首なしデュラハンとナザリック   作:首なしデュラハン

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仮装世界を現実のように体感し、ゲームの中を冒険できる、DMMO-RPG『ユグドラシル』。

創作の自由度の高さから、多くの人が夢中になった。
しかし、10年以上続いたそのゲームもサービス終了の日を迎えていた。

サービス終了の時間が迫る中、ある1人のプレイヤーがまだ、そのゲームにログインしていた。

そのプレイヤーは、とあるギルドの入り口にある見張り小屋、ログハウスの中で、自分の製作したNPC達と最後の時間を過ごしていた。部屋の中のベッドを椅子代わりにしながら、自分の目の前に並んでいるNPC達の頭を順番に優しく撫でる。

そのプレイヤーは呟いた

『まだ別れたくない』

そのプレイヤーは言った

『もっと一緒にいたい』

そのプレイヤーは願った

『私から、この子達を奪わないでくれ』

そのプレイヤーは思った

『また、1人になるのは嫌なんだ』

言葉も願いも、もう叶わない事だと
彼は知っている。
だからこそ、せめて最後ぐらい、たっぷりと、
愛情をそそぐ。
もう会えなくなるであろう、大切な彼女達に。

そして、そのプレイヤーは、
終わりの時間を迎えたとき、
自分の意識が遠のくのを感じた…


【第一章】新しい冒険の始まり
第1話 終わりの日


ユグドラシルの中でも、異形種のみで構成されたギルド『アインズ・ウール・ゴウン』。メンバーはたったの41人。少数ながら最も強大で豪華な拠点『ナザリック地下大墳墓』を構え、一時期は約1500人ものプレイヤー達からの侵攻を防ぎ、防衛に成功したギルドである。ユグドラシルのプレイヤーなら、もはや知らない人はいないとまで言われた悪名高いギルドである。

 

しかし、その有名なギルドですら、今ではギルドメンバーのほとんどが引退し、残ってるメンバーも長期間ログインしない人達が多く、頻繁にログインしていたのは2人だけだった。

 

1人は、ギルド長の「モモンガ」

異形種「アンデッド」で魔王のような衣装を着ている骸骨の魔術師(マジックキャスター)である。

ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』を運営し続け、くせ者揃いだったギルドメンバー達をまとめあげていた。

引退したメンバーが、いつ戻ってきてもいいようにと、装備品を保管してあげている仲間思いな人である。

 

そしてもう1人が、41人のギルドメンバーのうちの1人

(かつ)

異形種「アンデッド」で、グレーのドイツ軍服のような格好をした『首なしデュラハン』である。彼がデュラハンなのは、生まれつきの障害により声が出せず、会話ができない事をアピールしやすくするためである。会話の際は、チャット文と表情アイコン、ジェスチャーを使って成り立たせていた。

 

モモンガと勝は、「現実」の世界では親友であり幼なじみであった。実家が隣同士であり、小中高と同じクラスで、高校を卒業するまでほぼ毎日一緒だった。

会話ができない勝に、モモンガはとても親しくしてくれていた。

高校卒業後は、モモンガの仕事の都合でお互い離れ離れになり、気軽に会いに行けなくなってしまったが、ユグドラシルを通じて会えていたので問題無かった。

 

しかし、そのユグドラシルも、もうじき終わる。

ユグドラシルサービス終了日、2人はギルドにあるメンバー専用の会議室にいた。

 

ギルド長のモモンガがギルドメンバー達にメールを送信し、久しぶりにみんなで最後を迎えようと計画したのだが、メール読んでログインしてきたのは2〜3人ほどだった。しかも、ログインしてきた彼らも、「現実」の都合もあってか、少し会話しただけで帰っていったのだ。

今は、約2年ぶりにログインしてきたギルドメンバー、スライム種の「ヘロヘロ」と、ギルド長と勝が談笑している。

 

だが、ブラック企業に勤めているヘロヘロは、かなり疲労しているようで、今にも寝落ちしそうである。

 

「ヘロヘロさん、大丈夫ですか?」

 

「……え、あ!ハイ。すみません、仕事の疲れが酷くて…。昨日もあまり寝れてないんです。」

 

「そんな状態でわざわざ来てくださってたんですね。すみません、無理させちゃいましたか?」

 

「モモンガさんが悪いわけではないですよ。ウチの会社、あきらかにブラックですから。」

 

【ヤバイらしいですからね。アソコは。】

 

チャット文が勝の頭の上に表示される。

 

「一応、私はサービス終了時間までログインし続けるつもりで居ますが、お二人はどうします?後、約20分ぐらいありますけど…」

 

