一匹狼 二重スパイ生活   作:花粉症の人

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一匹狼 仲直りの涙

 

 

 

 

雲一つ無い澄んだ空を横切る七つの影を、眠気と死闘を繰り広げながら僕は眺める。

ふと後ろを振り返った僕は忍び足でこっそり僕に忍び寄ろうとしていたリーマスを発見した。

 

「……思いっきり不審者ですよリーマス」

「顔を見せようとしない君の方がよっぽど不審者だよ」

「僕は仕方ないですから。というかリーマスがレイブンクローのクィディッチチームに肩入れしてると思われた面倒なので帰って下さい」

 

そう、ここはクィディッチ競技場の観客席。僕はレイブンクローのクィディッチチームの選抜試験の様子を眺めていた。本当は部屋に引きこもっていたかったのだが寮生に無理矢理来させられたのだ。

最近は寝不足なのでたまには寝たかったのだが…。

 

「何でそんなに眠そうなんだい?」

「寮監+教師の仕事は結構忙しいんですよ。前はセブル…スが手伝ってくれてので……」

「あ…えぇと…なんかゴメン」

 

うっかりセブルスの名前を出してしまったせいで気まずい雰囲気になる。

セブルスと口論した日からもう一週間経ったが未だにセブルスと仲直りできていないのだ。そもそも僕はセブルスと喧嘩するのが初めてなのだ。仲直りなどなんと言って良いか分からない。

 

「いえ、リーマスは悪くありません。良い加減仲直りしないといけませんね…」

「陰ながら応援しているよ」

「ありがとうございます。だからお帰り下さい」

「君酷く無いかい!?」

 

何時もながらいいツッコミをするなぁ、と考えながら僕はリーマスの抗議の言葉に適当に相槌を打っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰

 

 

 

最強のシーカーは誰だと思いますか?

 

よく新聞のアンケートで訊ねられるこの手の質問にはその人の歳が出る、という話を聞いたことがある。

 

例えば高齢(魔法界での高齢は百越えを指す)の人ならば1899年に自らが所属していた底辺プロチームを入ってから一年でイギリス最強にした「カイル・ガーソン」を出す人が多い。聞いた話によると1890年代の頃はクィディッチ黄金期とも呼ばれていて天才やら鬼才がゴロゴロいたらしい。

一方で今の六十代から三十代の大人達の世代はマグルの方での戦争やらグリンデルバルド、闇の帝王の出現により、娯楽を楽しむ余裕が無かったためかそもそもクィディッチに興味がない、という人もいる。

 

かくいう僕も実のところクィディッチはあまり好きでは無い。煩いし何よりも暑苦しい。だが一人だけ僕は大好きな選手がいる。1980年代後半に最強のシーカーと恐れられていた「クライス・ルイーザ」だ。

小柄な体型を駆使したスピードタイプで、パワーは無くても反射神経とテクニックで敵の妨害を避けて誰よりも速く競技場を駆け抜けてスニッチを掴み取る。その姿を新聞で目にし、彼に憧れを抱いた幼かった頃の僕は、弟と一緒に両親に彼の出る試合のチケットを必死にねだったものだ。

 

とまぁどうでもいい回想は置いておいて、ルイーザは現在プロでは無くアマチュアとして活動している。

どうして彼ほどの選手がプロを辞めたかとというと、彼は俗に言うクディッチ狂なのだ。プロというのは体調管理も仕事のうちだ。一日中飛んでいたい彼にはコンディションの調整の為に試合の前日にマラソンするのは耐えられなかったらしい。

さて、そんなクィディッチ狂の彼はいくつもの名言を後世に残している。

 

例えば「空を飛ぶのは息をするのと同じ」

例えば「僕にとっては地上よりも雲の上の方が安心できる」

 

いつもクールだった彼だが、この発言から分かるようにクィディッチが関わるとヤバイ人になる。

そして僕が彼の言葉の中で一番好きな言葉がある。

 

それは…

 

「『どんな天気であろうとクィディッチの試合はやって来る』いい言葉ですが…流石にこの天気で中止にならないのはおかしいですよね」

 

確かにどんな天気でも試合はあるが雷が鳴る中での試合は死ねと言っているようなものだと思う。僕が引きつった笑顔のまま呟いた言葉は絶え間なく鳴り響く雷と、降り注ぐ雨の音に掻き消され、誰にも聞かれず消えていった。

