Q.オラリオでいあいあするのは間違ってるか?   作:章介

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 本日、直前にキャラ紹介も併せて投稿しているため、お気に入り等から来た方はご注意ください。


第十話

 

 

 

 

 

 ――――『怪物祭』から数日後、ハイン達は以前と変わらず日々を過ごしており、ベルもシルバーバックを圧倒したことに奢らず努力を続けていた。まあ、あれが雑魚に見えるような怪物を使役している同僚が目の前にいるのだから当然ともいえるが。

 

 

 

 しかし、本日は珍しくベル単独でダンジョンに潜っていた。ストイックな彼は相方に都合があるからという理由で冒険を休むはずが無く、ミ=ゴをお供に朝早くから出かけて行った。では、その相方は何をしているかというと…。

 

 

 

「―――待たせて悪かったわね。いつもと大分勝手の違う作品だから調整に手間取ってね。その分、性能は折り紙つきよ」

 

 

「おおッ!待ちくたびれたよヘファイストス!!いやー、ハイン君は細かいこと気にしない子だけど、ベル君だけきみの武器を使ってるのがしっくりこなくてさ」

 

 

「…考えすぎだ。そもそもややこしい注文出したのはこっちだし」

 

 

「これでも特急で仕上げたのよ?まったく、二人揃って鍛冶師に邪道仕事させるんだからもう…」

 

 

 ヘファイストス渾身の一振りがようやく届くと知らせがありホームで待機していたのである。テキパキと風呂敷包みを解き、中の木箱を差し出す。開けてみると、一見短剣に見えるが刀身が宝石で出来た『杖』が姿を見せた。

 

 

「ロッドより軽くって注文だったからね、先人の賢者に肖ってみたの。―――『アゾット剣』、ヘスティアに刻ませた神聖文字が、宝石の中にあんたの精神力を留め循環させる仕組みにしてあるわ。ガネーシャがたっぷり予算を出してくれたから上質の宝石を用意できたの。おかげで相当な量の精神力を込められるから、ダンジョンに潜る前日までにしっかり充電し置くことね」

 

 

 ヘファイストスの説明をしっかり聞きながら、ハインは手にとってそれの感触を確かめる。しっくり手に馴染む握りに、非力な自分でも軽々振り回せる軽量さ、さらに宣言したとおり上質で非常に効率の良い魔力の伝導率に満足して鞘に納める。

 

 

「…見事だ。正直こういう光物に縁が無かったから気後れしてしまうが。―――ん?この柄に仕込まれている石は?」

 

 

「そっちはヘスティアからアンタへの贈り物。この子、その杖が結局ガネーシャの贈り物みたいになったのを大分気にしててね、後付けでそれを仕込んだわけ。これと刀身の調整で遅れちゃったのよ」

 

 

「…はは、まあボクの稼ぎじゃ大したものは付けられなかったんだけどね」

 

 

「いや、カミサマが俺のことを考えて用意してくれたんだろう?ありがたく頂戴するよ」

 

 

 

 世辞でなく本心で述べられたその言葉にヘスティアは大喜びする。そんな二人の様子を見て密かにヘファイストスは安堵する。あの夜のヘスティアの言からもこの少年がかなり面倒な事情を抱えているのは分かった。それ故上手くやっていけているのか心配していたのだ。だが、このやり取りを見ている限り特に問題ないだろう。

 

 

 

「石の方は小さいから大して充電出来ないけど、その代わり特殊なカットと刻印で光を吸収して魔力に変換できるようにしてあるの。変換効率はそれほどだけど万一の保険になるわ」

 

 

「至れり尽くせりだな、一番頭を抱えていた問題もこれ一本で解決しそうだ。ところで、これのどこが邪道なんだ?」

 

 

「剣の形しといて用途は杖なんて無駄の極みじゃない。もちろん剣として最低限の使用には耐えるようにしてるけど、それなら同じ素材でロッドを作ったほうがよっぽど細工も出来るし使い勝手が良いもの。まあ、お陰でそれを武器として欲しがる人間は滅多にいないでしょうけど」

 

 

 その言葉にハインは渋い顔になる。ヘスティアは戦闘スタイルからもまず伸びないだろう筋力を気にしているのかと励ますが、ハインが気にしているのは其処ではなく自分の注文が邪道仕事という事は、もしこれに何かあれば替えが効かないのだと思い至ったからだ。贈り物という事実とは別に大事に扱おうと一層考えていると、最後に注意事項を伝えられる。

 

 

 

「あの白い坊やのナイフと同じで、ヘスティアの眷属にしか役に立たない代物だけど、この杖は単純に宝石細工としても結構値が張るから、盗難にだけは気を付けなさいよ?神聖文字から直に足が付くでしょうけど、世の中には馬鹿は多いからね」

 

 

 そういってホームを去っていくヘファイストスを見送ってから、二人はベルが戻るまでの間、恐らくオラリオ一盗難に遭いそうな家族への防犯プランを相談しているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所:ギルド受付

 

 

 

「――――サポーター、ですか?」

 

 

「そう、ベル君は普段同じレベルの冒険者と二人で潜ってるみたいだけど、真っ当なファミリアは上級冒険者が引率して駆け出しの安全性を確保してるの。だからせめて、経験豊富なサポーターに付いてもらって欲しいなって」

 

 

「うーん、僕らみたいな弱小ファミリアについてくれますかね?それに、ハインは結構人見知りしそうだし(あの使い魔も部外者に早々見せられないし)」

 

 

 

