【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士 作:Survivor
あれからハリーは、『
隠れ穴に帰ってからハリー達はライアンとフィールに、マルフォイとボージンの会話や一連の流れを全て話した。
マダム・マルキンの洋装店で店主がマルフォイの左腕の袖を捲ろうとしたら彼が飛び上がったこと、「あっちを完全に保管するのを忘れるな」とか意味深な発言をしていたこと等―――逐次二人に説明した。
「マルフォイの父親は死喰い人で、今はアズカバンだ。アイツは父親に代わって死喰い人になったのかもしれない」
ある日、ハリーはそんな発言をかました。
彼の驚くべき推測にロンとハーマイオニーは「それは無い」と揃って首を横に振る。
「マルフォイが? アイツは僕達と同じ16歳だぜ、ハリー。『例のあの人』がマルフォイなんかを死喰い人にすると思うか?」
「私もロンに同感よ、ハリー。とても有り得ないことだわ」
しかし、ハリーは食い下がる。
「僕達と同じ年齢で騎士団の仲間入りを果たしたフィールが居るだろ? それと同じだ。アイツはマルフォイを死喰い人にしたんだ。ダンブルドアがフィールを招き入れたように」
「落ち着けよハリー。フィールの場合は実力があるから特別に入団を許可されたけど、マルフォイはどうだ? 手下が居なきゃ一人じゃ何も出来ないようなチキン野郎だぜ。そんなヤツを『例のあの人』が仲間に加えるとは、少なくとも僕は思わない」
「だけど」
ハリーは真剣な顔付きで言葉を紡ぐ。
「君達も見ただろ? マダム・マルキンの店でマダムがアイツの左袖を捲ろうとしたら、腕には触れなかったのに、アイツ、叫んで腕をグイッと引っ込めた。そこから考えるに、闇の印がつけられているって思わないか?」
ロンとハーマイオニーは顔を見合わせる。
「さあ………」
「ハリー、マルフォイはあの店から出たかっただけだと思うわ」
「僕達には見えなかったけど、アイツはボージンに何かを見せた」
ハーマイオニーの言葉を撥ね付け、ハリーは頑固として言い張る。
「ボージンがまともに怖がる何かだ。きっと『印』だったんだ。間違いない。ボージンに、誰を相手にしているのかを見せ付けたんだ。ボージンがどんなにアイツを真に受けたか、君達も見たはずだ!」
ハリーが叫んだ直後。
それまで黙って話を聞いていたフィールが、ハリーにこう質問した。
「ハリー。アンタ達は店内の様子を外で観察してたんだよな?」
「え? あ、うん、そうだけど………」
「ボージンがマルフォイの脅しに圧されたって感じに言ってたけど、ハッキリと見たのか?」
「うん。マルフォイの姿は『キャビネット棚』に隠れて見えなかったけど、ボージンが恐怖の表情を浮かべていたのは、本当に見たんだ」
キャビネット棚―――。
その単語に、フィールはピクッと反応する。
思い当たることがあるからだ。
(………まさか)
何かを修繕しようと企んでいるマルフォイ。
店に在る『姿をくらますキャビネット棚』。
対になっているそれが在る場所は―――。
フィールの頭の中で、全ての糸が繋がった気がした。
けれど、これは全て自分一人の憶測で、確証は無い。
ハリー達に教えようかとも思ったが―――。
(まずは騎士団の一員でホグワーツの教師であるあの人達に相談だな)
♦️
数日後。
丘の上に位置するウィーズリー家が所有する小さな牧場で、ハーマイオニーはライアンの指導の元、防衛術の訓練を受けていた。彼女自身がマンツーマンでのレッスンを希望したからだ。ハリーとウィーズリー兄妹はシリウスとルーピンと一緒に果樹園で練習している。
二人は実践形式のバトルを行っていた。
