ミカベネ物語  ツウィッタウン事件簿   作:ミ景

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茶番要素ありますが流してくだちい


ファイル、1‐11

 御景はベネットではなく、銃口を死体に向け三発発砲した。 着弾の度に死体は飛び跳ね、火薬の匂いと赤い液体をぶちまける。

 ベネットの方は手元の銃を手慣れた手つきで分解していき、ある程度で止めた。

「おい、これ見ろよ」

 そうやって見せるのは弾丸が入るはずのカートリッジが空であることや構造も本来とは違い、恐らく高性能で本物に近いモデルガンの類ということ。

 御景の方も死体『から』漂う硝煙の匂いや、不自然な血糊の飛び散り方を指摘するとおもむろにベネットは死体らしきものに近づく。

「さあて、死人のフリはやめていいぞ、と」

 踵が俯せの身体に振り落とされる。

 普通なら聞こえないであろう小さな悲鳴も、この静けさが仇となったのか確かに聞き取れた。

 そのまま、足を載せるベネットが下へ向けて顎をしゃくる。

 その指示に従い、御景は紙袋を外すと顔が露わになった。

「ど、どうもー」

 呑気な挨拶をしてきた男に苛立ったベネットは靴裏で頭を踏む。

「あのーこれ結構痛いしさ、ボクそんな趣味は持ち合わせていないんだよね」

「うるせえ」

 先程より足に力を籠める。

「それでテメエはどこのどいつで、何の目的でここにいた?」

「おい、ベネット足を退かせ。 アンタが潰してるせいで喋れないみたいだ」

 その通りとでも言うように右手で親指を立ててきた男を無視して、御景は足を退けるように促す。

 隠す気のない舌打ちで少し離れるが、視線と片手に握られた椅子の残骸が警戒心の高さを窺わせ、きっと妙な動きを見せた瞬間、迷いなく殺す気なのだろう。

「それでベネットの質問に答える気はあるか?」

 男は少し考える素振りの後に。

「黙秘権ってある?」

「それを物理的に教えるのと、文明的に口頭で教えるのどちらがいい? ちなみに限定的に選ぶ権利はあるよ?」

「うーん、ボクは文明人だから口頭でお願い」

「そんなものないよ」

 マジか、と真顔になる男を流し目にベネットへ視線を向けると。

 片手で得物持つ腕を押さえていた。 その表情から別の意味で時間の問題が迫っていることを御景は理解。

「とりあえず、要点だけ伝えるとワイらの質問に答えないとお前は死ぬ。 恐らく死因は撲殺。 協力すれば手荒な真似はしない、OK?」

「わかった!!!」

 真剣さを汲み取ったのかわからない場違いの笑顔と返事で我慢しきれないベネットは椅子の足を床に叩きつける。

「もういいから、笑うな」

「えー、質問する上に注文多くない?」

 ……秒読みで御景の堪忍袋が切れそうなその時だ。

「君たちってさ、なんで銃が本物じゃないって気付いたのさ? 結構早く構えたみたいだけど、普通撃つまで時間掛けたり撃てなくて自殺しようとする奴までいるのに」

 意外な質問。 少なくと数瞬前のやり取りをしていた人物との会話とは思えない内容だ。

「…………重さだ」

 ベネットの口が答えを吐き出す。

「何度かこの手の銃を使う機会はあったが妙に軽すぎたってのが切っ掛け、そう思ったらそいつがお前を撃ってから確信してよ」

「……ワイはお前から流れ出た血糊で気になったのさ、時間経過の割に乾いてないとかな」

 御景は男の近くに広がっている赤の海に着けた靴のつま先をそのまま引きずると赤い線を構築。

「まあ、一番は蝿どころか腐臭すらしないってのも引っかかってたよ」

 地下という事を考えれば、蝿はともかく一時間以上死体と密閉された空間にいれば匂いが充満するはずなのだ。

「あちゃー、結構初歩的なとこで躓いたのか!」

「まあ、あんな状況だと大抵が動転しすぎて気にならねえだろうがな」

 なるほど、と呑気に頷く男の顔に蹴りを叩きこもうとするベネットを御景が制止。

「おい! なんでまた──」

「顔はやめろ。 喋れないと面倒だ」

「──かしこまっ!」

 意味を理解したベネットの蹴りが男の横腹に突き刺さる。

「モルスァ!」

 謎の叫び声と共に転がる男は壁に激突。 

「クソが、ファットマンの分だ!」

 まだ足りないと言いたげな表情だが、幾分かマシになったように見えた。

