Q.オラリオでいあいあするのは間違ってるか?   作:章介

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 注意:今回、後半でかなり独自解釈が入ります。苦手な方はお気を付け下さい。


第八話

 

 

 

 

 

 

 

 ――――『怪物祭』でのモンスターの脱走。それに伴い偶然近くに来ていた冒険者はその討伐に駆り出されていた。そのうちの一人、アイズ・ヴァレンシュタインは南側から西廻りに掃討する。既に5匹のモンスターを葬り、その勢いのまま西側へと到着したのは良かったが、そこで異様な光景を目の当たりにする。

 

 

 

 

「(・・・・ガネーシャ・ファミリアの人が運び込んでる。凶暴なモンスターがまるで魂を抜かれたみたいに。いや、それより―――)」

 

 

 

 既に西側は粗方片付いていた。それは特に驚くことではない。他に腕利きが動いていればそうおかしなことではない。しかし、見た限り運ばれているモンスターは6体。つまり自分と同等の速さで蹴散らした挙句生け捕りにしているのだ。気になるのはそのどれもが、まるでこの世のものとは思えない『ナニカ』を見たような形相だったことか。

 

 

 

「―――ぜえ、ぜえ、ふう。アイズたん速過ぎるわ!?ウチの足と脇腹が持たんっちゅうに」

 

 

「ロキ、貴方は何か感じない?」

 

 

「ふえ?アイズたんの魅力やったら年中無休で――『チキッ』――だああッ!戦闘で昂ってるのは分かるけど軽口くらい付き合ってえな!?・・・んーと、あかんわ。何やキナ臭いもん使うたみたいやけど、時間立ちすぎてわからん。けどガネーシャんとこの子が雇った奴が向こうに・・・もうおらんし」

 

 

 

 しかし、アイズの関心はそんな所にはない。気になるのは通りの奥にある気配。まるで断末魔の吹き溜まりの様な歪な魔力に生理的嫌悪を感じながらもアイズはその場所へ向かっていく。もしこの場にレフィーヤが居れば記憶から欠け落ちたトラウマが再燃していたかもしれない。

 

 

 

「・・・・・あ」

 

 

「ん?・・・ああ、ミノタウルスの時の人か」

 

 

 

 そうして行きついた路地裏で、以前見たことのある顔に出会った。あの時は挨拶もそこそこに離れたこともあり唯の新米冒険者と思っていたが、先程の光景を見るに色々秘密があるらしい。そういえばあのモンスターの顔、あれに似たものを最近見たような・・・?何か引っかかりかけたが、目の前の人物に思考が引き戻される。

 

 

 

「・・・随分顔色が悪いけど、【呪詛】、それとも何かの状態異常?」

 

 

「いや、何と言えば良いか。唯の食あたりだ。やはり根本から違う生物を糧にすると拒絶反応が出るな。そんなことより、ここいらは全部片付けたはずだ。そっちは?」

 

 

「・・・・・・・?私は南から此処までまわって来た所。討ち漏らしは無いと思うから、残ってるとしたら後は東だけ」

 

 

「はい、脱走したのは全部で十二体。残るはシルバーバックのみですが、何やら二人組の少年少女を追いかけてダイダロス通りに入って行ったとか」

 

 

 

 追い付いてきたガネーシャ・ファミリアの人員が相槌を打つ。「少年」のキーワードに目を見張ったアイズは、後ろでぼやく主神に構うことなく、優れた聴覚でモンスターの鳴き声を聞きつけすぐにその場を離れて行った。他の面々もそれについていき、残るのは未だ木箱に座り込んでいるハインのみとなった。

 

 

 

「・・・やっぱり巻き込まれたか。来客数は約2000人、脱走したのはたかが11匹。しかもその中で、優秀なレベル1冒険者がギリギリ勝てるかどうかの魔物が偶々ベルとヘスティアを追いかけ、何故か今現在も一切の救援は無し。しかも覗き魔に嗾けたビヤーキーが真っ二つにされた上、何一つ情報も得られずじまい。キナ臭いとか言うレベルじゃなくなってきたな・・・」

