【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

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#97.呪われたネックレス

「………それで、今日はどういった要件で私を呼んだんですか?」

 

 ある日の夜。

 生徒が寝静まる時間帯に校長のダンブルドアから呼び出されたフィールは現在、校長室に居た。

 差し出されたカクテルグラスを指先で弄りつつ、一向に本題を切り出そうとしない彼に少し苛ついた口調で不満そうに尋ねる。

 クシェルが先に寝て、さあ自分も寝ようとかとネクタイを解いた直後に目の前で炎が出現、黄金の尾羽根と共にヒラヒラと舞い降りてきた羊皮紙に「急用がある」と書かれていたのを見て、何事かと思って急いで来てみたら呼び出した張本人は涼しい顔であっけらかんとしてるのだから、眠気と疲労を押して地下牢から3階までわざわざ急行してきたフィールの不機嫌も当然だ。

 ただでさえ夏季休暇中はロクに休息出来なかった分、此処では睡眠時間が貴重なのにそれを台無しにされたとなれば、文句の一つや二つは言っても許されるだろう。

 目くじらを立てたフィールに、ダンブルドアはあくまでも朗らかに笑って見せる。

 

「すまんのぉ。わしとて君と一体一で話すのであれば日中にしたかったのじゃが、昼間に君を呼ぶとなれば、あの娘に反対されると思うて、それで夜間にしたのじゃ」

「あの娘………クシェルのことですか?」

「如何にも」

「………ちょっと待った。もしかしてアイツ、何かやらかしちゃいました?」

「なに、大したことではないがの―――」

 

 ダンブルドアは、クシェルが自分にフィールを解放させろと啖呵を切って物申ししてきたことをフィールに語った。新学期当日、クシェルが不死鳥の騎士団やダンブルドアに毒を吐いたのを瞬く間に思い出したフィールは、頭が痛いとばかりに額に手をやる。

 

「………そうでしたか。すいません、さっきは何も考えずに苛立った声音で促してしまい」

「気にせんでいい。何から話せばよいかに迷って中々本題に入らんとしなかったわしも悪かったからの。それにクシェルがわしに抗弁してきたのは君を思ってのことじゃ。君は羨ましいくらいに愛され者じゃの」

 

 相手が誰であろうとも友のために憤り、異見を唱えられる精神は立派なものじゃ―――そう微笑んだダンブルドアに、フィールは複雑な心境になってしまう。

 

「そこでじゃ、フィール。これはわしなりの提案なんじゃがの―――」

 

 ダンブルドアは最年少の不死鳥の騎士団の一員でありながらハリーの護衛を務めるフィールに、騎士団の活動を休止、もしくは離脱しても了とすると提言。

 そして騎士団云々関係無しに、特例として夜中の外出を許可した。範囲内であれば城外へ出ても不問とすると、唐突に自由行動を与えられたフィールは大きく眼を見張る。

 なんでも、クシェルの抗言をきっかけに議論した教師陣の方針でそれまで束縛された生活を送ってきた分、今後はフィール本人の意思を尊重しようと、マクゴナガルやスネイプともよく話し合って決めたらしい。

 要は極端な話、ハリーの護衛を放棄してもガーディアンを廃業しても何のお咎めも受けなくなると言う訳だ。ちなみに活動休止・組織離脱してもハリー同様、騎士団の保護下にはちゃんと置くらしい。

 

「わしら騎士団は君を制限と言う檻に閉じ込め、鎖に繋いで自由を奪ってきた。これが今まで我々に残酷な仕打ちを受けてきた君への罪滅ぼしとなるかどうかは誰にもわからない。………君は充分過ぎるほど騎士団に貢献してきた。君の誠実さと真面目さは、騎士団全員が高く評価している。夏季休暇が潰れるのも厭わず、文句を言わないでハリーのガーディアンや隠れ穴の警備を引き受けてくれて、多忙な団員達はとても助かっておった。………しかしその一方で、我々は気付かぬ内に君を窮地まで追い詰めてしまった。非常に優秀な人材故に、我々君の人権を無視して、君に責務を全て押し付けてもうた」

「………………」

 

 ダンブルドアの言葉に、フィールは亡き父親と同じ蒼眼をスッと細める。耳の奥で、新学期が始まる前に偶然聞いてしまったあの言葉が、やけに鮮明に響いた。

 

 

 

