薄暗い部屋。
窓もなく、出入り口も扉一つだけの空間で、天井の垂らされた一つの電球が揺れていた。
その下には黒く反射する円卓とそれを囲む人影らを切り取る。
一人はニコニコと笑顔を貼りつかせて席に着く青年、
その傍らには彼の秘書、BBが立っていた。
定二の右隣には、ヘッドホンを首にぶら下げ、サイズの合っていない服をだらしなく着たクオーレ=ビャンコフが座っている。
指先だけ覗かせる丈の長い袖を揺らして、目の前に置かれている杯を持ち上げた。
口元に運んだ紅茶を嚥下させると、クオーレの視線は眼鏡越しに右隣へ向けられる。
車椅子に座る老人と近くに控える少女が見えた。
11議席、第4席に位置する、U=2とその侍女だ。
最後に視線が送られていくのは老人の右隣で、定二の左隣になる人物。
それはそもそもが人間と言っても良いともわからない気配を纏う黒い”影”。
漆黒の全身の顔に位置する部分には、何もない白い菱形が嵌められていた。
その影にも当然名前は存在した。
知っている者はそれを"プリーズ・ジング"と呼んでいる。
ぐるりと白い面が円卓を見渡した。
「それではメンバーも揃ったようなので始めるが構わないか?」
男とも女ともとれない奇妙な声が室内に木霊する。
合意の頷きを見せた定二の隣で、クオーレが挙手。
「どうした、3rd」
挙がっていた左腕がそのまま下ろされ、指先は右を向いていた。
「どうして部外者がこの場にいるのですか?」
クオーレの言葉には敵意に似たものが含まれていた。
「……4thからの要望により、問題ないと判断したので私が許可を出した」
ジングがそう言うと、ぺこりと侍女が頭を下げる。
何か言いたげなクオーレに対し、定二がケラケラと笑いながら声を掛けた。
「まあ、いいんじゃない? 何かあれば四番さんの責任なんだしさ」
それに────。
青年の唇が言葉を紡ぐ。
「君も連れてくればいいじゃないか。 心許せる人物を、さ」
それを言うとクオーレの絶対零度の瞳と、定二の笑っていない目がぶつかる。
「悪いがそこまでにしてくれないか」
不気味な声音が二人を威圧。
「ははは! いやぁ、ごめんごめん! 緊張しちゃってさぁ!」
定二の乾いた笑い声を無視して、クオーレは眼鏡の位置を戻した。
それらのやり取りを見ていたBBの顔にはどう表現したものかと、苦笑いが浮かんでいる。
対して、その向かいに座る老人はいつもと変わらない幽鬼のような顔を浮かべていた。
「それでは改めて、【BIG5】の会合を始める」
大まかな話し合いも終わりだした頃だ。
「そう言えば最近、例の”探偵”に近づいているそうですね」
クオーレの言葉は誰に言ったのかは分からない。
「……さぁあ、誰のことでしょうねぇ」
ワザとらしく口笛を吹く定二。
「風の噂なのですが、彼を議席に座らせたいとか」
その先を引継いだのは、老人の言葉を代弁する侍女の言葉。
「……本人が乗り気ならそれも考えた、が」
ジングは空中で小さく指を回して、円を形成。
回転を止めて渦巻いた黒い軌跡は、やがて消えた。
「謹んで辞退する、とのことだ」
「あらら、振られたちゃったのね」
定二が残念そうに言うと、クオーレが鼻で笑う。
「貴方も、色々とアプローチ掛けてたみたいだけど外したものね」
「…………ホント、君っていい性格してるよね」
「社長!」
後ろで控えていたBBの声に青年は浮き上がりそうな腰を下ろした。
「それと6thからの報告だが、つい先日に5thと────元5thと遭遇したらしい」
「元……っていうと、
「ああ。 何でも別件で出くわしたようだ」
部屋には沈黙が流れた。
「僕が言うのも何だけど、彼って結構用心深いタイプだったよね? それがバッタリって嘘臭くないかい?」
「それでも、報告をしてきた以上無視も出来ませんものね」
「その通りだ。 クオーレに聞き出して欲しいところだが、私に伝えてきたということはそれなりのリスクと覚悟があったはずだ」
「信頼関係バッチリ! 1stを相手に選ぶとは兎さんってわかってるね」
その言葉に3rdが静かに頷く。
「……その意味は後日ゆっくり聞くとして……先日取り逃がした怪人”首なしライダー”、”狐狩り”なるものらの情報も探すように、
「それで結局、”辻斬り”は?」
「どうやら、あれは人ならぬ。 怪人違いだったようだ」
「なるほどねえ……僕だけじゃなく、9thたちも町から引き離してからの戦闘ねえ。 そりゃあ、筒抜けにもなるよねえ」
定二は溜息混じりに背伸びをした。
クオーレの浮かべる表情にも重いものがある。
U=2は相変わらずだが、心なしか顔色に青みが増したように見えた。
そして、プリーズ・ジングは事実を吐き出す。
「ああ、元11議席メンバー。 第五席【