一匹狼 二重スパイ生活   作:花粉症の人

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一匹狼 孤独に吠える

約千人が集う大広間。

ダンブルドアの短い話が終わると、生徒達は一斉にナイフとフォークを動かす音を立てて食事を始めた。

 

そんな中でも自慢では無いが僕はこの大広間で誰よりも視線を集めていた。

それもそうだろう。

セブルス(ここではスネイプ教授か)よろしく黒マントを羽織りフードを被って、顔すら見せない新任教師がいたら、いくら変人教師に慣れてるホグワーツ生でも、多少は気になる筈だ。

とはいえ僕は他人の視線は嫌いだし、こういうのは不快だ。

 

いっそのことローブを脱いでしまいたいという衝動に駆られる。

瞬間、右隣から殺気の様なものを感じたのは僕の勘違いでは無いだろう。(事実何人かの生徒が身を震わせている)

 

相変わらず勝手に人の思考を読んでくる人だ。そんな事を考えて僕がそちらに顔を向けるとセブルスはジッと睨んできた。

何となくセブルスと話したくなった僕は、咀嚼していたローストビーフを飲み込み、セブルスに小声で話しかける。

 

「何で僕の考えている事分かるんですか?」

「三年間一緒に暮らせば嫌でも分かる」

「僕分かりませんが」

「お前は思考が単純だ」

「酷いですねぇ」

 

僕がセブルスと話している事に気付いた生徒達が、小声で僕らの関係を予想しているのが視界の隅に映る。何時も誰とも喋らずに食事を終えるセブルスが、誰かと喋っているのは相当珍しいのだろう。

 

「で、彼がセブルスのお気に入りのマルフォイ家のお坊っちゃまですか?」

「…そうだ」

 

僕がスリザリンのテーブルに座る一人の顎で示すと、セブルスは微妙な顔をして肯定する。その様子に思わず僕は肩を震わせ笑ってしまう。

 

「安心してくださいよ。僕に彼を害そうとする気持ちは無いですから。僕の復讐は12歳で終わってるんです」

「そんな事は分かっている。だがどんな些細な事であっても彼を逆贔屓するな」

 

全くもって彼らしく無い言葉に疑問を持った僕はセブルスに訊ねる。

 

「らしくないですね。何か理由が? それとも彼の“両親”が余程過保護なんでしょうか?」

「お前こそらしくない。向こうがその気になれば素性はすぐバレる。気を付けろ」

 

セブルスは僕の言葉に含まれた嫌味に気付いたのか顔を曇らせる。

 

「警告ありがとうございます、セブルス。矢張りここに来ると感情抑えられないみたいですね。精神安定薬とか今持ってませんか?」

「実験台になってくれるというにならば、最新の錠剤タイプをプレゼントしよう」

 

セブルスは僕の頼みに新薬をプレゼントする、という答えを用意してくれたらしい。

ローブのポケットから錠剤タイプの魔法薬が入った瓶を取り出すと、僕の目の前で軽く振る。当然答えは…

 

「喜んで頂きますよ。セブルスが調合したものならば間違いは無いでしょうしね」

 

そう言うと僕は奪う様にセブルスから瓶を取り、蓋を開けて錠剤を取り出した。

そしてセブルスが止める間も無く、水と一緒に飲み込んだ。

うん、錠剤タイプは無味無臭だな。

生徒達が騒めくのが聞こえるがそんなにセブルスの魔法薬を飲み込むのは勇気が要るだろうか?まぁ確かに基本苦いが。

 

「にしても、漸く魔法薬もマグルの技術に追い付きましたね。いつまで経っても苦い液体タイプのまま、なんてことにはならない様で安心しましたよ」

「それはいいのだが…その薬は生徒が調合した物だぞ」

 

次の瞬間、僕は猛烈な吐き気に襲われて体をくの字に曲げていた。

再び生徒達が騒めくのが聞こえる。今度は教員も、の様だが。

 

「チッ、これを飲め」

「これこそ…毒だと…思いますよ…?」

 

