Q.オラリオでいあいあするのは間違ってるか?   作:章介

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第六話

 

 

 

 

 

 

 

 ――――ベルたちが『豊穣の女主人』を後にしダンジョンを闊歩している間、彼らの主神ヘスティアは衆生の主を標榜する神、ガネーシャが主催する『神の宴』に訪れていた。勿論この騒がしい男神に会いに来たわけではない。途中で起こった犬猿の仲であるロキとの取っ組み合いやその場にいた多くの男神を塵に帰したフレイヤとの爆弾発言入りの会話でもない。まあ、ガネーシャが金に飽かせて用意した御馳走をタッパーに詰める作業は目的の2割に加えても良いかもしれないが。

 

 

 ヘスティアの目的、それは眼前にいる長年の神友ヘファイストスに会う事だ。こんな自分を(主神として)愛してくれるベルの背中を押すために、そして色んな意味で心配なハインと少しでも多くの繋がりが持ちたいから、彼女にある相談を持ちかけようと思っていたのだ。しかし―――。

 

 

 

 

「・・・で、何でキミまでこんな所に居るのさ?主賓が端っこに居て良いのかいガネーシャ」

 

 

「ハハッ!何時どこに居ても主賓は務まる。なぜなら、俺がガネーシャだからだッ!!」

 

 

「はいはい。でもだからって理由もなく寄ってくる奴じゃないでしょあんたは。何の用?」

 

 

 

 ヘスティアが何か内々で用があるのは察したので、さっさとガネーシャの要件を終わらせようと話を促すヘファイストス。この男に空気を呼んで貰うなど期待するだけ無駄だ。

 

 

 

「まあそう邪険にしてくれるな、俺がガネーシャだ!俺と子供達が散々袖にされた腕利き調教師の少年が、其方のファミリアに入団したと聞いたのでな。ガネーシャ驚愕!!」

 

 

「(調教・・多分『黒貌械扉』のことかな?まあ正体不明のインチキスキルと思われるくらいなら誤解させたままの方が良いか)そうだよ、言っとくけど絶対『改宗』なんてさせないからね!あの子がボク達を選んでくれたんだから」

 

 

「そんなことはしない、俺はガネーシャだからな!ただ確認しておきたかったのだ。では少し外すぞ、シャクティ!俺が、ガネーシャだ!!」

 

 

 聞くだけ聞いたら嵐のように去って行った。ぶれない知神に呆れながら、ヘスティアは改めて本題に移る。このために態々こんなめんどくさい催しに参加したのだから。

 

 

 

「ヘファイストス、頼みがあるんだ。ベル君たちのために武器を作ってほしいんだ!この通り!!」

 

 

「冗談はその伸縮自在なほっぺただけにして頂戴。ウチのオーダメイドの相場が幾らだと思ってるの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――その後、周りの視線が居た堪れなさ過ぎて、ついヘファイストスはヘスティアを拠点に連れ帰ってしまった。あのままあそこに居ては、娯楽に飢えた馬鹿神が何時無責任な口出しをしてくるか分かったモノではなかったし、それに幾らプライドが高い方ではないとはいえ、神であるヘスティアにあそこまで恥も外聞も捨てさせた動機も気になったのだ。しかし―――。

 

 

 

「・・・で、何であんたまで着いてきてんのよ。用事があったんじゃなかったの?」

 

 

「俺は子供たちに指示を出しに行っただけだ。戻ったら其方が居なくてガネーシャ混乱!!それで何故ヘスティアは五体投地などしているのだ?」

 

 

 

 そう、何故かガネーシャまで着いてきたのだ。理由を聞いても『ヘスティアの用事がすんでからの方が話が早い』としか言わない。まあ、この男神はそこらの駄女神と違って噂話に興じる質ではないから一旦無視することにする。それはともかく、ヘスティアにどうしてそこまでするのか尋ねることにした。

 

 

 

 

 

 