とは言うものの、大人で闇祓いのライアンは本気を出さず、今のハーマイオニーの実力に合った力で対戦しているのだが。
次席で学年のレベルを大きく逸脱しているハーマイオニーは神秘部で死喰い人との実戦経験を経ていることから、一般の生徒に比べると実力は遥かに高い。
なので、それなりにライアンとは五分五分の勝負を繰り広げていたのだが、しばらくして、疲労が蓄積して身体のキレが悪くなり、ライアンが放った魔法を避けきれず、モロに喰らったハーマイオニーは軽く吹き飛ばされた。
吹っ飛んだハーマイオニーは地面に叩き付けられ、ゴロゴロと転がる。地面を転がるハーマイオニーの側にライアンは駆け寄った。
「ハーマイオニーちゃん、今日はこの辺にしておこう。これ以上は危険だ」
ライアンは膝をついて起き上がれないハーマイオニーに声を掛ける。
ハーマイオニーは「ハア………ハア………」と息を切らし、下を向いたまま、掠れた声でポツリポツリと話し出した。
「………ライアンさん………どうなったら………そうなれますか?」
今にも消え入りそうなハーマイオニーの声。
滲み出る負の感情に口を噤んだライアンは、そのまま黙ってハーマイオニーの話を聞いた。
「貴方や………フィールみたいになるには………どうすれば………」
涙を眼に溜め、手元で転がるブドウの蔓が彫られたスタイリッシュな杖をじっと見つめる。
「私………実技が全然良くなくて、OWL試験で唯一『闇の魔術に対する防衛術』だけは『O』を取れませんでした。だから………このままじゃ、またあの時みたいに………私は誰かを失ってしまう………」
目尻に溜まった涙を流しながら呟くハーマイオニーを立ったまま聞いていたライアンは、片膝をついて手を差し伸べる。
「そうならないようにするためにも、君はこうして法律違反を犯してまで頑張ってるのだろう? だったら、二度と口にするな」
ネガティブ思考なんか捩じ伏せろ、と。
最後の部分は微かな怒気を孕んだ彼の言葉。
ハーマイオニーはゆっくりと顔を上げる。
亡きエミリーと同じ金色の瞳が、こちらを覗いていた。
今まで以上に強くなる、と決心するきっかけとなったエミリーの顔が脳裏を過る。
同級生の男子の父親とその義姉に殺され、ハーマイオニー達が大きなダメージを受けたことは記憶に新しい。
だからこそ、もう二度とあんなことが起きないよう、自分は頑張らなければならない。
「………そう、ですよね。強くなるためにも、こんなことは、言ってはいけませんよね」
その瞳を見上げながら、ハーマイオニーはライアンの手を借りて起き上がる。
大きな手は力強く、そして温かかった。
「大事な人達を護り抜いてみせるのだろう? 君なら出来る」
起き上がったハーマイオニーに爽やかな笑顔を向けるライアン。
そんな彼を、ハーマイオニーは憧憬の表情で見つめた。
♦️
魂の境界線。
其処は現世でも来世でもない、生死の狭間。
この世に未練が残り、死後の世界へと進めない魔法使い・魔女の死者の魂は何故か魂の境界線に来れるようになっている。そしてその空間のみ、生前の姿形を取ることが可能なのだ。
前学期、『死の呪文』を受けたフィールは魂の境界線で母のクラミーと劇的な再会を果たした。
クラミーから全ての事情を聞き及んだ後は、ちょくちょく自分の意思で魂の境界線へと向かい、会いに行ってる。
現在、魂の境界線にはフィールとクラミー以外の魔女が存在していた。
その人物は、以前にも会ったことがある。
今のフィールの年齢より下で死亡したので、見た目や身長には年相応の幼さが残るが、もしも存命していたら、今頃はどんな外見だったか想像もつかない。
「またお会いしましたね。今日はどのような御用件で?」
温和そうな顔付きの金髪の女性。
