Q.オラリオでいあいあするのは間違ってるか?   作:章介

11 / 19
 ・・・結構難産でした。投稿がかなり遅れてしまいました。 

 ここら辺からファミリア以外の人間との絡みも増えてくるので、ぼちぼち主人公のSAN値の低さを表現していきたいと思います(出来るとは言ってない)。


第十一話

 

 

 

場所:ギルド 執務室

 

 

 

 

Side ハイン

 

 

 

「――――というわけでして、貴方と依頼の手続きでトラブルを起こしていた、この写真の人物の行方について何か手がかりがあれば教えて頂きたいと思うのですが?」

 

 

「……トラブルではなく依頼金の着服です、お間違えないように。手がかりも何も、ネコババをされて以来一度もここを訪れていない俺がそいつの情報を知っているとでも?」

 

 

「おや失礼。ですが今やあなたは一角の冒険者、『お礼参り』をお考えになったことが一度もないと?我々としてはこのようなスキャンダルの種が野放しになっていることは大変心苦しいのです、オラリオの平穏のため知っていることは全てお話しいただきたい」

 

 

 

 ……時間の無駄だったな。昨日ベルから話を聞かされて、あいつらに面倒を掛けるのも不快だから冒険前に来てみたが、謝罪の一言もなくこれだ。目の前の脂ぎったコイツがどの程度の役職か知らんが、こいつの関心は事件の究明じゃなく痴れ者が蓄えた悪銭の行方とスキャンダルの火消だ。分かってはいたが、ギルドもファミリアも法治機関でなく利益集団だってことが改めて身に染みるな。

 

 

 

 ―――それから数十分後、何の利益にもならない話し合いという名の詰問は終わった。何の成果もあげられていないのに相当焦れてるのか無駄にしつこかったが、それも終いだ。これでベルの顔は立てたし、もう来ることもないだろうな。あのデブは話すだけ話したらとっとと奥へ引っ込んだが、後ろで控えてた女は終始申し訳なさそうにしてたな。俺を取り次いだ受付嬢、たしかベルのアドバイザーだったか?まあどうでも良いか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所:迷宮前 広場

 

 

 

 

 

「―――あ、貴方がベル様のお仲間のハイン様ですね。リリはリリルカ・アーデと申します!本日はよろしくお願いしますね」

 

 

 

 ―――なんだこいつ?とりあえずベルの襟を引き寄せて小声で尋ねてみると、どうやらフリーのサポーターとのこと。件のアドバイザーからの助言もあって仮契約することにしたとか。余計なことを…。

 

 

 まあ、仮契約ならそう目くじら立てることもないか。別にファミリアに勧誘するわけでもなし、その道に長けたサポーターはより繊細な魔石の取り出し方を心得てるらしいから、精々ミ=ゴにでも覚えさせるか。あいつ魔石にも強い関心を持ってたし、メリットはそれなりか。まあ誘いを受けたのはベルだし、気に入ったのなら精々面倒を見ろと言ったら二人にギョッとされた、解せぬ。

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

Side リリルカ

 

 

 

 

 ―――第一印象は冴えない人、だった。ベル様も頼りがいがあるかと言われれば微妙だけど、穏やかな物腰で冒険者が嫌いな私でも気楽に話しやすい人だ。それに嫌でも多くの冒険者を見てきた私から見ても、駆け出しとは思えないほど安定感というか強さを感じさせる。そのくせ脇が甘そうなところなんて正しく『私好み』だ。

 

 

 

 それに対して、ハインと呼ばれるこの人はそんな雰囲気が全然ない。冒険者というより、ストリートチルドレンと言われた方がよほど納得がいく風貌で覇気も感じない。正直好きになれそうにない、別に『あいつら』の様な下種さは感じないのに、下手をすればアイツラ以上に冷たく感じる視線が原因だろうか?

 

 

けど違った、ベル様に言った一言で良く分かった。あの人は何の気なしに言ったのかもしれないが…。

 

 

 

『―――ああ、お前はそういう毛色が好みなのか。ちゃんと面倒は見るんだな』

 

 

 

 怖気が走った。この人は私のことを、人間だと認識してない。まるで拾ってきた犬猫みたいに……。

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――3人でダンジョンに潜って早数時間、彼らの冒険はいつも以上に順調であった。ベルとハインが魔物を薙ぎ倒している最中もリリルカが効率よく魔石を回収していくため無駄が無い。例え多数のモンスターが現れようと、非戦闘員であるリリの傍にハインが居るため後ろを心配する必要が無いベルが絶好調で片付けていく。ただし、羽目を外しすぎて回収するペースをはるかに上回る速さで敵を殲滅してしまい、しかも動き回ったせいであちこちに敵の残骸があふれていた。

