首なしデュラハンとナザリック   作:首なしデュラハン

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「ガゼフ戦士長、この夜食とても美味しいですね。」
「ああ。こんな上手い料理は食べた事がない。」

現在は夜。
とある建物の食堂で、ガゼフ隊の皆が夜食を食べている。

「料理を作ってくれたブラック殿達の話では、和食という料理らしいぞ。」
「ジャパン…とかいう国の料理らしいですね。特にこの『スシ』という料理が美味しいですね。」
「コッチの『ミソシル』というスープも中々の美味しさだ。」

今、ガゼフ隊が食べている料理は、ブラック達の手作りである。
嫁修行している、という設定をブラック達に書いていたおかげで、ブラック達3人は料理が作れるのだ。
いつ嫁修行をしていたのかは謎である。

「ところで戦士長、質問してもいいですか?」
「なんだ?副隊長。」
「私達って今、空の上にいるんですよね?」
「そうだ。正確には、竜王ファフニールの上、だな。昼にも同じ事を言っただろ?」
「はい。しかも夜食を食べています。」
「昼飯の時もそうだったぞ。」
「普通の人が聞いたら、ありえないって言われますよね。」
「そうだな。だが、私達は今、それを実体験している。ありのまま起こった事を…我々は言ってるだけだぞ。」


『グリーンシークレットハウス』
拠点作成系アイテムの名前である。
ポイポイカプセルのような物に入っており、様々な種類の建物が収納されている。
これを投げることで、建物が一瞬で出来上がるのだ。
しかも、魔法で作られているため、外見の大きさに比べて、中はかなり広い。
オマケに、人間より大きい生き物が入ろうとすると、入口などの大きさが変化してくれる機能付きである。

勝が建てたのはコテージだった。
それを竜王ファフニールの背中に設置したのだ。
魔法で出来た建物なので、激しい突風や揺れにもビクともせず、建物内部にある家具が動くことも無い。

内部の家具や設備も充実しており、
ベッドとソファ付きの寝室に、
広い食堂に遊戯室まである。
無論、トイレと風呂まである。

「まさか、ドラゴンの背中で宿泊する日がこようとは…夢にも思いませんでしたよ。」
「私もだ。ブラック殿の話では、明日の早朝には王都に到着する予定だそうだぞ。」
「ファーーwww3日かかるはずの帰路が、半分以下とは…。ブラックさん達の言うとおりでしたね。」
「勝殿達には、後何度驚かされるのかわからんな。」

ガゼフにとって、自分達の常識を超える事ばかりやる勝の行動は理解し難い。
だが、興味をそそられるのも事実である。
次はどんな事をするのだろうか、という期待の気持ちすらある。

「私達もですよ。ホント、勝さんて何者なんでしょうかね?」
「ブラック殿の話では、勝殿は元々人間だったそうだ。100年以上前の人間らしいぞ?」
「100年以上前!?ホントですか、ソレ!?」
「私の知る歴史が正しければの話だが…私の予想では、500年前の年代の可能性が高い。」
「500年前…というと、八欲王が竜王達と戦ったという歴史が残っている年代ですね。根拠は?」
「まさにその竜王の上に乗ってる…では駄目か?私が見た限りでは、この竜王ファフニールで三体目だぞ?巨大な生き物を勝殿が召喚するのは。」
「八欲王との戦争に参加しなかった生き残りの竜王と契約した、という可能性は?」
「竜王を倒す程の御仁だぞ?そんな強さの者がいれば、名前くらい残っているはずだ!だが、勝殿の名前はどこにもない。200年前の十三英雄の歴史でも、勝殿の名前はないのだぞ。」
「それもそうですねぇ…ホント、謎ですよね。」

