ミカベネ物語  ツウィッタウン事件簿   作:ミ景

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ファイル?、11議席

 ツウィッタウンのとあるビルの一室。

 調度品はほとんどなくガランとした室内には巨大な長机。 それを囲むように十一つの椅子が用意されそこを埋める六つの人影。

 その集団はツウィッタウンを統括するとされる組織【11議席】と呼ばれる者たちで、今日はメンバーが集まる定例会議であった。

 小刻みに秒針の音が嫌に室内に響くほど静かで、その懐中時計の持ち主は眠たそうに伸びをした。

 見るからにだらしのないジャージを上下に着て、ボサボサの髪を掻きながら男は時刻を確認する。

「まだ時間じゃあねえが──新人の【11th】、欠席安定の【1st】、遅刻魔の【2nd】ならいざ知らず、【4th】と【5th】が代理人も立てずにってのは珍しいんじゃねえか?」

 男はこの組織の7番目の席に座る【7th】──【ウォッチマン】

 対面に座り髑髏を催したであろう仮面を被りうっとおしそうに口を開いたのは【8th】の【ウムブラ=シーカリウス】

「時間じゃないなら黙っていればいいだろう? なんならそのまま呼吸も止めてもらえれば嬉しいんだが」

「あん? 突っかかってくるなよ──殺すぞ?」

 室内の空気が圧迫されるが誰もが涼しい顔でいる。

「まぁまぁ、落ち着いて……ヤるなら外でお願いしますね」

 和服装束で身を包み、両目を閉ざしニコニコと笑いながら物騒なことをいう人物は【9th】こと【燐火 崇正】

「……原則として『メンバー同士』での殺し合いはご法度のはずだろ、なあ【6th】?」

 そういったのは目深くストレートキャップを被り、傍らに竹刀袋を置いている【10th】こと【路路有楽 魑祀】

「ああ。 まあ『表』ではな」

 そう答えたのはウサギのマスクで顔を覆う人物【ラビット=ビット】 彼は議席では6番目の席に着いている。

「…………」

 一人知らぬ存ぜぬと言うように隅の席に座る【3rd】、【クオーレ=ビャンコフ】は眼鏡を掛けた中性的な顔立ちでいつも通りにヘッドホンを装着し自身の世界に籠っていた。

「ったく、暇でしょうがねえ……お前の『眼』でなんか見えねえのか?」

 ウォッチマンが隣に座る燐火へそう問いかけると少し反応に困った様子だ。

「見えないことはないだろうけど、あくまで少し『先』が視えるだけだしね」

「お得意の【天眼通】ってやつか?」

鼻で笑うウムブラに対して不快さも出さず燐火は返す。

「そんな大したものじゃないですよ、僕のは二手三手先読めて便利ってだけですし、片目だけですから持続も効きませんし」

「やめとけよ、その類いのには皮肉は通じん。 恐らく、天然ってやつだ」

魑祀の助言に8thは舌打ち。

「まあ、仮に残りの面子が来なくても構わん程度の内容の予定だ。 あとで俺の方からコンタクトは取るだけだしな」

半ば諦めた声でラビットはフォローを入れておく。

「おいおい、【BIG5】が多めだからって贔屓してんだろウサ公!」

ウォッチマンは机を乗り出して、斜め前のラビットへ抗議。

「興奮するんじゃあない7th、発情期か?」

「テメェには言ってねぇんだよ、ドクロ野郎」

火花というより、既に懐の得物に手を掛けるウムブラと拳を固めるウォッチマン。

「新調したスーツは汚したくなかったんだがな」

「言ってろ、テメェの血で汚すだけだろ」

互いが臨戦態勢を取るなかで制止を掛けたのは9thだった。

「あー、盛り上がってるところ悪いけど──来るよ?」

燐火の閉ざされていた右目は開かれ、瞳は淡い赤で輝いていた。

二人の殺気は霧散、舌打ちと共に着席。

それと同時にドアが開かれた。

「ハロハロー、久々に遅刻せずにボク到着しましたよー!」

スーツを着た美男子だが、そのテンションの高さからかうんざりしたような視線で迎え入れられたのは【2nd】、【狂咲 定二】。

「あれ? 反応薄いな」

その後ろからも人影が続く。

「──……」

枯れきったような老人を乗せた車椅子と、それを押す少女。

この老人が議席4番目の位置にいる【U=2】

「……」

その後ろに着いて来たのは白衣を羽織り、顔にはペスト医師を彷彿とさせる仮面を被る人物。

最近入れ替わった【11th】、【マスターc3】

そして、最後に部屋に入ってきたのは影を切り取ったかのような黒衣で全身を包み顔は白い菱形の面を着けている。体型、性別、年齢も判別つかないそれは【1st】こと【プリーズ=ジング】

