加速していく緋弾のアリア   作:あんじ

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第5話:ヒーローとはなんなのか

変身した俺の身体は不思議にも変化はなく、視界は良好でなんなら耐久値や周りの必要な情報が可視化されており普段よりも快適だ。

そんな俺が相対するのはルノーのオープンカーにUZIが付いたヘンテコと、あと数分もしないうちに爆発する爆弾だ。

幸いなことにここは橋で、両外は東京湾で現在は漁船の影が見えないこと。なので、爆弾は被害を抑えるために東京湾へぶん投げれば良い。

 

「さて、武器とかあったりするのか?」

『済まないエイジ。ある事にはあるのだか、まだ君用にアジャスト出来ていない』

「了解、つまりは(これ)が武器ってことね。ま、正直こっちの方が得意だ」

 

こちらは準備万端とファイティングポーズを取るが、当の武偵殺しはこちらの調査とでも言わんばかりに動かずUZIの銃口をこちらに向けているだけだ。

勝利条件は簡単で、先にバスを追って並走していたルノーと途中俺達と並走していたルノーの2台を沈めること。両者の武装であるUZIをへし折るのと、この重加速(どんより)を起こしている機械的な装置を破壊することでとりあえずは終わりと言えるだろう。

問題はどうやって弾数が果てしないUZIの弾幕を抜けるかだ。いくら防弾制服にこんなプロテクターを着ているとは言え当たったらひとたまりもない。

 

『Don'tworry.今の君は超人(仮面ライダー)だ。それくらい躱せるさ』

「マジ?」

『そんなに気になるなら詳細スペックを表示しよう』

 

なんとビックリ、表示されたのはまさに超人とでも言うべきスペックだ。確かにこれなら並の銃弾程度なら当たらないし、当たっても数発なら耐えることができる。

この数字を信用することにした俺は、まずはバス横のルノーを狙うことにする。バスの下にある爆弾を処理する前に重加速を事故でも消してしまったら終わりだ。

150mほど離れているルノーに対して近づこうと走ると、それに反応して2台のUZIから弾が発砲されるが今の俺にはある程度ゆっくりと見え、弾道が予測することが出来た。

上下左右と縦横無尽に飛び交う弾丸を避けてルノーに接近する。いくら車と言えどたかが数秒で動き出すことは出来ず、更には3車線の端で小回りを利かすことも出来ず簡単に接近出来た。まさかと言うような反応で少し動いたがその前にUZIを潰し、パンチでボンネットの外からエンジンをも潰す。こうすれば車は動かない。

昔、授業中に蘭豹が「犯人(ホシ)が車で逃走しそうになったら殴ってなんか潰せ。今の車は精密機械だからそうすれば止まる」なんて言ってて、ゴリラなお前以外には無理だなんて思っていたがまさかここで役に立つとは思わなかった。

 

「まずは1台」

『OK.キンジ達(あちら)も何とか処置が終わり車内に避難したようだ。存分に力を振るえるぞ』

 

気を取り直し、2台目のルノーの方を見ると先程のを見て学習したとでも言わんばかりにエンジンを吹かしタイヤを空転させる。更には追加でUZIも増やし計3本用意された。というか、仮面ライダー(おれ)を想定して用意しておいたという感じだ。

だが、なんのその。いくら速くともここは道幅は限られ、逆走は出来ない。それなら俺の速度でも追いつける。

俺が足に力を入れたのと同時に向こうの3本全てのUZIから撃ってくる。

それに対して俺は反復横跳びの要領で右往左往としながら徐々に前に進む。ジグザグと空と同じ雷模様を描いて進んでいく。

縮まっていく度に更なる集中力を要求される。近ければ近いほど大きく避ける訳にはいかず、幅が短くなればもちろん狙いも確かなものになる。

あと2m所まで来るが、ここで止まらざるを得なくなる。これ以上近づくと今の速度では確実に戦闘不能レベルで弾が当たる。

何度かトライしてみるが、数メートル手前で確実に弾幕を躱せない。

 

「どうすれば近づける?悠長に戦ってる時間は無い。着々と、極わずかながら進んでるんだ。早くしないと」

『落ち着きたまえ、エイジ』

「この状況で落ち着いてられるか!」

『熱くなるのは構わないが、未だこのドライブシステムの全てを話た訳ではなかろう』

「……悪い。で、そう言うからにはなんかあるんだろうな、ベルトさん」

『off course.シフトレバーを2度3度倒したまえ。一時的だが、スペックが上がる』

 

そう言われ、1度安全な場所まで下がると何度かシフトレバーを倒してみる。すると胸部にあるタイヤが倒す度に回転数があがり、表示されるスペックが上昇していくのが確認できた。

 

『SP,SP,SP,SPEED!』

「おぉ、これならいけるのか!?」

『勿論だとも。さぁ、時間が無い、さっさと終わりにしてしまおう』

 

