理子や
彼らから提示された言葉、イ・ウーという組織について。理子についての報告書には結果として記載は無かった。しかし、あの飛行機の中で理子もアリアも口にしていた事は確かだ。そうなれば、理子のいない今、アリアに聞くのが最適だろう。ということで、アリアに連絡しアポを取ったところ、翌日の早朝に会うこととなった。なんでも外せない日課があるらしくそこまで来いと言うのだ。
「で、来たは良いけどこんな所で何してるんだ?」
「チアの練習。アドシアードで出るのよ、他にやる事無いし」
呼び出されたのは男子寮から少し離れた場所、コンテナや看板などが立って周囲が囲まれていながら、ある程度広いスペースの取れた場所だ。確かに練習をするならうってつけの場所と言える。
「それで、話ってなんなのよ」
「イ・ウーについて。ドゥリンダナ──
「……そう」
最初は興味無さげにチアの練習に意識を向けていたが、イ・ウーの名を聞いてから動きが止まり、少し俯くように何かを考え始める。僅かに頷くと、アリアは顔を上げて俺の目を見てくる。その目は普段よりも真剣で、覚悟の決まった目だ。
「まぁ、アンタには話しておいて良いかもしれないわね。全くの無関係というわけじゃないし」
「と、言うと?少なくとも俺が知ってるのは理子のこととお前のお母さん──神崎かなえさんがこのイ・ウーという組織のせいで冤罪をかけられている事くらいだが」
一応デュランダルらしき人物、そしてハートと名乗ったロイミュード達もいるがアレらは知っていると言っても名前と自由自在な見た目だけ。名前すら本当に正しいかは分からない。そういう意味では理子の事はハイジャック事件を通じてよく知っているし、神崎かなえさんの事についても事件後にアリアから渡された内密な資料に記載されていた。
「そうね、エイジ自身はそれ以上何も知らないでしょうね」
「どういう意味だよ」
「日本にもイ・ウーの情報を掴んで追いかけていた警察官がいたわ。名前は──泊進ノ介、アンタのお父さんよ」
「……ッ!?」
ここでその名前が出てくるとは思わなかった。できれば聞きたくなかった名前だ。
泊進ノ介、俺の親父にして
「でも最近、彼との連絡が取れなくなったわ。それと入れ替わるようにアンタの元へ届いた特状課からの荷物。そして泊進ノ介はその特状課に在籍していた過去がある。果たして偶然かしら」
「だけど、ベルトさんは何も……」
「そうね。でも、彼が本当に全てを話していると思う?何か隠し事をしていても不思議じゃないでしょ。イ・ウーについてはまだしも、お父さんについては何か知っているかもしれないわ」
ベルトさんはバイラルコアが出現するまで姿を見せず、そして仮面ライダーの力が出自が同じだという事も聞かれるまで黙っていた。ベルトさんには少々秘密主義的な部分があるのは確かだ。ただ、理子の事を知らなかったり、バイラルコアの時も本当に驚いていた。多分だが、ベルトさん自身にも予想外の事が起きていていると見て良いだろう。だから下手に喋ることができない。そう考えるのが自然だ。
「それで、イ・ウーについてだったわね。まぁ何から話すのが良いのか分からないけど、奴らは犯罪集団よ。ママに冤罪をかけているだけじゃないわ。大量殺戮に破壊工作、それに盗み。全世界を暗躍する組織ってのが簡単な説明ね。詳しく話していたらどれだけ時間があっても足りないわ」
「日本でも?少なくともそんな話は聞いた事が無い」
「そうでしょうね。なんせ、国が情報を潰して回ってるもの。必要以上に噂が広まれば混乱は免れない。そうすれば相手の思う壺よ。それに奴らは足跡を残さないし、その罪を誰かに擦り付けていくの。日本にもママと同じような人が何人かいるわ」
