魔法使い製の目覚まし時計は、僕がいつも使っている目覚まし時計の電子音とは似ても似つかない大きな音を響かせ、僕を起こしてくれた。本当はいつも使っているマグル製の物を持って来たかったが、ホグワーツでは電子機器は使えないので仕方がない。
僕はのそのそベッドから抜け出し、寝間着からセブルスに貰った真っ黒な服に着替える。
別に普段着ているマグルのファッションでも良かったが、矢張り今日はこれを着たい気分だった。
着替え終わった僕は鏡の前に立ち、髪の毛の寝癖を直す。鏡に映った僕のプラチナブロンドの長髪はあちこち跳ねていた。どうせフードで隠すのだから態々直す意味は無いが僕は寝癖があると落ち着かないたちなのだ。
もう寝癖が無いことを確認した僕は、与えられた自室の扉を開けて足を一歩外に踏み…出さずに慌てて扉を閉める。危ない、危ない。マントを忘れていた。
昨夜寝る前に壁に掛けておいたマントを手に取った僕は、それを羽織るとフードを深めに被る。
このマントはダンブルドアの特別製だ。
僕以外がフードを外そうとすれば微量だが電流が流れる。そして幻術のような魔法がかけられているので僕が見せようとしない限り、どんな角度から覗いても僕の口元以外は黒いモヤモヤに包まれて見えない様になっているらしい。更にはマント自体が魔法に耐性がある高価な物だ。
セブルスにこれを貰った時に紅茶を零したり破いたりするなよ、と念を押されたのはいい思い出だ。
セブルスは未だに僕を初めて会った時の…十二歳の弱かった僕と重ねて見ている。今回僕が教師役を引き受けたのも僕はもう子供じゃないとセブルスに伝える為でもある。だからこそ、任務は完璧にやり遂げなくてはならない。
僕は今度こそ扉を開けて足を踏み出す。
僕の自室は二階の隅の方にあるので大広間まではすぐだ。セブルスの部屋には昨日行ってみたが、壁一面本棚といういい意味でセブルスらしい部屋だった。だがあんな湿気の多くて薄暗い部屋に長時間籠っていたら気が滅入りそうだがセブルスは大丈夫なのだろうか?
閑話休題。
大広間に辿り着いた僕は視線が一気に此方に集中したのに気付く。
同じ新任教師でもルーピン教授はそこまで視線を集めていないのだから不公平だと僕は言いたい。
そういえばルーピン教授はセブルスに嫌われているらしい。昨日名前を出しただけで不機嫌オーラがMAXになっていた。年齢的にセブルスと同じくらいだしホグワーツ時代に喧嘩でもしたのだろう、というのが僕の予想だ。向こうも何だかセブルスに遠慮している雰囲気があったし。
教員が座る上座のテーブルには既に何人かのの先生方が座り、食事していた。今いるのはマクゴナガル教授、スプラウト教授にセブルス、それにルーピン教授だ。
セブルス以外の三人が仲良く談笑している一方、セブルスは誰とも喋らず仏頂面で食事を摂っている。
いつも思うがセブルスの食べ方は味わって食べる感じがない。寧ろ生きるために食べる、義務的な食べ方だ。
セブルスが一体どんな重荷を背負っているかは僕には分からない。死喰い人から離れダンブルドアの右腕となり動いている、ということは彼は多くのものを捨てたという事だ。だが、僕は彼には笑っていて欲しい。
三年間過ごしていて笑った所など殆ど見たことはないがセブルスにはずっと笑顔でいて欲しいのだ。
とまぁ重い話になってしまったが要は折角の美味しい食事なのだからもっと美味しそうに食べろ、ということだ。
にしても本当にホグワーツの食事は美味しい。イギリス料理は美味さを追求した料理では無いので、美味しいと感じることはあまりないがここの屋敷しもべ妖精は余程優秀なのだろう。イギリス料理は不味いという考えを根本から変えてくれるくらいには美味しい。
僕が味わって食べているのを横目にセブルスは素早く朝食を終えると、大広間から出ていった。
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「時間ですね。席について下さい」
首から鎖でかけていた懐中時計を見て、授業開始時間な事に気付いた僕は読んでいた論文を机の上に置き、まだ立ち歩いている生徒に座る様促す。