再びルノーに近づくため走り始めるが、能力向上をとても実感出来た。なぜならUZIがこちらの動きを捕捉して動き出す前に接近することができたからだ。俺もびっくりしているが、同じくらい向こうもびっくりしているだろう。

俺は1台目と同じく、タイヤが周り動き出す前にボンネットを殴って止める。動けないことに気付き、最後の抵抗とばかりに一斉掃射をしようとするが、マズルからフラッシュが見える前に黙らせて、UZIから弾を抜いて叩き折る。

一応安全は確保できたが、念のために謎の装置だけ奪って別の場所に退けておく。

 

「さてと。次は本命の爆弾か」

『ふむ、見るからにバスどころか橋ごと折る気な量の爆薬だ。どうやって解除する?刺激を加えれば途端に爆発してしまう』

「爆弾はバスの下だ。だから高速で持ち上げて、海に投げる」

『本気で言っているのか?いくら仮面ライダーでもそれは無理だ』

 

正直、もう時間が無い。いくら想定より早くルノーを対処できたからと言っても元から時間が無いのだ。

そんな俺達に吉報と言わんばかりに、通信機器越しでは1人で喋っているように聞こえている俺に向けキンジから連絡が来る。

 

〈誰と喋ってるか知らないがヘリにレキがいる。あいつなら爆弾だけを撃ち抜いて落とせるはずだ〉

「そうか、狙撃科Sランクのレキならいける!けど、ヘリは重加速に巻き込まれて……」

『ふむ、そうか。それが可能ならば安全な策を取ろう。なに、重加速なら任せたまえ』

 

通信を聞いていたベルトさんはニッコリと笑うと、離れていたトライドロンの助手席から軽快なクラクションを鳴らして道を作り、ヘリへ向かうシフトカーがあった。

 

『彼はマッシブモンスター。少しヤンチャなタイプだが悪いやつじゃない』

「ふーん、そんなのもいるんだな。……っと、なるほど」

〈どうしたんだ、本当に。それとも俺の通信不良か?〉

「いや、何でもない。後で説明するよ」

 

空中に止まるヘリへ難なく届くと、マッシブモンスターがレキの肩に乗ったところでレキが動き始めた。

 

「話を聞いていたと思うが、あのバスの下にある爆弾を撃ち抜いて海に落として欲しい。できるか?」

〈できます。しかし角度が足りません〉

「分かった、角度は俺がなんとかしよう」

 

俺は返事をするとバスの方へ向かい、バスの後輪側のナンバープレート下当たりを掴む。ポーズは力士の四股踏みだ。

ここを掴んで力を入れたことで、キンジもベルトさんも俺の意図に気付く。

 

〈おい、無茶だ!いくらそんなヒーローみたいな見た目をしてるからって乗客とバスの重さを考えろ!〉

『そうだとも!確かにスペック上はいけるかもしれない。しかし、このスペックは前任者を元に出した推定スペックだ。まだ完全にアジャストできていない君ではどうなるか分からないぞ!』

 

そんな弱気な返事をしてくる2人を鼻で笑ってやる。悪いが悪を倒すのもヒーローだが、無辜の市民を救うのもまたヒーローの役目だ。そして俺は今ヒーローに違いない。だったら、この場面で自己犠牲を厭わず突き進むのが俺の中のヒーローだ。

 

「悪いな、止まる気は無いぜ。レキ、3カウントでいく。ゼロで撃て」

 

返事はないが、無反応は肯定って訳だ。既に空中で停止するヘリで愛銃のドラグノフを構える姿が見える。外したら俺達もみんな一緒にドカンだ。

だがレキが目標を外したという話を聞いたことがない。つまりは今まで必中であったということ。俺はそれを信用するしかない。

 

〈私は一発の銃弾。銃弾は人の心を持たない。故に何も考えない。ただ目的に向かって飛ぶだけ。〉

「3・2・1・0!」

 

レキが狙撃する時に放つ詠唱の後、引き金が絞られる。ドゥンという重い音が響き、静寂の中に薬莢の落ちる音がする。弾丸は真っ直ぐ飛び、爆弾の接着部に当たった所で時間の流れが重加速に引っ張られ遅くなる。

 

「さて、ベルトさん急いでくれよ。俺もいつまでもは持たないからな」

『分かっている。全く無茶をする所までそっくりとは』

 

ベルトさん曰く、重加速発生装置はセキュリティ的にも物理耐久度的にも高く無いらしくシフトカーの突進で重加速のコアを破壊できるらしい。

ベルトさんの指示があったのか、俺の腰にあるベルトにいたクリアオレンジのシフトカー、マックスフレアが炎を纏いトライドロン横にあった装置に突っ込むとコアは爆発し、同時に時間も正常に動きだす。

数秒の後、弾丸は接着部を穿っち、地面に2度跳ね返ると海側に飛ばす用に爆弾を後押しして地面に落下した。

当の爆弾はラグがあった後に、無事東京湾内で爆発した。

 

こうして、俺の初めての変身である事件は一段落のなる。

 

 

 

 

 

──そのはずだった




前半バトルパート終わり

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