誰も勝の正体がわからない。
手がかりとなる情報はたくさんあるのに、その全てが曖昧で確たる証拠にならないのだ。

「唯一可能性があるとすれば、勝殿が召喚する竜王(ドラゴンロード)と、アーグランド評議国のドラゴン達に繋がりがあるかどうか、という部分だ。もし、アークランド評議国のドラゴン達が、勝殿の事を知らなかったり、勝殿が召喚する竜王(ドラゴンロード)を知らなかったなら、勝殿の正体は不明のままになる。」
「ドラゴンの事はドラゴンに聞け、って事ですか?」
「まぁ、そうなるな。」
「ちなみにですが…勝さんの正体がわからないままだと、どうなるんです?」
「逆にわかった場合はどうするのだ?勝殿の生前が、歴史に残る大英雄だったとしても、今の勝殿はアンデッドだぞ?英雄の死体が動き回っている、という事実しか残らんぞ。」
「そうでしたね。ついつい忘れてしまいますが、勝さんはアンデッドでしたね。なんか、存在が凄すぎて、死体だという感覚で見れないんですよね。」
「アッハッハッハッハッ!安心しろ、私もだ。あんな生き生きしたアンデッドは見た事がない。勝殿は…なんというか…今のこの世界を、楽しんでる気がするのだ。そう、まさしく冒険者のようにな。」


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ー同時刻・竜王ファフニールの頭部ー

【それで、モモンチームからの報告の内容は?】
「昼に冒険者としてのカッパーのプレートを入手、そのまま冒険者組合に行き、冒険者活動を始めたそうです。」
【むー…先をこされたか。】
「ただ、少し問題が生じたそうですよ。」
【問題?どんな?】
「例のバレアレ親子にマークされたらしいです。」
【はぁ!?あの親子、いきなりモモンの正体に気付いたの?】
「いえ、ポーションが原因らしいです。」
【え?ポーションが…?】
「はい。プレートを受け取りに行く前、宿屋の確保に向かったらしいのですが、そこで見知らぬ男冒険者達と揉めたらしいのです。」
【うわー…モモン達に喧嘩ふっかけるとか、命知らずだなーソイツら。】
「結果、モモン様がお1人で事態を解決なさったのですが、近くにいた女冒険者のポーションを割っちゃったらしいのです。それで、弁償を要求され、ペロロン様がすかさず赤いポーションをお渡しになったそうです。」
【ペロロンチーノさん、相変わらずだなぁw】
「その後、モモン様達がプレートを受け取りに行ってる間に、その女冒険者がバレアレ薬品店にて赤いポーションの鑑定を依頼、それで赤いポーションを所持している事がバレてしまったそうです。」
【つまり、アインズという事はバレてないが、私の知り合いだと言う事がバレた、という事か。】
「はい。そうなります。結果的に、ンフィーレア氏の名指しの依頼を受ける事となり、現在、カルネ村近くの森まで薬草を採取しにいく仕事をやっているそうです。」
【最初の仕事としては、中々良い仕事じゃないか?】
「それが、モモン様のチームがカッパーの冒険者であり、最初の仕事という事もあってか、経験豊富なシルバーの冒険者チームも同行してるらしいです。」
【あー、先輩冒険者達が一緒なのか。でも、モモン達の実力を知れば、デカい態度をとったりはしないだろう。】
「中々、良い関係を築けてるらしいです。」
【ほほう。良いスタートをきった、という事か。私達も負けてられないな。】
「そうですね。私達も頑張りましょう!」

