ミカベネ物語  ツウィッタウン事件簿   作:ミ景

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少しペース落ちてましてすいません


ファイル、1-8

 【ファットマン】らしき人物を気絶させ、奴を椅子に縛りつけると御景は少し買い出しに出かけると言って部屋から出て行った。

 ごみ屋敷に一人取り残された俺は部屋を散策しようと思うが、辺りの惨状を見て大人しく待つことを決める。

 流し目で見た薄型大型テレビで垂れ流しにされている児童向けと思われるアニメーション。

 内容は小中学生ぐらいの女子が異能の力を纏って、異世界からやってきた怪物や組織と戦うという、一部の層には定番で人気もあるものだ。

「……」

 理解できない珍世界というか、奇妙なものを眺めている気分になる。

「謎や財宝相手に戦うトレジャーハンターがこれとは……複雑な世界だぜ」

 まあ、単純な好みの問題も出てくるだろう、何せ俺たちトレジャーハンターの中にだって専門はあるし、専門外のはゴミに見えるなんてしょっちゅうある。

 そう考えているうちにアニメの映像は主人公と思われるキャラクターとその他が走る映像と、スタッフロールが流れていた。

 別に俺はアニメとか自分に興味がないことを蔑む気はねえし、世間のいうアニメなんかが悪影響を子供に与えるとも思わねえ……ただ───

 気配が気になり、後ろを振り向く。

「……ふー……ふー……」

 いつの間にか目を覚まして、ギラギラと血走った眼でアニメを視聴する『大きなお友達』って奴が俺は怖くてしょうがねえ。

 エンディングが流れ終わって、主人公&その他キャラクターの集合絵で右下に『来週もお楽しみに』と定番の文字が並んでいる。

「……相変わらず、いいいエンディングだった」

 本人は満足らしく、頬に涙が伝ってる辺りが相当な感情移入をしているようだ。

「……そんなにいいもんかね?」

 悪気はない、ただ純粋な好奇心からの一言だ。 それがファットマンの逆鱗に触れたらしい。

「あん? テメエ馬鹿にしてんのか? ふざけんじゃねえぞ!!」

「どうどう、落ち着けよファットマン」

 『ファットマン』──その呼び名も気に食わないらしくあからさまに声を荒げる。

「俺をそう呼ぶのはいつだって俺を利用する奴だけだ!? テメエもそうなんだろ!?」

 まあ、あながち間違いではないので、答えに窮する。

「おまけにあの野郎だなんて最悪だぜ!」

 自室にも関わらず唾を吐き捨てるファットマン。

 俺は気になったことを聞くことにした。

「お前って御景とどういう関係だったんだ?」

 その質問に怪訝な表情になるが、どこか納得する巨漢。

「ははーん、アンタさては何も聞かされずにここに連れて来られたんだな?」

「どういう意味だ?」

 得意気に語る黒豚野郎の答えを待つ。

「俺は奴と組んだことあるけどよ、止めといたほうがいいぜ? アイツは裏切るからよ」

 裏切り……聞き捨てならない単語に嫌な記憶がちらついた。

 無意識に険しい顔にでもなっていたのか、ファットマンから小さい悲鳴が漏れる。

「……で、どうするんだよ?」

 震えるような声で問いが投げられるが、自然と俺は思ったことを口にした。

「裏切り者は殺るしかねえだろうな……一応、話くらいは聞いてやるつもりだがね」

 まあ、聞くと言っても楽しい愉しい【質問タイム】になるだろうな……。

「あ、アンタってその……裏社会の人間なのか?」

 先程とは少し違い、恐怖の中に輝かせたような目で見てくる豚野郎の視線に気持ち悪さを感じながらも律儀に答えた。

「いや……俺はこの町に最近やって来た──トレジャーハンターだ」

 沈黙。 それを破ったのはファットマンの堪えきれなくて噴き出した笑い声。

 俺は既視感に襲われ、反射的に両手の関節を鳴らす。

 【質問タイム】をやってもいいかもな……ナイフ一本あればこと足りるしなぁ。

 そこで部屋の前に人の気配。

「いやー、お待たせ」

 呑気な探偵野郎のお帰りだ……得物に手を伸ばしかけた手を戻して、俺は奴が買ってきた物を物色する。

 袋の中には棒アイスのファミリーサイズとお買い得のステーキ肉、そして片手で使えるバーナーなど用途が不明なものが多い。

「お前、これなんに使うんだ?」

 俺の問いに御景は肩を竦めながら、何やら準備を進めるだけで答えはしなかった。

「……」

 特に不満もない俺は手頃な椅子に腰掛けると、また流れ出した先程のとはアニメを眺めることにした。

「おい、クソ探偵! よくも俺の前にまた姿を現せたな!?」

 喚き立てるファットマンの怒声と、冷静に対応する御景のやり取りをBGMに俺は目の前の映像に集中する。

 内容としては、時代は近未来で人型の巨大ロボットを駆って、それを取り巻く世界の情勢やらなんやらで振り回される少年が主人公のようだ。

「おいおい、フランクリン……何度もいうが俺は──ワイはお前のためを思ってやったことなんだよ」

 なるほどな、十数メートルの人型ロボットがあんな激しい動きをするなんていう現実離れした設定はともかく、人間関係や思春期ならではの考え方、また主人公の中に眠った才能やらも鍵を握っているのか……。