次々と生徒が椅子に座って行く中、未だに座らない二人がいることに気付いた僕は誰にも悟られない様小さくため息を吐く。初っ端からある意味目を付けていた二人(ドラコ・マルフォイとハリー・ポッター)の二人組のクラスに当たるとは。一体僕は運がいいのか、悪いのか。
どうやらドラコとポッターは相当仲が悪いらしい。現に今も周りの声は届いていない様に言い争っている。なんでそんな奴らの合同授業を初心者の僕にやらせるんだ、と文句をつけたくなってきたがそこは仕方がないだろう。
「Mr.ポッターにマルフォイ。もう授業は始まっています。聞く気が無いなら廊下に出てやって下さい。今年から君たちが学ぶのは妖精の呪文ではなく呪文学です。魔法薬学や変身術の方が危険なイメージがありますが呪文学だって下手すれば至極簡単に人を殺せる学問です。今日は初回なので見逃しますが巫山戯た人はただの迷惑なので二度と教室に入らないで下さい。 では授業を始めます」
僕が一気にまくし立てると二人を含む生徒達は驚いた様子で教室はシンとなる。
今の辛辣でまくし立てる様な言い方は昨晩の様な物腰柔らかく、敬語で丁寧に対応する僕の話し方とはかけ離れているからだろう。
注意された二人も数秒フリーズした後、ムスッとした表情で席に座る。にしてもなかなかに面白いものだ。
何処に誰がどんな風に座っているか、それだけで寮の内部での関係性は明らかだ。
まず仲の悪いグリフィンドールとスリザリンは左右にきっちり別れて座っている。僕から見て右はグリフィンドール、左はスリザリンに綺麗に分かれていた。
そしてどちらの寮も前の方に座るのは真面目な優等生タイプで、後ろの方は実技重視タイプ、真ん中には互いの寮で中心となる人物が座る。グリフィンドールでいうならばポッターとグレンジャー、ウィーズリーの末弟の三人コンビ。スリザリンならドラコとその取り巻きとグリーングラスだ。
正直僕としてはそんな俗に言うスクールカーストなんてどうでもいいが、セブルス曰くそんなことも教師をするならば憶えておくべき情報らしい。取り敢えずこのクラスの位置関係を頭の中に叩き込んだ僕は授業を始めることにした。
「まず授業を始める前に君たちに約束して欲しいことがあります。それはこの授業で学んだ魔法を他者を害するために使わないで欲しい、という事です。呪文学で学ぶ魔法の殆どは非殺傷的なものですが使い方を変えればそれは真逆になります。例えば…一年生で習う浮遊呪文なんかもそうですね。あれで大量の刃物を浮遊させてから、呪文を解いて一気に落とせばそれだけでマグルは死にますし盾の呪文を使う腕がなければ魔法使いでも死にます。重要なのは誰が使うか、ではなくどの様に魔法を使うか、です。僕はこのクラスにいる全員が呪文学で学んだ魔法を将来人のために使うことを期待しています」
多くの魔法使いは理解できていないが、魔法は使い手がどんな使い方をするか次第だ。
僕は自分が教えた生徒に手を汚して欲しくないと感じる程度には人の心を持っている。
だからこそ今彼らに言ったことは忘れないで欲しいのだ。闇の魔術を学ぶのは必ずしも悪いことでは無い。だってそれを人助けのために使えばいいだけなのだから。
ここにいる生徒達の多くはきっと大きな戦いに巻き込まれるだろう。
闇の帝王(僕は別に彼の信者では無いし、彼を恐れているわけでもない)とダンブルドアの戦いはイギリス魔法界全体の飛び火する。ハリー・ポッターは所詮ダンブルドアの傀儡でしか無い。“今は”だが。
僕に課せられた任務は闇の帝王復活後のセブルスのサポート、そしてハリー・ポッターへの精神的なケアだ。
ダンブルドアは最悪彼が傀儡のままでも勝てばいいと考えている様だがそれはダンブルドアが多くの人の上に立つ者だからだ。それでは闇の帝王を倒してもハリー・ポッターは救済されない。ダンブルドアのやっていることは結局昔と同じだ。
『より大きな善のために』かつてダンブルドアとグリンデルバルドが掲げていたキャッチフレーズだ。
僕はダンブルドアを盲信的に信用する狂信者ではない。偉大なことを成し遂げた人物も一つや二つ、暗い過去があるのは当然だ。ダンブルドア側に付いてから僕は自分の情報網を駆使してダンブルドアの過去を漁った。
用心深いセブルスでさえ彼を信用しているけれど僕だけは何があっても絶対にダンブルドアを信用しない。