「もう少しでポッター達は9月1日になるな」

「ああ、そういやそうだったな。彼等は今年6年に進級か。早いもんだな」

 

 隠れ穴と騎士団拠点・ブラック邸を時折往き来して身辺報告するフィールは厨房及び会議室を訪ねようとして、ピタッと部屋の前で立ち止まり、ノックするべく握った手が扉の直前で停止した。

 中から人の声が聞こえ、下手に扉を開けて会話を中断させたら悪いかなと思い、タイミングを計ろうとその姿勢のまま固まる。

 

 それがいけなかった。

 この時、変に気遣いなどせず、ドアを開けて自然的な流れで会話を打ち切らせていたら、フィールは傷付かなかったかもしれないのに………不運なことに、何とも悪すぎるタイミングで、フィールは心に余計な深いダメージを負ってしまった。

 

「前に俺、ポッター達がダイアゴン横丁に買い物した日の警備員を担当したんだけどよ………正直言ってダルかったわ。そんなもん、ベルンカステルにでも頼めばいいってのに」

「その日、アイツはどうしたんだ?」

「なんか、隠れ穴で休息と待機だってよ。ここんところ連日で警備が続いて疲れて寝てしまったから、今日は大目に見てやってくれって言われたんだけど………なんで、あんな役立たずのクズのためなんかに忙しい俺達が代わりにポッター達の警備員担当しなきゃならないんだよって、スッゲー思ったわ」

 

 パンとフィールの頭の中で、何かが弾けた。

 均等を保とうと張り詰めていた糸が、プツンと切れたかのようだった。

 

「あのマグル生まれの娘………確か、グレンジャーと言ったな。ベルンカステルはポッターの友人と一番近くに居たってのに、その娘が倒れるまでアイツは血の気が引いてたことさえ気付かなかったようだ。全く、これ以上面倒事を増やさないで貰いたいよ。ま、おかげでアイツはちょうど俺達が見付けていたストレス発散のやり場になったから、結果オーライだけどな」

 

 フィールは後退り、フイと踵を返し、『姿現し』で隠れ穴へと帰る。

 聞きたくなかった。知りたくなかった。

 ―――彼等は自分を………役立たずだけどストレス解消にはなる道具としてしか、見てなかったのだ。

 

 

 

(ああ、そうか………クシェルに言われた通り、私は意識しないよう無意識の内から胸奥に圧し殺してたんだな………)

 

 自分が本当に感情の捌け口にされていたことを強靭な精神力で抑え付け、頭の外に追い払っていたのを………クシェルに指摘された時、フィールは思い出してしまった。

 ラシェルの時みたいに嫌な記憶を頭の中の引き出しの奥に仕舞っていたのを無理矢理引き摺り出されたのと同じで、自分を守ろうと"閉ざした"ために忘れていた記憶が甦ってしまった。

 自分を使い捨ての玩具のように扱っていた大人のニヤニヤした顔が脳裏を過り、ズキリと頭が痛んでこめかみを押さえる。

 

(何が非常に優秀な人材だよ………こんなの、好き勝手に殴り放題のサンドバッグ同然の存在じゃないか………結局私は、何のために騎士団の保護下に置かれてるんだ………?)

 

 ヴォルデモートの魔の手から護るため?

 それとも騎士団の奴隷として扱うため?

 考えれば考えるほど………わからなくなる。

 頭がぐちゃぐちゃになってきたフィールは眼を閉じ………数分とも数十分とも思える苦悩の末、ゆっくりと瞼を開く。

 

「………校長。私から一つ、お願いがあるのですが―――よろしいでしょうか? 騎士団の継続については、この一件を解決させた後、もう少し考えさせてください」

「うん? 何かね?」

 

 騎士団の件は一旦保留にして別の依頼を切り出したフィールへ首を傾げたダンブルドアに、彼女は座り心地の良い椅子に深く腰掛け直す。

 散々、自分を好きなように扱ってきたのだ。

 ならば一つくらい、我儘言っても………要請しても聞き入れてくれるだろうと、フィールは『お願い』を口にした。

 

 

 

「―――ドラコ・マルフォイ及びナルシッサ・マルフォイの保護に協力してください。ルシウス・マルフォイは今のところアズカバンに居るので大丈夫でしょうが、時が来れば、アイツも。………あの一家の命、私が貰い受ける」

 

 

