ミカベネ物語  ツウィッタウン事件簿   作:ミ景

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グロいシーンがあるかもしれませんかご注意を


ファイル、1-10

 俺は薄暗い部屋の中で目を覚ました。

 まず思い浮かぶのは”今度はどんなヘマをやらかした?”だ。

 首元の痛みで記憶が蘇る。 そうここは金庫室──いや、金庫室の”はず”だった場所だ。

「痛ってぇな」

 立ち上がる俺は首元を摩りながら辺りを見渡すと、倒れる前には分らなかったことが見えた。

 壁に掛けられているデカいモニターと入ってきた扉とは別にもう一つ扉があって、そっちはやたらと錆びて汚れているということだ。

 すると、足元の探偵様が阿保みたいに口を開けて仰向けに寝ているのを見て、無意識に身体が反応。 横腹を蹴とばしていた。

「フゴッ!?」

 と無様な声を上げて、御景の奴が飛び起きた。

「よお、生きてたのか? 死んでると思ってたからよ、反射的に蹴っちまったよ」

「そうかい、生存確認ご苦労様!」

 必死に笑顔を繕う表情筋がピクピク痙攣しているが追及は止めといた。

「ワイじゃなくて、そこの仏さんでも蹴ればいいだろ?」

 御景の指した方向には斬り殺されたであろう男の死体があった。

 なんて、罰当たりなこと言ってんだ? コイツ日本人か?

「んなこと出来るか、死んだら閻魔様に裁かれるんだぞ?」

 その言葉のどこに野郎が反応したかわかんねえが噴き出す。

「何がおかしいんだ?」

「いや、すまん。 だいたいアンタからその単語が出てくるとは全くの予想外でな」

 ……コイツもしかして輪廻転生とかそういうのも信じてねえのか? いや、無神論者もいることだし、この手の話題は藪蛇だ──止めとくか。

「で、これからどうするんだ、トレジャーハンタ―さんよ」

 起き上がって身体の埃やらを払う御景の質問に俺は素直に答えた。

「相手の出方を待つしかねえな」

 その答えに御景も納得したのか、特に文句は言わずに辺りを観察しだした。

 物分かりが良いのか悪いのか、分からないが少なくともコイツは馬鹿じゃねえってのは分かってる。 ネジが抜けているところもあるがな。

 