 

 

 

 

「…ベル様、凄いのですが流石にリリだけでは手が回りません。それに天井付近に張り付いたまま死んでいるのはリリの背丈では届きません」

 

 

「あ、ははは…。僕も手伝うよ、悪いけどハインは向こうに散らばってるのをお願い」

 

 

「了解した。どうせ俺も届かないからな」

 

 

「そ、そういう意味で言ったんじゃないんだけどなあ……」

 

 

 

 軽口を言い合いながら、ハインは少し離れたところに多数転がるモンスターの死骸へと向かう。当然ベルたちに背を向ける形となり、少しの間戻ってはこない。ベルも背伸びして何とか届くかというところで息絶えている蟻型の魔物に集中している。

 

 

 まさしく絶好の機会である。当然下心満載で近づいたリリルカがこの隙を逃すはずもない。勿論相手がレベル1だろうと油断することなく、持ち前の技術で音もなく近づきナイフへ手を掛けたのだが―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――リリ、心配しなくても鞘はベルトにしっかり固定してるから、支えてくれなくても落ちやしないよ?」

 

 

「――!!?え、あ……その、つい角度が危なっかしくて、あの……」

 

 

 ―――ナイフに触れた瞬間、まるで自分の一連の動きを監視していたのかと見紛う速さで気付かれてしまい、慌てたリリルカは普段ならあり得ないくらい言葉を詰まらせてしまう。

 

 

 

「(唯でさえ想像以上にヤバい奴がおまけでついてきてるのに、この人にまで疑われたら……ッ!!)」

 

 

 

 内心相当焦っていたリリルカだったが、明らかに怪しい彼女を詰問することもなく、借りた作業用のナイフを返すとハインと合流して洞窟の先へと進んでいった。ハインの方もちらりとリリルカの方を見たが、特に気にすることなくベルの後をついていった。

 

 

 

「(―――もしかして本当に気づいていない?それとも泳がせてるだけ?普通なら何もしてなくても因縁付けられるくらいなのに、変なの……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――その後、夕方となり迷宮探索は御開きとなった。結局リリルカの危惧した事態は起こらず、それどころか普段以上の収入に大喜びしたベルにきっちり報酬を山分けされて驚いた位である。

 

 

 

「……何だか狐に化かされたみたいな気分。ちゃんと報酬を手渡しされたのなんて初めてだし、こんなに貰えるなんて……はッ!?いけないいけない、早く仕舞わないとまた『あいつら』に奪われてしまいます!しっかりしないと、たった一回優しくしてもらっただけで絆されてどうするのよ。確かにいつもよりはるかに多いけど、脱退金に比べれば微々たるものだし。やっぱりあのナイフを狙うのが一番か、隣りの男を出し抜けるか心配だけどヘファイストスのナイフなら脱退金を払ってもおつりがくる額になる筈だし」

 

 

 

 一人ごちながら、足取り重く帰路に着くリリルカ。彼女にとって寝床もファミリアのホームも自らを苛む場所でしかなく、命のやり取りをする迷宮の方がよほど安心できる場所なのだから。

 

 

 

 ――――思案に耽る彼女は、いや普段通り警戒を密にしていても気付けなかっただろう。自らを覆い隠すローブの裾に、正常な人間なら叫び声を上げずにいられないような醜悪で蟲の様な『ナニカ』が潜り込んでいることに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――翌日

 

 

 

 

「―――今日行こう!直に行こう!!最近デミテルの所の若い子が出したお店が美味しいって評判―――はッ!?クンクン…うっ、べ、ベル君!今日の6時にアモールの広場に集合だ!!」

 

 

「……看病が必要かと思ったが、急に元気になったな。随分カミサマの扱いが上手くなったじゃないか?」

 

 

「ええッ!?や、本当に美味しいものを食べてほしいってだけで!」

 

 

 

 ―――夜遅くに隣人のミアハが訪ねてきたかと思えば、色々残念な有様に酔いつぶれた主神を運んできてくれたのだ。とりあえず二日酔いが酷くならない様処置をした後寝かせたのだが、朝様子を見た限りではあまり効果が無かったらしい。これはどちらかが看病に残るか、と考えていたのだが、ベルのデートのお誘いに一気に酒気を振り払ったヘスティアは言うだけ言い捨ててホームを飛び出して行ってしまった。

 

 

 

 そんなわけで、今回はベルも冒険はお休みとなり(今までのジンクスからこういう時冒険に出ると高確率でトラブルに会うとハインから忠告されたため)、空気を読んだハインは別行動をとることとなった。