舌打ちをするとセブルスはそれこそ毒だろうと言いたくなる様な液体を無理矢理飲み込まそうとしてくる。猛烈な吐き気のお陰で言葉は途切れ途切れになってしまったが僕は嫌味を言ってから薬を飲み込む。

そして更なる吐き気に襲われるが、数十秒ほど必死に我慢していると吐き気は無くなっていた。ただ今度は怠い上に眠い。

 

「大丈夫か?」

 

僕が体を元に戻し呼吸を整えるため、ゆっくり深呼吸をしているとスネイプが顔を覗き込んでくる。

 

「怠いし眠いですが…生きてはいますね」

「それは良かった。新学期早々新たな呪文学の教師が死亡したら代わりがいないからな」

「普通そこはすまなかった、とか言うところじゃないですかね?」

「すまなかった。これでいいか?」

「気持ちこもってませんね」

「そうか」

 

無事、死の淵から(?)生還した僕に安心したのか大広間は安堵のため息で埋め尽くされる。

 

「というか新学期早々、新任教師に毒を飲ませたってバレたら人寄り付かなくなりますよ。まぁもとからかもしれませんが」

「貴様こそ殺されかけた教師として舐められない様に頑張りたまえ」

 

いつの間にか殆どの生徒は食事を終えていた様で、僕らの嫌味の言い合いを興味深そうに聞いている。その事に気付いた僕は一回セブルスを無視して食事をとる事にする。

そして僕がスープに手をつけようとした瞬間、大広間に乾いた音が二度響く。

ダンブルドアが手を叩いたらしい。先程まで僕に集中していた視線は一斉にダンブルドアの方に向く。

 

「さて、まだ食べ終わっていない者もいるようじゃが、(ここで彼は僕を見た)一度手を止めて儂の話を聞いてもらうとしよう。まず最初に…新入生は入学おめでとう! そして二年生以上は新学期おめでとう! そして皆にいくつかお知らせがある。大事な事じゃ」

 

そこまで言うとダンブルドアは真面目な顔で話し出す。

 

「ホグワーツ特急で調査。これをわしは許可した覚えがないのじゃがの、皆も知っているように魔法省の要請によりホグワーツでは現在吸魂鬼を受け入れておる。吸魂鬼は学校の入り口を固めておる。あやつらは決して話が通じる相手ではないぞ。透明マントも意味がないからむやみに近づかないことじゃ。」

 

透明マント、のところでダンブルドアの視線が一人の少年に動いたのを見た僕は察する。

彼がハリー・ポッターなのだと。

 

「続いて新しい教授の紹介じゃ。まず魔法生物飼育学じゃが今年から森番のハグリッドが担当する」

 

すると教員席の端っこに座っていた大男が立ち上がる。

どうやらハグリッドはグリフィンドール生に人気の様でそちらのテーブルから大きな拍手が聞こえてきた。特に“ハリー・ポッター”は手が千切れんばかりに拍手をしているのが此方からでも見える。

だが一方でスリザリンのテーブルからは小さな声だが侮辱の言葉が聞こえてくる。

暫くして長かった拍手が終わるとダンブルドアは再び話し始める。

 

「次に闇の魔術に対する防衛術をリーマス・ルーピン」

 

今度はやつれた雰囲気の男が立ち上がる。

ツギハギだらけのローブに痩せこけていて青白い肌色、白髪がある髪。

正直言って…これが防衛術の教師とは大丈夫なのだろうか?

 

「最後に呪文学をロルフ・スネイプ」

 

名前を呼ばれたので僕もこれまでの教師と同じ様に立ち上がる。

またしても生徒達は騒めく。騒々しくてしかたがない。僕は無言で自分に呪文をかけ口を開く。

 

「ご紹介に預かりましたロルフ・スネイプです」

 

僕が話し出したことで大広間は静まり返る。数秒間を取ってから僕はもう一度話し出す。

 

「前任のフリットウィック先生はお怪我をなさったとのことで、これを機に引退なさるそうです。なので今後はレイブンクロー寮の寮監も担当します。教職は初めてですので皆さんが楽しめる授業を出来るよう努力します。 何かご質問がある方はどうぞ挙手して下さい」

