このすば世界の花見事情を妄想。いろいろと勝手な設定です
秋葉原で花見の名を冠したイベントやってるんですね。なんてこった
「花見がしたい」
季節は春。雪はすっかり消え、朝方寒いことはあるが暖かい日差しが降り注いでいる。
草木も青さを取り戻してきており、こうなってくると日本人としては桜の下で花見がしたくなる。
「花見? いいわねぇお花見。柔らかい日差し、さわやかな風、舞い散る花びら、美味しいお酒。ねえカズマ、場所と日取りは決めているの? 規模はどれくらい? 盛り上げは私の宴会芸スキルに任せておきなさい!」
気が早すぎるが乗り気で何よりだ。さすがは宴会芸の神様。
他の二人は……?
「カズマ、アクア、二人は通じているようだが、HANAMIとはなんだ?」
「言葉そのまま受け取るのであればお花を見ることだと思うのですが、それだけなら街の花壇にももうすぐ咲き始めますよね? それを見るのですか?」
なんてこった。この世界には花見の文化は無いのか。これまで送り込まれた日本人はいったい何をしてるんだ。
春は花見、夏は蛍や祭り、秋は月見、冬は雪見と何かにつけて宴会になるのが日本人だろうが!
「えっと、咲き誇る桜の花を愛でながら宴会をするのが花見なんだが……」
そこまで言ってふと気づく。この世界に桜はあるのか? 以前さくらんぼを食べた記憶があるのであると思うのだが……
「桜……だと?」
「確かに花は綺麗ですけど……」
二人の反応からするとあるにはあるらしい。しかし妙な反応だ。
「アクア、この世界の桜ってどんな植物なんだ?」
「あー、カズマさんたら知らないの? 桜っていうのは死体に宿る寄生植物よ。春に咲き、秋に実を付け種が落ちる。その種は冬の間に生き物の死体に根付いて、春になると一気に成長しまた花を咲かせる。そして苗床が高レベルなほど美しい花を咲かせるわ」
「その性質上墓地にも多く生える。あるいは生者の生き血を吸ってさらに鮮やかな色になるとも言う」
「いずれにしても縁起のいいものではありません。それを見ながら宴会……ですか? ぞっとしませんね」
はぁ? なんてことだ日本の春の風物詩が……桜の下の死体なんておとぎ話じゃなかったのか?
しかし俺の花見欲はもう止まらない。他にもいい花がある!
「なるほど。さすがにそれは気味が悪いな」
俺の故郷では違ったんだ。そんな風にごまかしながら質問を重ねる。梅や桃、藤だっていい花だ。季節は少しずれるがな。
「カズマ正気ですか? 梅はやはり有名な寄生植物、それも自ら襲う食人植物ですよ? いい香りにつられて近付いた生き物を根で絡めとり、根元に埋めて養分とします。『埋める』が転じて『梅』になったといいます」
「桃も同様だ。近付いた生き物を枝と樹液で取り込み消化する。初夏にはそれが実となり、実が割れると中から犬型、鳥型、猿型の小型モンスターにも似た種が飛び出す。これを題材とした『
「モンスターじゃねーかっ! この世界はどこまでふざければ気が済むんだ! つーかさくらんぼもピーチもウメボシも食べてるよな? あれはなんなんだ?!」
そんな恐ろしい植物(?)から収穫なんてできないだろう。しかもその話が本当なら桃なんて死体そのものじゃないか。
「え゛? カズマは今挙げた食べ物をあれらの実だと思っていたのですか?」
お願いします、ドン引かないでください。この世界は俺の故郷とは文化も生態系も常識も全く違うんです。
「まあいいですが。ちなみにさくらんぼとピーチは魚の卵です。ウメボシはああいう豆ですよ」
へーそうですか。これこそ正に豆知識。
ってなるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
驚愕している俺の肩が叩かれる。振り返ると「受け入れなさい」と眼で語り掛ける、女神スマイルのアクアがいた。
「ああそれと、藤は別の意味で見るのが困難だな。藤は不死に通じる。ある種のポーションの原料にもなるから法で規制されているんだ。見るとなると王都の植物園か……一部の貴族が所有しているな。不二と読み替えて出世や成り上がりのゲンを担いでる連中がいる」
「まじか! ちなみにダスティネスのお屋敷には」
「無いぞ。当家は誠実をモットーとしている。そんな俗にまみれた花は育てていない」
「ちっ、使えねぇ」
「んにゅぅっっっ」
当然ながら植物園で宴会ができるわけでなし。いやひょっとしたらアイリスに頼めば……
「……おいダクネス、なんだその目は? 俺が何をしたというんだ」
「アイリス様の手を煩わせるなよ? 本当に厳格に管理されているものなんだ。王族が一声発したところで簡単にどうこうなるものではないぞ」
へいへーい。俺だってそれくらいは弁えている。何より花見なんだ。貴族王族が関わり始めたら堅苦しくなっていけない。
「なあ、なんかいい花がないのか? 俺が知らないものでも構わないよ。要するに花を口実に宴会したいだけだし」
「そう言われましても……あ、そういえばそろそろアレが見ごろじゃないですか?」
「アレってアレ? そうねえ。アレならカズマは見たことないと思うし、いいんじゃないかしら」
「私も話に入れてくれ。アレとはなんだ? ……ほう、それか。話には聞いているが実物を見たことは無いな」
「それならちょうどいいじゃない。アレで決まりね。この辺りに群生地ってあったかしらね」
「気候的には問題ないと思います。ちょっと調べてしましょう」
女性3人が盛り上がっているが俺は完全に蚊帳の外だ。
話に混ざろうにも何の話か分からない。そして教えてもくれない。
「たまには私たち提供のサプライズを受け取っときなさい」
そういってウインクするアクアに多大な不安と、今回はそれに負けない期待も感じていた。
サプライズの名のもとに爆裂散歩にも付き合わず、当然クエストにも出ずに屋敷でゴロゴロしていると進展があった。目当ての花の群生地が見つかり、しかもちょうど見頃らしい。
慌てて酒や食材など用意し、翌朝早くから弁当作り。とうとう花見ができるってわけだ!