ホグズミード村の小さな
「―――アリアナさん」
アリアナ・ダンブルドア。
ホグワーツの校長・アルバスとホッグズ・ヘッドのオーナー兼バーテンのアバーフォースの妹で14歳と言う若さで命を落とした女の人だ。
アリアナは以前、死んだ自分の代わりに兄に伝えて欲しいことがあると、彼の教え子のフィールに伝言を託した。
アリアナの御願いを引き受けたフィールは急いでダンブルドアの元へ向かい―――ついでに分霊箱も破壊して、ベルンカステル城に帰宅した。
その後でまた魂の境界線に来たフィールから、伝言は伝えたと報告を受けたアリアナは満足げに立ち去ったのだが………。
まだ何か用があるのかと首を捻っていると、アリアナは静かに口を開いた。
「あの時、ちゃんと御礼を言ってなかったから、貴女と直接会ってこの口で言いたかったのよ」
「御礼なんて要らないですよ。貴女が満足してくれたなら、それでいいですし」
「ううん、ちゃんと言わせて。ありがとう、フィール。貴女には本当に感謝してるわ。貴女のおかげで、心が楽になった」
「………それはどうも」
フィールは少し微笑む。
アリアナも釣られて笑い………ふと、何かを思い出したかのようにフィールとクラミーを見比べた。
「今でも、まさかお兄ちゃんの教え子と会えるなんてビックリしてるわ。それも二人。今更訊くけど、貴女達は実の親子なんだよね?」
「ええ、そうよ」
「やっぱり。フィールとクラミーさん、顔がスゴい似てるわ。血の繋がった親子だから当たり前なんだろうけど、しっくりくるのよね。二人が似ていない所と言えば、虹彩と雰囲気くらいかしら?」
フィールとクラミーは姿形は瓜二つだが、アリアナの言う通り、虹彩や雰囲気、語尾は遺伝や本人の性格の関係上異なる。フィールの両親を知る人達は皆「見た目は母親の生き写しだけど眼だけは父親とそっくり」と言う。これは「見た目は父親の生き写しだけど眼だけは母親とそっくり」のハリーとはちょうど対になっていた。
「貴女達を見ていると、少し羨ましいって気持ちになるわ。私が6歳の時に『発作』を起こしてから、家族との団欒は無くなっちゃったし。無くなった、と言うより、私が壊してしまった、の方が正しいけど………」
羨望と嫉妬が入り交じった眼差しでぽろっと出たアリアナの言葉に、フィールとクラミーは思わず胸が痛む。アリアナに悪意が無いのは勿論わかっているが、二人にとってはなんとも耳が痛い。
「………なんて、ごめんなさい。いきなりこんなこと言っても、困るだけよね。だから、今のは忘れ―――」
「アリアナちゃん、ちょっと此方に来てちょうだい」
言い切る前にアリアナの言葉を遮り、何故かクラミーは手招きする。アリアナは首を傾げた。
「え? どうして?」
「いいから、ほら、来なさい」
二度促されたアリアナは不審そうにしながらも大人しく近寄り―――クラミーは腕を伸ばしてアリアナをギュッと抱いた。それから、フィールは挟むようにして反対側からハグする。
急にハグサンドされたアリアナは戸惑った。
慣れないことにほんのり頬が紅潮する。
「え? え? あ、あの………?」
豊満な胸に顔を押し付けられつつ、なんとか顔を動かして見上げてみると、クラミーは優しげに眼を細めた。
「わたし達ベルンカステル家の伝統みたいなものよ」
「そういう訳だから、まあ気にしないでくれ」
「え、あ、はい………?」
そうは言いつつ、アリアナは困惑する。
誰かに抱かれるなんていつ以来だろうと思っていると、クラミーが慣れた手付きで髪をそっと撫でた。髪を梳かれる感触と顔面に感じる柔らかい感触に、アリアナは全身の力が抜け、クラミーに身を任せてしまう。
(あったかい………それにスゴく気持ちいい)