今日の試合はグリフィンドール対ハッフルパフ。別にレイブンクローが出るわけでも無いしこんな天気ならば帰りたいが教師は基本全員出席しなければいけないらしい。

 

「いよいよホグワーツもブラッ「ブラック?」

 

僕の愚痴は突如として現れたリーマスによって邪魔された。この天候の中よくも僕の声を聞き取れるな、と感心する。

 

「ブラック企業化が進みましたね、って言おうと思ったんですよ。にしてもリーマスはシリウス・ブラックに恨みでもあるんですか。さっきまでマクゴナガル教授と話していたのにブラックと聞くや否やコッチに飛んできましたが」

「君はどこまで知っているんだい?」

 

リーマスは呆れたように肩をすくめて訊ねた。とはいえ僕も彼の過去を知っているわけではない。同い年だし何かしらの関係があってもおかしくは無いと思っていたが今のはただの引っ掛けだ。

 

「カマかけただけですよ?」

「それはだけとは言わない。そしてそんなのに引っかかった自分が恥ずかしい」

「それは残念ですねぇ」

 

はぁ、と落ち込んだ様子でため息をしたリーマスの横で僕は素知らぬ顔をする。リーマスはジト目で僕を睨んでくる。

 

「最近君、性格悪くないかいロルフ」

「忙しいんです」

「あれ? まだセ「もう試合が始まります」

 

僕の失言で途端にニヤニヤし出すリーマスの言葉を邪魔してから僕は選手たちに目を向ける。

そういえば聞いた話によると…

 

「ハグリッドさんのとこのヒッポグリフがドラコを襲ったって聞いたけど怪我でもしたのかい?」

「この間の職員会議の議題だったんだけど君寝てた?」

 

当然だ。僕が職員会議を真面目に聞くわけないじゃないか。だが事実とは言えどリーマスに言われるのはムカつくので、僕はリーマスに発言を撤回させることにすることにして顔をリーマスの方に向ける。

 

「質問に答えて下さいルーピン教授」

「あぁもう!わかったよ僕が悪かった」

「わかったならいいんです」

 

態とファミリーネームで呼ぶとリーマスは降参とでも言うように両手を軽くあげてから説明を始める。

 

「最初の授業の時にハグリッドが目を離した隙にヒッポグリフを侮辱して肩を軽く切られた、って聞いたよ。マダム・ポンフリーの治癒で治らない訳ないから今回の怪我を利用した欠場は嘘だろうね。とはいえ父親の影響力もあるし、教師がいながら怪我を負わせてしまったのはこっちだから誰も何も言えない」

「……大丈夫なんですか?」

「それはどっちだい?」

 

僕の問いにリーマスは分かってる癖に訊ね返してくる。本当に喰えない友人だ。だがリーマスと話すのはセブルスとはまた違った楽しさがある。だからやめられない。

 

「当然ヒッポグリフの方です」

「…処刑だってさ。ハグリッドと仲が良いハリー達が必死に頑張ってるらしいけどあれは多分駄目だ。マルフォイ氏の権力は魔法省上層部に及んでる。魔法大臣はマルフォイ氏からの支援が打ち切られるのは嫌だろうからダンブルドア先生が止めても無理だろうね」

 

なんとも言えない微妙な空気になった僕らは会話をやめて試合に集中することにした。再び顔を戻した先では一進一退の熱い闘いが繰り広げられていた。降り注ぐ大雨のせいでよく見えないが選手達の熱気はこちらにまで伝わってくる。

 

にしても、ハッフルパフは何故こんな強いのだろう。

ここ数年はクィディッチ杯を巡る戦いでは

ハッフルパフ<レイブンクロー=スリザリン<グリフィンドールの順の強さになることが多いらしい。

勿論一つの寮に天才が現れた場合は順位は変動する。ハリーがシーカーに入る前はグリフィンドールは強いシーカーが卒業したためスリザリンよりも弱かったが一人の天才の登場で順位はあっという間に入れ替わった。

真面目だが全てを受け入れるが故に、突出した才能を持つ天才が出にくい性質のハッフルパフはこれまでいつも負けてきた。だが今年に限ってはグリフィンドールにすら勝ちそうな勢いだ。

ふと目線を上げるとハリーをマークしながら他の生徒に指示を出す一人の生徒が見える。

彼の顔が見えた時僕は納得した。成る程、彼なら一年でチームをまとめ上げるのも可能だろう。

セドリック・ディゴリー。文武両道、眉目秀麗、品行方正と絵に描いたような優等生。学年一位のハッフルパフの英傑だ。

呪文学の授業でも五年生とは思えない魔法の腕を見て将来は闇払いかと思っていたが、クィディッチまで出来るとは非の打ち所のない生徒だ。しかも五年生ながら司令塔としてチームを引っ張っているとは…プロにも行けるのではないだろうか?