 数時間後、今日の探索を終えたベルは担当アドバイザーのエイナと話し込んでいた。ベルの急激な成長に戸惑いながらも、客観的に見ればより下層へ潜ることを許可せざるを得ない彼女は少しでも彼らが安全に探索できるよう色々提案していた。その結果、何時の間にかプライベートで会う約束を取り付けている辺り公私混同のような気もするが、本心からベルを心配する彼女にそれを言うのは無粋であろう。

 

 

 

「――あ、さっきの話で思い出したけど、ベル君が言ってたハインってハイン・グレイズ氏のこと?」

 

 

「え?はい、そうですけどそれが何か?」

 

 

「……こういうのあんまり口外しちゃいけないんだけど、ギルド内で不祥事が発覚したの。それで、その被害者の中にグレイズ氏の名前が挙がったらしくて、上の人が話を聞きたいって。けど、絶対にギルドに顔を出さないから中々接触できなくて」

 

 

 

 エイナの言葉に驚いたベルだが、大方の想像はついた。自分もこの街に伝手が無かったため、神様に出会うまで散々な目に遭った。彼は自分以上に貧弱に見える上に大金まで持っていた。汚職に手を出すような人間には格好の獲物に見えたことだろう。

 

 

 

「ハインが詰所以外ギルド施設を利用しないのはそういう訳だったんですね。一応エイナさんが言ってたことは伝えておきますけど、多分関わりたくないって返事しますよ?」

 

 

「うーん、まあそりゃそうよね。その加害者の人かなりやばい事もしてたみたいだし、謝罪もせずにホームへ聴取に伺ったら間違いなく怒らせるだけね。あ、ごめんねベル君。変な話振っちゃって」

 

 

「いえ、じゃあそろそろ帰りますね。明日はよろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――その後、冒険の必需品の購入やらを終え、ベルがホームへの帰り道を進む頃にはすっかり夕方になっていた。微妙に細い道を行く必要があるため最低限の警戒をしながら歩いていると、微かに耳鳴りのような感覚を覚えた。これは、上空からストーカ・・・基、周囲を警戒してくれているミ=ゴからの警告である。

 

 

 即座に意識を切り替えると、曲がり角からポンチョをすっぽり被った少女が大慌てでこちらへ走ってきたのだ。既に心構えが出来ていたベルは咄嗟に身を躱すことが出来たが、突然目の前に誰かが現れたことで少女は動転し、石畳に足を取られて転倒してしまった。何が何やらと慌てていると、さらに向こうから、鬼の形相をした男が抜身の剣を振りかざし、有無を言わさず少女へと振り下ろしたのである。

 

 

 咄嗟にベルはその刃を受け止める――――のではなく、剣の腹へとナイフの先端を叩き付け、根元から破壊した。今のベルの目には男の剣閃など止まって見えるため造作も無い事なのだが、やられた男からすればたまったものではなく、仰天しながら大きく後ずさった。

 

 

 

「なッ!?て、てめえいきなり何しやがる!!?」

 

 

「それはこっちの台詞ですよ!街中でそんなもの振り回しちゃ危ないじゃないですか!?」

 

 

「あんッ!?何寝ぼけたこと言って・・・ああ、そういうことか。あのくそパルゥムめ、何時の間にケツ持ちなんて見つけてやがったんだ」

 

 

「・・・?」

 

 

 

 いまいち話についていけず内心首を傾げるベルだったが、獲物が無くなったからか男に殺気立った感じがなくなったので一安心する。が、突然顔を上げると下卑な表情でこちらへ問い詰めてきた。

 

 

「それはそうとテメエ、人の剣台無しにしてくれてどう落とし前付けてくれるんだあ、おい!当然弁償してくれんだよなあ?」

 

 

「ええッ!?それはそっちがいきなり―――」

 

 

「いきなり俺の獲物ぶっ壊したのはそっちだろうが!?俺は別に良いんだぜぇ?テメエに因縁が出来たってファミリアに報告しても。テメエの所為でファミリア同士の抗争になっても良いってんなら話は別だがよぉ!!」

 

 

 落ち着いたかと思えばこれで在り、流石にこんな返答が来るとは思わず引いてしまうベル。それを好機と捉えた男だが、横から透き通るような凛とした声に遮られてしまう。

 

 

 声の正体は『豊穣の女主人』のウェイトレス、リュー・リオン。勢いづいた男は捲し立てようとするが、彼女から滲み出る威圧感と一喝によって気勢を殺がれ、すごすごと逃げ帰って行った。

 

 

 

「―――はあ、ありがとう御座います。助かりました、リューさん!」

 

 

「いえ、差し出がましいかと思いましたが、妙な話の流れになっていたのでつい…。それより、意外でした。適切な判断でしたが、いきなり相手の獲物を潰すとは」

 

 

「あ、あれは僕の家族からの受け売りでして。『敵と話がしたいならせめて相手の武器を全部奪うか、手足を捥いでからにしろ。凶器を手にしたナマモノに殺戮と蹂躙以外の文化は通じないぞ』―――と」

 

 

「…あの方らしいですね。ですがその通りです。貴方やアイズさんは違うようですが、大抵の生き物は刃物を持てば、会話より暴力を優先してしまいますから。とにかく、貴方が無事で良かった。シル達が悲しむのもありますが、オラリオでまた集団殺人が起きてはお互い困るでしょう?」

 

 

「……はい、以後気を付けます。あ、本当にありがとう御座いました!!――――それにしても、『また』?それに『お互い』?……まあいっか。なんだか疲れたし、早く帰―――る前に上の怪物さんに口止めしとかないと」

 

 

 

 

 

 

 

 




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