身体と精神が安心感で満たされ、その心地よさに眠気が襲い掛かってきた。徐々に徐々に瞼が重くなっていき、意識が朦朧とする。
「今日はわたし達が傍に居るわ。だから今は、嫌なこと全て忘れてさっぱりしなさい」
意識が闇に落ちる前―――クラミーがそう言ってくれたのを、アリアナは確かに耳にした。
♦️
その頃―――。
安全策が施された範囲内でそれぞれ魔法の練習を積んでいたハリー達はウィーズリー家に帰ってきた。居間のソファーではフィールが横になって眼を瞑っている。傍から見れば寝ているように見えるが、その実魂の境界線に居るからそのように眼に映ってるだけである。
実はこの時がフィールにとって一番危険だ。
魂の境界線に居る間、現実の世界のフィールはこうして無防備な状態を晒すことになる。そのため、万が一死喰い人が奇襲してきた場合、どうなるかは言わなくともわかるだろう。
「フィールは今日もクラミー姉さんの所か」
ハーマイオニーと共に戻ってきたライアンはポツリと呟き、近くの椅子に腰掛ける。シリウスとルーピンも椅子に座り、ハリー達はソファーに座った。練習で疲れただろうとライアンがジュースやお菓子を出してくれたので、皆はパアッと瞳を輝かせ、一斉にありついた。余程疲れたらしい。
そうして、粗方空腹感が消えたところで、不意にフィールの方を見ながら、シリウスが切り出した。
「しっかし、本当にクラミーのことに関しては驚きものだったな。まさか、ずっとロケットに魂が宿っていたなんて、誰も考え付かないよな。普通だったらそんなことは決して有り得ないから、そうなのかもしれないが」
妙に感心した声を出すシリウスは続ける。
「たまに思うのだが………クラミーとフィールは本当に親子なんだよな?」
「何言ってるんだい、シリウス。クラミーとフィールは正真正銘の親子だ。顔を見れば、そんなの一目でわかるだろう?」
「それはそうなんだが………フィールは見た目で言えばクラミーそのものだが、性格や語尾は全然似てない」
シリウスはフィールと初対面の際、一度フィールをクラミーと見間違えた。それだけ外見がそっくりだったからだ。しかし、後々フィールの詳細を掴むようになってからは、母親とはまるっきり相違する点が多々見られ、本当にクラミーの娘なのかと疑った回数も少なくはない。
「シリウスが言いたいことはわからなくもない。私も最初は驚愕したが………何より驚いたのは、ハリーと仲が良いことではないかい?」
「えっ、どういう意味なの?」
気になったハーマイオニーは真っ先に尋ねる。
ハリーもそのことは聞いてなかったらしく、怪訝そうな顔だった。
「そういえば、君達には言ってなかったっけな。実は学生時代、ジェームズとクラミー………つまり、ハリーのお父さんとフィールのお母さんは仲が悪かったんだよ」
「そうなんですか?」
ハーマイオニー達は大きく眼を見開かせる。
グリフィンドールとスリザリンと言う寮間の壁を乗り越えて固い友情を築いているハリーとフィールの親が犬猿の仲だったとは、その仲の良さを眼に焼き付けられている彼女らからすると一驚してしまうのも無理はない。
「ああ。負けず嫌いのジェームズは何度もクラミーに突っ掛かっていたよ。どちらも優秀だったがクラミーの方が上だったからな。勝ったことはなかったが、彼女が卒業するまで彼は粘り強く何度も決闘を申し込んだ」
「二人の決闘は生徒の間では一種のイベントみたいなものだったから、一度始まると瞬く間にお祭り騒ぎだったのをよく覚えてる。こうやって思い返してみると、二人もまだまだ若かったんだなって感慨深く思うよ」
シリウスとルーピンは懐かしそうに笑う。
