一匹狼 二重スパイ生活   作:花粉症の人

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一匹狼 嫌な思い出

 

 

 

 

 

今までの人生で二番目に最悪なハロウィンから一夜明け、僕は人気の無い廊下をトボトボと歩いていた。

 

相変わらずセブルスとリーマスの仲は険悪。その上昨日ブラックから話を聞いたとこでリーマスに話しかけるテンションでも無い。 鬱だ。

何も考えずフラフラと歩いていると、足は勝手に呪文学の教室の方に向く。ホグワーツの地理は複雑だが、二ヶ月ここで過ごしたお陰か毎回

 

『“乙女と一角獣の絵”の横にある比較的動かない階段を一番上まで上ったら、“小さな魔法使いの像”の所まで真っ直ぐ進んで、“踊り子の絵”の右の壁の回転扉から裏道に入って……』

 

といった長ったらしい道順を頭の中で暗唱する必要性は無くなった。動く階段やら隠し扉やらは慣れてしまうまでは邪魔な障害物なのだが、一度慣れてしまうと時間短縮に最適で便利なのだ。

無事教室に着いた僕は、今日この教室に訪れるクラスを確認する。今日は僕が教えなければならないのは獅子と蛇の三年生と、獅子と穴熊の五年生、鷲と蛇の七年生の三コマ。いつもと比べると比較的少ないが組み合わせとしては最悪の部類だろう。

これからの将来を決めるN.E.W.T とO.W.Lが迫っている七年と五年は僕も真剣にやっているので疲れるし、何よりも五年の獅子にはウィーズリーの双子がいる。あの二人の最近の目標、というか趣味はどうにかして僕のフードを脱がすことらしい。この間マクゴナガル教授に雷を落とされていたので授業中は静かにするだろうが、まず間違いなく授業後に大暴れするだろう。

そして三年はよりにもよって獅子と蛇の組み合わせだ。授業の組み合わせを考えた僕以外の教師陣も、自分達の時の経験で彼らを一緒にすると面倒ごとが起きるのをわかっているはずなのに、何故その組み合わせをするのだろう。

今は少しマシになったが最初の方は獅子は僕を敵と決めつけて話を聞かず、蛇は自分たちは点数を引かれる事は無いだろうと考えたのか好き勝手にやりだして収拾が大変だった。あれの原因はセブルスだったのだが、養子の僕まであんな反応をされていたと考えると、セブルスが獅子寮にどんだけ酷い嫌がらせをしているのか逆に気になる。

 

そんな事を考えていると、いつの間にか教室に生徒が集まって来ている。僕は教室にやって来た生徒達が前の方から順に座って行く様子をぼんやり眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の仕事が終わった僕は、屋敷しもべ妖精達が慌ただしく走り回る厨房にいた。約1時間後には大広間は夕食を食べに来る生徒で一杯になる。ホグワーツの料理を全て引き受けている厨房は今がちょうどピーク時だったようだ。

失敗したな。僕は少し後悔する。そういえば最近僕はしょっちゅう後悔している気がする。何事ももうちょっと考えてから動いた方が良いのだろうか?

 

屋敷しもべ妖精に話しかけようとしてもなかなか捕まらないので、僕は手持ち無沙汰になり近くの鍋を覗くことにした。いい匂いだ。かぼちゃスープだろうか、火にかけられてグツグツと煮込まれている黄色のスープは食欲をそそる。

隣の鍋も覗こうとした僕はチョンチョン、と肩を叩かれ後ろを振り向く。

 

「何か御用がございましょうか?」

「うーんと…実はちょっと野暮用がありましてね。友人と二人で外で夕食を食べようと思ってるんです。二人分の食べ易くて腹持ちのいい夕食を用意して頂けますか?」

 

僕の肩を叩いたのは背伸びをした屋敷しもべ妖精だった。身長的に僕の肩を叩くのは大変だっただろう。足がプルプリ震えている。屋敷しもべ妖精特有の甲高いキーキー声での質問に、僕は知られるとまずいところを曖昧にして要望を伝える。

 

「分かりました。すぐお作り致します」

 

彼は(彼女だろうか?屋敷しもべ妖精の性別の見分け方を僕は知らない)一瞬不審な顔をしたが、すぐ無表情に戻り厨房の奥に戻っていく。屋敷しもべ妖精は仕事が早い。僕は近くにあった椅子に腰掛け、ぼおっと厨房を眺めていた。