 

 

 

 とりあえず今のコンディションだと足手纏いにしかならないと判断したため、ハインは状況整理を優先する。ミ=ゴからの通信から察するに、現在二人はステイタスの更新を行い、それとヘファイストス製の武器で状況を打破するつもりらしい。それについては何も異論はなかったが、せっかくの成長の機会ということでミ=ゴには一つ注文を付けておいた。

 

 

 

 それにしても『保険』は用意しておくものだ、とハインは痛感していた。ミノタウルスの一件から、いつでも離脱が出来る保険として適任だったミ=ゴを常に死角に潜ませていたのだ。何しろ鏡やレンズ、遠視の魔法に映らない上優れた技術力で光学迷彩まで用意できるのだ。保険としてこれ以上ない人(?)材だった。ただし、瞬発力と何時でも二人以上を抱えられるよう身軽さを優先したため、得意の化学兵器は命中精度最悪の光線銃しかなく筋力も心許ない。まあ今回はベルに打倒させる理由になったので結果オーライではあるが。

 

 

 

「さて、周りの注意はダイダロス通りに行っていて、鬱陶しかった監視も消えた。せっかくだから少し実験でもしてみるか。まだ俺のレベルじゃ『コイツ』を門から出せないが、引っ張りだせるだけの規模から拡大させればどうなるかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所:ダイダロス通り

 

 

 

 

 ――――ステイタスの更新を終えたベルは、破壊音のする方へと向かっていた。やはり考えていた通りそれなりの時間が掛り、ハインからの援軍が無ければどうなっていたか想像するのも怖い。

 

 

 

 目的地はすぐに到着した。再びシルバーバックと相対したが、その異様さに瞠目する。先ほどまであの蟹のような怪物と戦っていたはずなのに、傷一つ付いていない。それなのに今の今までここに釘づけにされていた事実に驚きながらも気持ちを切り替え、改めて対峙する。

 

 

 

 シルバーバックも散々足止めされてストレスがたまっているのか、ベルを見かけた途端飛ぶような勢いで向かってくる。が、その動きにベルは別の意味で驚いてしまう。異様なまでに遅く感じてしまうのだ。先程まで躱すことさえ困難だった筈なのに、今では逆に躱さないでいる方が難しく感じている自分に一番驚いていた。ベルは知らない事だが、先程の敗走だけでなく、『憧憬一途』の効果を知っているハインがこの3日間面白半分で仕掛けた『訓練』の成果が反映されたためである。具体的には、苛めれば苛めるだけ育つということでムンビさんとの耐久鬼ごっこ等だ。

 

 

 

 その他にも毎日欠かさずダンジョンに潜り、夕方まで休まず戦い続けてきた。『男子三日会わずば括目せよ』を地で行くスキル持ちのベルは、どれだけ成長していても不思議ではないのだ。そしてそれが反映された以上、最早眼前のゴリラは強敵足りえない。

 

 

 

 ―――大きく振りかぶられた一撃を滑るように躱す。これだけ体格差のある相手と戦った経験はないが、どうすれば良いかはなんとなくわかる。まずは機動力、自分が圧倒的に勝るこの強みで押し切るため、敵の足を削ぐ。幸い敵は振りかぶった直後で不安定であり、蹴りを仕掛ける余裕すらない。そしてその目的の障害となる皮膚の堅さも、神様がくれたナイフがまるで豆腐の様に切り裂いていく。

 

 

 その次は敵の防衛手段を潰す。はいつくばっている都合上、体を起こすために片腕を使っているから隙は幾らでもある。しかし急所に仕掛けるたびに残った腕で妨害されると困るので、先に其方を使えなくする。シルバーバックは焦りながら右腕を振り下ろすがそれは悪手である。せめて横に振り回していれば、もう少しだけ長くこの世に居られたのだが。

 

 

