加速していく緋弾のアリア   作:あんじ

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この男、武偵で仮面ライダー!


プロローグ:何故俺の元に届いたのか

今から2か月前、俺こと泊 英志(とまり えいじ)は奇妙な存在と出会った。

それはまだ冬の寒波が消え去らない頃、武偵校の寮に荷物が届いた。それが大小それぞれ1つずつで、宛名は泊英志、差出人は特状課。

小さな箱には、何かをはめる形のリストバンドのようなものと、自立して動くミニカーが入っていた。

そして大きな箱、正確にはコンテナサイズだが、そちらには車が入っていた。もちろん登録されている持ち主は俺自身。

そして今日、始業式にもこの車に乗って登校するのだが、免許はどうするのか?という話になる。まぁ簡単に説明すれば、この学校の生徒には特別な方法で免許証が交付されている。そのため、意外と多くの生徒が車やバイクには乗ることができる。

それに、免許も車もある。のであればせっかくなので乗らない手はないだろう。

 

「キンジ、俺は先に出るからな。お前もさっさと起きろよ」

「あぁ……」

 

同居人である遠山キンジに声をかけて家から出ていく。このまま寝かせておくとヤツも始業式どころかHRまで遅れるかもしれない。HRに関しては前科ありだ。とりあえず起こせと文句を言われない為にも既成事実を作っておく。

今はまだ朝の8時前だが、足早に寮を出る。今日は始業式があるから早く出るというわけでは無く、武偵である俺が追っている事件の資料を受け取りに警視庁に行くからだ。

 

『やぁ、エイジ。Good morning!』

「またアンタか。ったく、どこから声聞こえてんだか」

 

謎の声が、朝からテンション高めに話しかけてくる。送られてきた車はスポーツカーだがどこかのメーカー品では無い。驚くことに完全にオリジナルで作られた未知の物。内部構造的にはホンダのNSX辺りが近いだろうか。そんな謎の声がするオリジナルスポーツカーこと、トライドロンはどこからか声が聞こえてくるのだ。

大抵こういうろくでもない贈り物が送られてくるのは物語の始まりであって厄介事に巻き込まれるのだが、既に2ヶ月経過していてそんな気配は無い。

謎の声は分析するに男であり、ある程度歳が上な人だと分かる。だが、音質的には機械音声などではなく、マイク越しの人の声というのが近い。

そんな謎の声に軽く反応しつつ車を出す。少し車を走らせると、謎の声がまた話しかけてくる。

 

『方角的に警視庁か。一体武偵のキミが何あそこにの用があるんだい?』

「……本当はベラベラ喋っちゃいけないんだけどな、アンタが喋ったところで、車が喋ることなんて胡散臭くて誰も信じなさそうだしな。凶れあ良いか。実は今、武偵殺しっていう二つ名の凶悪犯の模倣犯が多発してるみたいでな。そこで昔に収束した現象、えーっと、確か"どんより"とかいう現象が起きてるんだってさ。実際感じた人が極小数だから本当かどうか分からないけどね」

『フムゥ……OK、私の方でも調べてみよう』

「え?何言ってんだアンタ。車なんだから調べることも出来ないだろ。冗談も程々にな」

 

軽口を叩いているとドラマなんかでよく見る建物が見えてくる。今日用があるのはその中でもよくドラマ化される人物の多い警視庁捜査一課。資料提供という事で過去に起きた武偵殺し及び武偵殺しの模倣犯に関する情報を共有してくれるらしい。

 

「あの〜、武偵校から来た泊英志なんですが」

「おう、こっちだ英志。久しぶりだなぁ」

「現さん!?」

 

緊張しながら会議室のドアを開けると、1人しかいなかった。こちらに手招きをしている渋いおじさんが1人だ。

彼は警視庁でも名物刑事で現さんこと追田現八郎警部。父さんの同僚であり偶に家に来て呑んでいた。少し前に警部補から警部に昇進して、もうすぐに警視に昇格するかもと自慢していたのを覚えている。

 

「現さんじゃなくて追田警部な。ほれ、これだろ武偵殺しの資料」

「ありがとうございます。それにしても早いですね、まだ勤務時間外でしょう?」

「良いんだよ、偶にはな。それにしてもよ英志、その手元にあるミニカー、ソレ何だよ」

 

現さんが指してくるのは手の中にある紅色のミニカーだった。車の中にあり、自動で追いかけてくる最新過ぎるミニカーなのだが困った事にこれからも謎の声さんが聞こえてくるのだ。

 

「よく分かんないんですよ。えーっと特状課?って所から送られてきたんですけど」

「ふーん、特状課?何処の課だ?知らねぇな」

「現さんも知らないとなるといよいよ謎だなぁ。まぁ良いか、ありがとう現さん。これから始業式だし、俺は行くよ。それじゃあまた今度!」

「現さんじゃなくて追田警部だって何回言わすんだ全く。気を付けろよ」

 

資料を手に取り警視庁から出ていく。すると正面に既に誰もいないはずなのに動いて来ていた俺の車があった。しかもクラクションを鳴らしてこちらを煽ってくる。

周りは出勤時間で歩いている人がチラホラおり、不思議な目で見られている。それもそうだろう。誰も乗っていない車からクラクションが鳴り、持ち主を読んでいるのだ。奇妙な光景だろう。

必要以上に注目されるのも嫌なので急いで戻ると、謎の声さんがいつもと違う焦った声で話しかけてきた。

 

『事件だ、エイジ!学園島で武偵校の生徒が武偵殺しに追われている』

「は?」

 

すると同時に、ルームメイトのキンジからメールが届く。そしてそのメールには変なのに追われているから助けてくれとの内容。意を汲み取らなくても分かる。まさにこの謎の声が言う通り、武偵殺しに追われているのだ。

 

「チッ、忙しない奴だよ。行くぜ、謎の声さん」

『OK、エイジ。Start Your engine!』

 

 

 

△△△

 

英志が出ていった後の部屋に残った現八郎は何処と無く喜びの顔と、不安の顔が滲み出ていた。ソワソワしているのか机の上で指をタップしている。

 

「あのミニカー、シフトカーじゃねぇか。……ロイミュードが蘇ったって事なのか?ただ事じゃねぇかもしれねぇぞ、進之介」

 

そう呟いた現八郎の目は普段の名物刑事のものでは無く、今よりも10年以上前の、若かりし頃の熱い目をしていた。




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