ーえーと…今夜、召使いは自由の身となり、闇の帝王のもとに馳せ参じる。闇の帝王は召使いの手を借りて、ふたたび立ち上がる。
ーでしたっけ? 噓みたいですけどね
ーなるほど、なるほど
ーありがとうございます。またそういうことがあったら教えてくれますか?
ーはい。けどちょっとびっくりしました。普段とは雰囲気違いましたから。
ーそりゃそうでしょうね。だってそれは……本物なんだから。
ーえ?なんか言いました?
ーいえいえ。何も言っていませんよ。では
予言の成就は絶対…ならば。
楽しかったクリスマスから早、四ヶ月。
またブラックがやらかしたり、クィディッチの試合で解説をさせられたりと山の様な面倒ごとはあったが、漸く教師の仕事も板についてきた。仕事の量も減ってきたし極めて平穏な毎日を送っていた…筈なのだが運命は残酷らしい。
「……まさか君がシリウスの手助けをしていたとはね……ロルフ」
「あー……誤解です。僕はコイツをぶっ潰そうと計画中で「酷い嘘だな。おい」
久々の休日ということで、今日こそ動物擬きを教えてもらおうと叫びの屋敷を訪れていた僕は、突如として現れたリーマスに驚くあまり、らしくもない嘘をついてしまった。…というか黙れそこの駄目犬。
「え、えーとですね……いや本当に誤解なんですよ。物凄く悲しいことにブラックは殺人鬼じゃな「分かってる。裏切り者はピーター。そうだよねシリウス」
「……ムーニー!信じてくれるのか!?」
「あぁ、友を信じなかった私を許してくれパッドフット」
僕はよく分かっていないが二人はなんかいきなりハグをしだした。…どういう状況だよ。というか仲直りしてるじゃないか。もう僕いらなくないか? リーマスが悩んでるっぽいから態々ブラックの冤罪晴らそうと頑張ったのに肝心のリーマスがペティグリュー真犯人説に辿り着いちゃってるじゃないか。…やっぱり僕いらなくないか?
「えーとですね…お熱いところちょっとよろしいですか?」
「「そういう関係じゃないから」」
「今のシンクロレベル的にどう考えても「いいから話せ」
「はいはい分かりましたよブラック。話を戻して…リーマスがペティグリュー真犯人説を信じてくれるならそろそろ元凶をとっ捕まえてもいいかもしれません」
「おい待て。お前この間何処にいるか分かんない、とかほざいてなかったか?」
「あそこで言ったら貴方即座に殺しにいくじゃないですか。リーマスがいたら大丈夫そうなのでもう頃合いです」
「そこまで信頼してくれて嬉しい限りだよ。因みに今ピーターがいるのはハグリッドのところだ」
「例の忍びの地図とやらですか?」
「そうだよ。ハリーが持ってたからね、没収してきた」
「成る程、彼が持ってたんですか」
最悪ペティグリューの手に渡ってる可能性も考えていたから、ハリーが持っていたのは嬉しい誤算だ。
だが取り敢えずは…
「取り敢えずペティグリューぶっ殺…じゃないぶっ潰し計画は学年末試験の後でにして下さい。今必死に試験問題作成中なので」
「正直俺はぶっ殺し計画の方が「それすると冤罪晴らせないですから」
「チッ」
「まぁまぁシリウス、落ち着いて」
冗談抜きで学年末試験は大変なのだ。生徒より教師の方がよっぽど大変なのだ。
何せ其々の学年のレベルに見合ったテストを考えて、採点しなきゃならないのだ。それも一学年約百五十人だ。それでも実技はいい。地獄なのは筆記だ。いつまでも経っても終わらない採点作業は地獄以外の何者でもない…というのはセブルスの受け売りである。セブルスも教師一年目はキツかったとのこと。
閑話休題。
「では僕とリーマスは行きますから計画開始までは大人しくしといて下さい」
「じゃあね、シリウス。また来るよ」
