本願寺のおじさんの好意で、1日の予定が空いてしまった俺は久しぶりに1人の時間となった。ベルトさんは何やら用事があるらしく朝からいない。依頼の最中ではあるが、アリアが夜間はレキを雇ったため日中はキンジやアリア、俺が護衛につくことになっている。夜間交代制が無くなったので凄く楽になった。それに、依頼を仲介された本人ではあるが、Sランクという輝かしい経歴を持つ3人に任せておいた方が得策だろうと少し単独行動をとっている。
「む、キミはこの間の」
ブラブラと歩いていると、気が付けば神田まで歩いて来ておりかなり長距離の移動をしていた。そんな俺に声をかけたのは、前に秋葉原であったロレンスと名乗った少女だ。今日も綺麗な銀髪を1つに束ね、スタイルの良さを全面に出した服装をしている。
「偶然だな、こんな所で会うとは。キミはここで何を?」
「俺か?特に何もしてないよ。予定が潰れて暇になった所だし」
「
彼女は少し強引なところがあるらしい。俺がうんともすんとも言う前に手を掴んで歩き出してしまう。まぁ、やる事ができたわけでも無いし、ある程度自分自身を守るすべもあるので何処に連れていかれようとそうは困らない。
突然女の子に手を握られたドキドキなのか、どこへ連れてかれるか分からないドキドキなのかは定かではないが少し季節には似合わない手汗をかきながら移動すること数分。連れてこられたのは裏路地、それも電気街の近くだった。
「秋葉原、好きなのか?」
「嫌いじゃない。でも、それだけじゃなくてな。
そう言ってさらに引っ張られていき、とあるビルの手前で止まる。そこは見覚えのある店舗が入っており、偶然にも彼女の目的地もそのお店であった。
なんの店舗が入っているのかというと、そこはメイド喫茶だ。もちろん、何か特殊なお店だったり、裏の営業形態があったりなんて事も無い健全な、ただのメイド喫茶だ。しかし、俺にとって、正確に言うのであれば俺と峰理子の2人にとっては特別な店舗である事に間違いなかった。
「フッ、キミに会わせたい人がいてね。
まだ頭の処理が追いつかない俺に、畳み掛けるように動き出す。彼女が示す先には3人の男女がテーブルに座っており、そのテーブルの上にはラップトップが置いてあった。
赤いレザーコートを羽織った男と、緑を貴重としたスーツを着た男と、黒いゴスロリ風のドレスを着た少女の3人は俺に気が付くと待っていたかのような反応を見せる。しかし、3人とも俺の知らない人物であることは確かだ。
「待っていましたよ、泊エイジ」
「アンタら誰だ?」
「まぁ、当然の疑問だな。答えは……そうだな、彼女に聞くと良い」
赤いレザーコートの男が刺すのはテーブルに置かれたラップトップの、その画面。そこにはまだ暗く何も映ってはいなかったが、ガサゴソと音がする。
「ん!?わっ、もう始まってるじゃん。やっほー、愛しの理子りんだぞ〜。元気してた、エーくん?」
「理子……」
画面の中、彼の指さす先にいたのは先日エア・ジャックを行い逃走した犯人、峰・理子・リュパン4世だった。武偵殺しの名で知られ、アリアの追っている犯人の1人であり、そして俺の元パートナー。
奇しくも、俺と理子が初めてパートナーを結成した場所で再会することになってしまった。いや、これは必然だろう。理子なのか、ロレンスなのか、はたまたこの3人組の誰かなのか。誰かが意図してこの場に俺を連れてきたと考えるべきだ。
「理子、我が友に教えてやってくれないか。
「ほほーん。ま、簡単に説明するなら、ここは学校みたいなものかな。教授の元に集い、教え教わり実践する。
「と、言うことだ。まぁ、そう身構えなくとも俺たちは襲いはしない」
赤いレザーコートの人物は気さくに話しかけてくる。まるで旧知の友人に出会ったかのようだ。残りの2人も、それに不思議がることなく、こちらを見ている。
「全く……ハート、彼と私たちは初対面なんですよ。身構えもするでしょう」
「はは、確かにブレンの言う通りだ。俺はハート、
「ご機嫌よう、泊エイジ」
「そして私は、ブレン。ハートやメディック同様にロイミュードです。どうぞ、よろしく」
ただでさえ動いていなかった俺の脳はさらに動きを止める。彼らが何を言っているのかが理解できない。イ・ウーに加えて、ロイミュードまで出てきた。そして結びつくように、両者の中間点に理子がいる。イ・ウーにいる武偵殺しであり、ロイミュードを使い仕掛けてきた人物でもある。
それに、なぜ俺はここに呼ばれたのだろうか。自己紹介のため?ロレンスは俺に会わせたい人がいると言っていた。そして、それはハートと名乗った人物なのかそれとも理子なのか。はたまた両者ともなのか。
そして、さらにはハートと名乗ったロイミュードは俺の事を友と呼んだ。だが、少なくともこんなレザーコートを着こなす友人はおろかロイミュードと友好関係を結んだ記憶は1ミリたりとも無い。
