Q.オラリオでいあいあするのは間違ってるか?   作:章介

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第二話

 

 

 

 

 ―――ダンジョン。無限に魔物が出現するという世界に一つだけ存在する迷宮であり、此処の入り口を塞ぐためにオラリオが生まれたと言われている。尤も、ダンジョンが出来たからオラリオが生まれたのか、オラリオを作った後でダンジョンが生み出されたのか、真偽は謎に包まれている。

 

 

 

 そんなダンジョンの地下4階、浅いとはいえ多くの魔物が冒険者を待ち受ける迷宮の一角は、現在外来の怪物の拷問実験場と成り果てていた。その惨状の原因ともいえる少年、ハイン・グレイズは槍を持ったカエルのような緑の怪物を椅子代わりにして本を読んでいた。

 

 

 

 本来であれば彼もまた引き千切られたモンスターと同じ末路を辿ったであろうが、そもそも怪物を呼び出したのは彼であり、ハインが持つスキルで召喚・使役している。現在用意したのは3体、主に魔物の始末や倒した魔物から獲れる魔石の運搬を命じておりそれ以外は好きにさせているためこのような惨状となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うわああああぁあああッ!!?』

 

 

 

 

 

 すぐ近くから悲鳴が聞こえた。そこでようやく頭を上げたハインは、目の前の光景に特に心動かされることなく、ああ一匹足りないなと呑気に考えながら悲鳴の発信源へと向かう。まだ余計な争いを起こすつもりはないため、怪物たちには『人間、またはそれに類する存在は殺すな』と命じているため万一のことは無いだろう。それより早合点した他の冒険者に始末され、あまつさえ自分が嗾けたなどといわれては目も当てられない。なのでそれなりの速度で向かったのだが・・・・。

 

 

 

 

 

「■■■■■■❤」

 

 

「なにこれ気持ち悪いッ!しかもさっきからすごく嫌な感じもするし誰か助けてーッ!!」

 

 

 

 

 

 ・・・そこには自分が使役している使い魔が、興奮し過ぎたのか緑色から気色の悪いドドメ色に紅潮させながら、自分より少し年上の青年の足元にへばりついてた。青年の顔色も酷いが、ハインも全力でドン引きしていた。確かにこいつら好みの悲鳴だっただろうが、この絵面は色々と酷い。仕置きも兼ねて使い魔を『まるで埃を払う様に』吹き飛ばすと、青年の方へと手を伸ばした。

 

 

 

 

「・・・すまん、俺の駒が迷惑を掛け―――」

 

 

「――うわーーーッ!!ありがとうございます本当に怖――『ゴンッ!』――て、わーーーッ!すいませんすいませんッ!!」

 

 

 

 何故か貞操の危機を感じて半狂乱となっていた青年―――ベル・クラネルは、助かった喜びのあまりハインへと飛びついてしまい、押し倒された衝撃で強かに後頭部を強打し気絶したために、再びパニックへと陥るのだった・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ハイン

 

 

 

 

 

「――本当に、ゼイッ・・すみません・・・ハアッ・・・でしたッ」

 

 

 

「・・・いや、あの状況じゃ仕方ないだろ。消えた運搬役の代わりに荷物を運んで貰えば文句はない」

 

 

 

 ・・・物好きな奴だ。自分より年下の子供に何度も謝罪するとは筋が通っているのか、単なる馬鹿か。

 

 

俺の意識が消えるとあいつらの手綱も消えてしまうから咄嗟に退散させたが、お陰で掻き集めた魔石を運ぶことが出来なくなった。今残ってる魔力じゃ再召喚は無理だから諦めようかと思ったが、しつこく頭を下げてくるこの男がいい加減鬱陶しかったので代わりに運んでもらうことで帳消しにした。残念ながら『神の恩恵』があろうとモヤシな俺じゃこんなもん運べんからな。

 

 

 

「けど、こうなったのも僕の所為だから申し訳ないような・・・。あ、さっきのモンスターは『テイミング』ですか?それともスキル・・って能力の詮索はご法度でした、ごめんなさい!」

 

 

 

 ・・・・・賑やかな男だ。正直苦手だが、村の糞共や俺のスキルと稼ぎ目当てで勧誘してきた連中に比べれば段違いだ。尤も、清涼剤過ぎて俺の方が受け付けないんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――そんなこんなで関所まで戻り、魔石を換金してからベルとやらに4割ほど分け前を渡すことにする。・・・おい、顔を左右に振り回して拒否するんじゃない。この衆人環視の中で運ばせるだけ運ばせといて、全額懐に居れたら風評被害がとんでもないだろうが!

