加速していく緋弾のアリア   作:あんじ

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第2話:彼らは何者なのか

遅めのHRも終わりお昼時。俺とキンジは2人きりになれる場所、即ち屋上の給水塔裏という日陰な場所に来ていた。目的は2人とも一致している。それは──

 

「キンジ、なんなんだあの小娘は?」

「神崎・H・アリア、ちびっ子の凄腕武偵だとよ。見ただろあのグライダーの技術と射撃。俺が見たあの腕前はガチにSランク級だった」

「まぁ、お前がそこまで言うんだからそうなんだろ。にしても俺らが情報に疎いの痛手だな。俺も少し前までてんやわんやだったから仕方ないが」

 

──俺達の目的は神崎・H・アリアについての情報共有だった。

キンジの戦妹(アミカ)である諜報科(レザド)の風魔陽菜からの情報では強襲科(アサルト)のSランクで、各地を転々としてはいたみたいだが中心地はロンドンで、徒手格闘も得意だという。そして俺らの目にした二丁拳銃、更には二刀流が得意とのこと。さらには、つい先日そんな凄い奴から戦妹(アミカ)契約を勝ち取った1年がいるなんて話も出てきた。

俺たち2人がここに来るまでに聞いた話しではぼっち、凄腕、やべぇ奴って事くらいの尖ったのしか聞こえてこなかった。こんな情報しか手に入れられないとはお互いに何という孤高の存在なのだろうか。悲しくなってくるな。

 

「それにしてもな、兄弟」

「あぁ、全くだ」

 

2人ともうなだれる様に下を向き、ピッタリのタイミングで同じ言葉を発した。

 

「「俺たちEランクなんて調べてどうすんだ?」」

 

 

△△△

 

時間は少し過ぎて放課後になり、注目の的である神崎も足早に教室を出てどこかに行ってしまった。残された情報に飢えたクラスメイト達は仕方なく散開していき、その隙を突いてキンジは変態的な動きで抜け出して行った。

他の生徒達も日々のトレーニングに行ったり、クエストに行ったりと徐々に散らばっていく。そんな中、関係者でいながら部外者の俺は朝に頼んだ鑑定の結果を聞きに鑑識科(レピア)まで来ていた。

 

「なぁ、ベルトさん。今から会いに行く人って誰なんだ?と言うかベルトさんの事知ってるのか?」

『今から会いに行くのはこのシフトカー達をメンテナンスしていくれているから勿論私の事も知っている』

「ふーん、そんな物好きな人もいるんだな」

 

そう言っていると鑑識科の建物の1階最果てにある研究室のドアを叩く。するとドタバタと足音を立てて勢いよくドアを開けた。

 

「いやぁ、待ってたよ!君が泊くんだね。言わなくても見れば分かるよ!」

「……なぁベルトさん、この人やけにテンション高くないか?」

『……これが彼女のデフォルトだ』

 

ベルトさんの言った通り出てきたのは女性で、髪は長く、体つきも綺麗な白衣を着た変人が出てきたのだ。

よく見れば胸元にカタカナで「イリナ」と書かれたネームプレートを付けていた。

 

「私はイリナ。鑑識科(レピア)装備科(アムド)の天才研究者さ!それでだ。それでクリm…んんッ!ベルトさん、出来損ない(こんなもの)を一体どこから見つけてきたんだ?」

『詳しい話は中で話そう』

「OK!じゃ、入ってよ(とまり) 英志(えいじ)くん」

 

 

△△△

 

 

『これは今朝、エイジの友人である遠山キンジが例の"武偵殺し"に襲われた時に見つけたものだ』

 

そう言いながらベルトさんは変な機械に設置され、そこからモニターに今朝の現場写真を映し出していた。

 

「そこにバイラルコアがあったって事は彼らを本気で殺しに来てたという事?」

『いや、それはないだろう。私たちが駆けつけるのを見越していた様に思えた』

「なんだ、ベルトさんは"武偵殺し"は俺らが来るのを知ってたってのか?」

『その可能性があるという事だ。だが一番脅威なのはここではない』

 

そして映し出したのは"バイラルコア"と呼ばれる悪趣味なミニカーの様な出で立ちをした物だった。ただし、画面に映し出された画像に付けられた名前は"バイラルコア・C(カスタム)"とされていた。

だがカスタムと言われても俺はバイラルコアに関して一切の情報を持っていない。だからカスタムと言われても訳が分からない。

まあ、それに散々誤魔化されてここまできたんだ。そろそろ聞いても良い頃合だろう。

 

「なあ、ベルトさん、イリナさん。そのバイラルコアってなんなんだ?」

 