学生の頃の、楽しかった想い出が脳裏を駆け巡り………もう二度とあの頃には戻れないのだと改めて認識し、ハリー達の手前、彼等には悟られないよう二人は深いため息を吐く。
が、一瞬でいつもの様子を取り繕った二人は敢えて明るい調子で言った。
「今思うと、あの二人が父親と母親になるとは当時では予想がつかなかったな」
「そうだな。確かに学生の時では到底考えられなかった」
しかし、大人になった二人はホグワーツ卒業後に結婚してそれぞれ子供を授かった。
シリウスやルーピンは親友の息子・ハリーが誕生した際には大いに祝福したのは勿論のこと、共にヴォルデモートに対抗する同志としていがみ合うのを止めたクラミーの娘・フィールが生まれた時、実は二人は一度だけ赤ん坊の彼女を見たことがある。
と言うことは、二人はフィールの双子の姉・ラシェルのことも当然ながら知っていて。後に何故ラシェルがホグワーツに在籍していないのかを疑問に感じた二人は、ライアン達にそのことを質問したことがあった。
「………………」
「………ライアン? どうした、そんな浮かない顔して」
何か思い詰めたような表情のライアンに、彼が黙り込んでいるのに気付いて心配になったシリウスは声を掛ける。その声で現実世界に引き戻されたライアンはフッと一つ息をついてから、フィールを見た。
「………僕ではやっぱり、フィールの親にはなれないんだなって思っただけだ」
ライアンはフィールの母方の叔父であり、父親ではない。ただ、幼くして両親を失った姪の父親代わりをしていると言うことだ。
「11年前にあの事件が起きて………それからは僕達で孤児となったフィールとクリミアの面倒を見てきた。ちょうどその時だったな、フィールが豹変したのは」
悲劇が起きる前、フィールは何処にでも居るような普通の女の子だった。けれどもそれは、目の前で両親を失った日を境に激変した。
「今でも僕は、フィールの父親になれているとは思っていない。どんなに父親の代わりをしても本当の意味で親にはなれなかった。むしろ、僕達は逆にフィールを苦境に追い詰めていたのかもしれない」
「は? 君達があの娘を追い詰める? 馬鹿を言うなよ。君達は………」
「勿論、追い詰めてる気はない。だが、フィールからすると辛かったんだろうなってことだ」
思わず口を挟んだシリウスにライアンは片手を上げて制する。シリウスは押し黙った。
「僕達はフィールを『娘』として可愛がってきたし、愛情も注いできたつもりだ。しかし、フィールは笑顔を浮かべなかった。最初、僕達はフィールが笑顔を浮かべなかったのは、大好きだった家族と死に別れて精神的に不安定だったり、心に受けたショックが大きかったからだと思い込んでいたが………一番の理由は他にあったと、クリミアから話を聞いて思い知らされた。同時に僕達は今更ながら気付かされた」
額に手をやり、苦々しい顔でライアンは言う。
「前にフィールはこんな夢を見たそうだ。僕達に毒を吐き、攻撃して、涙を流しながら叫ぶ夢を。………あの時フィールは酷く怯えていた。何か悪い夢を見たのが原因なのはわかってはいたが、内容までは教えてくれなかった。だから聞いた。記憶を通じて夢の中身をスクリーンのように見ることが出来たクリミアに」
実際、クリミアが居なかったらフィールは夢の内容を教えてくれなかったかもしれない。
「夢の中のフィールは、『エミリーの顔を見てると死んだ母の顔を思い出される』『自分のことを一人の人間として愛してくれる人はもうこの世に居ない』『血の繋がりがあるからこその息子と娘のオマケ』と言ったそうだ」
その言葉に、ハリーは「え?」とする。
何処かで今の言葉を聞いた覚えがあるからだ。
(息子と娘のオマケ? 一人の人間として愛してくれる人はもうこの世に居ない?)
