ミカベネ物語  ツウィッタウン事件簿   作:ミ景

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 ビジネスホテルの一室で向かい合う御景とサイシャの両名の間には沈黙が流れていた。

「……ドクターがワイの所に……ねぇ」

 沈黙を破った探偵の口元は引き攣っていた。

「はい、Dr.シスタゲットは貴方にお願いするのが一番だという御言葉を受けておりました。 その点に関して何か不都合でも?」

 見た目は少女だが、中身は機械という精巧に人間を模した存在は自然と首を傾げていた。

「そのことで困るなんてことはないが……よりにもよってワイを頼りにするとは」

「はて、貴方と彼の関係は良好だと判断出来ましたが、間違いでしょうか?」

 サイシャの問いに空になったココアシガレットの箱を片手で潰しながら御景は言葉を紡ぐ。

「いや、別に悪いなんてことはないが特別仲が良いってわけでもない。 少なくともワイはそう思っている」

「なるほど。 これが人間関係における考えの不一致。 そうして何時しか自身とは規格が合わない存在を排除などを行っていくことで自らの生きやすい環境を整えていくといわけですね」

 彼女の答えに探偵は眉を(ひそ)めるが否定はしなかった。

「まあ、生きてる人間の数だけ思考や思想やらがあるわけだろうし、面倒なのが絡まるのは当然だろう。 それは避けれないし……加えて言うなら万全と思っていても望んだ通りに物事が運ぶとも限らないしな」

「なるほど、とても参考になります」

 皮肉が一切含まれていない声音。

 相手が機械だからではなく、そういうものに慣れて培った御景の経験からくるものであった。

「それで……ドクターはワイに頼れ、としか言っていないのか?」

「はい。 既に何度もお伝えしたように私自身が狙われる要素に心当たりがありません」

 何とも引っかかる言い方に探偵は指摘した。

「まるで他の要因が絡めば別とでも言いたいのか?」

「もちろんです。 私たち"姉妹"はロックカンパ──」

 片手で御景がそれを制すとサイシャの表情に怪訝なものが浮かぶ。

「その件の話には突っ込みたくはない」

「……了解しました」

 サイシャはそう言うと口を閉ざし、視線は真っ直ぐに探偵を捉える。

「……ワイの顔に何か付いているのか?」

「ええ、一般的な男性についている顔の部位が付いていますし、どれも平均的です。 強いて言うなら少し鼻が高いということでしょうか」

「……そりゃどうも」

「それに御言葉を返すようですが、貴方自身に何か物申したいとお見受けしますが?」

 サッと視線を逸らした御景にサイシャは追撃。

「私の胸元や太腿に何度か視線を感じたことと関係あるのでしょうか?」

「ほっておけ」

「よろしければ、私が性欲解消のお手伝いをしましょうか?」

 淡々と羽織った上着をはだけさせ、下着姿が露わになる。

 発育途中と思わせるような僅かに膨らんだ胸と、細すぎずに程よい太さをした手足にシミ一つない綺麗に透き通った肌、そして少女の秘部を隠す薄い水色の下着が映り、幼く見えるサイシャの唇の隙間から覗かせる舌先は挑戦的に誘っていた。

「……くだらないことしてないで、いいから服を着ろ」

 その誘惑に一切惑わされることなく、スッパリと切り捨てた御景に不服そうな反応を示したサイシャ。

「ふむ、情報ではこれでイチコロとあったのですが……」

「情報元は気になるが、ワイに言わせてもらえば機械相手に欲情するか」

「はぁ……確かに先程の行動をする前と直後に向けられた視線を比較しますと別のものでありました」

 その結果に耳を傾けている御景はバツが悪そうだが止める気はないようだ。

「そうですね、一言で表すなら……"敵意"の有無でしょうか。 私の"オイロケ"行動前のものがほぼ0%のだったものが、行動直後では80%ほどにまで上昇しています。 私の記憶(データベース)で照会する限り"殺意"に近いものと思われます」

 分析結果を述べながら、着衣をこなしていく少女。

「お前が思えばそうなんじゃないか?」

 皮肉たっぷりの言葉に感心したように頷くサイシャに溜息を漏らした探偵は違う話題を振る。

「この小切手もドクターから預かったものか?」

「いえ、正確に述べますと、本来ならDr.シスタゲットに渡るはずであった権利が私に譲渡されたということになります」

「……あー、ドクターにこれを渡したのは誰かわかるか?」

「いいえ。 しかし、渡そうとしていた人物は知っています」

「…………またアイツに会うのか」

「……?」

「当ててやるよ、渡そうとした奴の名前」

 懐から取り出した小切手の隅には忌々しくも映る大手企業のロゴマーク。

狂咲(くるいさき)……いや、ロックカンパニーだろ」

「はい」

 探偵はサイシャの即答に、話が早くて助かると前向きに考えるようにした。

 

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