ミカベネ物語  ツウィッタウン事件簿   作:ミ景

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この調子で頑張りたいです


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 幾分と老朽が見られるマンション『たそがれ』――その四階の一室にて探偵事務所を開く青年【御景】は作業を終え、一息ついているところだ。

 探偵にとっていつもと何ら変わりない日々の一コマに過ぎない。

 そう、裏路地で流血した男が倒れていただけだ。 こういう場合、普通なら救急車か警察辺りに連絡をするものだろうが――彼はそれをしなかった。

 これも経験からくる勘なのか、それとも男の風貌から堅気でないことをわかったからなのだろうか……。

 何はともあれ男の傷口に適切な処理を施し、ソファーに寝かせたところだ。

 時間を潰すために情報を収集するのも仕事の内だと新聞紙を広げる。 日付は三日前のものだが気にしてはいけない。

 文字に視線を走らせていると、ふとある場所で止まった。 見出しではデカデカ『怪人』と打たれているが、読んでみると内容は確証のない都市伝説のようなものだ。

 世間のニュースが特に書かれていないのを不審に思うと、どうやらそれは先日やって来た記者が置いていったものと思い出す。

 ないはずのものを探していたという徒労感をため息で誤魔化し、珈琲でも入れようとソファーを横切った瞬間――殺気。

 ソファーから飛びかかってきた男を避ける際に映り込んできた一瞬の閃き。 風切り音と左頬が熱くなったのは同時で何かが床へと滴る。

 男の右手にいつの間にか握られたナイフの切っ先には赤い液体がヌラりと光って見えた。

「ちゃんとボディーチェックはしたはずなんだが?」

 左甲で血を拭いながら、軽口を叩く御景を見ると男は鼻で笑った。

「──テメェがト―シロなだけだろうがよ!」 

 そう言うや否やナイフで切りかかってきた男に御景は近くのクッションを盾として応戦。

 無論、鋭い刃に瞬く間に引き裂かれ羽毛が飛び出すが、御景はすかさず壁に立てかけておいた『それ』へ手を伸ばす。

「おいおい、そんなもんで勝てると思うのか?」

 男は嘲笑した。 無理もない目の前で対峙する若者の手にあるのはどこにでもある持ち手の付いた杖なのだから。

 だが、御景も笑い返しながら杖の持ち手を捻る。 そして、杖を引っ張ると抜き身の刃が姿を現した。

 男の表情から先程までの笑みは消え、仕込み杖とナイフを交互に見比べる。

「き、汚ねえぞ!!」

「うるせえ! そもそも助けてやったのに襲ってきたお前に言われたくないんだよ!!」

 男の叫びに御景も声を荒げる。

 助けたという言葉に男は首を傾げた。

「……お前、『奴ら』の手先じゃねえのか?」

「──は?」

 警戒を解かずに考える御景を他所に、男の方は身体を見渡すと自身が放つ異臭にも気づいたらしい。

 緊迫した空気は霧散したが、徐々に別な方向で面倒なことになっていくのでは────そう、直感が告げていたが考えることを放棄した探偵は現状を伝えることにした。

「アンタが裏路地のゴミ捨て場で血塗れで倒れてるのを見つけたから、ここに運んで治療したんだよ」

「……ゴミ捨て場?」

 そう言うと男は匂いの正体にも納得したようで何故か安堵したようにも見えた。

「じゃあ、テメェが『組織』の人間じゃねえって証拠は?」

「────ないな。 まあ、わざわざ治療なんかせず、煮るなり焼くなりは出来る時間は十分にあったな」

 しばらく、二人の間に沈黙が流れる。

 だが、その言葉を信じたのか男はナイフの構えを解いた。

「…………悪かったな、その、なんだ……俺の勘違いだったみたいでな」

 折り畳み式のナイフをしまいながら紡がれる不器用な謝罪は彼なりの誠意の表れなのかもしれない。

「……まあ、取り返しのつく間でよかったよ」

 御景が右手を差し出す。 それを男は差し出された手と青年の顔を交互に見て、理解。

 和解の意味と奇妙な出会いを兼ねの握手を交わしながら、互いに挨拶をする。

「ワイは御景。 この事務所で私立探偵なんかをやっている者だ」

「俺はベネット。 職業は────トレジャーハンターだ」

 

 

 御景が噴き出したことにより、そのまま殴り合いの喧嘩にシフトするのは数秒後のことだった。

 

 

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