「はあ!? んなもんで俺が納得すると思ったのかよ?」

「ワイはお前の母親に頼まれたからやったんだ、いい加減認めろ!!」

「ふざけんじゃねえ!!」

 ほー、中々戦闘描写も熱いじゃねえか……。 こりゃあ、ハマっちまうかもしれねえな……。

「……俺はそれでもお前と一緒に続けたかったんだよ!」

「──フランクリン、わかったよ」

 気づけば、エンディングまで魅入っちまったな。 それとどうやら二人の間も少しわだかまりも解消されたらしい。

「それで仕事頼めるか、フランクリン」

「おう。 とりあえず、どこ狙ってるんだ?」

「【虎の門】」

「嫌だ」

 その一瞬で温まった空気が壊れた。

 御景の視線から俺は肩を竦めると、買い物袋から使えそうなものを選ぶと行動に移す。

「お、おい。 やめろよ……なあ!?」

「ようこそ、フラン──いやファットマン。 これがお前の憧れた裏社会だ」

「はぁああ! お前らふざ──っ」

 俺は煩い奴の口をボールギャグで塞ぎ、視界に黒い布で覆う。

「へえ、結構手慣れてるんだな」

 御景の軽口に軽く殺意を抱く。 正直あんまり触れられてねえ部分だからだろうな。

「うるせえ、昔の癖みたいなもんだ」

 そうかい、と御景は興味なさげに返したあと、皿に載せたステーキ肉を運んできた。

すると、片手にガスバーナーと棒アイス一本を持って話し出した。

「よし、お話の時間だ。 煩くされるのも面倒だから、塞がせもらったが悪く思わないでくれよ。 返事はイエスが縦に、ノーは横で首を振ればいい……OK?」

 その言葉に首を縦に振るファットマン。

「よし、じゃあ続きだ。 お前はワイたちに協力してあの【ロックキャットバンク】へハッキングをしてもらうつもりだ……OK?」

 そこで答えを渋る奴に御景は溜息。 近くで一度バーナーを噴かすと、ビクッと巨体が揺れた。

「知ってるか、超高熱で炙られると火傷の痛みは熱さよりも神経が焼き切れて冷たく感じるらしい……なあ?」

 ファットマンの呼吸が荒くなる、俺は御景の目を見て考えていることが透けて見えた。

「嘘と思うなら試してみるか? なに、良い医者は知ってるから紹介してやるさ」

 ゴオォと勢い良く吹かし続ける炎の音を聞いて、身体を揺らし、声にならない叫びはボールギャグの穴から飛び散る涎でファットマンの必死さを察した。

「どうする?」

 御景の問いに答える余裕はないのか、返事をする気配はない。

 ふぅと息を吐くと御景は躊躇いなく、肉を焼いた。 肉が焦げる嫌な臭いが瞬時に部屋を包む。

 飛び上がって叫ぶファットマンを見て、俺は笑いを堪えるのが必死だった。

 何せ、御景が焼いたのは近くにあるステーキ肉で、ファットマンが飛び上がったのは片手にあったアイス棒を腕に当てたからだ。

「どうだ、冷静になったか?」

 その問いに探偵の本気さを悟ったのか、巨躯な男が必死に頷くの見るとまた笑いそうになる。

「じゃあ、もう一度聞くぞ──ワイらに協力するか?」

 今度の返事も少し躊躇った素振りは見えたがすぐに縦に首を振った。

「よし、ベネット頼む」

 案外呆気ないなと思いながらボールギャグを外すと、意外な言葉が飛び出す。

「お、俺が悪かった……だから、もうやめてくれ頼むよ、な?」

 身体はデカいが精神面は並みのものらしい、噛みながらも早口で言葉を吐き出すファットマンの口に御景は溶けかけのアイスを突っ込む。

 視覚がない状態でそれの正体を判断するのに時間は掛かったが、どうやら心当たりが浮かんだようで咀嚼するとあっという間に棒だけの状態になった。

 目隠しも取ってやると、状況を理解したのか顔を紅潮させ暴言が溢れてきたので俺はまたボールギャグを咥えさせる。

 暴れるファットマンを他所に御景はバーナーで焼いた肉をフライパンで調理し直すことにしたらしい。

 そして、俺はまたテレビを見ることにした。

 今度は復讐に燃える男の話のようだが、あまりにも美化されたその内容はあんまり好きにはなれそうにない。

 今日だけで俺のアニメへの認識は変わりつつあるが、同じく譲れないものや重ねてしまうものがあるということだ。

 「おーい、ベネット! 皿を頼む!」

 キッチンから聞こえる探偵の声が聞こえた。

 この後、縛られた部屋の住人と不法侵入者二人が一緒に食卓を囲むのはまた別の話である。

 

 

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