ミカベネ物語  ツウィッタウン事件簿   作:ミ景

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 それから二人は何とも……表現に困る悪趣味な部屋に連行もとい招待されたのだが。

「なんだ、この内装」

 部屋を見渡した御景の一言。

 虎や羊の剥製や妙な形状をしたナイフに怪しく輝く宝石などの装飾品。 並んで座るソファーも座っていて落ち着かない感触だ。

 一見、統一性のないそれらを見た御景は首を傾げたがベネットは何故か顔を引き攣らせていた。

 気にはなったが追及せずに待っていると扉が開かれる。

「お・ま・た・せ」

 詫びれもない台詞と共に机を挟んで、対面のソファーに腰掛けたのは地下室で死体に化けていた男。

 違いは先程の血糊や埃で汚れた服ではなく、小奇麗なスーツで身を包み、身だしなみを整えた姿である。

「いやぁ、先程はどうもね。 お蔭さまで楽しめたよ」

 ニコニコと人懐っこい笑顔を張り付けながら礼を述べてくる男にベネットは鼻で笑う。

「はっ、なんだまた踏みつけて欲しいのかよ?」

 辛辣な言葉にも態度は崩さず、むしろ先程よりも口角が上がる。

 その様子に流石のベネットも口を閉ざした。

「本当に君たちのような存在は貴重だよ──本当にね」

 二人に対してではなく、何か言い聞かせるように呟く男は目をスッと細めた。

「ところでワイらをわざわざこんなところに引き留める訳はなんだ?」

 御景の問いに男の顔に笑顔が戻る。

「うんうん、そうだよね。 その前に自己紹介するとしようボクは【狂咲 定二】。 親しい人はジョージって呼ぶよ!」

 両手で親指を立てる所謂サムズアップで強調する辺りに必死さを感じる。

 その姿にどこか悲しさを覚えるベネットを他所に御景の顔が険しいものになった。

「アンタがあの”七光り”?」

 そのワードにピクッと定二の片眉が痙攣。

「ふふ、やっぱりそっちの方が有名なのかぁ、ふーん」

 黒い笑みを浮かべる男が気になり、ベネットは耳打ち。

「なんだよ、それ?」

「ワイらが侵入した【虎の門】を始めとした多くの企業を治める【ロックカンパニー】の現社長。 だが、その若さから多くが祖父──先代の【狂咲零定】のコネでその地位に着いたと噂されているのがこの男だ」

「祖父ってならコイツの親父とかが相続するもんじゃねえのか?」

「知らんよ、少なくともそれほどの大企業の跡取りを決めるのに揉めなかったわけもないし、ワイ的にはその中から地位に上り詰め、現在もその規模を維持するどころか、拡大しているんだ……先代の判断は正解だとは思うぞ」 

 しかし、世間からの彼の評価はあくまで七光りと落ち着いた。

 それは何とも理不尽で同情しそうになるが──。

「まあ、他人の評価なんてこの際どうでもいいんだけどね!」

 耳を穿りながらそういう目の前の男がその話題の人物と同一人物とは思えないベネットだった。

「それで本題は?」

「ああ、話が逸れたね……うん、なんで君たちを捕まえのか……まずボクの参加しているサークルみたいなもので、あるゲームが行われていてね」

「おい! いい加減に──」

 机に身を乗り出しそうなベネットを御景は制す。 それは定二の目からは笑っていたものでなく、真剣な雰囲気が感じられたからであろう。

「それで、内容は名前も顔をわからない人物……【ミスターX】なるものを探すって奴でさぁ。 いやぁ、大変だったよ唯一のヒントは『外からやって来た者』だけで本当に出題者の頭を疑うよ。 それでボクは人海戦術で怪しい人物を尾行させてた訳さ。 何回か外れたけど、そのうちやたらと撒こうとする人がいたってことで目を付けてたんだけど──」

「おい、待て」

 定二の言葉を止めたのはまたもやベネットだ。 額に手を当て、何かを願うような声音で問う。

「人海戦術って……もしかして黒服の集団のことか?」

「そうだよ」

 その即答に探偵は反射的に隣の男の頭を叩く。

「なーにが、『他の組織に狙われてんだ』! テメェの勘違いじゃねえか!!」

「仕方ねえだろ!? そもそもあんな大勢の黒服に追いかけられたら逃げるわ!?」

「ま、どういう経緯か分らないけど、気づいたら君たちはボクの銀行に侵入する計画を立てていて、現在に至ると」

 コホンと話を戻す定二。

「それでボクは君たちに提案をしたいんだ──引き受けてチャラにするか、断って刑務所行きか……選ぶ権利はあるもんねえ?」

 口元は笑っているが目は笑っていない上に限りない脅しだった。

「あー、もしかして、恨んでます? 所さん?」

「ううん、恨んでないよ? ボクはジョージだよ?」

 完全にイっている目で返答を求める若社長に困る御景。

 しかし、ベネットは吐き捨てるように言った。

「信用できねえな、コイツはファットマンを殺した奴だぜ? 確かにアイツはクソで裏切りもんで俺がこの手で殺してやりかったし拷問にかけて生まれきたこと後悔させてやりたかったが、テメェみたいに騙すような奴はもっと嫌いだぜ」

「え、色々突っ込みどころ多くないかい? というか彼結果的に死んだ方が良かったみたいになってるよ!?」

 困惑した声音の定二にすかさず御景がフォローする。

「大丈夫だ」

「ごめん、どこら辺が大丈夫か分らないんだけど?」

「とりあえず、落ち着けよ。 ファックマンのことは許せねえけど、それ以上に許せないのがお前なんだよ」

「待って待って、どうしたの。 何が君をそこまで駆り立ててるの? ファックマンになってるよ!?」

 笑顔が本格的に消えかかっているので御景が通訳を入れる。

「たぶん、『俺が騙すのはいいけど、他人に騙されるのがマジ許せぇ』って感じだと思う」

「うわ、なにそれ質悪い」

 その時、ドアからノック音が響く。

 部屋の主である定二が促すと扉が少し開かれ、誰かが顔を覗かせた。

「あのぉ、そろそろいいですか?」

 彼の秘書であるBBが何かを伝えに来たらしい。

 大企業の社長たるものスケジュールはびっしりなはずなのだから当然なのだろう……。

「ああ、うん、そうだね」

 どこか疲れた様子で促すとバン! と扉が勢いよく開かれる。

「サプライズ!」

 パーティー用のクラッカーを鳴らす、黒服数人と、BB。 そして、死んだはずのファットマンがそこにはいた。

 全員が陽気な笑顔で三角帽子を被り、入室するも部屋との温度差で静まり返る。

 顔を覆い天井を仰ぐ定二。 何かを察して黙る御景。 理解の追いついていないベネット。 口笛を吹きながら退出するBB。 焦るファットマン。 空気に徹する黒服。 

 部屋は沈黙で支配された。

 

「野郎、ぶっ殺してやるぅうううう!!!」

 理解したベネットが叫び声と共にファットマンに飛びかかるのは数秒後のことだった。

 

 さぁ、パーティーの始まりだ。




茶番劇になってしましましたが、緩急をつけるためにこうなりました。

恐らく、今後ともこういう風にギャグぽい回とシリアス回を合わせていこうと思ってます。
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