「さて、では前置きが長くなってしまいましたが呪文学を学んでいきましょう。三年生ではOWLテストに向けて少しずつ実践的な魔法を学習していきます。基本呪文集のP16を開けてください。今日からハロウィンまでにこのページに載っている凝縮呪文、瞬間氷結呪文、妨害呪文の三つをクラス全員が出来る様になってもらいます」
僕の言葉に生徒達はグリフィンドール、スリザリン関係なく嫌そうな顔をする。こういう時だけは息が合うんだな…と僕はフードの下で呆れた顔をする。
そんな中一人嬉しそうな顔で手を上げている生徒がいることに僕は気付いた。
「…Mis.グレンジャー、質問ですか?」
「三つとも出来た場合は何をすればいいんですかスネ…スネイプ先先生」
彼女の噂は昨日の夜の職員会議で聞いた。曰く近年稀に見ぬ秀才だそうでレポート、テストは完璧で実技も学年トップ。監督生と首席の座は確実と言われている優等生。
(最もこの場合彼女が首席になる頃にはマグル生まれの彼女はホグワーツを追い出されている可能性も十二分にあるのだが)
そんな彼女だ。口振りからしても、もう既に全部できるのだろう。
「何でもいいのでやってみたい魔法をやってもらいます。高度なものでもいいですし、別に変身術系のものでもいいでしょう。…それと、僕の呼び名はスネイプではセブルスと同じで分かりにくいでしょうからファーストネームでロルフ、と呼んで下さい。他に何か質問はありますか?」
高度なものでも、の部分で目を輝かせる彼女に僕は苦笑する。知識欲があるのはいいことだ。
他に手を挙げるものがいないのを確認した僕はそれぞれの呪文の実演をすることにした。
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「ーーーですね。君はもう少し意識して杖を振った方がいい。 もうそろそろ時間なので帰りたい人から帰って下さい。宿題は今日は無しでいいですから次回までに何故自分ができないのかをよく考えておいて下さい」
生徒に直した方がいい点を注意して回っていた僕の言葉を聞き、生徒達は荷物を持ってぞろぞろと教室から出ていく。その様子をぼぉ、と眺めていた僕はふと目に入った一人の少年を呼び止める。
「Mr.ポッター、少し残ってくれるますか?」
帰ろうとしていたハリー・ポッターはこちらを振り返った後、友人達に断りを入れて怪訝そうな顔をしてこちらに歩いてくる。
「えーと…ロルフ先生?何でしょうか」
「あーハリー、と呼んでいいかな?ハリー、君はマルフォイ家の子と仲が悪いのですか?」
ハリーは僕の質問に嫌悪を滲ませた表情で返答した。
「その質問意味があるんですか?」
「授業の前に喧嘩されると困るんですよ。後は…セブルスが君の悪口散々言っていたからです」
「先生はスネイプと仲がいいんですね」
僕はハリーの言葉に思わず吹き出してしまう。必死になって守っている相手にここまで嫌われているとはセブルスも相当を意地悪しているらしい。
「?」
「いえ…何でも無いです。今回は見逃すけど他の先生の前では「先生」をつけた方がいいですよ」
「…気を付けます」
「話の続きですがセブルスは君のことを偏見というフィルターを通して見ています。僕はそれ無しで君の事が知りたかっただけです。まぁ呼び止めた理由はもう一つありますが」
「マルフォイとは一年生の頃から嫌い合ってました。もう一つの理由は?」
話している内にハリーの表情は警戒したものから少しずつ、好奇心旺盛な子供の表情に変化していく。
成る程。いい意味でも悪い意味でもハリーは子供っぽい。好奇心旺盛で少し生意気で傲慢な所もあって…如何にもセブルスが嫌いそうなタイプだ。
「汽車の中で吸魂鬼に襲われて倒れたと聞きました」
真剣な顔をして僕が言った内容にハリーは小さく肩を震わせる。余程嫌な思い出を見たのだろう。彼の経歴からして恐らく…。
「先生も僕を馬鹿にするんですか?」
「そんな訳ないじゃないですか」
僕は肩をすくめ、やれやれとでも言うようなジェスチャーをした。先生も、ということは大方ドラコ辺りに馬鹿にされたのだろう。
「君は辛い経験をしています。君の精神力は年からは考えられないほど強いですよ」
「じゃあ何で呼び止めたんですか?」
「気にするな、と言いたかっただけです」
「え?」