 

僕が色々考えている間にも試合は進んでいく。が、それと同時に天候もますます悪くなっていく。

 

「ポッーーでーーす!!ーーーリーーーる!」

 

遂に解説のジョーダンの声も聞こえなくなってきた頃、ハリーが動き出した。

見ている感じ彼はフェイントはあまり上手くないし、今の加速の感じからしてもスニッチを見つけて動いたのだろう。一方ディゴリーも気付いたらしくハリーを追いかけて行く。

遂に決着か、と競技場が沸く中僕はなんとなく嫌の予感がして杖を出す。隣のリーマスも異常に気付いたようで椅子から立つ気配がした。

 

 

 

 

 

ハリー達がどんどん上へ登っていく中、僕は急に寒気を感じていた。やはり何かがおかしい。

僕は自分とマントにに防水魔法をかけて温度を一定に保つ魔法もかけておいた。なら何故?

瞬間、競技場に歓声と叫び声と悲鳴が入り混じる。

上に登っていった筈のハリーが落下してくると同時に吸魂鬼が降りてくる。上で襲われたということだろう。

一方少し離れた場所でディゴリーはスニッチを掴んでいた。

 

だが今はそんなことはどうでもいい。気が付くと僕は席から飛び降りてハリーを受け止めに走っていた。

あの高さから落ちたら即死だ。ダンブルドアが立ち上がって杖を抜いていたから大丈夫だろうが危険は避けるべきだろう。

地面に降りると土が雨でべちゃべちゃになっているのか気持ち悪い感触がする。

今ので靴が汚れた。後で綺麗にしなければ。

 

ハリーの落下地点に向かうと既にダンブルドアが対処済みだった。ハリーは気を失った状態で地面から数センチ浮いていた。一瞬どうしようかと考えたが医務室に連れていくのが最善だろう。

僕は抜きっぱなしだった杖を軽く振って担架を出し、ハリーをその上に乗せてから宙に浮かせて、走ってやってきたマダム・ポンフリーに後をお願いした。

 

もう寒気を感じないと思ったら吸魂鬼は生徒と同じく教師陣によって追い払われていたらしい。この分では僕も守護霊の呪文を覚えておいた方がいいかもしれない。

リーマスに教えてもらおうと考えながら競技場を出ようとした僕は、ふと強い殺気を感じて振り返る。

しかしながら競技場には僕以外誰もいない。諦めて帰ろうと思った瞬間、雷の光で暗闇の中に黒犬のシルエットが浮かび上がる。

ハリーが死にかけた所に黒犬とは不気味だ。とはいえ一瞬見ただけだが目が赤くなかった。

グリムではないだろう。

 

だが…何故こんなところにあの犬はいたんだ?

禁じられた森で暮らしているにせよ普通の犬がいたら弱肉強食の世界では生きていけないだろう。

何よりも方向からして殺気を向けてきたのはあの犬だ。普通の犬が殺気を向けないのは分かりきっているが犬型の魔法生物であのサイズだはグリム以外にはいないだろう。

 

黒犬…ハリー…死……。

何かが掴めそうで掴めない。そんな違和感を感じながら僕は競技場を出た。

 

 

 

⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰

 

あの最悪な試合から一週間。僕は夕食どきの大広間でセブルスの前に立っていた。

 

「セ、セブ…セブルス!! その…この間はすみませんでした…」

 

舌を噛んでしまったが逃げられないように態々大広間でやっているのだ。今日成功させないとまた恥ずかしい目にあう。いい加減セブルスと仲直りしてこいとリーマスに背中を押されてやったが矢張りここでやるんじゃなかったと今更ながら後悔する。

 