「痛てて、暴力反対だよぉ」

 足をフラつかせながら壁を支えに立ち上がろうとする男。

「脳震盪か?」

「恐らく長時間死体に化けるための筋肉弛緩剤やら、麻酔の類の症状だろう」

「いや、わかってるなら助けて欲しいんだけど!?」

 男の悲鳴を無視して、改めて質問を投げかける。

「お前の名は──」

「はいはい、ボクの名は──」

 そこで入口が勢いよく開け放たれる。

「はーい、アナウンス放棄して助けに来ました、可愛い秘書のBBちゃんです!」

 紫色のロングヘヤーに黒いコートを羽織り、右手には指揮棒のようなものを左手にはタブレット端末を携えていた。

 顔立ちは悔しいがベネット的に素直に可愛いと思える容姿で美少女である。

 その後ろからぞろぞろと完全武装の兵隊が両脇から展開。

「さあて、大人しくその人を返してくれるか、抵抗して可哀想な豚さんにみたいになるか選んでくださいね」

 電子音越しとは別に語尾にハートでもついてそうな口調とは裏腹にビシッと指揮棒とその眼からは殺意が垣間見れた。

 指揮棒に従いいくつもの銃口が二人に向けられる。

 恐らく、比喩ではなく本当に挽肉にされるのが容易に想像できた。

「テメエ、豚ってファットマンのことか!?」

「ベネット、ステイ!」

「ファットマンのことかああああ!?」

 その怒声と殺意に一瞬部屋にいる全員が震えるが。

「うるせぇ、バカ!」

 御景のアッパーカットが正確に彼の顎を捉え、床に沈める。

「コノ通りワイラニ抵抗ノ意思ハナイヨ、ユルシテ?」

 必死に取り繕う探偵。 

「いや、説得力皆無なんですが……まあ、いいでしょう。 兵隊さんは二人を連行してくださいね」

 BBの指示に従い、兵士たちは御景とベネットを連れて金庫室だったはずの場所から退室していく。

 最後は男と彼女だけが残るだけとなった。

「それで試験はどうでした?」

「ん? ああ、二人とも合格でいいとも思うよ。 君は?」

「はい、私も同じ意見です。そ・れ・にー」

 BBはタブレット端末を操作。

「面白いことも分かったんですよ」

 映し出された画面にはAとBと打たれたピストルのイラストが二つと4と1の異なる数字。

「探偵さんが持っていたのはAの『4』発。 オジサンが持っていたのはBの『1』発なんですよ」

 それを聞くと男は白々しく首を傾げる。

「あれー、ボクの記憶違いかな。 探偵君がボクに撃ちこんだ反応は『3』発でトレジャーハンターさんは『0』発のはずだよねぇ」

 男に仕掛けられた血糊チョッキのようにセンサーが仕掛けられた場所にレーザーポインターを照射して引き金を引くと仕込んだ火薬が爆発する仕掛けとなっている。

 これは仮に何かで試し撃ちをする時に銃の正体がモデルガンで本来なら殺傷能力は皆無という真実から遠ざけるためのもの。

 すぐばれるのではないか? これが意外とばれない。 何せこれを行わせるのは大抵が『仲良し』の二人組で行われ、銃を取ることすら時間が掛かる場合があるのだ。

 仮にすぐに取ったとしても補充の効かない弾薬を遊びで消化するわけにいかない。 自分が弾ギレとなれば『相手』が圧倒的に有利。

 食糧も無く、暗くて狭い地下の密室で行われるデスゲーム。生き残れるのは一人だけということや、相手を殺すだけというシンプルなルールはいつしか、同僚が友人が恋人が家族が──敵に見えるようになり、疑心暗鬼へ落とし込む罠。

 そうやって壊れていく人間関係を見て楽しむそれがこのゲームの醍醐味なのだ。

「そうですねぇ、銃を構えたのは向かい合った数分間だけでそのあとは先程の流れですからねー、一体『何時』撃ったんですかね」

 それを聞くと問題が解けた子供のように男は破顔させた。

「つまり、あの二人はお互いを『相手を殺す事に躊躇いがない』ってことなんだね!」

「ええ、本当に面白いですよね」

 男とBBは顔を見合わせて笑い出す。

 地下室は愚か、施設全体に響きそうな高らかな笑い声。

「あははははは、痛っ! 痛ぁぁい!!」

 横腹を押さえて男の笑い声は止んだ。

「もう、薬の副作用で感覚が鈍くなってただけなのに調子乗った罰ですよ」

 ツンツンと患部をつつくと代わりに男の絶叫が響き渡るのだった。

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