【ところでブラック。前から気になってた事を聞いてもいいか?】
「なんでしょう?ご主人様。」
【人間と会話する時、偉そうな態度と言うか、上から目線な態度になってないか?】
「ああ、それですか。はい。私は、人間相手には見下すような態度で接してます。ドラゴンですので。」
【あれか?ドラゴンとしての威厳を保つためか?人間に舐められたくない、という感じの。】
「はい。その通りです、ご主人様。」
【んー…ブラック、先に言っておくが、王城で王様に謁見するときは、その態度は自重しておいてくれないか?せめて、もう少し優しい感じで言えるようにして欲しい。】
「そ、そんな!?ご主人様の方が偉いのですよ!?」
【いやwそれは、人間の王様相手に失礼だよ。冒険者にしてもらえるように頼みに行くんだぞ?相手より偉そうな態度とってどうすんだよw】
「ですが!至高の御方であるご主人様が、人間に(こうべ)を垂れるなど、あってはなりません!人間達の方こそ、ご主人様に頭を垂れるべきなのです!」
【ブラック?私の言った事が理解できないのか?】
「うっ…しかし…」
【仕方ない。私の命令が聞けないなら、今日からブラックだけ、頭ナデナデは無しな。】
「そんなぁぁぁ!?わかりました!わかりましたから、そんな酷い事言わないで下さいぃー、ご主人様ぁぁぁ!」
【よーしヨシヨシヨシ。わかればいいんだ、わかれば。ん〜、お前は可愛いなぁ〜w】
「んにゃぁ〜…」







第11話 王都と蒼の薔薇

ー早朝、ロ・レンテ城内ヴァランシア宮殿ー

 

「なんという事だ。本当に、ドラゴンがいるではないか…」

「いかが致しますか?国王陛下。」

 

宮殿のルーフバルコニーから外を眺めているのは、リ・エスティーゼ王国の国王、ランポッサ三世と、

六大貴族の1人、レエブン侯爵である。

 

現在、ロ・レンテ城がある王都では、いきなり現れたドラゴンでパニック状態に陥っていた。

城内では、兵士達が激しく動き回り、事態の収拾にあたっている。

 

「国民への被害はでているのか?」

「今のところ、被害の報告はありません。ドラゴンも、王都の東側近くに現れはしましたが、そこから動いた形跡はありません。」

「国民や冒険者に、あまりドラゴンを刺激しないように伝えてあるか?」

「はい。ですが、普通の冒険者にドラゴンの相手は不可能かと…。念の為、アダマンタイト級冒険者『蒼の薔薇』にドラゴンの監視をするようには伝えてあります。」

「こんな時、ガゼフ・ストロノーフがいてくれれば…」

「…国王陛下、お気持ちはわかりますが、王国戦士長は今、エ・ランテル近郊への任務に行っており、戻って来るには後数日はかかるかと…」

 

ランポッサ三世にとって、ガゼフ・ストロノーフは最も信頼できる人物であり、頼れる存在でもあった。

王国最強と呼ばれる王国戦士長であれば、この事態を早急に解決できたであろう、と。

 

だが、ガゼフ・ストロノーフは現在、王都の外に出撃しており不在である。

そのはずだった。

 

「御報告申し上げます!王国戦士長様がご帰還なさいました!」

「なんと!?それは本当か!?」

 

ガゼフの帰還の知らせに、喜ぶランポッサ三世。

しかし、兵士の次の報告に、ランポッサ三世もレエブン侯爵も驚く事になる。

 

「王国戦士長様は…あのドラゴンに乗って帰って来たそうです!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

【さて、先に戦士長が王都に入り、事情を説明してくる事になったわけだけど…】

「やっぱり、ファフニール様に乗って王都に降りるのは、まずかったのでは?」

【うーん…やっぱりそう思う?】

「王都の人間達が、ずっとコチラを様子見している状態ですよ?あれ、めちゃくちゃ警戒してますよ、絶対。」

 

現在、勝達は王都の東側から少し離れた場所にいる。

ファフニールを安全に着地させるためのひらけた場所が必要だったからだ。

 

一緒に来た戦士長とガゼフ隊は、

「先に王都に入って国民達に事情を説明してくる。」

と言って、王都に入っていった。

 

戦士長達が帰ってくるまで、ファフニールの前で待機する事になったのだが、

しばらくすると、武装した冒険者風の者達がやって来て、遠くから勝達を監視しているのだ。

 

アンデッドのデュラハン1人と、

竜人が1人

2体のドラゴン、

巨大な竜王ファフニール。

 