「あの子は変わろうとしてる。どれだけ困難だろうと進むことを決意したんだ。それなのに手助けどころか、何も出来ずに養われてるだけなのは嫌なんだッ!!それにハイン君も、本来ならボク達みたいな弱小ファミリアに身を寄せる必要なんてない。それこそガネーシャの所の方がよっぽど待遇が良い筈だ。間違いなくあの子を動かしたのはベル君で、でもそれじゃ駄目なんだよ!あの子にただいまって心から言って貰えるファミリアにしたい。二人が誇れるような、自分の夢や目的を追い続けられるような家族になりたい。貰うだけじゃなく、あの子たちの力になりたいんだッ!!」

 

 

 

 全身から絞り出すように吐かれる思いは、ヘファイストスの心を打った。眷属だけじゃない、ヘスティアも必死に変わろうとしている。その思いを神友として組んでやりたくなったのだ。

 

 

 

「・・・変わろうとしてる、か。分かったわ。武器、作ってあげる。あんたの子供たちにね」

 

 

「あ・・・ありがとう、ヘファ―――「ただしッ!」―――ゑ?」

 

 

「――幾らなんでも、オーダーメイド二振りともなると今のあんたじゃ返済能力が見込めないのよ。まあ私個人としては、時間なんて幾らでもあるし、古い付き合いだから気にしないけど。でもそれじゃ周りがうるさいし、欲の皮突っ張った奴が何企むか分かったもんじゃないわよ?自分の打った武器で依頼人が不幸になったら、職人の誇りに賭けて看板降ろさなきゃならなくなる。そこのところ解決してくれないと満足に槌が触れないのよ」

 

 

「・・・ボク、もしかして凄く軽率な事してた?」

 

 

「もしかしなくても、よ!まったく―――「話は聞かせてもらったッ!!」―――ちょっと、急に大声出さないでくれる!?」

 

 

 

 突然、それまで珍しく静かにしていたガネーシャが騒ぎ始める。正直一秒でも早く打って貰いたいヘスティアは当面の問題に気が気でなく、もし詰まらないことを言い出せば噛みついてやろうかと考えていた。ところが、次の発言に目玉が飛び出そうなほど驚愕してしまう。

 

 

 

「ヘスティア、それにヘファイストス!ハイン・グレイズの武器の代金は、このガネーシャが出そう!」

 

 

「「何だって/何ですって!?」」

 

 

 

 耳を疑う発言に驚く二柱。それもそうだろう、ガネーシャ・ファミリアもオラリオ最大派閥に引けを取らない大御所だ。当然ヘファイストス・ファミリアの相場は良く知っているはず。それを何でも無い事の様に言い出してきたのだ。

 

 

 

「・・・何が目的だい?まさかタダなんて言わないだろう?」

 

 

「無論。其方は三日後に、俺達肝煎りの『怪物祭』があるのは知っているな?其方のハインに是非参加してもらいたいのだ。わがファミリアには並行魔法と調教を同時にこなす子は残念ながらいない。きっと大いに観客を湧かせてくれるだろう!」

 

 

「・・・それは話が美味すぎない?『怪物祭』が並大抵じゃないことは知ってるけど、それでもその報酬にウチの武器じゃ大盤振る舞いにも程がある。あんたの眷属が知ったらなんて言う気?」

 

 

「正論だな。だがこれは言ってみれば未来への投資だ。そしてこれが決して高い買い物ではないと強く確信している。なぜなら、俺がガネーシャだからだ!!」

 

 

 いや理由になってないだろ、とツッコミを入れることさえ出来ずヘスティアは熟考する。内容そのものは、ヘファイストスの懸念を全て一掃する願ってもない申し出だ。金額の事は勿論、万一の際は『個人的に武器を送るほどのガネーシャとの強い繋がり』をアピール出来る。そして先程、この神は『ガネーシャが払う』と言った。『ガネーシャ・ファミリアが』ではなく、だ。つまり、この件をファミリアで利用することは無いと言質を取らせたのだ。この男神の度量なら十分信頼に値する担保だ。

 

 