「ワン! ワンワン!!」
僕とリーマスが入り口のところで別れを告げると、ブラックは犬に変身して見送る。尻尾を超スピードで降ってるよあの人。どんだけリーマスが好きなんだ。っていうか僕の時は見送りすらしなかった癖に彼奴リーマスがいると態度変えるのか。 今度の食事は品数少なめにしておこう。
⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰
時は経ち、学年末試験最終日。ペティグリューぶっ潰し計画は明日決行となっていたから今日は早寝しようと思っていた……頃が僕にもありました。
リーマスの部屋に遊びに行ったら
よく考えれば分かることだった! あの堪え性の無い駄目駄目犬ことブラックが、ペティグリューはハグリッドからウィーズリーの末っ子の手に渡ったなんて話を聞いて我慢できる筈がない。こんなことならハリー達をよく見張っておくんだった。 後悔しても後の祭りだ。どうしよう。どうすればいいんだ?このままでは予言の成
「ーー聞いているのか!!」
「あ、すみません。セブルス。ちょっとぼぉ、としてました」
そうだった。今はセブルスもいるんだった。
つい数分前、リーマスと計画の最終確認をしようとリーマスの部屋を訪れた僕は、人狼薬を持って現れたセブルスと鉢合わせした。それも…
「成る程な、こんなものがあったのならあいつらは好き勝手にできるはずだ。にしても矢張りルーピンがブラックの手引きをしていたか…。ルーピンを追う。お前も付いて来い」
「……分かりました」
仕方がない。取り敢えずは叫びの屋敷に急ごう。
セブルスを巻き込みたくなかったからコッソリやったのに計画は丸潰れだ。今年が始まってからブラックを殴りたいと思ったことは数知れないが、ここまでは初めてだ。会ったら最初に殴ろう。
僕らはあっという間に暴れ柳の前に到着する。暴れ柳は何時もの様に、暴れることなく僕らを通した。
ふと小さな音を耳に捉えた僕は、小さな茂みに目をやる。…気のせいということにしておこう。
通路の手前には一枚のマントが落ちていた。
「透明マント…矢張りポッターが…」
僕の隣ではセブルスが勝手に怒りを募らせているが、今回はハリーは悪くない。可哀想なハリー。君の知らない所でセブルスの君へのヘイト値はどんどん上がっていってるよ。
「マントを被れ」
「え…嫌ですよ。何ですかこの小汚いマント」
「いいから早く!!」
どうやら僕はこの小汚いマントを被らねばならないらしい。話を聞いている限り、どうやらこれはハリーの物なのらしい。全く不用心だ。透明マントは結構な高級品なのに、地面に投げ捨てるだなんて。まぁハリーも慌てていたのだろう。
そんなことを考えていると僕らは叫びの屋敷に到着する。にしてもただでさえ狭い通路を二人で抜けるのは中々に大変だった。二度と体験したくない。
話し声がするのは二階。足音に注意しながら階段を上り、ブラック達がいるであろう部屋に入る。
ギィという扉の開く音が響くと同時に部屋に僕らが足を踏み入れると、何やら話していたリーマスは喋るのを止め、十の瞳が僕らのいる方向に集中する。が、どうやらバレてないらしい。ボロボロの見た目に反してこの透明マントの効果はちゃんとあったようだ。
数瞬の後、リーマスは話を再開する。
暫く話を聞いていると、話題がセブルスになる。何でもセブルスは学生時代にブラックの悪戯で命を落としかけたらしい。セブルスがブラックを憎むのも納得だ。
そんな風に僕が話を静かに聞いているのに相反して、セブルスは奥歯をギリギリと噛み締め、拳をギュッと握っている。