「私もそれくらいなら、ログインしたままでいようかな。もしかしたら、まだ誰か来るかも知れませんし。まぁ、先に寝落ちする可能性もありますが。その時はすみません。」

 

「そうですか。わかりました。勝さんは?」

 

【私は…】

 

「?……勝さん?」

 

【最後に自作のNPC達に会いに、表層のログハウスに行こうかなと、思います。いいですか?モモンガさん。】

 

ナザリック地下大墳墓の表層には、見張り小屋と呼ばれるログハウスがある。勝のNPCは、そこの警備員として役割がふってあり、待機している。

 

「構いませんよ。勝さんにとって、彼女達がどれだけ大切な存在かは理解してますから。」

 

【ありがとうございます。では、行ってきます。】

 

デュラハン姿の勝が席を立ち、一瞬で消える。

 

[リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン]

その指輪は、ナザリック地下大墳墓の全ての階層にワープできる、ギルドメンバー専用の指輪である。

 

モモンガは、勝が居なくなった事を確認したあと、ヘロヘロが寝息をたてて寝ている事に気付く。

 

声をかけて起こそうかな

 

と考えたがすぐやめる。疲れているヘロヘロを起こすのが申し訳なく感じたからだ。

 

「(まぁ、まだ時間もあるし、大丈夫かな。最後にみんなで、玉座の間に集まって終わろうと思ったけど、この人数で集まっても仕方ないか…)」

 

モモンガは席を立ち、ギルドの象徴である杖を持って玉座の間に向かう。疲れて眠っているヘロヘロを、モモンガはそのままにしておくことにした。

 

 

一方そのころ、勝は…

 

指輪のワープでナザリックの入り口に移動していた。

そこから歩きながら、目的のログハウスを目指す。

 

見張り小屋という名前の割には、しっかりとした家であり、見た目の割に中は広い。

家具も充実しており、ベッドまで置いてある。

 

勝はログハウスに入り、部屋の奥に置いてあるベッドに座り、自分の製作したNPC達の名前を呼ぶ。

正確には、チャット文で指示を出したのだが、NPC達は当たり前のようにやってくる。

 

そして、勝の目の前にくると、「おすわり」と呼ばれる待機ポーズになる。

続いて、服従を示す「服従のポーズ」をして、勝が主人であることを示す。

このモーションはNPC製作時にヘロヘロが組み込んだものだ。

 

両手を地面に付け、足はM字開脚という。

まさに「待て!」をされた犬のようなポーズがおすわり。

 

両手を地面に付け、膝は伸ばし、尻を高く上げ、頭を両手の上にのせるポーズが服従のポーズである。

 

その光景を眺めながら、勝は思う。

あらためて見ると、かなりエロい。

最初は、運営の規定にひっかかり、アウト認定されると思っていた。が、ヘロヘロさんがうまい具合にギリギリラインを攻めているので、なんとかセーフで済んでいる。

 

勝が作ったNPCは三体。

全部、異形種「竜人」の三姉妹である。

 

1人目は三姉妹の長女

名前は「ブラック」

 

人型形態の身長は約170cm。

2本の短い角が頭にある。

黒い長髪でツインテール。

日本人に近い顔つき。

目の色が黒

肌の色は肌色。

 

全身が竜の鱗でできており頑丈。

アダマンタイト級鎧より硬い。

鱗を変色&変形させて、人に近い形に見えるようにしている。

 

胴体は黒を基調としたレオタードのようなピッチリスーツを着ているように見えるが、鱗の色を変色させているだけ。

(*例えるなら対魔忍みたいなヤツ)

 

肩から腕、太腿から足先まで黒を基調とした甲冑を付けてるように見せている。

ところどころの関節部に白のラインが入っている。

手の爪はそこそこ鋭い。

足の部分は足袋を履いている。

 

普段は隠してるが、背中に羽も生やせる。

 

竜人特有の長がく太い尻尾が生えている。

尻尾の先がトンガっており、串刺しもできる。

尻尾の鱗は刃物のように鋭く、硬い。

 

首に、赤くて長い布を巻いていて、口元をかくしている。

 

 

2人目は次女の「ブルー」

 

人型形態の身長は200cm

2本の短い角が頭にある。

金色の長髪でツインテール。

イギリス人に近い顔つき。

目の色が青

肌の色は白人に近い。

 

全身が竜の鱗でできており頑丈。

アダマンタイト級鎧より硬い。

鱗を変色&変形させて、人に近い形に見えるようにしている。

 

胴体は白を基調としたレオタードのようなピッチリスーツを着ているように見えるが、鱗の色を変色させているだけ。

(*例えるなら対魔忍みたいなヤツ)

 