「セブルスも君に何かしらいちゃもんをつけるでしょうが気にしないで大丈夫です。余りにも理不尽な減点されたら僕が贔屓にならない程度に加点してあげますから気を強く持って下さい。どうしても、耐えられない時は友人に相談するのが一番です。幸い君の周りには良い友人が沢山いるようですしね」
僕は部屋の隅でこっそり僕とハリーの会話を聞いていたグレンジャーとウィーズリーの二人を見ながら言うと二人は慌て始める。ハリーは気付いていなかったようだが僕はそこまで鈍くない。とはいえ僕の言葉と目の動きで気付いたのかハリーは彼らの方を向き嬉しそうな顔をする。
「君たちも次の授業があるでしょう。遅刻したくないならば急いだ方がいいですよ」
僕が時計を見ながら言うとハリー達は軽く会釈をして走り出す。彼らの次の授業は魔法薬学だ。急がないと減点されるだろう。廊下を走り抜ける背中に向かって僕は彼が知りたがっているであろう情報を伝えることにする。
「吸魂鬼で苦しむのが嫌なら守護霊の呪文がオススメですよ」
「ありがとうございます!」
「人に教えるのは初めてだっただろう。どうだった?」
今日のノルマをこなした僕が大広間で夕食をとっていると、セブルスが僕に問いを投げかけてきた。
セブルスから話しかけてくるなんて珍しいな、と考えながら僕は口に入れたローストビーフを噛み切り答える。
「以外に面白かったです。ですが疲れますね。これにプラスしてレポート採点、テスト問題作成、夜間見回り、クィディッチチームの応援等の時間外労働があると考えたら中々のブラック企業です」
「ブラック企業?」
「あぁセブルスは知りませんか。残業代を支払わずに働き手が過労死する程働かせる企業の事です。企業側からすれば上手く法の抜け道を使えば裁判沙汰になっても勝ててしまうのでノーリスクでメリットだらけなんですよ。今はまだ話題になってませんがその内社会問題になりますよ」
「お前はそういうのに詳しいな」
「知っておいて損はないですからね」
呆れ顔で言ってくるセブルスに僕がドヤ顔で返す。
「ドヤ顔してもフード被ってるから見えないぞ」
「あ…というか何故セブルスは分かるんですか?」
「言っただろ、思考が単純だと」
何だかイラッとした僕はそこで話を切って、デザートに手を伸ばす。するといつのまに食べ終わったのかセブルスは立ち上がり大広間から出ていく。その後ろ姿を眺めながら僕は呟いた。
「相変わらず食べるの早いですね…」
⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰
僕がホグワーツに来てから四日経ったある日、僕は闇の魔術に対する防衛術の教師 ルーピン教授に呼ばれて職員室にいた。今日はもう呪文学の授業はないので僕はフリーだが、本来今は授業中なので職員室には僕と同じく休憩中のセブルスしかいない。
沈黙に耐え切れなくなった僕は読んでいた小説から視線をセブルスにずらし、話し掛ける。
「ルーピン教授に呼ばれたんですが何でだと思います?」
「そんなこと知らん」
「…少しは考えましょうよ。僕の予想ではダンブルドアから頼まれた、ってとこでしょうね」
今までずっと仏頂面を貫いていたセブルスの鉄仮面が始めて驚きの表情を作る。
「どういうことだ?」
「あ、表情変わりましたね。説明してほしいですか?」
「早くしろ」
「はいはい分かりました。急かさないで下さいよ」
急かすセブルスに相対するように、僕はゆっくりと小説を閉じてテーブルの上に置く。そして空っぽになった左手を膝の上に乗せてから口を開く。
「簡単な事です。今朝彼がここに持ってきたあの洋箪笥」
言いながら僕は時折ガタガタ揺れる古臭い洋箪笥を指差す。
「あの中に入ってるのは恐らくですが真似妖怪です。ダンブルドアは僕の事をまだ理解していない。幾らセブルスが信用していても用心深い彼なら僕を試そうとするはずです」
「その手段が恐怖の対象になる真似妖怪とダンブルドアに忠実な
「流石セブルス、その通りです」
僕が褒めるとセブルスはまた元の仏頂面に戻ってしまう。
「褒められても嬉しく無い。それに…お前がそれを我輩に言うということは言いたいことがあるのだろう」
流石セブルスだ。開心術も使ってないのに僕の考えを見抜いてくる。
