遠に無理だと思った。
でも、それは違った。
こうして、ちゃんとまた会えた。
だから………もう。
もう二度と、黙っていなくならないで。
「………………」
フィールは、苦しげに蒼眼を細める。
自分を捉えて離さない、このぬくもりと腕の強さは紛れもなくクシェルだけが持つものだ。
ふさふさと頬をくすぐるピョンピョンはねた茶髪から漂う、甘い香り。
それは、自分が抱える苦しみや淋しさを他人に知られないように封印しているはずの胸の奥底へスルリと入り込んでくる。
今この時まで忘れていた、数年前に味わった感覚が心を占める。
フィールは優しく抱き締めるクシェルの手に自分のそれを添え、重ね合わせた。
やはり自分は、この人を突き放せない。
どんなに冷たくあしらっても………ブレずに接してくるから。
孤独の自分を救おうと隣に立ってくるから。
誰かが傍に居てくれる安心感を、フィールは知っていた。
たとえそれが、その場しのぎだったとしても。
それでも彼女は、素直になれなかった。
自ら独りになるのを選ぶようにしていた。
歩み寄ってきた全ての人に気を許さなかった。
そして本当の意味で孤独となり、孤立した。
心が耐えられず、助けを求めたかった。
だけど、根底に植え付けられた強迫観念と疑心暗鬼がそれを許さなかった。
だからフィールは、ひび割れた心に更なる亀裂が生じ、軋んでいくのを感じながら、誤魔化すために遠吠えし続ける他なかった。
勝利の雄叫びを上げるのとは違う。
喉の奥から絞り出すような、悲痛な咆哮で。
孤高の雰囲気を身に纏いながら。
周囲には気高い狼の様を見せ掛けて、ただただ吠えることしか出来なかった。
挙げ句の果てに、フィールは自分を捨てた。
フィール・ベルンカステルは、フィール・ベルンカステルではなく。
『クラミー・ベルンカステル』になることを約束した。
フィールが誰かに………大人に心を見せようとしなかったのは、そういう理由からなのかもしれない。
母を知る者が自分を気に掛けるのは、『フィール』としてよりも。
母の生き写しである『クラミーの娘』として心配するのだと。
そう………深層意識に刷り込まれた。
そのような考え方を持ってから、フィールは自分自身を見失った。
ただひたすら、亡き母の背中を追い掛けた。
髪を伸ばし、雰囲気を真似、強さを求め。
ベルンカステル家の当主の名に恥らいがないよう尊厳を身に付け、時には何物をも蹂躙してでも突き進む冷酷さを覚えた。
誰よりも尊敬してきた母のように。
気高く美しかった女性を目指して。
フィールは己の人生を捧げてきた。
―――数年前に、ある人と出会うまでは。
『フィール』
その人は………自分を。
『クラミー・ベルンカステル』としてではなく『フィール・ベルンカステル』として、一人の人間として認めてくれた。
闇の中でもがき彷徨い続けた私に………光を見出だし、手を差し伸べてくれた。
救われないはずの心を、救ってくれた。
ずっと………ずっと、泣いていた心を見つけてくれた。
偽りの自分ではなく、本当の自分を探し求めてくれた。
私が何も言わなくても、察してくれて。
身体を壊そうとすれば、叱ってくれて。
辛くて苦しい時は、抱き締めてくれて。
そして気付いた時には。
弱さを受け止めてくれるクシェル・ベイカーに心を見せていた。
「もう………本当に、何をやっても貴女にだけは敵わないわ………」
普段よく使うぶっきらぼうな口調ではなく。
昔みたいな、何処にでも居るような女の子の話し方で、フィールは閉じていた口を開く。
「私がどれだけ貴女に冷たく当たっても、貴女はまるで気にしてないかのように近付いてきて、追い返してもしつこく付きまとって………でもそれが、そういったクシェルの存在が、私にとっては心救われるようになった」
もう、潔く認めるしかないのだろう。
自分はクシェルに傷付いた心を………ポッカリと穴が空いていた心を。
会うだけで、不思議と。
自然と癒されていった。
「………クシェル」
顔を横に動かし、間近にあるクシェルの翠色の瞳を自身の蒼い瞳に映す。
「もしも………私が貴女の傍から離れようとしたら、無理矢理でも、私を捕まえて」
交錯し、見つめ合う蒼と翠の瞳。
数秒とも永遠とも思える沈黙の時間が流れ、どちらも互いの眼を真っ直ぐに見返す。
先にそれを破ったのは、クシェルだ。
左腕に力を込め、やんわりと自分の右手に重ねるフィールのそれから抜ける。
離した右手でフィールの右手を手に取ると、自分自身の口元へとゆっくり運び。
そして口付けを一つ。
