ミカベネ物語  ツウィッタウン事件簿   作:ミ景

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 現在、御景は病院の待合室で呼ばれるのを待っていた。

というのも、殴り合いの喧嘩をしたことによりべネットの怪我が悪化してしまったからである。 

探偵という職業柄『訳アリ』でも通える場所はいくつか把握しているつもりだ。

 ここは繁華街の近くにある病院で人の出入りも比較的多いが時間が時間だけに空いてはいたのが救いでもあった。

 肝心のベネットは先に治療中で、比較的軽傷の御景は渡された氷嚢で腫れている箇所を冷やす。

 暇な待ち時間を辺りを観察することで潰そうか試みた。

 最初は気にしなかったが、待合室にいる人間の中で少女がポツンと長椅子に座っていた。

 ……親が診察中なのだろうか、少女の視線は足元を見つめてその雰囲気はどこか哀愁が漂って見える。

 次に椅子には座らず壁にもたれフードを被った人物。 直接顔が見えたわけではないが体つきから男と判断できる。

 ナイフを右手で器用に弄ぶながら暇を潰しているようだ。

 最後に長椅子の背に両手を広げ、顔に雑誌を乗せて男が寝ていた。

 こちらにも聞こえるいびきを聞いてみたところ快眠のようだなとなんて思っていると、診察室のドアが開く。

 中から出てきたのは車椅子に座った老人とそれを押す少女の姿だった。

 その二人が出てくると同時に壁にもたれていた男の雰囲気が張り詰めるのを背中からヒシヒシと感じる。

 老人の恰好は高価そうなローブで全身を包んでおり、何やら不思議な紋章が刻まれている。

 だが、立派な服装とは裏腹に老人からは生気が感じられず、まるで幽鬼のように蒼白な顔色が印象深かった。

 一方、少女の服装はドレスに似たような造りで老人に比べ簡易な作りではあるが、それでも一般人からすれば十分なものであると推測できた。

 加えて、少女は独特な雰囲気と紫の色素をした髪。 顔の造形などからしてかなりの美人というのもそう感じた要因なのかもしれない。

 恐らく、どこかの要人が体調不良になったが立場の関係上、人目が付かないこういう場所を選んだのだろう……。

 青年はそうありきたりな答えを脳内の好奇心へと叩きつける。

 仕事以外で詮索するとろくなことにならないのは以前の経験で学んでいるのだ。

 そう考えていると名前が呼ばれたために診察室へ向かう──そのすれ違いざまに車椅子を押している少女と目があったような気がするが意識を前へと縫い付けた。

 そうでもしないとまるで吸い込まれてしまうような錯覚に陥ったからだ。

 

 

  

 

「いやぁ、久しぶりだね御景君」

 診察室で出迎えてくれた男性はここで病院を開いている闇医師【Dr.シスタゲット】

 御景との邂逅は割愛するが、彼もまた依頼でこの探偵を頼ったことがあるのだ。

「今日はお友達の怪我と……君のものもあるね」

 喧嘩でもしたのかい? と優しい声音で聞いてきた医師の質問を濁しすかなかった。

「……まあ、そんなところです」

「若さだろうけど、ダメだよ……あんまり危ないことしちゃさ」

 ……その言葉に御景は苦笑いをする。 自分と大差ない年代の言葉とは思えないものだったからだ。

「ところでドクター、待合室の女の子ってどうしたんだい? ほら、小学生ぐらいの」

 絆創膏や消毒液を取り出しながら乗り気でない返事が返ってくる。

「……彼女のご両親がこの間通り魔に襲われて亡くなったらしくてね。彼女もその場に居合わせたらしんだよ。 だから、ほら、ここも表向きは普通の病院だからさ」

「医師の診断を受けるように診断された、と」

 悲しそうな表情で頷くシスタゲットの表情を見て、御景もまた何か想いを巡らせる。

 その感傷浸りも数秒後に響く野郎の叫び声で現実に引き戻されるのだった。

 

 

「それじゃあ、彼は大事を見て今晩は預かるからね」

 シスタゲットと看護婦二人から玄関までの見送り受けた。

 見送りながら手を振ってくれた看護婦の腕には上腕から不自然な切れ目が見える。

 二人の看護婦はそれぞれ両腕と両脚に障害を持っていたために幼少期に捨てられたらしく、それを訳あってあの医師が引き取り育てたとのこと。

 現在は二人とも高性能の義肢を身に着け、あの病院で働いているようだ。

「家族、ねえ?」

 その単語に一瞬の温かみと押し寄せた虚無感。

 探偵は繁華街を歩きながら町を照らしているネオンの看板たちを見つめると自然と目を細める。

 今夜は特に眩しいさを感じながら、帰路に着いた御景だった。

 

 

 

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