 

 

 

 

「さて、やることは幾らでもあるが……、とりあえず床下に隠してる『酒』の出来具合の確認に集めた情報の精査。あ、それからそろそろ放し飼いにしてた『アレ』も回収しないとな、これ以上育つと人間も標的にしそうだし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所:路地裏

 

 

 

 すっかり夜も更けた頃、そんな時間にこんな場所に人が居れば十中八九碌な話にはならない。それはオラリオも変わらず、むしろ誰でも暴力が持てるという意味では最悪の治安ともいえる。石畳の階段の下でボロボロとなっているリリルカ・アーデが居るのが何よりの証拠である。

 

 

 

「―――何が冒険者様、ですか。まあ良いです、目標の金額まであと少し。あのナイフが得られれば……ッ!変だなあ、今まで罪悪感なんて感じたことは――『ドシャッ!!』――ひいッ!?な、なにッ!!?」

 

 

 突然、自分がさっきまでいた場所から人が降ってきたことに驚くリリルカ。それが誰か確認してさらに驚愕することになる。先程まで自分を甚振っていた三人組のリーダー格だったのだ。しかも見れば断末魔の形相のまま白目をむいており、呼吸音を聞きとらなければ死体だと勘違いしたことだろう。

 

 

 

「な、何で俺達に因縁つけてきやがる!?誰なんだよお前はッ!!」

 

 

「さてな、俺もお前らなんぞ会ったこともなければ興味もないんだが、最近家族が目を掛けている奴の鳴き声が聞こえてきたからつい、な」

 

 

 

 階段の上から聞こえてくる喧騒の中から、今日聞いたばかりの声が聞こえてきて訳が分からなくなる。だが寧ろリリルカの震えは先程より増していった。この声の主がわざわざ自分のために骨を折ってくれる筈が無いのだから。

 

 

 

 ドタドタと石畳を降りてくる音が聞こえ慌てて脇に退くが、男は気付かずに通り過ぎていく。すれ違いざま、頬に飛んできた生温い液体に気を遣った瞬間、逃げ出した男はまるで殴られたかのように吹き飛んでいき、最初の男同様に動かなくなる。

 

 

 

「こらこら、困るじゃないか。腕が捥げたまま逃げたら証拠が残るだろうに。せっかく魔力を浪費して治してやると言っただろう。……あ、こら。勝手に食べようとするんじゃない。こんな二級以下の餌より上等なのが幾らでもいるだろうが」

 

 

 

 ゆっくりと降りてきた人物を見てやはりかと思うよりも、その隣に居た存在に釘付けになってしまう。暗い所為でまったく見えなかったのは、幸薄い彼女らしくない幸運だったろう。彼女から見えたのは大の大人二人分ほどの大きさの不定形と、無数に塗されている『眼』だけだった。

 

 

 

「冒険者の割に危機管理能力が低い奴等だったな。俺はともかく、袋に詰めてた『コイツ』の気配位気づきそうなものだが。…ああ、忘れる所だった。そら、落し物だ」

 

 

 一人ごちた後、ハインはリリルカの方へ手に持っていた物を放った。咄嗟に飛びのきそうになる彼女だったが、目の前に落ちてきたのは先程連中に分捕られた金貨の袋であった。

 

 

 

「これ…ッ!?ど、どうしてリリに?あなたが奪った物なんですから、自分の懐に入れれば良いのに」

 

 

「銭が欲しくて手を出したわけじゃない。単にこいつらが昔を思い出させて腹が立っただけだ。後ついでに言えば、それはベルの奴がお前の報酬として寄越したものだ。どこぞの糞を肥やす為じゃない。それだけだ」

 

 

「じゃ、じゃあ昼間の件は!?それだけお強いなら、リリの目的もあの時リリが何をしようとしたかもご存知でしょう?」

 

 

「知らんよ。お前を拾ってきたのはベルだからな、あいつが責任を持つ間は躾も世話もあいつの一存だ。俺が何かするときは、あいつが其れを放棄した時だな。その時はお前の考えてる通りの『処理』をするさ」

 

 

 

 それだけ言うとハインは踵を返して去って行った。隣の『ナニカ』はいつの間にか姿を消しており、残っているのはリリルカと三人組のみである。腕がどうとか言っていたが確認する気にもなれず、今起きられると何をされるか分かったモノではないため慌ててその場を後にした。結局自分の手元に戻ってきた金貨の袋に目をやりながら、それでも訳が分からないまま今度こそリリルカは家へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 




ここまでご覧いただきありがとうございます!感想・質問等いつでも大歓迎です!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。