紙一重で躱しながら、ちょうど関節が来る場所を見切ってその位置にナイフを留めておく。まるで敵が切らせたかと錯覚するほど無駄のない動きで筋諸共関節を潰され、最早碌な抵抗が出来ないまま、眉間にナイフを喰い込まされシルバーバックは魔石を残して霧散した。終わってみれば実に一方的な戦いに、ようやく彼らのところへやってきた冒険者や住人は喝采を上げた。

 

 

 

「―――ふう、何とか勝てた・・・。そうだ、神様は――『ベル君ッ!!』――うわッ!?か、神様・・・良かった、何とか守ることが出来て、本当に良かった」

 

 

「それはお互い様だね!まさかあんなに圧勝するなんて思わなかったよ。本当にベル君は頑張り屋さんだなあ。それじゃまた新しい虫が付く前に、ハイン君を探さないと!お礼も言わないといけないしね!!」

 

 

「えっと・・虫?ちょ、ちょっと、そんなに慌てて走ったら転んじゃいますよ神様!!何かさっきまでより元気になってませんか!?」

 

 

「それがねえ、さっきの蟹君がくれた飲み物を飲んだら一気に疲れが吹き飛んじゃってね。3日完徹した後でもこの通りさ!!」

 

 

「み・・3日!?神様、ハイン探すより先に休んでください!僕が探してきます・・・って待ってください~~~~ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所:???

 

 

 

「―――ふふ、思った以上だったわ。けどヘスティアに悪いことしたかしら?頑張ったご褒美は奮発しなきゃね。・・・・オッタル、頼んでいた件はどうなったかしら?」

 

 

 

 ―――バベルの最上階、贅を尽くされた玉座の様な設えに身を任せる美神、フレイヤは脇に控える最強の冒険者である眷属、『猛者』オッタルへ視線を向ける。その視線は愉悦に興じる様にも、間近に迫った危機に警戒するようにも見えた

 

 

 

「はっ。件の黒いほうの少年について、『怪物祭』からその後まで抜かりなく観察いたしました。・・・愚見ですが、今すぐ始末した方が後顧の憂いが無いかと」

 

 

「あら、貴方にそこまで言わせるなんて、もうそこまで成長しているのね。あの『落とし児』は」

 

 

「・・・単なる身体能力や技能なら、聊かの問題もありません。しかしあの子供が持つ魔法、あれはこの世界で当然に罷り通る道理を捩じ伏せ、自らのルールを押し付ける物のように感じました。例えば、あの斬撃のような魔法は生来から魔力に適性のある者であれば、レベル1相当でも容易にやり過ごせますが、逆に十分な魔法への耐性を用意しなければ、私であっても絶命は免れません。それに奴が使役するモンスター、私が仕留めるのに3合要しました。レベル1冒険者が扱うスキルとしてはあり得ない性能かと」

 

 

「・・・・・・そう、あなたがそういうなら間違いはないわね。お陰で確信が持てたわオッタル。けれど、初めに言いつけた通りあの子供への接触は禁じるわ。あの【這い寄る混沌】が自分の楽しみを台無しにされて黙っているとも思えないもの。自分は好き勝手にするくせに、勝手にされるとすぐに怒り出す存在だから」

 

 

「・・・・?」

 

 

 ―――【這い寄る混沌】。長くオラリオで蜷局を巻いているオッタルであるが、その呼び名に聞き覚えはない。そのことに訝しむが、彼が主神の前で考え事に耽る無礼を犯すはずが無く、直に思考を打ち切った。

 

 

「貴方が知らなくても可笑しくないわ。これは貴方達が『再起』するまえのとっても古いお話ですもの。・・・良い機会だわ、貴方にも教えてあげる。ワインを用意して頂戴。今晩はラクリマ・クリスティが良いわ。グラスは2つ用意して、年代は貴方に任せるわ」

 

 

「かしこまりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ねえ、オッタル。彼方は不思議に思わないかしら?理由は色々あるけど、一度は一人残らず楽園に去った私達が、再びこの地に舞い降りたことを。一切自重することなく、今この世界で私達が関与していないことは一つもない。それを辞めるために引き籠った筈なのにね。それに、それなりに上手くやっているロキやアレスはともかく、眷属一人のためにファミリアを傾けたミアハや、引き籠りのヘスティア迄降りてこられることに」

