調整されたボディというのはこうも違うのかと体感させられていた。まず振り下ろされた硬く重い銃身を防いでも身体に響かない。バスの時みたいに無理矢理にでも力を入れても余程のことが無い限り身体に直接ダメージという事にはならないだろう。
『それにしても厄介だな。飛行機の中でやたらめったらに発砲されては落下してしまうかもしれない』
「だからか?まだ落としたくないからか機体の船首の方へしか発砲してこない。まぁ、左右の壁に穴は開けたくないって事か」
平地で障害物も無しに撃たれては難しかったかもしれないが、向こうに制限があるというのであればまだどうにかなるだろう。
しかも向こうは俺を殺すことが出来ない。何故なら、彼女の目的は俺をイ・ウーなる場所へ連れていくこと。ここ俺を捉えることが目的だ。だが、俺は遠慮なく
『ふむ、早々に片付けよう。上も危ないようだ』
「OK、なんだけどさ。シフトスピードじゃ、ここの物を壊しかねないぞ。それにタイヤ交換しようにもトライドロンが無いし。というか、なんで俺は変身出来たんだ……?」
『Don't worry!そんなこともあろうかとトライドロンは積み込まれているさ。もちろん、アリア女史の私物として勝手にだがね』
「最早なんでもありだな。だけど、有難い。なら、これでいかせてもらうぜ」
『タイヤ交換!ミッドナイトシャドー!』
貨物室のさらに向こうから何かが光ったかと思うと背中へと一直線にタイヤが飛んできて、元のタイヤは吐き出された勢いのままロイミュードへとぶつかっていく。
胸元にはノーマルタイヤが
ノーマルタイヤの時のようにシフトブレスを2度、3度倒すと手にはエネルギー体となった手裏剣が現れる。
「ニンジャ!?」
「えっ、喋った!?」
お互いに驚きながらも、俺が手にある手裏剣を投げれば勝手に障害物を避けて横から、背中から手裏剣が襲いかかる。長物を持つロイミュードは躱すことが難しく、これをモロに食らうことになる。
「オラッ、倒れろよ!」
「理子りんの命令は絶対だぞ!だから、そっちこそ早く倒れてよね!」
「急に喋ったかと思ったら、そんなに可愛いキャラだったのか?」
殴り合いながらも会話を続ける。まさかの展開だ。怪物だから喋ることは無いか、もしくは喋っても俺の知らない言語かと思っていた。ならば聞かない訳にはいかないだろう。
「聞くけどさ、なんでお前は理子に従うんだ。どうしてお前は──」
「
もはや意味不明だ。知りたいから従うなら、それこそ聞けば良い。このお前の持つ気持ち、感情はなんなのだと。教えるのはこれが終わったあと、なんてのは条件付けとしては弱すぎる。
そもそも武偵同士なのだから、ここまで計算ずくなら戦闘になることも織り込んでいるはずだ。そして、理子は俺の招待を知っていた。なら、俺が仮面ライダーとして、ロイミュードを倒すのだと知っている。そして、それはこのロイミュードも同じだろう。だからこそ、そんな条件をコピーしたとは言え理子が許容するとは思えない。
「それだけ?なら、こっちからいくよ」
腕を振り上げて、ガコンと重いと同時に再装填されたことが分かる。直線上にはトライドロンがあるため、簡単に避けることが出来ない。そもそも乗客の荷物もある。こんな中で発砲なんてされたらたまったもんじゃない。
『エイジには言ってなかったね。ロイミュードは人の感情を読み取り、コピーする。それは善意よりも人の悪意が大部分を占める。だからロイミュードは倒さなければいけない存在なのだよ』
そして、俺と戦う前からこのロイミュードは薄々気付いていたのだ。ここまでに至る一連の行動を見て、聞いて、計算して。
『そして、このロイミュードは峰理子の一部の情報をコピーして作られた存在だ。見た目も、行動も、喋り方も、コピー元の彼女に似てくる。だから、情を持つ前に早く倒すんだ、エイジ!』
ベルトさんの言いたいことは何となく分かる。彼女が理子のコピーであり、元の姿に戻り泣きでもされたら俺の手は止まってしまうかもしれない。救うはずの人間のコピーとはいえ、同じ見た目をした者を倒せるのか。非情になれるのか。そうなる前に片をつけろと言ってきたのだ。
『このロイミュードが読んだ感情、これは恐らく嫉妬だ。尊敬ゆえに越えられず嫉妬する。自分には無いものがあるから嫉妬する。そして、このロイミュードはその嫉妬を糧に進化した。だからこそ、今ここで彼女のために倒すんだ』