彼女の白くて艶かしい右手の甲に落とした。
えっ………と眼を見張るフィールに、クシェルはニッコリと笑い掛ける。
「勿論、そのつもりだよ。………私はもう、貴女が黙って何処か遠くに行くのは許さない。どんなに冷たくあしらわれたって突き放されたって、貴女を引き戻すまで、ずっとずっと追い掛けるよ」
揺るぎ無い決意を宿した双眸で。
クシェルは堂々と伝える。
その反論を許さない強い両眼に。
フィールはコクリと頷く。
「私は貴女を―――捉えて離さないから」
息遣いを感じるほど顔が近く。
体温を肌で感じるほど密着し。
そのぬくもりに溺れながら、クシェルはフィールを決して離そうとはしなかった。
♦️
クリスマス休暇が終わり、ホグワーツに騒がしい毎日が取り戻されたのは例年通りだが、かなりの面倒事も同時に発生したのだから、本当に色んな意味で気が滅入ってしまう。
中でもトップクラスで現在話題沸騰中なのは、学校外で起きた大事件・アズカバンからの集団脱獄についてだ。
朝食時間、『日刊予言者新聞』でその大見出しを読んだホグワーツ生達は揃いに揃って言葉を失ってしまった。
しかも、その脱獄者達は全員死喰い人の中でも危険度が最高レベルだろう、ヴォルデモートの腹心だらけだ。というのも、かつてヴォルデモートが完全に魔法界から滅されたと思われていた時代の真っ只中で、敵対する魔法省に絶対屈しなかった連中だからだ。
ルシウス・マルフォイのような、中途半端な忠誠心を誓っているような死喰い人ではない。
アズカバンに投獄されるのを理解した上での、ヴォルデモートに対する忠誠心と信念を最後まで貫き通した、誇り高い死喰い人。
それが、まさに集団脱獄した彼等である。
つまりは、相当な実力者なのだろう。
普通の人なら下手したら1週間も保たない、正気を失うような監獄で数十年間も正常な状態を保ったくらいなのだから、その誠心誠意は確かなものだ。知識も力量も精神力も、闇の陣営きっての猛者だと確信が持てる。
流石にここまで来たら、頑なに闇の帝王の復活を認めない魔法省や魔法大臣コーネリウス・ファッジも信じたくないけどこれが事実の現実と向き合ってくれるかと思ったのだが………。
もういっそのこと、綺麗さっぱり木っ端微塵になってこの世から消滅してくれたらどんなに嬉しいことかと思うくらい、記事を読んでいく度にヴォルデモートと集団脱獄の関連性を結び付けようとしない無能で馬鹿な魔法省に、呆れて何も言えなくなってしまった。
「………………」
「………………」
呆れ顔で顔を見合わせたスリザリン組の二人は深くため息をついた。
「おいおい、嘘だろ………こんなの、小さな子供でもわかることなのに、いい歳した大人がわかんないとか」
「類は友を呼ぶって言うけど………なるほど。バカはバカを呼ぶって意味がわかった」
「なんか今凄いデジャブを感じたんだけど」
いつだったかフィールが言った言葉をクシェルが言って心当たりがある彼女は突っ込む。
そんなコントとも言えるやり取りをして、フィールはもう一度大きく息をつくと、今すぐにでもビリビリ破って燃やし尽くしたい衝動を抑えながら、丁寧に新聞を折り畳む。
「とにかく………最早魔法省という存在そのものが当てにならないな」
「私もそう思う………何なの、魔法省は」
味方の足を引っ張り、権力欲に取り憑かれ、対策をすれば少なからずとも救えるはずの命を間接的に殺している魔法省の人間がアズカバン送りにされたら何億倍もマシだと、そろそろ、我慢の限界になってきてストレスが溜まった。
♦️
イースター休暇前後のホグワーツは波乱万丈な学校生活だったと、後に誰かが語る。
クリスマス休暇明けの翌々週くらいになるとまたしても騒動が沸き起こった。
アンブリッジが個性的な授業を行う『占い学』の教師・トレローニーと半人間のハグリッドを問答無用で解雇したのだ。
トレローニーに至っては危うくホグワーツから追放されそうにもなったが、そこは校長のダンブルドアが阻止してくれたおかげで、彼女は引き続き城に在住している。
ちなみに『占い学』の後任はケンタウルスのフィレンツェが、『魔法生物飼育学』の後任はグラブリー・プランクが就任した。
そして最悪なニュースが城内を駆け回った。
それは、『ドローレス・アンブリッジ、ホグワーツ魔法魔術学校校長に就任』だ。
その訳は、遂にハリー・ポッター率いる学生組織『
しかしそれ以上に、何よりの元凶は密告者のマリエッタ・エッジコムと、彼女が嫌がっているのを知っておきながら強引に反魔法省運動のDAに入団させたチョウ・チャンにこそあるだろう。