それに………エミリー、つまりは叔母の顔を見ると亡くなった母親が帰ってきたと錯覚すると言うのも、ハリーには覚えがあった。が、記憶を引っ張り出せない内にライアンの声で遮断されてしまった。
「確かにそうだったのかもな。まだ子供のフィールが一族の当主になるのを反対しながらも、最終的にそれを通したのは、心の何処かでフィールのことを『
と、そこまで言ったライアンは話を変えた。
「同期の君達からすると、フィールはどんな存在だい?」
いきなりの話題変更にハーマイオニー達はキョトンとする。フィールと年齢が同じ、または近い四人の中で先に答えたのはハリーだった。
「えっと………パッと見は無機質な印象を与えて周りからは冷たいって言われるけどそんなことない、腕っぷしが強く、情に厚くて、いざという時はとても頼りになる人、です」
常に一緒に居るクシェルを除けば、ハリーが一番フィールと近しい人物だ。出会った当初は無関心そうな人柄や所属した寮で仲良くなかったハーマイオニーやロンと違い、ハリーは最初からフィールと好意的に接していた。
「私もハリーと同じかしら………5年前のハロウィーンで危険を顧みずにトロールから助けに来てくれた辺りから、フィールに対する考えは変わっていったわね」
「そうか。………あのフィールが少しずつ変わったのは、君達のおかげだ。ありがとう」
「ライアンさん?」
突然改まって礼を言ってきたライアンにハーマイオニーやハリーはなんとなく緊張する。シリウスやルーピンも、どこか遠い眼のライアンの顔を凝視していた。
「ホグワーツに入学前のフィールは、とにかく人との関わりを避けて魔法の練習に明け暮れてね。今でも練習熱心なのは変わらないが………昔は今と違ってそこまで強くなかった。いつも過度な練習のし過ぎで倒れていたくらいだったんだけど、一度才能を開花したら、そこからみるみる内に強くなっていったんだ。でもちょっと強くなり過ぎてしまってね。誰よりも強くなったフィールは冷めていったよ。まるで感情を失くした機械のように」
知られざるフィールの過去を聞いて眼を剥くハリー達を見ながら、ライアンは柔らかく微笑む。
「でもホグワーツに入学して、独りだけで抱えてきた悩みや苦しみを打ち明けられる
だから、と。
ライアンはもう一度「ありがとう」と心の底から感謝の言葉を述べた。
「君達は勿論、クシェルちゃんには本当に感謝している。普通の女の子としての生活を送らせてあげられなかったのは………ずっと後悔していたから。まあ僕達があの娘を救えたかったのは少し残念だったけどね」
「そ、そんなことはないですよ! 絶対!」
思わず大声でライアンの言葉を否定したハリーにこの場に居た全員が眼を丸くする。注目を浴びたハリーはハッとし、慌ててこう言った。
「あ、いや、その………ライアンさん達は、フィールのことを『家族』として、いつも彼女を大切にしていたじゃないですか。なのに、彼女を救えたかったなんて………そんなこと、言わないでください」
これは、母方の親戚に育てられて生活してきたフィールと同じ立場であるハリーだからこその気持ちだった。自分のことを『家族』として見てくれず、散々虐めてきた親戚とは違い、『家族』として大事にされてきたフィールへの羨望と嫉妬を抱いていたハリーは、ライアン達の姪へ対する愛情を肌で感じ、そしてビシバシと伝わっていた。
「実の子供に対する愛情と全く変わらない愛情を注いできた………それが彼女を心底愛している何よりの証拠でしょう?」
ハリーの言葉にライアンは唖然とする。
まさかそのようなことを彼が言うとは、予想だにしなかったからだ。
「………って、あの、すいません。こんなこと、部外者の僕が偉そうに―――」
慌てて頭を下げたハリーを見て、ライアンは面白そうに吹き出し、クシャクシャの黒髪をワシャワシャと雑に撫でた。
「偉そうなことない。君のおかげで、少し気分が軽くなった。フィールが君達に胸襟を開く理由がわかった気がするよ」
精悍な顔立ちのライアンははつらつと笑う。
その笑顔が一瞬、遠い記憶の存在の女の子の笑顔と重なった気がした。
【やって来ました! アリアナさん!】
未だかつてこのような形でアリアナが登場した作品はあるだろうか?
作中の設定だからこそ可能なことですので、せっかくなので生のアリアナさん出演させました。
【ハグサンドorベルンカステルサンド】
作中での一種の名物。
ほのぼのってなんて素晴らしい世界なんだ。
【ラモンジンフィズ:感謝】
①ドライジン(45ml)
②レモン・ジュース(15ml)
③シュガー・シロップ(15ml)
④ペルノ(2dash)
⑤卵白(1/2個分)
⑥ソーダ水(適量)
作り方:⑥以外をシェイクし、グラスに注いでから⑥を混ぜる。
タイプ:ロング
度数:12度
ベース:ジン