 

 

「これでよろしいでしょうか」

 

数分後、奥から二人分の夕食が入ったバスケットを持って屋敷しもべ妖精はやってきた。訊かれたので一応中身を軽く覗いたが普通に美味しそうだ。これなら彼も喜んでくれるだろう。

 

「えぇ、忙しい中ありがとうございます。またたまに来てもいいですか?」

「……もう少しお早い時間においでになった方がよいと思います」

 

僕は屋敷しもべ妖精の言葉に目を見開く。屋敷しもべ妖精は誰かに仕えることが大好きだ。そして彼らは魔法族の言うことを何でも聞く。それこそ命を捨てることさえする。

昔どこかで聞いた話だが、屋敷しもべ妖精にとって最も幸せな死に方は“主のために死ぬ事”らしい。因みにその次に幸せなのは“働き過ぎでの過労死”。三番目は“働けなるくらいまで働かされてから主に殺される”らしい。そんな馬鹿な、といった感じだがそれが屋敷しもべ妖精なのだ。

差別的と思われるだろうが(前も思ったが誰にだ?)僕が今まで会った屋敷しもべ妖精は皆どんな命令をしても逆らわなかった。

僕がまだ両親のところにいた頃は僕はどうしようもなく傲慢で馬鹿な子供で、家にいた屋敷しもべ妖精を自分より下の存在と見て、見下していた。今考えると本当に馬鹿だった。屋敷しもべ妖精は杖が無くても強力な(・・・)魔法を使える。彼はスクイブだった僕ならば秒もかからず殺せた。

それなのに彼が生意気なクソガキをぶっ飛ばさなかったのは屋敷しもべ妖精にとって命令は絶対だから。今の僕の言葉はあくまで提案という体だったが僕の知っている屋敷しもべ妖精なら絶対にOKしただろう。

 

だが、この屋敷しもべ妖精は断った。別にそれを責める気持ちは無い。寧ろ、僕は今僕の前にいる屋敷しもべ妖精に興味を持った。

 

「あ、ちょっと待って下さい」

「何でございましょう?」

 

僕は言いたい事は言った、とでもいうように厨房の奥に戻ろうとしている屋敷しもべ妖精を呼び止める。屋敷しもべ妖精は不機嫌な様子を隠そうともしないで返事をして振り返った。

 

「君の名前を教えてくれますか?」

「……は?」

「君の名前、ですよ」

 

僕の言葉に屋敷しもべ妖精は一瞬唖然とした表情を見せる。最も僕がしてやったりと笑みを浮かべると、口元から察したのかすぐ元の不機嫌な表情に戻る。

 

「……カーラでございます」

「…君は女性ですか?」

「そうでございます!!」

 

成る程、彼女は女性だったらしい。僕の質問がよっぽど気に食わなかったのか、カーラは凄い声量で怒鳴る。まぁ怒るのも無理もないだろう。女性にこの質問は歳を訊ねるのと同じくらい最悪だ。今回は僕が悪い。

 

「すみません。あ、明日はもう少し早い時間に来ますから先に作っておいて頂けると」

「そうですか」

 

僕はフードの下で苦笑いをしながら厨房を出る。素っ気ない返事だったがきっと美味しいものを作っておいてくれるだろう。

 

 

これから夕食を共にする彼の事を考えながら廊下を歩いていた僕は、不意に外を見る。蝋燭の火がある中と違い、外の明かりは月と星だけ。その月と星も分厚い雲に覆い隠され、外は夜の闇に包まれていた。話していたら随分時間が経ったらしい。厨房に向かっていた時はまだ空は茜色だった。

僕は大広間には向かわず、外に出る。約束を守っているならば彼は今日も叫びの屋敷にいるだろう。今日は忙しくて朝食も昼飯も持っていけなかった。冤罪を証明するために協力しているのに、肝心のブラックを餓死させたら本末転倒にも程がある。最も二食抜いたくらいなら生きてはいるだろうが、あの人は腹が空いたからといって鼠でも食べそうで怖い。栄養分はあるだろうがそんなもの食べてたら絶対お腹壊す。というか病気になるだろう。餓死も駄目だが、病死も駄目だ。僕の頭の中には胸を押さえた状態で、白目を剥き床に倒れて死んでいるブラックの様子が浮かぶ。