メンツは俺たち4人だけ。大勢のほうが楽しいだろうと提案したが、あまり大人数だと警戒させてしまうとのこと。花を見るのに何が警戒するのかわからんが。
「忘れ物はないかー?」
酒、ノンアルコール、弁当、コンロ、鍋、油、手網……手網?
何に使うんだろう。川縁とのことだし魚でも採るんだろうか。
「ふふーん、何が起きるか全く想像がつかないようね! やがて目の前に広がる幻想的な風景に感涙を流すといいわ。そして自然とこの女神アクアへの感謝が溢れることでしょう!」
「ああ、私も楽しみだ。幼いころ絵本で見た光景をこの目で見れるかと思うと!」
若干の不安を覚えるテンションの高さ。ダクネスが悶えることなく目をキラキラさせているから変態的なことではないと思うが……。
「そんなに警戒しないでください。美しさは私が保証します」
比較的まともなめぐみんが言うならまあ大丈夫だろう。
「くっくっく、アレを相手にするのは久しぶりです。目指せ大漁っ……」
なんかよくわからんことを言ってるが気にしてはいけない。何はともあれ……
「出ぱぁーーーーーーーーーーーーーーつっ!」
花見が俺を待っている!
今日は本当にいい天気だ。
雲一つない晴天。日差しは温かく風もない。
横を流れる川から時折水音が聞こえる。魚が跳ねているんだろう。
それだけで満足しそうな道を小一時間。目的の場所が見えてきた。
白い花の咲いた木がそこかしこに生えていた。
「おおおおおお! これがアレか! 聞きしに勝る美しさだな……早く! 早くもっと近くへ!」
「落ち着きなさいなダクネス。焦る必要はないわ。さてさて、さっきから黙ってしまっているカズマさん。感想はどう?」
静止も聞かずダクネスは花の近くへ駆け出した。今は杖の代わりに手網を持っためぐみんもそれについていく。
眼前には花を満開させた木が広がっている。桜とは風情が違うが、また違った美しさがある。
ゆっくりと近付いていくと、辺りにはスイカのような甘い香りが漂っていることに気づいた。
枝いっぱいに花を付けた木々は重そうにしなり、花々は風もないのにざわめいている。
ん? ざわめいてる?
「なあアクア、なんで風もないのにあの花は動いてるんだ?」
「アレが動くのは当然じゃない」
いや当然じゃ……まあいいか。このおかしな世界でこれぐらいで驚くのもばかばかしい。
先行したダクネスとめぐみんはレジャーシートを引いて荷解きも終わり準備万端のようだ。早く来いとばかりに手を振っている。
アクアに急かされ木陰にたどり着いた俺の目に映ったのは――
「……魚?」
白い花びらに見えていたのは白い魚だった。ひとつの花?は5枚の花びら、ではなく数匹がまとまった5つの束でできている。一斉にびちびちと動くと、遠くから見ればざわめいて見えるだろう。
「……なにこれ?」
「これぞこの季節の風物詩よ! 春になると白い花が咲き、やがて花びらが白魚に成長するわ。まさに今の状態ね」
そうだった。このくそったれな世界はスイカが泳ぎキャベツは空を飛び、サンマは畑に生えている。ここで出てくるものがまた変なものだなんて予想しておくべきだったんだ。
あー、警戒するってのはひょっとしてつぼみに隠れたりするのかな。
「それでねそれでね」
「よーしわかった。もういいぞー」
「ちょっと最後まで聞きなさいよー!」
まあ少しは驚いたが今更だ。注視しなければ花に見えないこともない。花と思えば綺麗なものだ。それに、こんな気持ちのいい日にせっかく出てきたんだから楽しまないと勿体ない!