1stの登場に違った意味で緊張感が走る。

「いやぁ、ちょうどそこで合流してさ、折角だしみんなで行こうってなったんだよ」

席に着きながらそう言う2ndを殆どが無視するなか、あと一席空いていることを魑祀が指摘。

「5thはどうした?」

「──彼なら脱退した」

響いた合成音声の主は1st。

「へぇ、あのオッサン抜けたのか」

頬杖をつけながら呑気に言う7th。

「…………」

頭を抱えるラビット。

「通りで全員集合というわけか」

どこか納得する8th。

「いやぁ、これはビックリ。彼ほどの人材を失うのは惜しいなぁ」

白々しい2nd。

各々反応は様々だが、ラビットの視線は1stの元へ向けられる。

「どうなされるんで?」

その問いに室内の視線が1stに向けられる。

温度差はあるが誰もが言葉を待っていた。

「──彼に関しては既に解決している。 それに次なる候補者も目処はついている」

その言葉に納得するもの、口には出さないが不満に感じたものだが、今は違う問題に着手することにする。

「候補者はどんな奴なんですか?」

滅多に口を開かないクオーレの問いに1stは手で制す。

「今回の『御題』は候補の人物を見つけてもらうというものだ」

最近、組織に入った数人の頭には疑問符が浮かび上がる。

逆に古参メンバーは御題というワードを聞いて複雑な空気を漂わせた。

「なんだそれ?」

ウォッチマンの質問を狂咲が答える。

「あー、簡単に言うと『クリアすればご褒美貰える』っていう1stなんかが定期的にやるシステムなのさ」

「やるやらないも自由だが、やれば恩恵も貰えるわけだし、俺たちの目的達成には確実に繋がるわけだ」

付け加えたラビットの発言に新規メンバーも納得。

「──詳しい情報はあとで送る、私からは以上だ」

それを伝えると1stは沈黙。

後を引き継ぐ形でラビットが会議の進行を続けていく。

 

 

 

 

しばらく、話し合いが進む中で最後の議題に移った。

「皆も知ってると思うがここ最近は【怪人】なるものたちの行動が活発化してきたわけだが」

興味なさげに話を流していたメンバーもその話題には食い付く。

「中でもここ最近注目するのは【首なしライダー】、【辻斬り】、【肥大する頭】って奴らだ」

報告するラビットが資料を壁に映し出す。

「肥大の方は俺の担当地区らしいから、任せてもらうぜ」

釘を刺すように言うウォッチマン。

「辻斬りさんはボクとチーちゃんの担当地区と被るみたいだけどどうする?」

「……俺はどっちでもいい、見つけたら殺るだけだ」

2ndと10thはお互い打ち合わせる。

「首なしは──僕と四番さんみたいですね、よろしくお願いします」

老人は直接ではなく、耳を近づけた傍らの少女が代わりに答えた。

「──……、えぇ。 教祖様もよろしく頼むとのことです」

意外にすぐに話がついたところでラビットは話を変える。

「今回の件に対策をするためにも新たなる拠点が必要と考えているのだが、俺的に【霊峰山】にあるとある道場の立地がいいと思うんだが……」

そのワードに7thの顔が曇る。

「……それってどこの道場だ?」

「ん? 詳しくはまだ調べてないが【モーセ神拳】って流派の奴らしいが、お前辺りに出向いて貰おうと──」

「パス」

即答。

「俺の宗教上、今そこで殺りあうってなると面倒なんだよ。 私情は抜きでな」

「あ、ちなみに僕も同業の人とはヤりづらいんでパスでお願いします」

武道派二人の棄権に困惑する6th。

「怖じ気づいたのか?」

ウムブラの煽りにウォッチマンは鼻で笑う。

「悪いが法師との約束があるんでな、テメェの安い挑発に乗るわけねぇんだよ」

「……なら順当にいけば、8th、10thになるな」

「了解した」

「俺も参加ってことでいいのか?」

魑祀の質問にウムブラは「好きにしろ」と答える。

「あー、悪いが10thは8thのサポートってことで付いてもらえるか?」

「……わかった」

断ろうと思った瞬間、マスクの下にある6thの表情を考えると魑祀は言葉を飲み込んだ。

 

 

そう話しているうちに会議は終了し、各々解散となる。

「おい、10th」

呼び止めたのは7th。

二人の仲は悪いわけでもないが良好でもない──そんな間柄だ

「どうした?」

「今度の作戦で道場行く時、もし師範代が女なら弟子を狙え、野郎ならそのまま殺れ」

ウォッチマンの言葉に理解が出来ず、は? と聞き返す。

「俺の知ってる女なら下手するとお前が死ぬってやつと、そっちのほうが楽できるって話だよ」

それだけ伝えると彼はそのまま部屋を後にする。

魑祀は少なくともこの組織のメンバーは実力者が集まってることは把握しているつもりだが、同じ武術を嗜む7thと9thに関してはまだ未知数であった。

そんな奴がわざわざ警戒するほどの存在が待っているかもしれない……。

自然と得物を握る手に力が籠った。

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