 

 

何とか言い含めて押し付けたが、今度はその金で晩飯を御馳走したいとか言い出した。それじゃ意味ないだろうが。と言いたいところだが、こう捨てられた兎の様な目線を無下にするのもそれはそれで外聞が悪い。・・なにより、無駄に距離が近いベルとのやり取りに息を粗くする女衆の目線が嫌すぎて早くここから離れたい。仕方がないので有難く提案を受けることにした。あと頼むから敬語は止めてくれ、悪目立ちにも程がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りーッ!ベル君今日はゆっくりだったけどどうしたんだい?む、むむ?袋の中から凄く良い香りがッ!!」

 

 

 

「神様、ただいま帰りました。今日は収入が凄かったのでつい奮発しちゃいました。後、今日お世話になった人も招待したんですけど良いですかね?」

 

 

「突っ込みたい台詞がいっぱいあるけど、ベル君を助けてくれた人ならいくらでもウェルカムだよ!怪我してないかとか色々気になるけど、まずはその人を紹介してくれるかな?」

 

 

 

 ・・・あの眷属にしてこの神あり、か。良く言えば親しみやすい、悪く言えば随分軽い神様だな。気取った神より好感は持てるが、いろいろ心配になる組み合わせだな。悪質な詐欺とかに引っかかりそうだ。

 

 

 

 とりあえず自己紹介を済ませた後、夕食を戴くことになった。思い返してみれば久方ぶりの団欒だったのだが、俺以上に食事にがっつく二人にそんな感傷は消し飛ばされてしまう。本当に嬉しそうに、必死に掻き込む姿が哀愁を感じさせる。本当に大丈夫か、このファミリア・・・。

 

 

 

 

 

 色々心配になる夕食と後片付けが終われば、後は緩みきった一人と一柱が色々話題を振ってきた。その中でこちらの身の上話が出てきたので、正直に話すことにした。神に嘘は通じないが、何もかも話す必要はないので都合が悪くない範囲でだが。契約をするだけして改宗を勧めた(邪)神に我が事のように憤慨する二人にあっけにとられながら、気が付けば勧誘を受けていた。

 

 

 

 さて、どうしたものか・・・。あれだけ関わるのが煩わしかった冒険者、しかも初対面の相手に殆ど不快感も感じることなく、それどころか何故か身内話までさせられていた。相性で言えばそう悪くない、しかも余計な詮索はしてこないから邪神の言う『都合の良い』連中でもあるのだろう。

 

 

 だが、命を預ける相手と見做すかは別問題だ。なので数日間ベルとパーティを組み、それで上手くやっていけそうならファミリアに加入すると告げた。向こうも即決するを強要することなく、それどころか千載一遇のチャンスだと二人して気合を入れていた。まったく、下心が有るんだか無いんだか、不思議な連中だ。

 

 

 

 こちらとしてもいい加減ステイタスの更新をしたかったところだ。珍しく気を聞かせた運命とやらにほんの少し期待しながらお暇することにした。

 

 

 

 ―――残念ながら、寝床を聞かれたときに馬鹿正直に『野宿』と口を滑らせてしまい、二人掛りで強制的に寝泊まりさせられることになった。余計なこと言うんじゃなかった・・・。

 

 

 

 

 Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――数日後

 

場所:ダンジョン地下五階

 

 

 

 

 

 今日も今日とてダンジョン探索に精を出すベル・クラネル。コボルと相手に一喜一憂する戦いを繰り広げているが、誰だって最初はこんなものである。むしろ怯えず立ち向かい、着実に傷を与えている彼は非常に筋が良いと言える。