「えぇ。セブルス…ダンブルドアを信用し過ぎないでください。貴方が彼を信用しているから僕は自分が思っていることや調べたことは一切言っていません。それはセブルスの決断を鈍らせる事になってしまうから。ですが…お願いですから自分の身も考えて下さい」
「……お前の心配も理解している」
申し訳なさそうな顔で言うセブルスに、頭に血が上った僕は柄にもなく叫ぶ。
「セブルス、貴方は分かっていない!!」
「分かっている」
そんな僕に対して冷静に返事を返すセブルスに僕は益々怒りを募らせもう一度叫ぶ。
「違う!!貴方は自分n「えっと……喧嘩かな…?」
が、僕の叫びは恐る恐る顔を覗かせたルーピン教授の言葉に遮られた。ルーピン教授の後ろでこちらをチラチラと見てくる生徒達を見て、怒りがサァーと引いていく感覚がする。
「ただの親子喧嘩だ。「初めて自分から親子と言ってくれましたね」お前は黙っていろ。にしてももうそんな時間か。我輩は退散するとしよう」
壁掛け時計を見て職員室から出て行こうとするセブルスに僕は言葉を投げ掛ける。
「逃げるんですか?」
「逃げてはいない」
「貴方は現実から目を背「生徒の前だ。ここではお前は教師で、問題を起こせばクビだ。自ら立候補したのだから今年一杯はやりきれ」
言い負かされ、ぐうの音も出なくなった僕は去っていくセブルスの背中を見つめる。
「あー 授業を始めてもいいかな?セブ…ロルフ」
「えぇ、すみませんね。時間を取らせて。ルーピン教授」
「ファーストネームで呼んでくれて構わないよ?」
「…リーマス、授業を始めて下さい」
別に争っていた訳では無いがなんとなく負けた気がした僕は机に軽く腰掛けて先を促した。
「オーケー、授業を始めようか。みんな、洋服箪笥の周りに集まってくれ」
予想が確信に変わったことで僕は天を恨む。真似妖怪が何になるかは分からないが面倒なことになるのは間違いない。生徒達は時折ガタガタ揺れる洋箪笥が恐ろしいらしく、少し距離を置いて集まる。
「心配しなくていい。中にいるのはボガードだ。昨日の午後に入りこんだ奴なんだが三年の実習に使うのに丁度いいから残しといてもらったんだ」
リーマスは緊張を解こうと思って言ったのだろうがそれは逆効果だ。普通の十三歳ならからしたら妖怪がすぐそこにいるのは恐怖以外の何者でもない。とはいえ妖怪にビビっている姿を見せたく無いのか大体の生徒は虚勢を張り、洋箪笥に近付いていく。あからさまに怖がっているのはネビル・ロングボトムだけだ。
「じゃあ質問しよう。ボガードとは何かな?」
リーマスが生徒達を見渡して言うと途端に手が上がる。予想通り、というか手を上げているのはグレンジャだった。リーマスは他に手が上がっていないのを確認してからグレンジャーを当てる。
「形態模写をする妖怪です。私達の恐怖の対象に姿を変えて脅かすことができます」
教科書に載っている内容としては100点だ。だが惜しい。
「そう、そのとおり。わたしでもそんなにうまくは説明できなかっただろう。それと追加して言うのならボガードは真似妖怪とも言われている」
リーマスは真似妖怪の説明と対処法を教えていく。こういう実践形式は生徒のレベルアップの意味では効果が高そうだ。参考にして今度呪文学の授業でもやってみよう。
そんな事を考えているといつの間にかロングボトムが真似妖怪の前に立っていた。変身したのは…セブルス。彼もハリーと同じくセブルスにいびられているというのは聞いたが恐怖の対象となるまで普通やるのだろうか?ロングボトムはセブルスに自分の祖母のファッションをさせて撃退していた。
その後も生徒達は真似妖怪をどんどん撃退していく。
そしてハリーの番になった所で…僕は本能的にハリーと真似妖怪の間に体を滑り込ませた。リーマスも止めようとしていたが僕の方が少しだけ早かったらしい。
僕がハリーの恐れるものを出現させなかったのはそれが万が一にも闇の帝王や吸魂鬼だった場合他の生徒にも影響が出るからだ。リーマスが止めようとしたのもおそらく同じ理由だろう。
真似妖怪は変化していく。僕の恐怖の対象に。
正直なところ僕が自分が何を恐れているのか少し興味があった。だから目を逸らさず真っ直ぐに真似妖怪を見つめた。そして…真似妖怪が恐怖の対象として選択したのは真っ黒のローブに身を包んだセブルスだった。
思わず声が出そうになる。何故僕がセブルスを怖がる?