「そ、そ「もういい。分かったから早く席につけ」

 

反応してくれないセブルスにもう一度謝ろうとするとセブルスは僕を強制的に椅子に座らせてきた。

 

「いやだt「もう気にしてないから早く席につけと言っている」

 

顔が怒っているように感じた僕は、遮られてなお言おうとしたが今度は僕の目を見て言ってきたセブルスの言葉に一度口を閉じてから一応確認する。

 

「本当に気にしてないんですか?」

「無論」

 

瞬間、僕の目の奥から何かが込み上げてくる。頬に何かが冷たいものが流れている気がする。

肩が震えてきた。鼻水が出てくる。歯が震えて口がうまくきけない。外の音も聞こえないし、何かに邪魔されて目も開けられない。

けど…不機嫌な雰囲気を出しながらも、僕の頭を撫でてくれていたセブルスの手が温かかったことだけは分かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰

 

ダンブルドア視点

 

 

 

ロルフ・スネイプ、マルフォイ家に捨てられた遅咲きの魔法使いでセブルスの養子。

 

儂が彼の存在を初めて知ったのは今年の夏だった。

フィリウスの怪我で後任を探していた所で彼はセブルスに連れられてやって来た。

初めはこんな少年にできるのかと半信半疑だったが試してみれば魔法の腕は下手な闇払い以上。いや、経験こそ足りないが場合によってはセブルスら寮監たちとも充分に渡り合えるものだった。

 

だが何よりも儂が驚いたのは彼が儂の開心術を破り逆に心を読んで来たことだった。

(儂が彼の心を見ようと思ったのは別に彼を怪しんだ、と言った理由ではなくもし彼がこちら側についてくれたらセブルスへの負担が少し減るだろう、という打算だった)

 

油断していた儂は表面だけだが心の壁を破られた。そして彼は言った。

“僕はセブルスの手伝いをしたい。二重スパイは二人いた方がいいでしょう”と。

セブルスは慌てておったがあれだけの腕がある彼がいれば確かにセブルスの負担も減るし儂もありがたい。

 

だから儂は一つだけ質問をした。

「君は復讐したいのかの?」と。彼は答えた。「いいえ」と。

彼の目は嘘をついていた。だがもし儂が許可を出さないことで彼が向こう側に行ってしまうことだけは避けたかった。

こうしてロルフはホグワーツの教師となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日から二ヶ月、儂は校長室でロルフのことを考えていた。

ここ一ヶ月儂は彼を見ていたが普段は礼儀正しい、いい意味で落ち着いた雰囲気の青年と表すのにピッタリな言動だった。まるで作り物のように常に完璧、それが儂の印象だった。

セブルスに一度話を聞いたが貧困街で保護してから一年は言葉遣いも普通の少年のようで反抗したり突然暴れ出した時もあったらしい。だが時間が立つに連れて大人のような言動をするようになり、いつのまにか敬語で話すようになった、というのがセブルスの話だった。

 

正直言って儂は彼のことが理解できなかった。だから儂はリーマスに頼んだ。

彼がどんな人物か教えてくれ、と。だがリーマスは友人の秘密を教えたくはないと儂の依頼を拒否した。

 

そして儂は一つの結論を出していた。

ロルフは今も昔とは変わっていない。彼が完璧を演じているのはこちら側に潜り込みいつか裏切るためなのではないかと。そしてトムが復活した時に力を貸し、マルフォイ家への復讐を目的としていると。

勝手な妄想だが今日まで儂はこの可能性を信じていた。

 

しかし今の儂はその可能性だけはないと思っていた。

ロルフは本気でセブルスのために動いている。これまで完璧に動いていた彼が初めて見せた人間らしい面はセブルスに許されて泣いてしまった時だった。

 

では彼は何を考えている?

もうこれ以上不確定要素は残せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







ふと思い至ってロルフの泣いてる姿と頭を撫でてるスネイプ教授の姿を描いたら酷いことになりました。イラストは昔から結構描いてたのですが未だにまともなのかけないんですよねぇ。
あ、それとあくまでも二人の関係は親子の絆ですのでBLタグがつく日は来ません。多分、恐らく、きっと(作者はビビリなので絶対に断定しません)

◯作者はアズカバンの囚人を最後に読んだのが四年前です。変なところがあっても見逃して下さい。

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