その話題に触れるとベルトさんは少し困った顔をして話すことを躊躇うようになる。ただ、今回はイリナさんがいた。彼女は躊躇っているベルトさんを横目にバイラルコアについて語り始めた。

 

「英志くんは20年ほど前のグローバルフリーズというのを知っているかな?あれの原因だった機械生命体、ロイミュードに関する物だ」

「あの今世紀最悪と言われた事件に……」

 

ここまで話されるとベルトさんも重い腰を上げて少しずつだが話してくれるようになった。

 

「そのロイミュード全108体の体にはコアと呼ばれるものがある。そこにこのバイラルコアを取り込めば……ロイミュードの完成だ」

『しかしそれも私たち仮面ライダーがその全てを倒し、ロイミュードを含めた全ての研究情報を封印したはずだった』

 

そこまでいけば聞きに徹していた俺にも想像ができる。世の中には王の墓すら盗掘する様な奴らがいるのだ。研究を盗む奴がいてもおかしくはない。

 

「ただね、元となるバイラルコアには重加速現象──つまりは"どんより"を起こす機能は付いてないの。という事はだよ、改造した誰かがいる」

『しかし、こんな事が出来るのは開発者である蛮野天十郎かあるいは──』

 

一気に2人が暗い顔になる。まぁもう1人いるがその可能性は限りなく低いということだろう。つまりはここが現状で割れている情報であり、捜査の壁でもあるというわけだ。

これ以上は出てこないだろうと思われるので、俺は別の質問をぶつけることにする。

 

「それでさ、思ったんだけどこのシフトカー?ってやつさバイラルコアに似てるよな。これもその蛮野天十郎が作ったってのか?」

『……いや、それは』

「それはクリム・スタインベルト博士が作った。元々はスタインベルト博士の研究成果だったものなんだ。それを蛮野天十郎に提供した所、まあ物の見事に悪用されたわけ」

『……、』

「なるほど。でも顔を出さないって事はこの2人は既に死んでるんだろ?」

『あぁ、確実に蛮野天十郎は死んでいる。何せ私が手を下したのだからな。私達仮面ライダーが』

 

さっきから何度か話題にあがる仮面ライダーという単語。自分の記憶にある範囲では今は役所としてはあまり大きな力のない衛生省だったかどこかの病院の小児科医だったかにいると聞いたことがある。後はお寺の跡継ぎにいるとかなんとか。テレビでは今までこんなことありましたみたいな番組特番で見る程度しか知らない。

 

「その、済まない。両親がやけに仮面ライダーってから俺を遠ざけててな。疑問なんだが仮面ライダーってなんなんだ?」

『超人さ。正義……いや、市民のために仇なす者を倒す戦士、それが仮面ライダーだ』

「そそ。そして、このベルトさんもその仮面ライダーになる為の1つってわけさ」

 

つまりベルトさんは仮面ライダーになる為の道具ということになる。そしてその現所有者は俺になるのだろう。車に勝手に付いていたし、その車も俺宛に送られてきた物だ。という事はだ……

 

「待てよ!って事は俺がその仮面ライダーになるって事か!?」

『いや、君はまだ候補の段階だ。何せ変身してないだろう?』

「まあ、そうだけど。でもよ、そんな急にお前は超人で仮面ライダーになる素質があるって言われても……」

『分かっている。ただ、バイラルコアがすぐ近くまで来ている。その時(けつだん)は近いと思ってくれたまえ』

 

今までの中で最も深刻に聞こえる声で話してきた、という事は本当にすぐ近くまでロイミュードというのが迫ってきているのだろう。

バイラルコアやロイミュードについての話が終わり、時間的にもそろそろ陽が傾き始めたので帰ることになった。止めてあったトライドロンに乗り込み、出ようとするとイリナさんが何かを先程いた部屋から叫んでいた。

 

「シフトカー外しちゃダメだからね!それないと"どんより"に捕まってロイミュードにやられちゃうから!私もっとロイミュードについて研究したいから頼むよ!」

 

実に研究者らしい一言だった。本当に彼女はこの学校の生徒なのだろうか?こんな偏差値低めのこの高校の。

 

 

 

△△△

 

 

陽もかなり傾き、コンビニで少し買い物をして家へと帰る。そのコンビニの近くに学校の男子寮で、俺とキンジの2人だけで暮らしている部屋がある。

いつも通りに寮の目の前にトライドロンを駐車し、部屋のドアを開ける。廊下を抜ければ、向かいの窓からは夕陽が差し込み、部屋全体が朱色に染まっていた。

そして、目の前には夕陽をバックに立つ少女とソファに深く座る少年が向かい合っている。

 

「──私の奴隷になりなさい」

 

唐突に、部屋に変態発言がこだました。

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