母と僕と刀剣男士   作:バヤシyuan

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始まり

部屋の四隅に貼った札により浄化された離れが

2人の拠点となる

昨夜この本丸へとやって来た2人、

(カスミ)(シュウ)はとりあえずの住処に

使われていなかったのか、比較的綺麗だった離れを選んだ

 

「おはようございます霞殿!」

「んー、はー……。おはよう、柊…とこんのすけ」

 

枕元に胡座をかき佇んでた柊と、そこに座る喋る狐

彼、は政府が用意した彼ら用の本丸ナビゲーター、こんのすけである。

その中でも彼は亜種、黒色の毛並みをした

「はよ」

「柊、今日は早起きね。……もしかして寝てないの?」

 

じとりと睨む視線から顔を逸らす。どうやら図星だったようだ

 

「ちゃんと寝ないと」

「わかってる。それより」

 

開け放った障子から見えた母屋は昨日とは比べ物にならないほど綺麗になっており

血で傷んでいた柱や襖は新品同様に

荒れ果てた庭も美しい庭園の姿を取り戻した

 

「俺らの為に、こんのすけが上に取り持ったんだってー

さすがサポート役」

「そうなの?ありがとう!」

「い、いえ!当然でございます!」

 

 

微笑みかける霞に気付かれぬよう、こんのすけはちらりと柊を見上げた。さっき彼が言ったことは間違っていない、ただひとつ除いて、だが。

確かに上に頼んだのはこんのすけだが

そう(初期化するように)するように頼んだ(脅した)のはこの男なのだ。

こんなとこに飛ばされたのだ、このぐらいやって貰うのが当たり前だ。だろ?と笑いながら詰め寄られたのを思い出したこんのすけは顔を青くさせ、ただぎこちない笑みを返すことしかなかった。

 

 

 

「さて、腹も膨れたことですし」

行きますか、と腰を上げた霞に続き、柊は刀を手に持って続いた

 

離れから主屋へと続く廊下に出る。

途端全身に突き刺さる強い殺気。どうやら人間が来たということは知れ渡っているらしい

すぐには襲ってこないということに関しては良い傾向

だとは思うが、大変なのはここからである

 

そして昨夜訪れた、一等気配と殺気が溢れる部屋

大広間へと辿り着いた

 

「……油断はすんなよ」

「大丈夫よ。開けて」

 

 

「そ、それは私めが……。皆様、

こんのすけでございます。入っても宜しいですか」

 

 

 

 

 

 

「此処に審神者は必要ないと申したはずぞ、狐」

 

 

「……ですが」

「…………焦れってえよ、どけ」

「審神者殿!!!?」

 

 

こんのすけを押し退け、襖を開くと同時に刀を抜いた

 

 

 

 

キィィンッ

 

刀と刀が擦れ合い、顔前で火花が散り、

その奥の暗い瞳と目が合った。

 

重い上段からの一撃を受け止められたことに驚いたのか、微かに動揺した相手を突き返すし、距離を取らせた

広間の中は刀剣男士がこちらを睨みつけていた

 

怯える短刀を脇差や打刀といった者達が庇い、

体の大きい者達はいつ動けてもいいようにその本体に手をかけている

いずれも今にも折れそうな、そして

 

「……かなり進行しているな」

 

昨夜のあの男と同様

元の彼らの姿と比べて、おかしいとしか言いようの無い

異形のものへとカタチを変えていた

 

 

その本人は見当たらないが今はいいだろう。

2人はこんのすけを先頭に敷居をまたぎ

彼らと向き合うように腰を落ち着けた

 

「初めまして、刀剣男士の皆様。

私は霞と申します。そして彼が

この度、当本丸の引き継ぎとして参りました、」

「…柊だ。本日よりこの本丸の審神者の任を引き継ぎ

俺が此処の統括を任されることになっている。それに関して____」

 

「審神者などいらぬと言ったであろう!!!」

 

 

先程柊と刀を交えた男が再度構え、2人に怒鳴りつけた

白い毛は逆立ち、目は血走り、今にも襲いかからんとばかりに殺気立っている。それは、他の刀剣男士も同様である。

 

「まだ話は終わっていねぇ、それに文句を言うな

お前らがなんと言おうと、俺らでなくとも

この本丸には新しい審神者がやってくる。その事実は変わらねぇ」

 

 

わかってんだろ。と続いた言葉に

彼らも理解しているのか、下を向き始めるものが出始めた。

 

「……、ですが、そう悲観的になることは無いと思いますよ。提案があります。受け入れるかどうかは貴方達次第ですが」

 

 

「……提案?」

 

「審神者として俺を受け入れる代わり

俺達からお前らへの干渉はしない

勿論仕事はしてもらうがな。

 

もし約束を破った場合、俺の処遇の一切をお前らに委ねよう

ここから追い出すも、首をはねるも、お前らの自由だ」

 

 

 

 

 

どうだ悪い話じゃねぇだろう。

「それに俺はお前らに微塵の興味もない。俺には目的があるんでな」

 

 

 

 

側に置いた刀に手を添え、目を伏せた

思い出すのは、皮膚が焼ける臭いと絶叫

そして、こちらを見下ろす"アイツ"の顔___

 

「柊」

「……、」

 

 

 

「わかった。その条件のもうではないか

……我等は神の末席にある

神との約束は絶対だ、破れば

 

どうなるか、わかっておろうな」

 

 

 

 

鋭い視線がこちらを睨みつける。

__まずは第一関門突破だな

 

 

 

すべては目的のために

 

 

「では、纏まったようですね。

皆様これからよろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

「母さん早く部屋戻ろうぜ、まだ荷物の整理終わってねーんだから」

「ちょっと、抱きつかれたら歩きづらいでしょ」

「いーじゃーん。なんなら姫様抱っこで連れてってやるぜ?」

「いーやーよ」

 

 

「……なんなんじゃあやつら」

「……仲の良い親子なのです、どうか御容赦ください……」


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