アリアが言うことを整理していけば、上層部が握りつぶししている情報を追っていた父さんが消えたという事になる。そして父さんと入れ替わるようにやってきたベルトさん。そして、父さんとベルトさんのいた特状課という組織。どうやら謎は今にも切れてしまいそうなほど細い糸で だが、辛うじて繋がっているようだ。
今はまだ僅かだが辿っていけば父さんの事も、理子の事も自ずと分かってくるはずだ。まずは最も身近なベルトさんから聞くべきだろう。
「こんなもので良いかしら」
「あぁ、時間取らせたな。っと、それと1つ忘れてた。キンジは今日は風邪で休みだ」
「なんでよ」
「昨夜、
「……ふーん。まぁ、参考にさせてもらうわ。参考にね」
「はは、じゃあキンジの事を頼んだよ。俺は学校に行くから」
俺はトライドロンに乗り込んで後にする事にした。今日は朝起きてからベルトさんがいなかったので、1人でトライドロンに乗ってきた。ドライブピットにもいなかったから多分だがイリナさんの所だろう。放課後にでも聞きに行けば良い。別にベルトさんは逃げも隠れもしない。
△△△
放課後、イリナさんの所にも来ていなかったベルトさんを探すという名目でドライブをしているとアリアから電話がかかってきた。何やらキンジと色々あったらしく、珍しくブチ切れただのアリアとの直接のやり取りをさせられ、しまいには監視体制を変えると言い始める。そんないざこざに巻き込まれた俺は、怒り心頭のアリアがいるカフェへと訪れていた。
「で、監視体制を変えるってどうするんだ?少なくとも寮はあれ以上要塞化なんて出来ないぞ」
「ふん、そんなの分かってるわよ。だから追加で日中もレキに監視させる事にしたわ。だから
ふむ、確かにレキを読んだなら余程の事が無い限り問題は起こらないだろう。それにレキであれば、こちらの手が届きにくい学校内での活動も監視できる。……なら俺は要らないのでは?
「なぁ、俺って必要か?」
「そうね、普通なら必要無いわ」
「つまり普通じゃないと?」
そう言ってアリアが見せてきたのはどこかの監視カメラの映像だった。場所は武偵校内の一角、それと男子寮に仕掛けていたキンジの部屋の2箇所。日付はどちらも同じ日の同じ時間。
そして、そこに映っていたのは2人の白雪だった。1人は女子更衣室から、1人はキンジの部屋の掃除をしている所が映っている。こうなってくると、怪しいのは理子と同じ姿になっていたロイミュード、つまりイ・ウーだ。
更にこの日付は俺が偶然にも
「アタシはこの日、ピアノ線がロッカーに仕掛けられていて殺されそうになったわ。その直前、白雪とすれ違ってるの。ただ、向こうは知らんぷりだったけど」
「俺も、その日に
「こうなってくると、偶然じゃないって考えるべきよね。デュランダルが白雪を狙っていて、その護衛をするアタシとエイジが離れたタイミングでの仕掛けがあった」
「つまり、もう潜り込まれてるってわけか」
「そう考えるのが妥当でしょうね。とりあえず、アタシはバカキンジとは別の行動を取るわ。エイジ、アンタは
キンジを白雪に付けての囮作戦というわけだ。レキが見張っている事をキンジは知らされておらず、アリアはキンジと喧嘩別れを装う。そのタイミングで俺が離れて
「それと、
「……マジか」
「まぁ、まだ全てが終わったわけじゃないわ。白雪を守りきるわよ」
一杯どころか十杯ほど食わされていた事が判明したが、どうやら全て首の皮一枚で繋がっているようだった。まだ取り返しのつく範囲、手の届く範囲だ。
「それじゃあ、俺の悪あがきにひとっ走り付き合ってもらうぞ
死にかけです。2巻が終わればスラスラ進むんですけどね。とりあえず、予定としてはあと5話ほどかかる予定です。予定は未定