 

♦️

 

 

 

 10月半ばのホグズミード行きの週末。

 ハニーデュークスの店を後にして、ハリー達は三本の箒にやって来た。途中、ホグワーツに復職して以降何度かクラブを開催してるスラグホーンやブラック家の品物を盗んだ騎士団の一員・マンダンガスと遭遇し、色んな意味で気が滅入りながらも、気分転換にバタービールを飲んで元気を取り戻す。

 

「ねえフィール。前にも話したけど、貴女は『半純血のプリンス』って蔵書、どう思う?」

 

 ハーマイオニーが小声でフィールに尋ねる。

 スラグホーンが新しく魔法薬学の教師になって始まった今年度の授業で、ハリーは調合の指示書きや呪文がぎっしり書き込まれた古本を借りた。

 その教科書のおかげでハリーは突然魔法薬学が得意科目となったので、ハリーとしては喜ばしいことだが、匿名の教科書を使用するなんて危険だと、ハーマイオニーは心配だった。

 そこでまずは毎度の如くフィールに相談した。

 フィールならあらゆる方面において知識が豊富だし、何よりも5年前、ハリーが使っている教科書に似た古本―――それこそが現在ハリーが使ってる本そのものだが、当然ハーマイオニー達は知らない―――を読んでいたことから、彼女なら何か知ってるのではとあれこれ質問したのである。

 その時フィールは「魔法薬の知識を正確に覚えられるの実益になるだろうけど、呪文は効果を確認してから使用した方が賢明だ」とプリンスの正体と呪文の効果を知っている上でそう返答した。

 ハーマイオニーは少々仏頂面だったが一応は納得し、興味本位で軽率に呪文を使って後で取り返しのつかない事態を招いてはならないと、フィールに意見を聞くまでは自制して控えていたハリーも頷いた。

 解決したと思われていた話題を再び提示され、ハリーは嫌な表情を浮かべる。まあ、いくらフィールの意見を聞いたとしても、持ち主の素性が明らかにならない以上、ハーマイオニーが危惧してしまうのは仕方ない。

 尤も、フィールは何年も前から『半純血のプリンス』の正体を知っているので、最終的には取り越し苦労に終わるのだが。

 他人である自分が本人の許可無しでカミングアウトするのはNGなので、フィールは適当な言葉で誤魔化す。

 

「どうって言われてもなあ………有用な情報なら利得になるし、それこそ知識を増やしたいハーマイオニーからしても興味深いと私は思うぞ。要は使い道さえ誤らなければ、後は好きなように利用すればいいんじゃないか?」

「そうは言っても………」

「アンタの気持ちはわかる。確かに、正体不明の物を使うなんて危なっかしいよな。だけど、その教科書に何かしらの魔法や呪いが掛けられている訳ではないんだろ? それに、常識なんてものは時に大きく覆されて当たり前の存在だ。11年間魔法とは無関係の世界で生きてきたアンタからすると、この世界に入ってからは非常識と言うヤツを実感しなかったか?」

「それは………」

「アンタは物事を合理的・論理的に捉えがちだ。全てが全て、透徹した理はこの世に万に一つもない。あんまり固く考え過ぎるな。そうやってどんな時でもお利口さんに生きていたら、アンタはいつか真髄を見落としてるのに全く気付かないまま人生の大半を損するぞ」

 

 ハーマイオニーは口を噤み、黙り込む。

 何か言いたそうに口を開いては閉じるので、上手い言葉が見付からないようだ。

 

「ま、これはあくまでも私個人の思考だし、人の価値観なんて押し付けられないから、ハーマイオニーの好きにしてくれ」

 

 バタービールを飲み干し、ポンと俯くハーマイオニーの肩に手を置いたフィールは「そろそろ帰るか?」と提案すると、皆は頷いた。今日は生憎楽しかったとは言えないし、天候もどんどん悪化している。此処に長居して更に荒れ模様になったらシャレにならない。

 防寒具をきっちり着込み、ハリー達は友達と一緒にパブを出て行くグリフィンドールの最上級生ケイティ・ベルの後に続いて、ハイストリート通りを戻り始める。

 それから少しして、トラブルが発生した。

 後ろを歩いていたために風に運ばれて耳に届いていたケイティと友達の声が、徐々に叫ぶような大声になっていったのだ。

 異変にいち早く気付いたフィールは駆け出す。

 ケイティが手に持っている物を巡って、友達と口論しているのが見えた。

 