「あぁ、分かってる。俺は仮面ライダーである前に武偵だ。武偵の仕事は人を守ること、人を救うこと。ハイジャック犯"武偵殺し"、お前を逮捕する!」
手にはエネルギーが今まで以上に圧縮されていく。紫色の十字手裏剣はさっきまでのとは大きく変わっていく。大きさは1.5倍ほどになり、圧縮されたエネルギーにより透き通ることなく禍々しい紫色をしている。
「お前は嫉妬してたんだな、俺に。さっき病院でも言ってたろ、人の気持ちに敏感になれるって。幼い頃から4世と呼ばれて、峰理子として扱われなかったお前は人の心が解らなかった。分かるフリをしていた。人に寄り添えるその在り方が羨ましかったし、自分にはは1度たりとも向けられなかったその感情が欲しかったんだ。だから、俺を欲したんだな」
『必殺!フルスロットル!SHADOW!』
これでようやく謎が解けた。そもそも何故キンジの元と俺の元へほぼ同士に理子が存在していたのか。それは、片方がロイミュードだったからだろう。そして、全ての感情と想いを知る理子本人はキンジの元へ行き、それを知りたい
「教えてやるよ、お前の知りたい感情。それは──」
エネルギーがMAXまで溜められた手裏剣は俺の手から放たれて、深くロイミュードの胸に突き刺さる。最後に彼女は俺の言葉を受け取ると、人間態に戻る。この答えに納得したかのようにニッコリと微笑みそして消えていった。
体から魂が浮かび上がるように、ロイミュードのコア部分が現れる。これがある限り再びロイミュードは生まれてしまう。そして、これを壊すのが
No.10051
そう記されたコアはミッドナイトシャドウの攻撃を受けて、壊れた。
△△△
一方その頃、キンジとアリアは追い込まれていた。エイジが作った隙をアリアも逃さずに一気に距離を詰めた。デフォカラーの黒と白銀のコルト・ガバメントM1911二丁を構えて突撃する。現代では帯銃している組織は多い。そのため一般向けにすら防弾素材の服が売られていたりする。武偵高の制服も勿論防弾仕様だ。
そして、防弾仕様の制服を着たもの同士がする戦闘。それが
「アリアと理子はね、とっても似てると思うの。家系、キュートな姿、そして二つ名。理子も持ってるんだ──"
理子は接近されたアリアの腕を固めて、身動きを取れないようにする。銃が壊されたとはいえ、キンジの武装が無くなった訳でない。
そのため、その行動を見て動き出す。武偵として帯刀を義務付けられているため、裏のポケットに緋色のナイフを隠し持っていた。皮肉にもこのナイフは理子が殺したと言った兄である遠山金一の形見のナイフだ。
「理子、そこまでだ!」
「ほんとに、そうかな?」
そう言った理子には明らかな余裕が存在していた。そして、飛行機の少しの揺らぎに合わせて彼女の髪の毛も少し揺れていた。注意して見なければ気付かないほど自然にその髪の毛は背中に回って、あろうことか髪の毛でナイフを掴んでいた。
「アリアの
固めてられて動けないアリアの頭へと理子が振るったナイフが切りかかる。右手側の髪で持ったナイフで側頭部を切り、そして左手側のナイフの柄で殴り飛ばす。髪の毛なはずなのに、ナイフを持つ束はまるで4本目の手と変わりない動きと力を見せる。むしろ、関節のない分だけ腕より自由度が増して凶暴だ。
「アリア!」
「はは、曾お祖父様……108年の歳月はこうも子孫に差を作っちゃうもんだね。それどころか、コイツはパートナーの力も自分の力も使えないなんて勝負にならない!」
その言葉と共に再び髪の毛で殴り、キンジのいる方へわざと突き飛ばす。もう勝ちを確信して、興味をなくしたとそういった感じだ。実際、アリアの意識は低下していき、当のキンジも武装はナイフ1本のみとジリ貧も良いところだ。
理子が詰め寄ろうとしたその時、下の方で軽い爆発音がする。これに理子が釣られた。その瞬間をキンジは見逃さずに一目散に逃走を図る。いくら強襲科を退いたと言っても武偵であり、そして男だ。アリア1人を抱えて走ること位はできる。
「きゃははははは!どこに行こうっての?ここは飛行機、狭いお庭で理子と鬼ごっこでもする?」
キンジの後を追い、理子も動き出す。ロイミュードを失い、それでも勝ちを確信した理子の表情は獲物を追い詰める肉食獣のそれではなく、むしろ恋焦がれる乙女のものであった。
「キンジ、これでチェックメイトだよ」
そう呟くと、
モチベーションに繋がるので、良ければ感想や評価していただけると幸いです。お気に入り登録も待ってます。