美遊兄Grand Order   作:START

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夢を見た。それは、美遊の夢。

夢の中で美遊は笑っている。それはもう楽しそうに。

そして側には美遊と同じくらいの少女。平行世界の衛宮士郎。

その夢を見て安心した。

そんな日常を過ごしていたら·······俺の願いは半分叶えられたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う······ん」

 

 

士郎は微睡みの中、何とか意識を保たせて、起き上がった。

 

 

「ここは?」

 

「目覚めたかい」

 

 

声がした方を向く。声の主、黒髪の若いモナリザに似た女性だった。

 

 

「あ、あぁ」

 

「私の名はレオナルド·ダ·ヴィンチ。カルデアの技術部のトップさ。気軽にダ·ヴィンチちゃんと呼んでくれ」

 

「わかった。ダ·ヴィンチちゃん。ん?レオナルド·ダ·ヴィンチ?」

 

「そう。私こそが天才、レオナルド·ダ·ヴィンチなのだ」

 

 

自分で天才と言っているあたり、天才とバカは紙一重というのは本当のことなんだろう。

 

 

「君の名前は?」

 

 

突然ダ·ヴィンチちゃんは名前を尋ねてきた。そういえば名乗ってなかったな。

 

 

「俺は、衛宮士郎。よろしく」

 

「よろしく。そういえば客人がいるよ」

 

「客人?」

 

「入ってきたまえ」

 

 

そういうと一人の女性が入ってきた。赤い髪でサイドテールの少女だ。

 

 

「目覚めたんだ。村ま·····士郎君」

 

「あぁ、君は?」

 

「私は藤丸立花。カルデアのマスターだよ。君のことはアルトリアから聞いたよ」

 

「マスター·······」

 

「そういえば説明がまだだったね」

 

 

そう言ってダ·ヴィンチちゃんは現状の説明をしてくれた。

この世界の聖杯戦争はこっちとは違い、サーヴァントに戦わせるようだった。

 

 

「士郎君。お願いがある。君はカルデアの第二のマスターとして特異点に行ってくれないか?」

 

 

いきなりのことで少し戸惑った。だが、返事はもう決まっていた。

 

 

「わかった。俺で良ければ」

 

 

身寄りのない士郎はこの選択しか残されていなかった。

 

 

「それは良かった。じゃあ立花君。案内してくれないか?」

 

「任せてよ、ダ·ヴィンチちゃん。行こう」

 

 

士郎は手を引っ張られ医務室から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダ·ヴィンチは考えていた。突然現れた衛宮士郎という存在を。

マスター候補生の中にはそんな人間はいなかった。

彼の履歴もまったくなかった。突然現れたのだ。そして彼の属性。混沌 悪。現代人でこの属性を持っている人間はいないだろう。あの少年と話したが、悪の要素は感じられなかった。

 

 

「これは様子見かなぁ」

 

 

天才は静かにそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士郎は立花にカルデアを案内された。だが、立花に用事ができ、去っていった。

 

 

「藤丸立花······か」

 

 

藤丸立花。一般人ながら人理修復を成し遂げた、ある意味、正義の味方だ。

彼女を見ていると切嗣のことを思い出す。切嗣から受け継いだ正義を捨てた自分を思い出す。人類の為に振るわれるべき力をたった一人の為に使った最低の悪を。

後悔はしていない。後悔するわけがない。妹を守れた。それだけで満足だ。

すると、後ろから殺気を感じた。

士郎は後ろから来る何かを掴む。それは矢。

こう来るだろうと士郎は考えていた。突然現れた自分を歓迎しないやつも出てくるだろう。

士郎は矢を地面に置き、そのまま立花に教えてもらった部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室に入る前に何人かのサーヴァントとすれ違ったがその全員が士郎を不審な目で見ていた。

士郎は椅子に座り、ボーとする。すると、

 

 

「士郎君。いるー?」

 

 

外から立花の声が聞こえる。士郎はドアを開けた。

 

 

「皆に自己紹介するから」

 

 

そう言って立花と一緒に食堂に向かうことになった。

 

 

「········」

 

「ん?」

 

 

立花は士郎の目を見つめる。

 

 

「なんか士郎君って暗いよね」

 

「そうか?暗い感じはないけど」

 

「ふーん」

 

 

立花はそう言って再び歩き出す。

 

 

「そういえばアルトリアが士郎君のこと心配してたよ」

 

「ん?アルトリア?誰だ?」

 

「え?覚えてないの?」

 

「覚えてないというか会ったことないぞそんなやつ」

 

「聞いてた話と違うなー。君、彼女のマスターだったんだろ」

 