DA入団の際にサインした名簿にはハーマイオニーが誰かが告げ口したらわかるように強烈な呪いが掛けられていたらしく、マリエッタの顔のど真ん中には『密告者』と描かれた酷い吹き出物が出来てしまった。
チョウは「過ちを犯した人だけどいい人」「ハーマイオニー・グレンジャーは酷いやり方をする」と言ったら、自分達が今まで築き上げてきたこと全てをぶち壊しにしたヤツを擁護する発言をした彼女に憤慨したハリーやハーマイオニーと口論になり、最終的に絶交した。
4年時、チョウの為とのことでマリエッタが友人のフィールに意味不明な暴力を振るったのを聞いてただでさえレイブンクローに対する評価が悪かったのに、今回の見過ごせぬ事態のトリガーとなったのがその二人なのだから、尚更レイブンクローへの印象が悪化した。
とにかく、そんな裏切り者二人のせいで、DAだけじゃなく、フィール・ベルンカステル率いる『
結果的に、2つの軍団は休止した。
その気になればSSはまだ続行出来るのだが、リーダーのフィールが今の現状で続けたら間違いなくバレてしまうと判断したからだ。
それは英断だったと、後に満場一致になる。
ダンブルドアが居なくなった後、アンブリッジは念願の校長に就任。
『何から何まで自分の統制下に置きたい』という激烈な欲望の基、『尋問間親衛隊』という魔法省を支持する少数の選ばれた学生グループを身勝手気ままに結成した。
『I』の字型の小さな銀バッジがトレードマークのそれは、監督生同士は減点出来ないというルールを覆し、好き放題減点出来るという破天荒な権限を与えられたのだ。
構成されてるのは主にスリザリン生数人で、彼らはこの滅茶苦茶な権力に大喜びし、犬猿の仲のグリフィンドールから誰が見ても不公平な減点を言い渡して、悦に浸った。
まあ、その満足感も初日の時点で綺麗さっぱりレダクトされたのだから、何とも言えない。
意地の悪いアンブリッジにクィディッチを禁止された挙げ句、ダンブルドアも逃走してこれまで『一線を守ってきた』ウィーズリーツインズはとうとう我慢の限界に達し、二人は自主退学する道を選んだ。
その日を迎えるまでの期間中、双子は自分達で創作した悪戯道具『暴れバンバン花火』『携帯沼地』等を使用して、ホグワーツ校内を存分に暴れまくった。
彼等が引き起こした大騒動は、未来永劫ホグワーツ魔法魔術学校の伝説となるであろう。
アンブリッジとアーガス・フィルチを振り回して大混乱を招き、全校生徒がテストに向けての勉強期間となるイースター休暇が終了すると「ブレーキ? そんなもん知るかよ」と言わんばかりにアクセル全開でヒートアップ。
最後はポルターガイストのビープスに「俺達に代わってあの女を手こずらせてやれよ」と後を託して、颯爽と自由な世界へと飛び立った。
そこで終わらないのが双子の影響力だ。
彼らが学校を去って以降、まるで二人の悪戯好きな魂に憑依されたかのように空席となった『悪ガキ大将』の座を目指す生徒が次々と続出し、競い始めたのだ。
廊下にしょっちゅう『糞爆弾』や『臭い玉』が落とされるようになったり、アンブリッジの部屋に『毛むくじゃら鼻ニフラー』を忍び込ませたりて室内を滅茶苦茶にし、彼女の授業となれば教室に入ってきた瞬間『ずる休みスナックボックス』を使用し、鼻血を流したり卒倒したり発汗したり嘔吐したりして教室に出ていくのを許可されたりと、この1年間溜まりに溜まったストレスを思う存分に発散して、生徒達はようやく笑顔を取り戻した。それとは真逆に、親衛隊の身には不幸な事件が続々と起きて、被害を受けてる彼らにとっては嬉しさの欠片などこれっぽっちもないのだが。
しかし、もっと凄いヤツは居るものだ。
ウィーズリーツインズから送られた別れの言葉を胸に深く刻んだビープスが態度を一変、生徒達と一丸となり、アンブリッジを追い出すのに全身全霊を傾けたのだ。
トイレの水道の蛇口を全て引き抜いて水浸しにしたり、テーブルをひっくり返したり、黒板から急に姿を現したり、銅像や花瓶を倒したりなどして、寝不足でノイローゼ気味なアンブリッジを極限まで追い詰めた。
普段であればとっくの昔に教師陣によって取り締められるのだが、生憎アンブリッジに手を貸す教職員はフィルチ以外誰もいなかった。むしろあの人一倍規則に厳しいマクゴナガルですらビープスのアンブリッジ追放行為を支援するくらいなのだから、アンブリッジに対する嫌悪感がどれ程なのかがわかるだろう。
何はともあれ、ホグワーツ生の大半と教師陣は学年末試験が開始される当日まで、暗いムードであったホグワーツに、一時期にだが明るさを奪還したのであった。