瞬間僕は悪寒を感じた。今すぐにコレを止めなければならないと本能が告げる。頭の中で煩いまでに警鐘が鳴り響く。
「ロルフ…魔法がt「リディクラス!!《馬鹿馬鹿しい》」
勝手に動いてくれた口と杖のお陰でこれ以上不快な思いをすることはなくなったが周囲からの視線が痛い程突き刺さる。
「あー みんな、よくやった。今日はこれまでだ。教科書のボガートに関する章を読み、まとめを提出してれ。月曜までだよ。では、解散」
リーマスの終わりを告げる言葉が救いの様に感じた僕は末期だろうか?
⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰
僕はリーマスと話を終え教室から出ていくハリーをぼぉ、と見ていた。
「ーーフ!ロルフ!大丈夫かい?」
「すみません。ちょっと意識飛んでました。もう一回言ってくれますか?」
上の空だった僕は呼び掛ける声に気付かなかったらしい。耳元で鼓膜を破りにきたかのような大音量で呼ばれて漸く気付いた僕は勝手に落ちてくる瞼を必死に開けて欠伸をかみ殺す。
「紅茶はいるかきいてたんだ」
「喜んで頂くよ」
意外なことに(?)リーマスの入れた紅茶はかなり美味しかった。ここだけの話、リーマス自身は良い人だがダンブルドアは何するか分からないので、最悪隠し味に真実薬を入れた「リーマスの手作り紅茶 真実薬風味 」がきてもおかしく無いくらいの心意気で飲んだので普通に美味しくてびっくりした。
「リーマスは紅茶を入れるのが上手ですね」
「君に褒めてもらえるなんて光栄だよ」
「回りくどいのは苦手なのでそのまま聞きますが今回のはダンブルドアに言われてやったんですか?」
僕の思いっきりそのままな質問にリーマスは驚愕の表情の後に苦笑する。
「流石だね。そこまで分かっているとは」
「僕の情報網はダンブルドアが知っているよりも広くて深いんですよ」
「それでまだ“十七”というのだから末恐ろしいね」
「褒めてますか?」
「あぁ」
「で、本題に入りましょう。今日見たもの、“セブルス”に言わないで下さい」
セブルス、の部分を強調した僕にリーマスをは警戒した視線を向ける。彼とそのバックにいるダンブルドアの予想とは外れたのだろう。
「ダンブルドアではなく?」
「そんな警戒しないで下さいよ。別にあの程度なら僕の経歴を元々知っているんですからいいんです。ですがセブルスがこの事を知ったら少なからず迷惑を掛けてしまいます」
リーマスは今度は納得したような顔をする。
「1977年 5月28日 マルフォイ家長男として誕生。1988年 遂に入学届けが届かずスクイブと判断され捨てられる。1989年 セブルスに貧困街で保護される 確かに君の経歴を知っている人ならさっきのセブルスの言葉の続きを予想できるだろうし、予想されても困らないだろうな」
ともかくセブルスに知られる訳にはいかない。僕の胸の中の捨てられる恐怖を。
「えぇ。その通りです。なのでセブルスには「誰にも教えないよ」
「え?」
リーマスの予想外の言葉に思わず口から声が溢れる。何を言っているんだ?
彼はダンブルドアに恩があり裏切るなど考えない筈だ。何が言いたい?
「ロルフ、僕は君の事を友人だと思っている。友の知られたく無いことを誰かに話したりするものか」
「馬鹿な奴…」
会ってほんの少ししかないやつに恩を売るためにダンブルドアに情報を渡さない?
本当にこいつは馬鹿だ。
「それが君の素か。変に敬語なんて付けるよりも良いと思うけどね」
そうだ。本当の僕は敬語なんて使わない。ただの十七のガキだ。
けど…それはロルフ・マルフォイだ。もし僕に魔法の力があったことをかつての両親に告白したら彼らは僕を迎え入れるだろう。だが僕はそれを選ばない。今の僕はロルフ・スネイプだ。
「リーマス……。」
「何だい?」
「よろしくお願いします」
そういって僕は左手を差し出した。
「あれ?元に戻っちゃったんだ」
「あれは僕じゃないから」
「うーん?よく分からないけどこれからもよろしくってこちでいいかな?」
そういってリーマスは僕の手を握った。
「はい」
その日僕には友人ができた。
スタートがハリー三年生時点なので題名の二重スパイ生活までそうとうかかる予感が…
そしてさりげなくカテゴリを短編から連載へ。そして次々に謎(?)をバラしていくルーピン先生登場。
◯主人公がドラコだけ最初から名前呼びなのはミスではありません。
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