 そうして、しばらく経つと入口に人の気配。

 開けられた扉から入ってきたのは見知った奴──ファットマンが黒服に連れられて来たのだ。

 騒ぎ立てる男の声が地下室に反響する。

「お前らなんて、ハックじゃなねえ、ファックしてやるよクソ野郎!!」

 男たちが罵倒にウンザリしているのはサングラスで隠した表情でも判断ついた。

 部屋にファットマンを離すとそのまま黒服たちは退出。

 取り残され俺たちだけになるとデカいモニターが起動。 白黒の砂嵐が画面に映し出されると隣の巨漢の身体がビクッと跳ねる。

 その直後に映像は切り替わりピンクを基調とした背景を映し出され、謎のBGMが流れ出した。

「はいはーい、侵入者&犯罪者の皆さん、こんばんは&ご苦労様でーす!」

 スピーカーから吐き出された音声はどこか電子音で混じりで性別の判断を難しくしているようだが、俺には直感的に女とわかった。

「おい、テメェら相手が誰だろうと口割るなよ!」

 小声で御景と俺にそう言ってきたファットマン。

 ビビりからその言葉が出ると思わず内心驚いたが、御景は気にした様子なく画面から視線を離さない。

「本来なら、三人とも即『お仕置き』なんですが、ある方のご厚意で『一人だけ』見逃すとのことでした」

 ……音声の言葉を鵜呑みにすると、要は俺たちに仲間を売れと言ってるらしい。

 まあ、こういうのは結局情報ばらした時点で全員オジャンだ。 

 こういう時は少しでも相手のカードを見るのが最適──。

「コイツらだ! この二人が俺に無理矢理手伝わせたんだ! 俺も被害者なんだ!!」

「野郎!」

 反射的に豚野郎の胸倉をつかんでいた。

「止めろ、ベネット」

「なんで止めやがる!?」

 何故か、仲介に入る御景に声を荒げる。

「フランクリンは確かに腕はあるが、経験も少ないしこの手の脅しにも弱い──こうなった以上もうコイツはいいだろ?」

 その言葉に少しだけ冷静さが戻る。

「ああ、そうだな……俺たちはプロだ。 尻拭いくらいは俺らがやらねえとな」

 まあ、コイツの面とうるせえ悲鳴を聞かなくて済むならマシだとも思えたしな。

「えーっと、それじゃあ、その人で決まりでいいんですね?」

 御景の視線。 思わず出た溜息の後に俺は頷いてみせる。

「ああ、ファットマン──いや、フランクリン=カーターをワイたちは選ぶ」

「あ、そうですか。 それでは、そちらのドアに入ってください」

 音声の案内は入口とは別のドアを指しているようだった。 こちらからは開かないようで徐々に開放される重い鉄の音が反響する。

 ついに開かれたドアの先は暗くこちらからも見えない闇が広がって不気味さすら感じた。

 しかし、裏切ったという雰囲気に耐えかねていたのかいそいそとファットマンが部屋に入って行くのを俺は黙って見送る。

 奴が部屋に入る直前に御景は思うことがあったのか声を掛けた。

「じゃあな、フランクリン」

 今まで聞いたことないような優し気な声音。

 ファットマンも何かを言おうとしたところで閉まる金属音が遮られる。

「あらー、残念時間切れです」

 ワザとだな。 本当にいい性格してやがるぜ、このクソアマ。

「でも、私は優しいので出血大サービス」

 そう言うとモニターの映像が切り替わる。

 映し出されたのは室内全体が白い小部屋の中央に立つファットマン。

 映像は部屋に設置されている監視カメラからだろう。

 カメラの前で話す奴が必死に何かを話しているが、音が拾いきれていないのか聞き取りづらい。

「悪かった、頑張る、許してほしい」

 御景の呟きに疑問符が浮かぶ。

俺の視線に気づいたのかモニターから視線を離さず、説明が入る。

「……読唇術だ。 探偵なんてやってると結構便利だからな──どうやら、言ってる内容は謝罪とこれからはワイらの代わりに生きていくだとさ」

「……はっ、誰のせいで──いや巻き込んだのは俺らだったな」

 因果応報。 裏切り者は裏切りで死ぬ、か。 俺らしい最後だ。

 死んだら、地獄行きだろうなぁ。

 そんなことを考えていると、部屋全体を揺らすような振動。

「おい! べネット!!」

 御景の声でモニターを見て、驚愕。

 ファットマンがデカくなって──否、白い部屋が小さくなっていると判断。

 徐々に壁自体が狭まっていく光景に俺は錆びた鉄扉に駆け寄っていた。

「クソが!! マジでノブすらねえのかよ!?」

「どけ!!」

 御景はどこから持ちだしたか分らない木製の椅子を扉に叩きつける。

 当然ビクともしない扉に古びた椅子は砕け散った。

「おい、なんかねえのか!」

「そこの死体じゃダメなのか!?」

「真面目に考えろクソ探偵!?」

 二人で扉にタックルするも重い扉には効果がない。

「おい、モニター女! 聞いてんだろ!! ドアを開けろ!?」

 慌てて画面を見るともう動ける隙間はなくなっていき、設置されたカメラにぶつかったのか、ついには映像も途切れた。

「畜生が!」

 ドアを蹴るも殴るも俺の身体が傷つくだけ、御景も同様だ。

 そうしていると、ついに振動は止んだ。

 どこからかグチャ! と潰れた音が耳に入る。

 鉄扉の下から流れてきた赤い液体。

 俺は傍らに落ちていた椅子の足をモニターに思いっきり叩きつけた。

 ヒビが入り、破片が飛び散る。

 思いのままに何度か叩きつけていると後ろから誰かが掴んでくる。

 御景だ。 俺はそのまま椅子の足を離すと、その場に膝から崩れ落ちた。

「あー! 折角のモニター壊しましたね!! これで器物損壊も罪状に追加です!」

「うるせえな! テメエこそ俺らを騙しやがって!!」

 俺の声にモニターは意外そうな声で答える。

「は? え、わかってましたよね。 だって私は一度も部屋に入れば助かるなんて言ってませんよ?」

「なっ!?」

 その言葉に記憶を探る──確かにそうだと理解した、が。

「あんな言い草でそう思わねえ奴なんて少数だろ!?」

「えー、今更言われましても……それにそこの探偵さんは気付いていたと思いますよ……でしょう?」

 俺の視線の先にいる御景は平然としているのが映る。

 その態度が俺は何故か気に食わなかった。

「おい、どうなんだよ?」

「落ち着け、相手の口車に乗るな。 少し冷静になれワイとお前はあくまで同じ状況なはずだろ」

 内心舌打ち。 だが、コイツの言う事はもっともだ。 あくまで敵は音声の女だ。

「ちぇっ、詰まんないですね。 これで仲間割れしてくれると楽しかったんですけどね」

 暴露した音声は気を取り直すように続けた。

「先程の人のことは忘れて次に進みましょう!」

 どこかのB級イベントのMCのように話すことにもう狂気すら感じられる。

 すると、入口から数人の黒服が入ってきた。

 一人はドームカバーが乗った配膳カートを押しており、あとは銃を所持してこちらに向けている。

 構えから素人が混じっているのはまるわかりだった。

「まるで、案山子だな」

 その言葉が聞こえたのか、明らかにスピーカー先の声でくぐもった声でブツブツと呟いているようだった。

「ゴホン、それでは改めてご紹介します。 私は可愛い司会進行役を務めさせていただきます【BB】ちゃんです!」

 自分で可愛いとか言うのは自意識過剰か、マジもんの可愛い奴のどっちかなんだろうな。

 まあ、仮に後者としても中身が腐ってそうだよなぁ。

「それではお二人にはこれから簡単なゲームをしてもらます」

 そうBBが言うと俺と御景の間にカートを持ってきた黒服が銀色のドームカバーを外すと、そこには二丁の拳銃が入っていた。

 そのあとに黒服たちは速やかに部屋から退出する。

 まるで演劇の黒子だなくだらん感想は捨て置きBBに問いかけた。

「何だよこれ」

「はい、それは『M1911A1』で通称は『コルト・ガバメント』で知られる──」

「んなことは知ってる」

 今更そんな解説や蘊蓄はいらねえ。

「これでどうしろっていうんだ?」

 御景の核心めいた質問。

「はい、すっごく簡単なルールなんです──その拳銃で殺し合ってください」

 直後に俺たちは同時にカート上の拳銃を掴み、構える。

 互いに眉間を狙っているようで装備されている赤いレーザーポインターが額を照らしていた。

「迷いがねえな」

「当たり前田のクラッカー」

 つまんねえ冗談はともかく、俺を射殺さんばかりの真っ直ぐな目をしている御景の本気さに自然と笑みが零れる。

 

 

 

 

 そうやって対峙して数分後、乾いた銃声が三発。地下の部屋に反響した。

 

 

 

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