 しかし話が旨すぎる。正直罠を疑われてもしょうがない取引だ。が、他にどうしようもないのも事実だ。多くの神にあのやり取りを聞かれている以上、周りを黙らせる理由が無いと神友であり恩人でもあるヘファイストスや愛しい子供たちに迷惑がかかる。そしてそれを解決できる神物は此処には一柱しかいない。

 

 

 

「・・・僕はこの取引に賛成する。けど、流石にハイン君に何も聞かせずに話は進められない。今ならホームに帰ってるだろうから急いで戻―――」

 

 

「それは良かった。先ほどシャクティとイブリを遣いにやったところだ。行き違いにならなくてガネーシャ歓喜!」

 

 

「・・・・まさか、席を外したのはそのためかい!?」

 

 

「・・・あんたに振り回される眷属も大概だけど、無関係とはいえ大御所ファミリアの団長に伝言版やらせる形になったそのハインって子が気の毒ね」

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――数分後。

 

 

 

 

 

 

Side ハイン

 

 

 

 

「―――という訳なんだ。ごめんね、手助けするつもりが逆に面倒事増やして」

 

 

「・・・・・いや、ベルが未だに支給品のナイフを使ってたのは気になってたからな。俺としてもいつもやってることの延長だから特に問題ない。寧ろ割の良い仕事を持って帰ってくれて助かる」

 

 

「うわ~~~んッ!ハイン君ごめんよ~~ッ!!」

 

 

 

 ―――ぐえッ!!・・・ベルにやるように飛びついてこないでくれ、俺の体格アンタとそう大差ないんだぞ。あやうく吹き飛ばされるところだった。

 

 

 

 ホームで寛いでいたら急な来客があり、ドアを開けたら何時ぞやに勧誘を受けた二人組で驚いた。ベルがガネーシャ・ファミリアの団長だと教えてくれたのは良いんだが、そんな大物が何の用かと聞いてみれば、お互いの主神がヘファイストス神の家にいて呼んでるから来てほしいとのこと。

 

 

 色々突っ込みたかったし、殆ど接点のない相手だったので大分疑ってしまったが、手ぶらで帰らせる訳にいかないから入念に準備して着いていくことにしたのだ。そうして着いた場所では、何故か地べたに跪いている主神に謎のポーズをとる無駄に騒がしい仮面の男神、それから頭を抱えている眼帯の女神がいた。控えめに言ってカオスな光景だった。

 

 

 

 

 それはともかく、状況を整理してみよう。俺の能力をテイム関係と魔法だと勘違いした神ガネーシャが俺に『怪物祭』の参加を要請、対価に俺に依頼する予定のヘファイストス製武器の代金を肩代わりしてくれるという。

 

 

 

 俺としては受けるしかないと思う。傍から見てもまたとない好条件だし、これを蹴ってガネーシャ・ファミリアと険悪になるなんて選択肢は今の俺達には絶対取れない。何が狙いかは知らないが、この男神はしょうもない策謀とは無縁の神だと二柱の女神が太鼓判を押している。幸い、調教師ではないが似たような結果を出せる呪文も問題なく使える。お祭りらしい見世物が欲しいというなら上々仕上げて見せよう。

 

 

 ただ、俺からも少し条件を足させてもらった。この取引がヘスティアとガネーシャ神の個人的なものだと明記した契約書の発行、そして参加にあたって俺の身元がばれない様にしてほしい、というものだ。

 

 

一つ目は後々トラブルにならないようにする保険、そしてもう一つは他の演者に見縊られないようにする、せっかく鳴りを潜めた勧誘がぶり返さない様にすると色々有るが、一番はベルがまた変に悩んだりしないようにする為だ。神様は土下座までして、俺も対価を払っているのに自分は・・・とか言い出しそうだしな。

 

 

 

 そういった旨をヘスティアと相談したうえで伝えると、ガネーシャ神は快諾し交渉成立となった。うん、成立したのは結構なんだが、そのまま『怪物祭』の打ち合わせとリハーサルだと言って連れて行かれてしまった。しかも本番まで時間が無いから缶詰になってもらう?・・・・・・おいこら聞いてねえぞそんな話。

 

 

 

Side out

 

 




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