……かなり怖い。美形で有名なブラック家なだけあって投獄される前はハンサムだったらしいが、アズカバンでの生活と逃亡生活の代償か、今の彼は薄汚い容姿に落ち窪んだ目の狂人の様ななりをしている。そんな彼が床で白目を剥いて死んでいる。……どこのホラー映画だ。

僕はこのイメージを現実にさせないために、足を早めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味ぇなコレ!流石はホグワーツ。本音を言うと大広間で食いたかったが、鼠より百倍マシだ!」

「それは無実を証明してからになりますね、ってカーラの作った食事を鼠と比べないでください。後静かにして下さい。そんな五月蝿いとその内バレますよ?」

「カーラが誰だか気になるところだが、今バレるのは流石にマズイから静かにしてやる」

「相変わらず傲慢ですね」

「日に日にお前の養父に似てってるぞ」

「余計なお世話です」

 

僕と彼、シリウス・ブラックは月明かりの下で夕食を食べていた。…互いに軽口を叩き合いながらという必要性ゼロのオマケも付いているが。

僕はワーワーギャーギャーと騒々しいブラックを一旦無視することにして、デザートの焼き菓子を食べる。丁度いい具合に焼けていてとても美味しい。十一月の夜は肌寒いが、まだ温かい焼き菓子が手を温めてくれる。僕は基本的にインドア派だが、偶にはこういうのもアリかもしれない。

 

「いやぁ、満腹満腹」

 

ブラックは幸福そう表情を浮かべ、地面に寝そべり腹をさする。何でも最近は鼠だろうが何だろうが食べれるものは何でも食べていたらしい。この話には流石にちょっと引いたが脱獄生活では仕方ないのだろう。何せマグルの世界ですら指名手配されているのだ。

 

「それは良かったです。ところでお願いがあるのですが「嫌だ」

 

僕は彼の機嫌が良くなったところで今日の目的を告げることにした、が余程嫌だったのだろうか。ブラックはお願いを聞きすらしないで拒否した。僕は舌打ちしたい気持ちを抑えて話を続ける。

 

「明日の早朝に一日分の食事を渡しにきます。流石にそんな時間帯に作ってもらうのも悪いですし、僕が作ったものになります。それでも鼠を食うよりよっぽどマシでしょう」

「脅しは良くないと俺は思う。嫌だ」

「貴方も昨日僕を思いっきり脅してましたよね?」

 

自分のことは棚にあげやがって。僕はジト目でブラックを睨んだ。ブラックの様なタイプは大抵この手の攻撃に弱い。が、思いの外ブラックは頑固だったらしい。

 

「……絶対嫌だ」

「ガキですか!?」

 

我儘にも程があるが、こうなった以上ブラックは中々に手強いだろう。そこで僕は最終手段を使うことにした。

 

「はぁ、分かりました。ただ本当にいいんですか?」

「…どういうことだ」

 

思わせぶりな台詞を口にした僕にブラックは食いつく。やっぱりこの人は単純だ。

騙されやすい性格といった感じではないし、未だに僕に完璧な隙を見せていない程の他者への警戒心がある。それなのに単純というか…馬鹿っぽいというか。前も思ったが本当に子供のようだ。

 

「僕の望みは簡単です。僕に守護霊の呪文と動物擬きを教えて欲しいんです」

「それが何だ。俺にいいことは一つも「チッチッチ 話は最後まで聞きましょうね、Mr.ブラック」

 

ブラックは警戒した表情になって反論するが、もう遅い。最初の罠に引っかかった時点で彼の負けは確定しているのだ。僕はよくセブルスがやるように、左手の人差し指を左右の振りながら小さな舌打ちを三連続で行う。これはとあるグリフィンドールの三年生から聞いた話だが、セブルスは獅子寮、主にハリーいびりをする時に好んでこの仕草をするらしく、それが猛烈にウザいらしい。昨今のグリフィンドールの生徒はセブルスのお陰で喜ばしい(?)ことに煽り耐性がかなり高いらしいのだが(下手に反論すると一コマで三十点近く減点されるため、我慢を学ぶらしい)そのグリフィンドール生ですらぶん殴りたくなるレベルと言っていた。正直どんなものか無茶苦茶気になるので、今度暇な時に魔法薬学の授業を覗きに行きたいものだ。