「アクア、その先はまだいいでしょう。お弁当の準備もできましたし、始めましょう」
「もう少しかかるのだろう? 今日は実家からいい酒も持ってきた。ゆっくり楽しもうじゃないか」
それもそうね。さらっと喚きやんだ駄女神はいそいそとグラスを準備し、声高に宣言した。
「この素晴らしいお花見に祝福を! 今日はじゃんっじゃん飲むわよー! かんぱーい」
飲み始めてしまえばいつも通りだ。
めぐみんは自分にも飲ませろと駄々をこね、アクアが唐突に宴会芸を披露する。そのタネを暴こうと俺とダクネスが奮闘するがさっぱりわからず、小さな箱から出てきた巨大なネロイドにダクネスが巻き込まれ嬌声を上げる。
アクアをしばき倒して、爆裂魔法の詠唱を始めるめぐみんを止めて、何故か俺とダクネスの勝負が始まり、口をはさんでくるアクアを泣かし、全員でそれを慰める。
もう本当にいつも通りの宴会。いつもよりかは少しテンション高めか? これこそが花見ってもんだよな。
そう、何を隠そうこの俺は花見なんてものはしたことが無い。そんな暇があればインしてひたすらクエストだった。ゲーム内ではそれっぽいこともしてたけどな。
だから、ちょっと夢だったんだ。
夢がかなって飲みすぎたかな? なんか魚が空を飛んでる様に見える。
「来ましたね、この
「おおっ! 始まるのか? とうとう始まるのか?!」
何がだ!
「ふっふっふ、その時が来たようだから説明してあげるわ」
お願いします!
「花が咲き白魚になるところまでは話したわね。成長がさらに進むと……見なさい。あの一角から色が変わってきているのがわかる?」
見ると確かに色が違う。さっきまで白一色だったのが緑がかっているし、一匹一匹が少し大きくなった?
「時期が来ると白魚が一斉に脱皮を始めるの。そして木を離れて生活するようになる。読み通りね、刮目しなさいカズマ! これこそが真の風物詩、アユの遡上よ!」
その声に合わせたかのように一斉に白い花びらが散る。違ぇっ、これ脱皮した皮か! そして頭上から今日一番のざわめきが響き、花びら、いや魚が川に飛び込み始めた。
ダクネスは感動して子供の様にはしゃぎ、子供のほうは目を真っ赤に光らせて手網を魚の流れに突っ込んでいる。
「ふはははははは! 大漁です! これはかつてない大漁ですよ! 見てくださいカズマ、これで当分おかずには困りません!」
「めぐみんでかしたわ! さあカズマ、ここにお鍋一式があるわ。あなたには女神に新鮮なネタでてんぷらを作る栄誉を与えましょう!」
「ああ、モンスターの攻撃とは違うこのこそばゆさ。新たな感覚に目覚めそう……ああ、服の中に入った! んんっ、これはこれで、いやちょっと待て下着の中はっ、そこはぁぁぁぁぁぁ」
うん、なんだか想像以上の出来事。魚が木から川に遡上ってなんだよ綺麗だけど。網とコンロそのために持ってきたのかよ。そこの変態はしゃいでるだけかと思ったら通常運転じゃん。もうどこから突っ込めばいいかわかんねぇよぉぉぉぉぉぉ!!!
「ほい、揚がったぞー」
もう受け入れることにした。しかしこの魚……流線型のボディに緑がかったウロコ、胸には金色の模様がある。これ……鮎か。そういえばさっきアクアがアユって言ってたな。
採れたての鮎でてんぷら。旨いに決まっている。
「んん~最高! お酒がさらに進むわね」
「今年のアユは量もさることながらなかなかの強敵でしたね。網が破られるかと思いました」
「私はもっと大事なものが破られるところだった……ん、これは旨い。実家で食べることもあるが、香りが全然違うな」
「ああ! 二人ばかりずるいです。私にも揚げたてをください」
遡上はいったん落ち着いたようで。頭上の花は大分数を減らしたものの、まだ見応えを持っている。一度に全部が遡上するのではなく、数日おきに分かれて何度か起きるらしい。
ちなみに白いうちに摘んでみたが柔らかすぎて潰れてしまった。花のままかじっても青臭くおいしくない。かといって川に入られると動きが早すぎて捕まえられないそうだ。このタイミングで採るしかないんだな。
採れたてのアユを食べるとか、日本にいたらなかっただろうなぁ……
このどうしようもなくふざけた世界は頭がおかしくなりそうなことばかりだが、もし日本に生き続けていてもこんなに充実した日々は送れなかっただろう。
そしてこの日々にはそこのろくでもない仲間たちが不可欠なわけで、こっそり感謝してみたりもする。
「って人が綺麗にまとめようとしているのに、あれだけあったアユはどこにいった? 俺まだ一口も食べてないんだけど! 三人ともリスみたいな口してないで答えろっ! ふざけんななんで食べかけを差し出すんだ三馬鹿がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
やっぱり日本に帰りたい!
桜なんかやアユの設定は完全にでっち上げです。遡上とか言ってるけど現実とは別物ですし
え、ダクネス? このSSはKENZENですよ
めぐみんが紅魔の里にいたころは、やっぱり必死でバケツ一杯捕獲して、姉ちゃんすっごーい! って言われてたんだと思います
こめっこも動かせるようになりたいなぁ
長野の春はまだ遠そうです。桜の下で酒飲みたいけど運転できなくなるのが問題