「さて、こんなもんか?」
依頼を受けたからには即行動に移らなければならない。というわけで、星伽白雪本人と、彼女の荷物をまとめ引越し作業を行うことにした。奇しくも俺たちの住む男子寮は多くの人が住むことを前提としていた為部屋が余っている。ならば護衛も自分達の住処でした方が効率的だというアリアの意見(命令)のもと、俺は
「うん、これで最後です。ありがとうございます、泊くん」
「まぁ、これも必要な事だから。さてと、帰るか」
タンスやら何やら持ってく荷物は荷台に収まる程度。1番大きいのでも桐のタンスだ。まぁ、場所的に服やら下着やらが入っているのだろう。よく袴を着ているというか、制服かその姿しか見た事が無いので私服を持っているのかさえ知らないが。
とてもルンルンな白雪さんを隣に乗せて数分、そう遠くないので何事も無く到着できた。エンジン音を聞いてか、キンジも降りてきて荷物を運び入れる作業が始まった。推定で俺たちより怪力なアリアさんはというと、部屋の中を改造していた。どこからか取り寄せた監視カメラがリビングと玄関に設置され、ベッドルームも同様だが窓は防弾仕様になり足元にはワイヤートラップや赤外線センサー等も置かれている徹底ぷりを見るに本気でストーカーこと
「なぁアリア、本当に
「バカね、アンタ。
何故アリアがそこまで執着するのか疑問だったが、これで答えが出た。風の噂でしかない凶悪犯という訳では無く、これから敵対が確定しているというのだから警戒もするはずだ。
「それと、アンタのミニカー1つ貸しなさい。白雪にも1つ。アレがあれば万が一があっても何とかなるかもしれないし」
「ミニカーじゃなくてシフトカーな。ベルトさん、誰かいけそうなのいないか?」
『ふむ、そう言うことならバーニングソーラーとディメンションキャブをそれぞれ配置につかせよう。もしもの時はディメンションキャブで逃げることできる』
そういうと、どこからとも無く現れて部屋にいた2台は、バーニングソーラーはアリアの元に、ディメンションキャブは白雪さんの元へと動き出した。アリアはシフトカーが動くことを知っているが、白雪はそうでは無い。それに変に彼女に持たせるのも変な話だ。通信機などを仕込むにしても白雪さんが身につけて怪しまれない物にするべきだろう。
仕方がないので、ディメンションキャブには護衛という形で常に追跡をしてもらう事にした。
その後タンスやら何やらをキンジが運び入れている間もアリアは黙々と作業を続け、気が付けば家は要塞化されていた。住み心地があまり良くない感じだが、しょうがない。今日から寝る時はドライブピットの方へ移ろう。
「で、なんだけどさ」
「あ、あぁ。なんだ?」
「何してんの?」
「俺に聞くな!」
要塞化したかと思えば、今度はキンジが運び入れたタンスの中身を物色するという変態行為に出ていた。下着そのものに興奮するのは海外では特殊らしいが、下着泥棒がそれなりに起こっている日本ではかなりメジャーな性癖だ。他人の性癖にどうこう言うつもりは無いが、人として間違っている事は正してあげなければならない。
「ロリの奴隷になったと思えば、次は幼馴染の下着泥棒か。俺がまだ警察になってなくて良かったな。現行犯逮捕だぞ?これで前科一犯じゃ済まなくなったな」
「バカ言ってる暇があったら助けてくれないか?」
手前に倒れ、多くの棚が出てきてしまっているという大惨事の桐のタンスを何とか戻し、部屋に運び入れる事で引越し作業は完了。時刻としても昼過ぎと良い時間になっていた。
最後に、持ち込んだ物──特に結構セクシーな下着が多くしまわれていたタンスなどの大型家具には発信機やらの怪しい機械は含まれておらず、念の為の全員の身体検査も終わり遅めの昼食をすることに。
台所には白雪さんが立っており、手際良く調理を進めていた。この家でまともな食事が出たことは無い。出前か配達かお惣菜か弁当を好きなように選ぶという何とも健康に悪い食事だ。なんだか久しぶりにキッチンが機能したところを見た気がする。
10分弱で完成したお昼はうどんだった。キンジには鶏肉やら具沢山でありながら栄養バランスの良さそうなうどんが、俺には残りの具ときつねの乗ったうどんが、アリアにはスープすらない茹でただけのうどんが並べられた。綺麗なまでに松竹梅と分かれたメニューで思わず苦笑いが出てしまう。
「何よこれ!」
「おうどんです。文句があるならボディガード解任します」
「分かったわよ!食べれば良いんでしょ、食べれば」