 

閑話休題。

 

「…どういうことだ?」

「はぁ、では物分かりの悪いブラックに説明をしてあげるとしますか」

「ウザい」

「積極的に煽っていくスタイルなので」

 

うぇ、といった表情を浮かべたブラックを一睨みしてから僕は説明を始める。

 

「本題に戻ります。まずこの二つは貴方と貴方の大切なハリーのためになります。僕が動物擬きを習得すればピーター・ペティグリューを捕まえられる確率が上がります。そして守護霊の呪文を習得すれば、いざという時貴方を吸魂鬼から守れますし、何より吸魂鬼を恐れているハリーを守れます。あいつら人の話マトモに聞いちゃいませんからホグワーツ内部に侵入してくる可能性もあります。対抗措置はできるだけ用意しておいたほうがいいですからね」

 

ブラックはハリーに弱い。何でもハリーの名付け親らしいが、それにしても過剰なほどハリーを溺愛している。最も当の本人はブラックが影から見守っている事すら知らないし、何より彼を親の仇と思っているのだから報われない話だ。まぁ半分ストーカーじみたことやってハリーを怖がらせているのだから自業自得とい言えばそこまでなのだが。

 

「うぅ……俺がそういえば逆らえないからって…やっぱお前性格悪いだろ」

「虐めの主犯に言われたくないです。とっとと教えて下さい」

「なんかお前俺の前だと口悪くないか?語尾にです、ってつけりゃあ何でも許されるわけじゃないんだぞ」

「五月蝿いですね。あんたの方が口悪いですよ。時間無いん「今お前俺のこと“あんた”っつっただろ」

「耳おかしいんですか?あ、頭ですかね? 知り合いに良い医者がいるので紹介してあげますよ、と思いましたが貴方マグルの世界でも指名手配されてるんでしたっけ。残念ですね」

「はぁ?お前ーーーーー」

 

 

 

 

 

 

「それで後は…こうなんていうか…まぁ感覚だ、感覚。やってみたら簡単だ」

「よくいますよね。こういう感覚論唱える人。自分が天才アピールしたいんでしょうか?」

「いいからさっさとやれよ!」

「はいはい、分かりました」

 

結局ブラックを静かにさせるのに三十分程かかった。最終的にはハリーの名前を持ち出したから静かにさせれたが、もし言わなければ僕らは夜が明けるまで嫌味合戦をしていただろう。割と本気でハリーには感謝だ。クリスマスに何か贈ろう。

まぁ何を贈るかは後で考えるとして…今は記憶に集中だ。

僕は今ブラックから守護霊の呪文を習っている。動物擬きも重要だがまずは吸魂鬼対策をしたいので、成功するまではこちらに集中することにした。僕は僕の一番大切な思い出を脳内に浮かべ、円を描くように杖を動かしながら呪文を唱える。

 

「エクスペクト・パトローナム!!《守護霊よ来たれ》」

 

僕の一番大切な思い出、セブルスに始めて魔法を教えてもらった日。魔法を使うという感覚に慣れずに、しょっちゅう暴走を起こしていた僕を見かねたセブルスはクリスマス丸一日潰して僕に魔法を教えてくれた。出来なくて八つ当たりする僕を見放さずに最後まで付き合ってくれた。僕が初めて魔法で物を動かせた時、セブルスは優しく頭を撫でてくれた。誰かに褒められることがあんなにも嬉しく感じられたのはあの日が初めてだった。 魔法が使えなくて家族を失った僕は、魔法が使えるようになったあの日にセブルスを、新しい家族を得た。

僕は無意識の内に閉じていた瞼を開ける。目の前には銀色の霧のようなものがあった。霞は何かの形に集まろうとしては跳ね返されて元の状態に戻される。辛うじて分かったのは僕の守護霊が四本足だということくらいだ。

僕の集中力が切れてきたのか少しずつ霧は消えていく。このままやっても守護霊はできないだろうから僕は一回頭の中から記憶を追い出して、魔法を強制終了させる。最後まで残っていた霧は一斉に霧散して消える。

 

「まぁホグワーツで教えてるだけはあるみたいだな。俺が初めてやった時より全然上手い。あとはイメージかためるだけだろう」

「お褒めの言葉ありがとうございます。もう一回やってみます」

 