「というか、彼女の言っている、衛宮士郎と俺は········ん?」

 

 

よく見ると違う道に小さい金髪の少女をナンパしている黒ひげの生えた男がいた。

 

 

投影、開始(トレースオン)

 

 

士郎は投影魔術で野球ボールくらいの鉄球を投影する。

あんなに小さい少女をナンパしているのは出来れば見たくない。サーヴァントだから大丈夫だろう。

士郎は目一杯の力で鉄球を黒ひげの男に投げた。しかし、

 

 

「はうっ!」

 

「あっ」

 

 

運の悪いことに鉄球は男の股間にあたり。男は白目を向いて気絶した。

 

 

「あのっ、ありがとうございました!」

 

 

少女はそう言って食堂のほうへ向かっていった。

 

 

「大丈夫かな?」

 

 

立花はそういいながらも黒ひげを無視して食堂に向かう。意外とドライだな。

 

 

「みんなー、来たよー」

 

 

立花は食堂に入るなりそう言った。

士郎は食堂に入った。

全員の視線は士郎に向けられる。

 

 

「衛宮士郎です。よろしく」

 

 

士郎は前に出て挨拶をする。

 

 

「·······」

 

 

サーヴァントの反応はあまりいいものではなかった。

 

 

「マスター、何故いきなりマスターを追加したのですか?」

 

 

そう質問したのはショートカットの髪も肌も雪のように白い女性だった。 

 

 

「ダ·ヴィンチちゃんが私だけだと大変だからだって」 

 

「でもコイツ使い物になるの?」

 

 

その言葉にサーヴァントたちが頷く。

 

 

「ちょっとジャンヌ、そんなこと言っちゃダメだよ」

 

「事実です。使えないマスターに従いたくありません」

 

「士郎君はどんな魔術使えるの?」

 

「あぁ、強化魔術と投影魔術だ」

 

「ふん、強化と投影なんて初歩中の初歩、それだけの魔術でサーヴァントたちが従うと思いますか?」

 

この反応は予想していた。強化はとにかく、投影なんて一般的には使い物にもならないからだ。立花はジャンヌという少女を注意している。

 

 

「ん?」

 

 

周りを見渡すと意外な視線に気がついた。

一人はジャンヌという少女を睨んでいる。

もう一人は士郎を信じられないというような表情でこちらを見ている。

まぁ今はどうでもいい。

 

 

「まぁこんな俺だけどよろしく頼む」

 

「ふーん」

 

 

すると、後ろから声がした。白い服を着て白髪の杖を持った男だった。

 

 

「君はそちらの選択をしたんだね」

 

 

その言葉に士郎は固まった。つまりヤツは士郎のやったことを知っている。

 

 

「お前·······なにを····」

 

「一ついい忘れてた」

 

「彼女はあの世界で友人ができたよ」

 

 

その言葉に再度固まる。この男は胡散臭いが嘘を言っているとは思えなかった。

 

 

「そう········か、良かった。だったら俺の願いは半分叶えられたよ」

 

 

士郎の言葉に金髪の少女は目を見開く。

 

 

「シロウ····貴方は――――――――」

 

「君の知っている衛宮士郎と俺はまったく違うぞ」

 

「え?」

 

「そういうことか」

 

 

褐色の男は納得したように言葉を発した。このサーヴァントを自分は知っている。

 

 

「英霊······エミヤ」

 

 

そう。自分が至ったかも知れない、切嗣の目指した正義の理想。

 

 

「ヤツはエミヤシロウであってエミヤシロウではない。よく見ろ。ヤツはあのときとまったく成長してない」

 

「え?」

 

 

確かに、よく見ると身長もあのときと変わっていない

 

 

「貴様は平行世界のエミヤシロウだな」

 

「··········あぁ、そうだ」

 

 

その言葉にこの場にいるほとんどがざわつく。

 

 

「なぁ、この世界の衛宮士郎はどんなやつだ?」

 

 

突然の質問で戸惑っていたが、すぐに気を取り戻した。

 

 

「そうですね。彼は正義の味方を目指していました」

 

「正義の味方·······正義···か」

 

 

そう呟いた士郎の表情は寂しく、悲しそうだった。

 

 

「引き継いだ誇りは······自分で捨てたよ」

 

「え?」

 

 

小さくて聞こえなかったが。多分独り言だろう。

 

 

「ん?そういえば······もうこんな時間か」

 

 

そう。案内される前にダ·ヴィンチちゃんにこの時間に医務室に来るように言われていた。

 

 

「すまん。もう行くよ」

 

 

そう言って士郎は食堂から出ていった。その時の少女の表情は暗かった。

 

 

 

 

 

 

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