 

 

「・・・偉大なる我らが絶対者と、憚りながら同列におられる神々を我ら如きの尺度で測ることなど出来ましょうか。ただ、矮小な人間の目線で言わせて頂ければ、確かに腑に落ちぬことがございます」

 

 

「ふふ、模範解答ね。貴方のその期待に完璧に応えてくれるところが、私が一番好きな所よ?」

 

 

 その言葉にオッタルは目を伏せる。例え最強の冒険者と渾名されようと、己が身命を捧げる女神からの称賛には喜色を隠せないのも無理はない。その反応を一頻り愛でた後、フレイヤは続ける。

 

 

 

「本当に昔の話よ。私達が天界に戻り、退屈ながらも貴方たち子供等の成長を無聊の慰めにしていたわ。けれどある日、本当に冗談のように世界は滅んでしまったの。原因はこの世界の外からの侵略者【旧支配者】を名乗る連中によってね。

 

 

 ・・・悲しかったわ。貴方達が何千年と掛けて積み上げてきた時代や文化が一瞬で踏みにじられて。私達も必死に戦った・・・詳しくは省略するわ、正直思い出したくない記憶ですもの。結論から言えば、星辰によって力が弱った彼らはこの大地に封印された。本当なら始末したかったのだけど、彼らが自らにかけた封印があまりにも強固でね。ただ、その闘いのリーダーを務めた、封印に長けた一柱の神が其れに更に細工をして、この世界の動力として組み込んだの。あれだけ手を焼かされたんですもの、精々役に立って貰わないと。

 

 

 

 戦いが終わった時、この大地は人が住めるものではなくなっていたわ。そこからまた長い時間をかけて、この世界と貴方達は復興を遂げて行ったわ。そんなある時事件が起きたわ。【旧支配者】の尖兵達が再び姿を見せたの、見たこともない不愉快な魔法を持ち込んで、貴方達人間を操って暗躍していた。

 

 

 そこからの動きは早かったわ。慎重論を説いていた神も手のひらを返し、私達は決意したのよ。再び貴方たちと共に地上で生きることを。

 

 

 まず私達は、これはと見初めた人間を眷属に加え、彼らの協力を得て忌々しい害虫の書物や文化を焚書していった。そして次に始めたのは今のファミリア制度の整備よ。当初の目的は『神の恩恵』を利用して地上に神威を広めること、あの害虫が這い出た理由は封印していた力が漏れたことが原因だったから。そもそも単純な力だけなら私達さえ上回っていた連中だったから、一柱だけじゃ押えられないのも当然だわ。

 

 

 最後に行ったのが『封印の漏れの操作』よ。口惜しいけれど、どうやっても唯封印することは不可能、漏れを生じさせざるを得なかった。だからどう漏らすか腐心したわ。漏れ穴を一か所に絞り、他はすべて塞いだ。そして穴そのものにろ過装置のような機構を施し、この世界に害のない形で力を発散させる。むやみに強い力が漏れださないよう、下層で生み出された存在は、上層では容易に生きられないようにする。ここまで言えばもうわかるでしょう?そうして生まれたのがダンジョンよ」

 

 

「・・・では、ダンジョンとはその【旧支配者】とやらの力が滞らないようにする吹き抜けである、と。そして、その封印を免れた存在がおり、それが【這い寄る混沌】・・・」

 

 

 

「ええ、世界中に『古き印』を敷き詰めたはずなのに、どうやって姿を現したのかしら?とにかく、そういう理由だからあの黒い坊やへの手出しはご法度よ。他の子達にも厳命しておいて頂戴」

 

 

「承知しました。しかし、今の御話からも、少年の背後にいる存在は相当な危険、手をこまねき後手に回るのも下策なのでは?」

 

 

 

「それについては心配しなくて良いわ、切り札は既に私達の手中。さあ・・・貴方に相応しい舞台は既に完成しているわ。早くその輝きを高めて―――――――『本物の英雄』になってね、可愛い坊や」

 

 

 

 

 

 

 




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