ブラックから批評の言葉を貰った僕はもう一度杖を構えて準備した。

 

「エクスペクト・パトローナム!!《守護霊よ来たれ》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと…もう…無理…です……」

 

練習開始からもう三時間。三十二回の守護霊の呪文を唱えた僕は地面に倒れこんだ。

結局僕の守護霊は全く姿を見せず、時間と体力だけが無駄に消費された。

 

「うーん…何で出来ないんだ?」

「分かりません。ただ…もう少しなんですよね」

 

ブラックと僕は未だに成功しない要因を考える。呪文も杖の動かし方も完璧の筈、となるとあとはイメージだがその時のことはしっかり覚えているし、セブルスとの思い出は一番大切な記憶だ。

 

「……もしかしたら」

「な、何ですか?」

 

どうやらブラックは何か閃いたようだ。僕は藁にもすがる思いでブラックに訊ねる。

 

「いや…お前の一番大切な記憶が間違ってるんじゃ無いか?」

「間違ってる? そんな訳ないじゃないですか!」

 

頭に血がのぼる感覚がする。間違ってる?そんな訳ない。この思い出はとても大切で、僕が絶対に忘れたくない特別な思い出なのだ。

 

「どうどう、落ち着け落ち着け。お前のは大切な、思い出だろ?俺が言ってるのは幸せな思い出だ。お前の一番幸せな思い出を見つけろ」

「幸せな…思い出」

 

成る程、ブラックのいうことは一理ある。セブルスとの思い出はどれも大切な思い出だ。だがそれでは無いような気がする。僕は頭の中の思い出を一個一個遡って確認していく。

初めて友人ができた思い出、初めてホグワーツにきた思い出、一人前の魔法使いとして認められた思い出……そしてセブルスと出会った時の思い出。全て見たはずなのにピンとくるものが無い。つまりは…僕の幸せな思い出はかつての家族との思い出ということだ。

なんとまぁ……苦々しい。僕はもう一度呪文を唱える。

 

「エクスペクト・パトローナム!!!《守護霊よ来たれ》」

 

銀色の霧は霧散せずに一つに集まる。四本の足、美しい銀色の毛並み、僕を睨みつける鋭い目。

窓から差し込んだ月光と相まって、神秘的に光り輝く狼がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

木漏れ日を浴びながら大きな木の下で一緒に遊んだあの日、小さかった弟は言った。

 

「兄上! 僕はいつも兄上と一緒です!」

 

ならどうして僕を拒んだ?

 

 

 

 

パーティー会場で緊張していた僕を励まそうと、優しかった母は言った。

 

「ロルフ、貴方ならできるわ。胸を張って」

 

ならどうして僕を家の恥だと言った?

 

 

 

 

まだ僕が小さくて意味も理解できなかった頃、父は言った。

 

「ロルフ、お前は私の、マルフォイ家の誇りだ。そしてお前は私の大切な息子だ」

 

ならどうして僕を追い出した?

 

 

 

 

どうして、どうして僕は………

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーい!おい!大丈夫か?」

 

僕は冷たい床の上で目を覚ました。視界が少しずつクリアになっていく。目の前で僕の名前を呼んでいたのはブラックだったようだ。こいつに心配されるのは癪だ。

 

「起きて最初に見るのが貴方という時点でもう駄目です」

「ぶっ飛ばすぞ」

「お手柔らかに」

 

僕はふと視線を上にあげて狼がいないことに気付いた。というか僕は気絶していたのか?何だか嫌な夢を見たような気がするがよく思い出せない。

 

「守護霊は消えたのですか?」

「お前がいきなり倒れたと思ったら消えた。どうしたんだ?」

「寝不足ですよ。ホグワーツって結構時間外勤務させてくるんですよね」

 

悪夢を見た、と言うのも嫌だし僕は適当に答える。よくわからないが、取り敢えずこれで守護霊の呪文は大丈夫だろう。僕は床から立ち上がり、地下通路の扉を開ける。

 

「ではまた明日の朝来ます」

「よろしく頼む」

 

 

 

 

 

 

こうして僕はよく分からないまま守護霊の呪文を習得した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







ロルフは元はドラコみたいな感じの子でした。ドビーと絡ませたくて色々書いたんですけどちょっと無理があったので今回は我慢しました。二章で絡ませようかなぁ、とストックも無いのに妄想する今日この頃です。

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