肩から腕、太腿から足先まで黒を基調とした甲冑を付けてるように見せている。

ところどころの関節部に青のラインが入っている。

手の爪はそこそこ鋭い。

足の部分は足甲を履いている。

 

普段は隠してるが、背中に羽も生やせる。

 

竜人特有の長がく太い尻尾が生えている。

尻尾の先がトンガっており、串刺しもできる。

尻尾の鱗は刃物のように鋭く、硬い。

尻尾の真ん中に青いナイトシールドを括りつけている。

 

 

3人目は、三女の「レッド」

 

 

人型形態の身長は200cm

2本の短い角が頭にある。

金色の長髪。

イギリス人に近い顔つき。

目の色が赤

肌の色は白人に近い。

頭だけ赤いフードで隠している。

 

全身が竜の鱗でできており頑丈。

アダマンタイト級鎧より硬い。

鱗を変色&変形させて、人に近い形に見えるようにしている。

 

胴体は白を基調としたレオタードのようなピッチリスーツを着ているように見えるが、鱗の色を変色させているだけ。

(*例えるなら対魔忍みたいなヤツ)

 

首に手の平サイズの赤い水晶をネックレスのようにぶら下げている。

 

肩から腕、太腿から足先まで黒を基調とした甲冑を付けてるように見せている。

ところどころの関節部に赤のラインが入っている。

手の爪はそこそこ鋭い。

足の部分はブーツを履いている。

 

普段は隠してるが、背中に羽も生やせる。

 

竜人特有の長がく太い尻尾が生えている。

尻尾の先がトンガっており、串刺しもできる。

尻尾の鱗は刃物のように鋭く、硬い。

 

 

3人ともドラゴン形態になることができる。

鱗の色も、黒、青、赤

と、分かれている。

 

勝にとって、彼女達三姉妹はとても大切な存在なのだ。

 

勝は、「現実」世界では動物園の飼育員の仕事をしていた。子供の頃から動物が好きで、将来家で動物を飼いたいと思っていたのだが、現在1人で住んでいるアパートは動物禁止の住居だった。

なので、動物と触れ合える職業を探した結果が動物園の飼育員の仕事だった。

数年間やり続け、動物園の動物達にも懐かれ、毎日エサをやるのが楽しかった。

 

しかし、経済の悪化が原因で、勝が働いていた動物園が閉園になったのだ。愛着が湧いていた動物達は、違う動物園へと移送され、勝の飼育員の仕事も無くなった。今は、コンビニのアルバイトをしている。

 

動物が居なくなり、悲しくなった気持ちをゲームの中でモモンガに言うと、

 

「なら、動物系のNPCでも作ってみます?現実で飼えないならゲームの中で飼いましょう!少しは気が晴れるかもしれませんよ。」

 

という流れで、NPC製作が始まったのだが、初めての製作だったので勝手がわからず、モモンガに教えてもらいながら作っていた。

すると、たまたま居合わせた、タブラ、ヘロヘロ、ペロロンチーノまでもが混ざり、賑やかになり始めたのだ。

 

「やっぱ美少女要素は入れるべきでしょ!竜人なら、ドラゴン形態にもなれるのでダブルでお得ですよ!」

 

「任せて下さい!勝さん好みのキャラ設定にしますから!」

 

「ペット系彼女ですか?なら、モーションは私がつくりますよ!」

 

など、かなり盛り上がりをみせ、完成したのが

「ブラック」だった。

 

(どうしてこうなった…。でも、これはこれで悪くないな。)

 

当初の予定とは比べられないほど見た目や設定が盛られているが、作ってしまったものは仕方ない。

 

しかし、タブラさんが私の希望にそった設定を元に、いろいろ付け足して作ってくれた設定なのだが、あるワードを見て質問する。

 

【タブラさん。ここに〈三姉妹の長女〉って設定があるんですけど……まさか、あと2体作るんですか?】

 

「そうですよ。でも、残りの2体は勝さんが1人で作って下さい。」

 

【ファッ!?】

 

「ブラックを参考に、勝さんだけで作って下さい。勝さんがどんなキャラつくるのか、気になるのでw」

 

【ペロロンチーノさんのシャルティアよりヒドイ結果にならないようにしなきゃ…】

 

「ヒドイとはなんだ!あれは、自信作なんだぞ!」

 

「モーションは、プログラムをコピペするだけで移せますから。」

 

【皆さん、手伝ってくれてありがとうございます。】

 

皆「どういたしまして。」

 

 

そんなこんなで三体のNPCを作ったのだ。

思えば、あの日から毎日ログインするようになったんだっけ。彼女達に会うために。

彼女達と一緒にいると、家族が増えた気持ちになれた。

一人暮らしの寂しさを紛らわす事ができたのだ。

 