うどん単体ですするアリアを横目に、温かいうどんを食べるのはなんだか申し訳なく思えてくる。まぁ、最上級のキンジは我関せずといった感じで黙々とうどんを食べていた。
ささっと昼食も食べ終わり、各々食休みだとゆっくりしていると部屋の片付けが終わった白雪さんが何かを手にして出てくる。手にあるのはカードのようなもので、なぜか空いてるソファでなく机を挟んで反対側の床に座った。キンジのすぐ横も空いてるし、なんなら横に1人がけのソファも空いている。
「あのね、これ、
巫女占というくらいだから占いをしてくれるのだろう。神社なんかではお御籤もあるわけだし、似たようなものだと推測できる。
過去に何度か占ってもらった事があるが、初めて見る方法だった。それに、白雪さんの占いは怖いほど当たるので
「まぁ、良いけど。占いって言っても色々あるだろ、何ができるんだ?」
「こ、恋占いとか……あとは、金運とか恋愛とか健康に恋運も」
「ふーん。じゃあ、数年後の未来どうなってるか見てくれよ」
それを聞くと、一瞬白雪さんの顔が般若のようなものに見えたが直ぐにいつもの笑顔になって「はい」と元気よく返事をしていた。
机に並べたカードを手際良く並べては何枚かを裏返していく。すると、今度は険しい顔を見せるがまた直ぐにいつもの笑顔に戻っている。
「どうだったんだ?」
「えっと、うん。その……総運、幸運です。良かったね、キンちゃん」
「それだけか?こう、もっと具体的にさ」
「え、えーっと、黒髪の女の子と結婚しますとかかな?なんちゃって」
何ともまぁ共感性羞恥が発動しそうだが、幸運だと言うのだからそう不安がらなくても良いだろう。それに何か良くない事があったとしても、言わなければ起きないかもしれない。言霊とは怖いもので、言われた事で意識した結果起こってしまうなんて事も考えられる。そういう意味では幸運のままでいられる方が良いのかもしれない。
「エイジもやってもらえよ。星座占いとかさ」
「んじゃ、俺は12月生まれの射手座だ」
カードを束に戻してシャフル、再びカードを配置していく。今度は先程とは違う捲り方をする。占いなんて時間がある時、たまに朝の星座占いを見る程度だからどんな結果が出るか楽しみだ。
「えっとね、運勢はあんまり良くないかも。だけど、それを乗り越えれば大きく成長できそうです。ラッキーカラーは黒、かな」
「怖いなぁ、試練なんて。今なんて特に依頼中だぜ、何が起こるんだか。毎日ひとやすミルク持ち歩くしか無いな」
「おい、あれ白だろ。黒だぞ黒」
「馬鹿野郎、パッケージに牛がいんだろ。ちゃんと黒いじゃねぇか」
まぁ、キンジの言い分も分からなくはない。ひとやすミルクは確かに白が大部分を占めている。まぁ、仮にこれが白判定でも今俺の手元にはシフトワイルドのシフトカーもある。これなら問題無いだろう。
コーヒーを片手に眺めていたアリアもこれに参戦してきたが、「ろくでもないに尽きます」と言われ気が付けば軽いキャットファイトに発展していた。
△△△
依頼を受けた翌日、俺は警視庁へ訪れていた。というのも、
「何年あれば終わる?って数だな」
「おやおや、これは泊ちゃんじゃありませんか。どうしたんですか、こんな所で」
「ほ、本願寺のおじさん!」
そこに現れたのは、警視庁No2.の本願寺純警視監だった。どうしてこんな所にいるのかは謎だ。一応時間的には仕事をしているはずなのだし、地位的にそうそう資料室に来るような人物では無い。会えたのはラッキーだろう。
「実はいま、
「ほぉ、それで行方不明者なんかの資料を漁ってたんですねぇ」
「そうなんですけど、量が量でして。今から助っ人でも呼ぼうかなって」
「そうでしたか。なーに、そこは私に任せなさい。宛先は泊ちゃんの寮にでもしておきますよ」
そう言うと、本願寺のおじさんは幾つかのファイルを手に取ってピックアップしていく。数冊のファイルには行方不明者、及び捜索願の出された人物のものが置かれていた。
「泊ちゃん、キミの今日の運勢は"大吉"ですよ。ここは私がやっておきますから。ラッキーカラーはシルバーらしいですからね、気を付けるんですよ」
手にあるのはガラケーで、そこに表示された占いサイトには大きく大吉と書かれていた。
何をしに来たのかは分からないが、本願寺のおじさんに追い出されるようにして、警視庁を後にする。元々今日1日使って資料を探すつもりだったので、今日の授業の内容は昼飯代でキンジのを写す予定だった。既に前払いしてある以上、今から帰るのは金の無駄になる。なので、仕方ないので宛もなく外を歩く事とした。