 

取り敢えず必要最低限の連絡事項を言い終えた僕は質問の権利を彼らに与える。そうでもしないと後で面倒くさくなる。何人かの生徒がおずおずと挙手する中で、一人堂々と手を挙げている女子生徒を僕は指名する。

 

「グリフィンドールの後ろの方、栗毛の可愛い子 君からお願いします。名前も一緒に教えてくれるとありがたいですね」

 

僕の言葉に一瞬彼女は頰を赤く染める。

フードは取っていないのに(自分で言うのもなんだが、僕の容姿は世間一般からするとだいぶ整っている方だ)何故照れているのだろう?

 

「ハーマイオニー・グレンジャーです。スネイプ先生とのご関係はあるのでしょうか?」

 

生徒達からの感謝と尊敬の目線が彼女に向けられる。

誰もが聞きたいけれど怖ーい魔法薬学教授のせいで聞けない質問を真っ先にしてくる辺り、流石はグリフィンドール生といったところだ。

僕はまたもや殺気を放ってくる隣のセブルスを無視し、質問に回答する。

 

「ありがとうございます。質問の答えですが一応親子という関係になっています。血は繋がっていませんがね」

 

僕の回答に生徒達はどこかホッとした雰囲気を出す。

すると今度はグレンジャーの隣に座っていたハリー・ポッターが手を挙げる。

これはささないわけにはいかないだろう。

 

「じゃあ今度はその隣の眼鏡の子にお願いしましょうか」

 

僕がハリー・ポッターを指名するとセブルスは苦虫を潰した様な顔をする。

前から帰ってきた時に彼の悪口をブツクサ言っていたが余程嫌いなのだろう。

ハリー・ポッターは立ち上がるとどこか警戒した様で口を開く。

 

「ハリー・ポッターです。フードは外さないんですか?あ、あとスネイプ…先生と同じ家に住んでるんですか?」

 

一つ目の質問はいいとして…二つ目は予想外というか……。

だは答えない訳にもいくまい。

 

「諸事情により、今年一杯は顔を見せられません。セブル…すみません。ここではスネイプ教授でしたね。スネイプ教授の家に住まわせてもらっています。実質居候ですね。教授は料理も掃除もやってくれますから」

 

生徒達の多くはセブルスが料理をする、というところに相当驚いた様だ。

魔法薬も料理も変わらない、というのは僕の自論だ。やり方に沿って完璧にこなせば上質なものが作れる。メニューの通りにするだけなのだから簡単すぎて欠伸が出る。

 

「まだ質問がある方もいるようですが残りは授業の時にお願いします」

 

一応最低限度のことはしたので僕は終了を告げ椅子に座る。

 

「ハリー・ポッター。生き残った男の子ですか…」

「あれには関わるな」

「まぁまぁそういわずに。どうせ彼の護りが切れる前には関わる運命じゃないですか。それに向こうも僕が気になっているみたいですしね」

 

僕の小さな呟きを目敏く聞き取ったセブルスは僕に警告してくる。

だがあれに関わることで僕が手に入れられるものは多い。あれとは親しくしておいて損はない。

 

「……死ぬぞ」

「僕に死んで欲しくないということですか?ツンデレですか?」

「……お前はもう黙っていろ」

 

最近ツンデレ度が上がっているセブルスを軽く揶揄うが余程僕が彼と関わるのが気に入らないらしい。僕はまだ死なない、死ねないのだから大丈夫なのに変なところで彼は過保護だ。

 

頭の中でこれからのことを考えているといつの間にか宴は終わった様で、生徒達は監督生に連れられ大広間を出ていく。もしかしたら僕も彼らの中“いたのかもしれない”、と考えるとなかなかに面白い。最もそんな世界はあり得ないのだが…

 

だって僕は愚かな復讐者で…遅咲きなのだから。

 

 

 

 

 




何となく書きたくなって書いたがこの続きを書く日は来るのだろうか…?
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