「リーアン、貴女には関係無いわ!」

 

 ケイティの叫び声が耳に入る。

 友達―――リーアンは食い下がってケイティの持っている包みをグイと掴むと、ケイティは引っ張り返し、包みが雪の積もった地面に落ちた。

 次の瞬間。

 ケイティが突如宙に浮いた。まるで飛び立つ瞬間のように優雅に両手を伸ばしているが、しかし何かがおかしい。彼女は両眼を閉じ、虚ろな表情を浮かべている。

 その異様な光景に誰もが釘付けになった時、地上2mくらいの空中で両眼をカッと見開いたケイティが恐ろしい悲鳴を上げた。

 吠え猛る風音以上に耳を劈く絶叫は、ケイティが激しい苦悶に苛まれているのを物語っている。

 

「ケイティ………!」

 

 ヒップホルスターから杖を抜き出したフィールは急いで駆け寄る。

 ケイティは3年前、クリスマス休暇前にグリフィンドール生の男女に呼び出され、危うく痛め付けられそうになったところを助けに来てくれた恩人の一人だ。

 その時は母のクラミーが身体に乗り移っていたので、中身は自分自身ではなかったのだが………クリミアから返戻されたそのエピソードは、フィールにとってケイティ達に対する見方が変化するきっかけを作った。

 危険を顧みず駆け付けてくれた彼女の異変を放置する訳にはいかない。

 フィールはリーアンと共にケイティの踝を掴んで地上に引き戻そうと二人で引っ張る。直後、ケイティは二人の上に落下した。二人はなんとかそれを受け止め、地面に下ろす。

 ケイティは激しく身を捩り、のたうち回りながら絶叫し続けた。フィールは杖を振るい、激痛で声が掠れながらも叫び続けるケイティの身体を魔法で包み込む。すると身を苛むほどの苦痛が幾分か軽減されたのか、ケイティの悲鳴は徐々に小さくなっていき………やがて彼女は荒く息をついた後、今まで身悶えしていたのが嘘みたいに、糸が切れた操り人形のようにフッと瞼を下ろした。

 

「ケイティ、大丈夫か!?」

 

 いつになく声を張り上げ、フィールが声を掛ける。リーアンは泣き叫び、今度は逆に鳴りを潜めたようにピクリとも動かなくなったケイティの身体を揺さぶった。

 

「僕、助けを呼んで来る!」

 

 周りを見回し、人気が全く無いのを知るとハリーは大声を張り上げ、城に向かって疾走した。

 騒ぎを聞き付けたホグワーツ生の集団は囲むように距離を取りながらざわざわと、疾駆する彼の背中と倒れているケイティを見比べる。

 ハリーが助けを呼んでくる間、クシェルはケイティを仰向けにさせ、呼吸脈拍共に正常であるかどうか、心臓が動いているかを確認するため、首筋や手首に指を当てて脈を測ったり、胸に耳を当てたりした。

 

「呼吸、心拍、脈拍………どれも異常に弱い。危篤状態だから、これは多分、聖マンゴで暫く入院しないと完治しないレベルだと思う」

 

 冷静に呟いたクシェルの言葉にリーアンは更に震え上がった。

 それからクシェルも杖を抜き、出来る範囲内での応急処置を全力で施す。

 そうして、フィールと共に二人掛かりで救命処置していると、ハグリッドを連れてハリーが戻って来た。

 フィールとクシェルは可能な限り応急処置を行ったと言うと、ハグリッドは頷いてケイティを抱き抱え、城の方に全速力で走り去る。クシェルもハグリッドの後について行くことにした。

 それを見届けた後、ハーマイオニーは泣きじゃくっているリーアンの所へ駆け寄り、優しく肩を抱く。

 

「リーアン、だったわね? さっきのは突然起こったことなの? それとも―――」

「包みが破れた時だったわ」

 

 リーアンは、今やぐしょ濡れになっている茶色の紙包みを指差しながら啜り泣く。

 破れた包みの中に、緑色が掛かった何か光る物が見えた。

 ロンは手を伸ばして屈んだが、ハリーが咄嗟にその腕を掴んで引き戻す。

 

「「触るな!」」

 