♦️
6月に入り、遂にOWL試験日がやって来た。
試験官は魔法省の魔法試験局から派遣される先生方で、大広間が会場となる。この日が訪れると4つの寮テーブルは撤去され、代わりに個人用の小さな机が教職員テーブルの方に向けて設置された。
試験官に指示に従って、生徒は着席する。
そして合図と共にテストがスタートした。
全ての試験が終えた時、ハッキリ言ってしまえばこんな当たり前のことが重大なテストの問題として出してもいいのだろうかと、フィールはため息混じりに思ってしまった。
出題された問題はどれも知ってて当然のものばかりで、実力も知識も完璧なフィールからすれば、筆記試験の中身を書き終えた後が物凄く退屈な時間となったくらいだ。
それでも一般の生徒からすれば地獄らしく、わかりやすく言えば許されざる呪文の一つ『クルーシオ』されている状態だ。
そしてトラブルという名の厄介者は、時と場合などお構い無しに介入してくるらしい。
『天文学』の実技を行っている最中、アンブリッジ率いる闇祓い数人にハグリッドが闇討ちされたのだ。
ハグリッドは奇襲してきた彼らを気絶させた後に逃亡、騒動を止めようとしたマクゴナガルが『失神呪文』を数発胸に受けて意識不明の重体になったりと、試験どころの話ではなくなった。
しかも『魔法史』の筆記試験中にハリーが突然大声を上げて椅子から転倒したりと、これまた集中力を掻き乱されるアクシデントが割り込んできたのだからイライラしてしまう。尤も、その頃にはフィールは全て解き終えてたので、他の生徒とは違うことを考えていたのだが。
♦️
「ねえ、フィー………試験中に、ハリーが叫んだのって…………」
2週間に渡るOWL試験を終えた帰り道。
クシェルは嫌な予感がする的な表情を浮かべながらフィールに声を掛ける。
「ああ………恐らく、アイツがまた干渉してきたんだろうな」
フィールは険しい顔付きで頷く。
ヴォルデモートが復活してからというもの、ハリーは度々額の傷を通してヴォルデモートの心を覗き見るようになっていた。
そのため、ヴォルデモートが思考の『絆』を利用して偽りの映像を見せてこないかを危惧しているダンブルドアが学校を立ち去る前、スネイプから『閉心術』の訓練に励むよう指示したのだが、ハリーは身を入れて練習しなかった。
スネイプを激しく憎んでいるのはよくわかるが見切りはつけて欲しいと、前に『閉心術』のコツを教えてくれとせがまれたフィールはそのことを思い出し、ため息をつく。
「………ん? あれ、なんだろ?」
クシェルの目線の先は、混雑し始めた廊下。
フィールも怪訝そうな面持ちでクシェルと顔を見合わせると、近付いてみた。
「ダフネ、何の騒ぎだ?」
近くに居た同僚同輩、ダフネ・グリーングラスを捕まえて話を聞いてみる。
「なんか、誰かが『首絞めガス』を流したみたいなの。で、だから回転階段を通って回り道しろとのことよ」
「え? でも見えなくない?」
「無色だから、って言ってたわ」
「………それ、一体誰が発言者だ?」
「えーと………確かウィーズリーの末っ子だった気がするわ」
ウィーズリーの末っ子―――ジニーだ。
フィールとクシェルは通路の先を見据える。
簡単かつ簡潔に話をまとめると、誰かが『首絞めガス』を撒き散らし、その通路一帯が通行禁止となったということだ。
………試験終了直後に、そんなものを散布するヤツが果たしているだろうか?
無色のガスだというらしいが、それは実際に被害に遭わなければ判明しない。もしその話が真実だとしたら、一人や二人、とっくに犠牲者が出ているはず。
それらから考えてみると、その情報自体がフェイクの可能性が非常に高い。
しかも、この先はアンブリッジの自室だ。
好き好んで通るような廊下ではない。
ということは、考えられるのは一つ。
誰かがアンブリッジの部屋で何かしらの事を起こそうとした、が一番辻褄が合うだろう。
(フィー)
(ああ)
アイコンタクトした二人は、完全に人が居なくなるまで待機すると、どうか嫌な予感は外れて欲しいと思いつつ、その望みは裏切られるとどこか確信めいたものを持ちながら、アンブリッジの部屋を目指して階段を駆け上がった。
【フィールの右手の甲に口付け落とすクシェル】
これはもうある意味愛の告白に近い?
【ちょっとスピードアップします】
そろそろ神秘部行かせよう。
【レイブンクローに対する評価ダウン】
4章のこともあってハリーはチョウなどという女に恋心なんて抱いてません。