「むふふ〜、それにしてもメディちゃんは今日も可愛いですなぁ。そのゴスロリ、理子の目に狂いは無かった!」
「ふふ、理子の衣装も似合っていましてよ」
理子はもちろん3人の事を知っているだろう。それもかなり深い関係としてだ。それにベルトさんは、『ロイミュードは人間の悪意をなぞる』と言っていたが、この3人にそういったものを感じることができない。不思議な程に敵意というものが湧いてこないのだ。
「不思議そうな顔をしているな、泊エイジ」
「あぁ、何もかも分からないからこの状況が不思議でならないさ」
「そう難しく考えることは無い。理子も俺もお前の友人さ。まぁ、
そう、ここにいる理子、ハート、ブレン、メディックは自ら"何もしない"と宣言した。しかし、彼女だけは何も言っていない。少し離れた入口近くのカウンターに座っているだけ。こちらの様子を確認したり、存在を主張したりをしてこない。時間が経てば忘れてしまうくらいには気配を消してた。
「……私をその名前で呼ぶな。私はロイミュードNo.10038、
「で、ロレンスは俺の敵なのか?」
「そんな名前で私を呼ぶな!それに、私は
つまり、彼女は今日と同様に意図してあそこで俺と出会いに来ていたわけだ。なんだか周りの全員がそうなのではないかと不安になりそうだが、それよりもだ。ロイミュードは悪意をなぞるのならば、彼女は俺に何かしらのアクションを取るために接触してきたと考えて良い。そして、今俺に関わることは2つ。星伽白雪の件か、仮面ライダードライブとしての件だ。
「
「……分かっている。私は帰る、後は好きにすると良い」
「そうか、ではまた会おう友よ」
白雪さんの場合であれば、俺に接触を測ってきたタイミング的には当てはまるがまるで意味がない。確かに護衛が1枚剥がれはするが、残っているメンバーを考えればアリアやレキを剥がす方がより良い。
これが仮面ライダードライブとしての俺に接触してきたのであれば、1つ疑問点が残る。それはハート達だ。絶対に手を組んだ方成功率は高いし、やるなら今だ。俺はベルトを巻いてないし、近くに逃げられる場所もない。
そうなると、他に何かあると考えた方が良いかもしれないが中々に接触を測る理由が見当たらない。
「さて泊エイジ、いや、仮面ライダードライブ。キミに忠告をしておこう」
「……」
「そう身構え無くても、宣戦布告などでは無いから安心してくれ。ただ、
「緋弾……?」
「では、俺達も行くとしよう。クリムにもこう伝えておいてくれ"彼は元気でやっているか?"とな」
そういうと、ハートは席を立つ。メディックやブレンもそれに続き、最後には俺と画面内で呑気にネイルをいじる理子だけが残された。なんというかとても気まづい。多分、理子はそういう事を思わないだろう。けど、俺は大いに気にする。アドレナリンがドバドバなあの時は臭いセリフを口にしたが、あれは思い出すだけで悶絶しそうになるくらいには恥ずかしい。今思えばカッコつけすぎだ。
少しばかり静かな時間が過ぎると、理子から話し始めた。
「エーくん、理子さ奪われちゃった」
「何をだ。お小遣いとか言ったらはっ倒すからな」
「うんうん、
「ッ!?」
なるべく気取られないようにポーカーフェイスを作っていたが、流石に驚いてしまう。
理子の奪われたもの、それは言わゆる形見の品だ。理子が唯一母から残されたもの、それがペンダント。理子は普段はちゃらんぽらんに振る舞う事が多いが、ペンダントだけは肌身離さず着けていた。大事にしてきたもの、命よりも大切だと言っていた事もある。そんなものを奪われたと言われれば、さすがの俺も驚きは隠せない。
「場所は分かるのか?」
「うん。日本」
「誰だ?」
「ブラド。イ・ウーのNo.2」
「日本のどこだ?」
「わかんない」
「分かった」
短いやり取りだが、これで良い。理子は絶対的に人を頼らない。全てを1人で解決に導こうとする傾向にある。まるで万能感を示すようにだ。原因は、エアジャックでも話していた彼女の出自だろう。そんな彼女が人を頼る事はほぼない。つまり、それだけ追い詰められているという訳だ。
「何かあったらまた言ってくれ」
「ごめんね」
「気にすんな。窃盗罪でしょっぴくだけだ」
甘さは弱点だ。それも今は敵だと分かっている人物に対しては特に。それに、武偵にとって金と女と毒は禁物だ。その1つに手を出しているのだから、武偵としては失格だろう。だが、それ以前に俺は男で、仮面ライダーで、正義の味方だ。困っている人間を見捨てるのはその流儀に反する。
「考えるのはやめた」
久々にエンジンに火が入った感覚だ。埃をかぶったエンジンが勢いよく燃えていくのが分かる。いきなりトップギアでエンジンはベタ踏み、ブレーキはどこかに置いてきた。
今なら
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