 不用意に触れようとしたロンにハリーとフィールは同時に叫ぶ。

 紙包みからはみ出して覗いている、装飾的なオパールのネックレスをじっと見つめながらハリーがこう言った。

 

「―――見たことがある。随分前になるけど、ボージン・アンド・バークスに飾ってあった。説明書きに『呪われたネックレス。これまでに19人の持ち主のマグルの命を奪った』って書いてあった。ケイティはこれに触ったに違いない」

「ところで、ケイティはどうやってこれを手に入れたんだ?」

「ええ、そのことで口論になったの。ケイティは『三本の箒』のトイレから出てきた時、それを持っていて、ホグワーツの誰かを驚かす物だって、それを自分が届けなきゃいけないって言ったわ。その時の顔がとても変だった………きっと『服従の呪文』に掛かっていたんだわ。私、それに気が付かなかった!」

 

 言い終えたリーアンはまた身体を震わせ、啜り泣き始める。ハーマイオニーは優しく肩をポンポンと叩くと、別の質問を投げ掛けた。

 

「リーアン、ケイティは誰から貰ったかを言ってなかった?」

「ううん………教えてくれなかったわ………それで私、貴女はバカなことをやっている、学校には持って行くなって言ったの。でも、全然聞き入れなくて、そして………それで私が引ったくろうとして………それで………………」

 

 リーアンは言葉が詰まり、絶望的に泣き声を上げる。今はこれ以上追及しても駄目だと思い、ハーマイオニーが彼女の肩を抱いたまま、ゆっくりと立ち上がる。

 

「皆、学校に戻りましょう。ケイティの容態が心配だわ」

「そうだな。それにいつまでも此処に居たら、風邪を引くだろうし、まずは戻るとしよう」

 

 即座にフィールが賛成し、杖をネックレスに向け、強力な呪いが掛かっているそれを魔法で浮かす。

 十中八九、このネックレスは直に触れたら即死するだろう。

 恐らくケイティは、手袋の上から触れたからあんな風に身悶えしたに違いない。

 まるで4年前に起きた石化事件の犯人・バジリスクの時と似ている状況だと思いながら、フィールは大事な証拠品をホグワーツへと運んだ。

 

♦️

 

 翌日、ケイティはクシェルが言った通り、『聖マンゴ魔法疾患傷害病院』に搬送された。

 この衝撃的なニュースは瞬く間に学校中に広まり、ここ暫くは何事も無く平穏無事だった校内をたった1日で騒がせ、特にグリフィンドール生はケイティの安否情報を気遣った。

 闇の呪いに掛かってそう時間が経たない内に、フィールとクシェルが応急処置を施してくれたのと不幸中の幸いで皮膚のごく僅かな部分をかすっただけだったので、ケイティはなんとか一命を取り留められたのだが、あまりにも強烈な呪いだった為に、衰弱が激しくて昏睡状態らしい。

 退院するのは半年後になるかもしれないと、解除不能性呪い・呪詛・不適正使用呪文など、主に呪文性損傷の患者を相手にするクシェルの母・ライリーは重い診断を下した。今回ライリーはケイティの主治癒でもあるため、聖マンゴ1の癒者(ヒーラー)の彼女の指導の元、現在はベイカー家で下宿してるクリミアにフィールは『両面鏡』で改めてケイティがどれだけ重症かの報告を受けた。

 

 あの後、ハグリッドから又聞きしたマクゴナガルに事情聴取としてハリー達は彼女の自室に連行され、リーアンは辿々しくマクゴナガルにポツリポツリと語り出した。

 ケイティが『三本の箒』のトイレに入り、何処の店の物ともわからない謎の紙包みを手にして戻って来たこと。その時のケイティの表情が少し変だったこと。得体の知れない物を届けると約束することが適切かどうかで口論になったこと。口論の果てに包みの奪い合いになり、包みが破れて開いたこと。

 リーアンが説明出来たのもそこまでで、感情が昂った彼女が一言も話せない状態になると、マクゴナガルは「医務室に行ってマダム・ポンフリーからショックに効く物を貰いなさい」と優しく言葉を掛け………彼女が退室した後、マクゴナガルはハリー達に事件の続きを尋ねた。

 それについてハリーは、マクゴナガルにこれまでのドラコ・マルフォイの動向を語り、彼がケイティにネックレスを渡したのではないかと自分の推測を口にした。

 が、マクゴナガルはハリーの憶測に、具体的な証拠が存在しないのに根拠の無い嫌疑を掛けることは出来ないと、その日は彼女自身が罰則を与えて彼はホグズミードに行ってなかったことも含めて一蹴し、一切話を取り合わなかった。