「だからスネイプは貴方を憎んでいるんだ。スネイプは貴方もその悪ふざけに関わっていたと思っている訳ですね?」
ハリーの問いにリーマスが答えようとした瞬間、セブルスは自ら透明マントを剥いだ。
…憎いのは分かるがもう少し先まで静かに聞いていて欲しかった。
「その通りだ。ポッター。その素晴らしい推理に10点!」
セブルスはブラックに杖を向ける。リーマスとハリー達は当然のセブルスの登場に驚きにあまり固まっている。その反面ブラックは僕とセブルスを睨みつける。
「なんでお前がそいつと一緒に居る。連れてきたのか!?」
「どういうことだロルフ? まさかお前がコイツを手引きしたわけではないだろうな」
「ロルフ!? 何故ここに!」
「ロルフ先生!?」
「やっぱりスネイプの味方だったのか!」
「ちょっと待って。状況が理解不能なんだけど…」
ウィーズリー、僕は君に激しく同意だ。皆同時に言わないでくれ。僕は並列思考のできる天才とかでは無いのだから。 ただ言いたことはたくさんある。ブラック、リーマス、僕は悪くない。セブルス、その顔怖いからやめて。そしてグレンジャー…はいいや。ハリー、僕がセブルスの味方なのは真実だがこれに関しては無実の罪だ。誤解だ。
「…僕は悪くないです。冤罪です」
「まぁいい。…君の部屋に行ったよ、ルーピン。今夜、例の薬を飲むのを忘れたようだから、我輩がゴブレットに入れて持っていった。持っていったのは誠に幸運だったようだね…我輩にとってだが。君の机に何やら地図があってね。一目見ただけで、我輩に必要なことは全て、分かった。君がこの通路を走っていき、姿を消すのを見たのだ」
「セブル「我輩は校長に繰り返し進言した」
なんか話がどんどん進んでいってるが取り敢えず僕の誤解を解かしてほしい。僕が口を挟もうとしても珍しく…いや獅子寮苛めしている時はしょっちゅうなのだろうが、すごい饒舌で話に割り込めない。
僕が悶々と悩んで居る間にも話はどんどん進んでいく。
「君が旧友のブラックを手引きして城に入れているとね。ルーピン、これが証拠だ。図々しくもこの古巣を隠れ家に使うとは、流石の我輩も夢にも思い付きませんでしたよ」
スイッチが入ったセブルスは止まらない。正直手荒なことはしたくなかったのだが…。
「君「セブルス一旦ストップです」
「…何だ?「ブラック、リーマス、ウィーズリー、グレンジャー、ハリー。僕らを合わせて計7人。この部屋やたら人口密度が高くないですか?」
僕の言葉にセブルス含め、六人は怪訝な顔をする。
「だから何だ?「ちょっと眠ってて下さい」
言い終わるとともに、僕はコッソリ懐から出していた杖でセブルスを失神させる。…はぁ。明日は説教だな。鬱すぎる。
「これ以上セブルスを喋らしても面倒なだけでしょうから手っ取り早く、失神させました。それと…」
僕は言いながらズボンのポケットを探る。…あった。
「リーマス。君のです。飲み忘れていた脱狼薬」
「ありがとうロルフ。にしても災難だったね」
ポケットに奥の瓶をリーマスに向かって投げる。リーマスは小瓶を上手にキャッチしていた。
「ほんとですよ。なに計画早めてるんですか!?」
「…悪い」
「悪いで済むんだったら警察はいりませんから」
「あ、あの! ロルフ先生はブラックの無罪を…」
リーマスとブラックの二人と会話していると、困惑しきった表情でハリーが訊ねてくる。
「えぇ、信じていますよ。彼の食料調達をしたのも僕ですし、ね」
「どうして!?」
「…じゃあブラックの事も含めて色々説明しようか」
僕はいつまでも立っていては疲れるだろうとハリーたちに席を勧める。が、三人は警戒した様子で席に着こうとしない。ま、いいか。僕は椅子に腰掛ける。
「そうだね。始まりはーー」