ミカベネ物語  ツウィッタウン事件簿   作:ミ景

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 俺はその晩、バーに来ていた。

 事務所で夜まで待ったが御景の野郎は返ってくる気配はなかったのもある。

 店の名前は『紅蓮獄』と銘打っているが、内装は結構普通で俺はカウンター席に座ってグラスを傾けていた。

 俺がこのバーに来たのは情報屋に会うためでソイツを待つためにこうして暇を潰している。

 懐から取り出した煙草を一本口に咥えると、バーテンがライターを差し出してきた。

 俺はそれを片手で制すと、バーテンは一瞬怪訝な表情になるが、流石プロでその瞬間も俺じゃなきゃ見逃してただろう。

 そう思っていると隣に気配。

「……アンタがベネットか?」

 声の主は赤いフードを被った男。

 歳は20代前後。 通常なら門前払いする奴もいるかもしれないが、俺は腕が良ければ気にしない。

 片手を上げて、肯定。

 それを確認すると男は席に着く。

「それで、情報の方は?」

「……」

 男がカウンターに載せてきたのは一つの茶封筒。

「……急だったからな、期待はしないで欲しい」

 前置きを聞き流し、俺は封を切って中身を確認。

 それはここ数日間でのとある男の動向だ。

「──その割にはキチンとこなしてるじゃねえか」

 満足のいく内容に素直に感嘆。

「……当然だ、それに俺たちはこの道で食っているプロだ。 ……まあ、その分料金も上乗せさせてもらっているが」

 男がライターを差し出してくる。

 視線の先には俺が咥えている火が灯していない煙草。

「いや、いい。 禁煙中なんだよ」

 そういうと、関心もないようで男は懐にライターを戻す。

「……まあ、俺よりも部下たちのほうが頑張った結果だがな」

 男は自嘲染みた笑いを浮かべた口元に運ばれたドリンクを傾ける。

「別にいいんじゃねえか? 何かあれば部下の尻拭いだってするんだ……お前だって完全にノーリスクじゃねえんだろ?」

 男は無言。 僅かにフードから覗けた瞳は覚悟に染まっている者の目だ。

「人には人の。 プロにはプロの悩みがあるんだよ。 そう上に立つやつが悲観的だとせっかくの部下たちの功績も無駄になるぞ」

 咥えた煙草を綺麗な灰皿の上に置いた。

 俺が杯を傾けると、それに合わせるように男もグラスを傾ける。

「……アンタみたいな人に言われると、少しだけそう思えるよ」

「……そうかよ」

 少しだけってのが余計だ、バカ。

 自然と笑みが口元を歪めた。

 らしくもない感傷的になっているなと判断。

 やけに染みる酒を活力に変える。

 

 

 そうやって、しばらく情報屋と談笑。

 くだらないやり取りで、職業や趣味も別だが酒は自然と互いの口を滑らかにしてくれた。

 時間は経ち俺たちはバーを出ることにする。

 

 

「……情報屋【B&K】。 またのご利用お待ちしています」

 律儀な挨拶に俺は皮肉を込めた冗談で返す……いや、半分は本音か。

「だったら、もう少し代金に手心加えてくれよ」

 一瞬の無言。

「…………善処します」

 その間で改めてこの男が根は真面目と理解。

 堪えた笑いに肩が震える。

 こんなくだらないことで笑えるとはつくづく感傷的で、甘くなったな。

 これから自分がやろうとしていることや、過去を振り返るととても結びつかない。

 人は変わる……。 昔、どっかの誰かにそう言われた気がしたが忘れた。

 

 

「じゃあな」

 俺は踵を返す。 

 背中で聞こえた男の返事を俺は片手答えた。

 この後はどうするか……とりあえず、事務所に戻るか……アイツ帰ってるかもしれねえしな。

 まあ、帰ってこないなら寝床に使わせてもらうが。

 狂咲の依頼の件で強制的に組むことになった俺たちはある意味共犯者で一蓮托生なのだ。

「本当に面倒になってきたな」

 俺の独り言は夜の町に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

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