 ロンとハーマイオニーも、事件の現場にマルフォイは居なかったのだからと、マクゴナガルの肩を持ってハリーが『マルフォイ死喰い人説』を持ち出す度に聞こえないフリをして、全て聞き流した。

 

 それから数日後。

 フィールは8階の必要の部屋の前に来た。

 来る前から此処で佇んでいた1年くらいの二人の女子生徒―――の姿をしたビンセント・クラッブとグレゴリー・ゴイルは『失神呪文』で瞬殺し、念のため魔法で拘束してテキトーな部屋にぶちこんでおいた。

 重そうな真鍮の秤を手に持っていたので、落とされたら面倒だと、ポリジュース薬で女生徒に変身した彼等の手から秤を奪い取った後に片付けたので、見張りを任せてまで部屋の中で何かしようとしている先客には気付かれてないだろう。

 フィールは使い慣れた隠し部屋の前で心の中で『誰にも発見されないで隠し通せる部屋』と念じながら3回往復し、出現とした扉を開けて中に入る。

 其処は広大な室内で、何世紀にも渡ってこの部屋を利用してきた者達が秘匿してきた多種多様な魔法具、禁書がドンと積み重なっていた。

 以前フィールは同じ目的を念じて、此処で分霊箱だったレイブンクローのティアラを発見したことがある。だからこそ、今回も成功した。

 フィールの視線の先には、顔面蒼白しながらこちらを凝視するドラコ・マルフォイの姿。

 元々青白い顔を更に青白くさせた彼に、フィールは杖を振り下ろした状態で声を掛ける。

 

 

 

「そう怯えるなよマルフォイ。私はアイツからアンタを助けるために此処まで来たんだ」

 

 

 




【フィールが与えられた特権】
夜中でも外出OK。騎士団の休止&離脱OK。

【マルフォイ一家の保護】
未だかつてオリ主自らがマルフォイ家を保護すると言い出したヤツはいただろうか?

【ケイティ】
原作通り聖マンゴ入院中。
(中身クラミーだったとは言え)ケイティは恩人なので、フィールからの好感度はかなり高い。と言うか何気に他人(?)に対して感情的になったのはこれが初?

【まとめ】
ご察しの通りこれで、チャラリ~、計画全バレ~です。しかもロンが毒入り酒飲んで瀕死フラグも木っ端微塵になって原作崩壊がまた一つ生まれました。こんなにも早く行動に移すとは案外フィールも行動派。

まあ今回はヘビやネズミの時とは一変して状況が違いますからね。
前者は自分も石化する可能性を危惧して慎重に行動、後者は万が一ハリー抹殺の展開に発展しても護りの魔法があるから問題無しでしたが、流石にこればかりは早めに手を打たなければアウトと判断。

その結果、早期にフィールさんIN必要の部屋でフォイフォイとエンカウント、当然彼では彼女に太刀打ち不可能なので、ダンブルドア殺害計画を企ててたフォイは何もかもパーに。
ま、フィールはマルフォイ一家を助けるべくわざと計画台無しにしたので、結果としてはこれでよかったのかもしれませんけどね。後はヴォルヴォルに殺される前にフォイママを救済出来たら万事解決。

余談ですが、実は当初はフォイ夫妻をバリバリ見捨てる予定でした。正直生きていようが死んでいようが関係無いし何よりオリ主にとっては家族の仇なんだから、見捨てたって誰も文句は言わないだろう。
だが、クラウチパパはどういう訳か生存ルートを歩んだんだ。クラウチパパはヘルプしてマルフォイ家はノーヘルプなのも変な話だと思い直し、急遽このような流れに変更。マルフォイ一家はとことん強運の持ち主だと思ってください。
だって普通家族の仇をわざわざ助けようとするヤツなんているだろうか? 普通であれば見放されていたのをオリ主は助けてあげようとしてるんだ。
神は見捨てても、オリ主は見捨てない。
なんて幸運なヤツらなんだ………。

え? そういや生存ルートになったはずのクラウチパパはどうしたのかって?
さあ? 多分アズカバンでディメンターとランデブーしてるんじゃないでしょうか?
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