 

 

 

 そうこうしている内にコボルトは力尽き倒れ伏す。もう何度も戦った相手であるにもかかわらず、初めてのように喜色満面なベル。しかし喜ぶのは兎も角、油断は禁物である。ここはダンジョンであり、寝首を掻こうとする存在は幾らでもいる。物陰から突如として姿を現した狼型のモンスターは、突然の事態に無防備となったベルの首へと牙を突き立てようとし――――その願望は果たされることなく真っ二つに切り裂かれた。

 

 

 

 その切り口は切ったというよりは切り離したというべきもので、地面に落下してようやく断面から血が噴き出したほどである。まあ、お陰でベルの衣服は汚れずに済んだのだが。

 

 

 

「た・・・助かったあ。有難うハイン、それにしても君って魔法も使えたんだね」

 

 

「いや、これもスキルの派生で厳密には魔法じゃない。それに、前衛が居ないと碌に使えないからな。俺が強く感じるなら、それは半分以上お前の成果だ」

 

 

 

 それでも羨ましいなー、とぼやくベルを尻目に手際よく魔石を回収する。ちなみにベルとパーティを組んでからは神話生物は召喚していない。発狂されても困るし、ムーンビーストを召喚してもトラウマを抉るだけで嫌がらせにしかならない。幸い『色々使える』ので、後衛としてベルのサポートに回っていた。

 

 

 

「しかし良かったのか、5階まで下りてきて。また受付に睨まれるぞ?」

 

 

「う・・け、けど男なら冒険しろって祖父ちゃんも言ってたし・・・。それにここまで問題なくこれたし、もうちょっと奥まで行っても――『ドン ドン ドン』―――え?」

 

 

 

 そこに現れたのは、二足歩行で歩く牛といった風情の魔物。素人のベルやハインでも知っているモンスター、ミノタウルスであり決してこんな上層に現れる存在ではない。しかし現実逃避することなくベルはハインの腕を掴んで全力疾走を開始する。

 

 

 

 当然見過ごすことなくミノタウルスは追いかけてくる。しかも歩幅も馬力も段違いなため直に追いつかれ頭上から獲物である鈍器を振り下ろされる。・・・が、その一撃はベルたちを捉えることなく、ハインが手を翳すとまるで鈍器がすり抜けるように地面へとめり込んだ。

 

 

 

「ハインッ!さっきの、切り刻む魔法って、今撃てないの!?」

 

 

「走りながらじゃ無理だッ!!お前が十秒時間をくれれば何とかなるが・・・」

 

 

「無理ムリむり―――ヒィッ!!?」

 

 

 言いあう二人など知ったことかと言わんばかりに二撃目が振り下ろされ、直視してしまったために身を竦めるベル。しかし二人が挽肉となる前に、まるでより大きな怪物に殴り飛ばされたかのようにミノタウルスが吹き飛んで行った。訳が分からず呆然となるが、直にミノタウルスが起き上がってきたために慌てて逃走を再開する。

 

 

 

 

 二人は必死に逃げまどい、一階、また一階と上がっていくが、とうとう行き止まりへと追いつめられてしまう。それでも最後の意地とばかりにハインを背に隠すベルだったが、ミノタウルスの一撃の前には諸共に消し飛ぶだけである。ハインも詠唱を行おうとするが、道中で魔力を使い果たしてしまい不発に終わった。

 

 

 

 もはやこれまでか・・・諦観に苛まれたベルが目を閉じた瞬間、金とも緑とも取れる一閃が割り込み、ミノタウルスは一瞬で斬殺されてしまう。

 

 

 

 窮地を救ってくれた恩人にして、ベルにとって生涯の一目惚れ相手となる少女―――アイズ・ヴァレンシュタインに安否を気遣われ、自らの醜態を思い出して脱兎のごとく逃げ出してしまうベル。ハインも、見るからに上級冒険者だとわかる風貌、それから遠くから聞こえる粗野な悪態を面倒に感じ、感謝の意を伝えると早々にベルを追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 




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