だが、それももう終わる。

サービス終了時間まで、後約15分。

 

(そうだ!画面設定弄って、表示全部消して見やすくしよ。)

 

勝がコンソールを開き、ゲーム画面の設定を開く。

一括操作で、体力ゲージなどの表示が全て消える

 

(これで見やすくなった。残り5分になったら、玉座に転移して、モモンガさん達と別れの挨拶をしよう。)

 

今後の計画をたてた勝だったが、リアルタイムを表す数字の表示まで消してた事に気づかなかった。

彼は、時間も忘れてしまうほど、NPC達を撫で続けた。

 

そして、もうひとつ、彼は気づかなかった。

画面設定でログの表示まで消していた彼は、

そのすぐ後に表示されるはずだったものが見えなかった。

モモンガのメールを読んでやって来た、3人のギルドメンバーのログインの知らせに。

 

 

 

一方そのころ、

 

玉座の間にて、アルベドの設定を見ていたモモンガは、突如現れた表示に驚く。慌ててアルベドの設定を閉じる。

 

表示されたログは、たっちさんとウルベルトさんとペロロンチーノさんのログインの知らせである。

 

すると、賑やかなメッセージが届く。

 

「ギリギリ間に合った!モモンガさん、聞こえますか?」

 

「モモンガさん、まだ居ますか!?遅れてすまな…うお!?ウルベルト!お前も来たのか」

 

「モモンガさん、アップデートで遅くなりました。…って、たっちさんが来るなんて意外ですね。」

 

「お久しぶりです!皆さん!もう、誰も来ないかと思いましたよ。あ!皆さん、今会議室ですか?僕、玉座の間に居るんですが…」

 

「そこに居るんですね。じゃあ、すぐそっちに向かいます。」

 

「ヘロヘロさん、起きて下さい。寝てる場合じゃないですよ!」

 

「んがっ!?あ!皆さん来てたんですか!」

 

「最後はやはり玉座の間で集まる方がいいですもんね。モモンガさん、他にギルメンは来てないんですか?」

 

「あ!勝さんも来てますよ。今は、ログハウスのNPCに会いに行ってます。」

 

「あー!あの子達か!それは仕方ないですね。俺も、シャルティアに会いに行こうかなー。」

 

「勝さんらしいですね。まぁ、私も最後にメイド達に会いに行こうかな。」

 

「私もデミウルゴスに会いにいこうかな。」

 

「私もセバスに会いに行きたいが、残り10分も無いぞ?流石に今からでは…」

 

「あ!プレアデスなら、玉座の間まで連れて来てますよ!セバスもここに。」

 

「ホントか!流石モモンガさん!」

 

「たっちさんだけずるいですね。どうせなら、NPC全員呼びつけたらどうです?」

 

「間に合うかなぁ…近い階層なら大丈夫かもしれませんが、シャルティアはギリギリかも。とりあえず呼んでおきますね。えーと、第一階層から…ここまでの…」

 

「あれ?表層は呼べないんですか?というか、勝さんに教えたほうが…」

 

「皆さんのログインの表示みて、勝さんがコッチにくるのでは?」

 

「たしかに。なら、玉座の間で談笑しながら待ちますか。」

 

 

皆が玉座の間に移動し、楽しく談笑を始める。

途中、呼びつけたNPC達がぞろぞろとやってくるが、勝がいっこうに来ない事に気付く。

 

「勝さん、来ませんね。」

 

「たしかに。もう、来てもおかしくないが…」

 

「ログアウトしたのでは?私達のログインの知らせを見たのなら、気付くはずですし。」

 

「寝落ちの可能性は?」

 

「たぶん、寝落ちの可能性は低いかと。まだ、ログインしてるなら、たっちさん達のログイン表示を見逃すはずありません。あの人、会話でチャット使いますから、ログはこまめに見る人ですから。」

 

「ですね。来ないのはログアウトしたからでしょう。」

 

「残念だ。彼とも会っておきたかったが…」

 

「もう残り1分です。私達だけで締めくくりましょうよ。」

 

「……そうですね。では!皆さん、玉座の前に並びましょう。」

 

 

玉座に居るギルドメンバー達が、まるで記念撮影をするかのように並び、集まってきていたNPC達に向かって、最後の決めゼリフを言う。

 

「「「「「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!」」」」

 

 

表示される数字が全て0になる。

ユグドラシルが終わりを迎える。

しかし、彼らはまだ知らなかった。

これから先に待つ、新たな冒険の始まりに。




ハイ!というわけで、私の初二次創作が始まります。
いろいろミスやわかりにくい部分があるかもしれませんが、初心者なので許して☆ね!


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