誰もが警戒して当然の組み合わせだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なぁ、ラキュース。あの1番バカでけぇドラゴンが噂の竜王(ドラゴンロード)って奴か?」

「たぶんそうじゃないかしら?手前にいる2体のドラゴンより大きいから、普通のドラゴンではないと思うけど?」

「マジかよ…。イビルアイ、お前の見立てでは、あの中で1番強いのはどれだ?」

「あくまで私個人の目安だが…強さで言えば、あのデカいドラゴンだな。その次がデュラハンだ。だが、偉さで言うなら…おそらく、デュラハンが1番だな。そして、私達より強い。確実に。」

「あの首無し(デュラハン)が?まったく信じられねぇが、イビルアイが言うなら確かなんだろうな。」

 

勝達を監視しているのは、王国に2つしかないと言われている、

 

アダマンタイト級冒険者チーム

『蒼の薔薇』

 

メンバーが全員女性で構成された珍しいチームだ。

 

リーダーは、黒い大剣を持った金髪美女の神官戦士、

『ラキュース』

 

男性冒険者よりガタイの良い女戦士

『ガガーラン』

 

仮面とボロボロのローブを被った魔術師少女、

『イビルアイ』

 

そして…

 

「鬼ボス、今戻った。」

「情報収集に手間取った。」

「おかえり、ティア、ティナ。」

 

双子の女盗賊のティアとティナ。

 

計5名が蒼の薔薇のメンバーである。

 

「それで、あのドラゴン達に関する情報は?」

「王国戦士長の話によれば…」

 

①リーダーはデュラハン。

②ドラゴンに変身できる竜人3人を連れている。

③巨大なドラゴンはデュラハンが召喚したもの。

④スレイン法国の偽装部隊から村を救った。

⑤陽光聖典を撃退し、ガゼフを救った。

⑥ブラックという名前の竜人が代弁役。

⑦デュラハンは元人間。生前が少なくとも100年以上前。だが、生前の記憶がない。

⑧アインズ・ウール・ゴウンという、何らかの組織に属する。

 

「…得られた情報はこれぐらいだった。」

「少なくとも、人間を無差別に襲う輩ではないんだな。」

「それなら、会話を試みてみる?王国戦士長様と一緒に居たなら大丈夫だと思うけど?」

「…それなら、私が行ってこよう。」

 

イビルアイが前に出る。

 

「大丈夫なのか?イビルアイ。」

「問題ない。昔、知り合いにドラゴンがいたからな。それに、相手がアンデッドなら、私のほうが都合がいいだろう。」

「イビルアイ、もしもの時は言ってね。すぐに助けに行くから。」

「フッ…私を誰だと思っている?もしもの時は、転移の魔法ですぐ逃げるから安心しろ。じゃ、行ってくる。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「我が主人よ、私は消えていた方がよろしいのでは?」

【そのままでいいよ。私が竜王(ドラゴンロード)を召喚できる、あるいは従えさせてる事を事前に知っていてもらった方が都合がいいんだよ。こういうの、大概信じてもらえないから疑われるんだよね。それに、隠す必要性もないしね。既にバレてるし。】

 

戦士長の前でいろいろド派手にやらかした後である。

今更取り繕っても意味が無い。

なら、コチラの力量と戦力を知ってもらったうえで、冒険者にするかどうかの判断を決めてもらった方がいいと判断したのだ。

それに、最初から竜王を召喚しておく事で、王都の人間達にも慣れてもらったほうが、パニックを抑えられると考えた。

 

「なるほど。ご主人様の凄さを先に教えておく事で、人間達が舐めた態度をとらないよう、牽制する意味もあったのですね。流石、ご主人様です。」

【エッ!?イヤ…ソコマデハ…ま、まあな。そういう意味も込めてはいるぞ。そ、それに、竜王を従えさせてるのでそこそこ広い土地が欲しいと、お願いできるかもしれないしな!】

「何故、土地が欲しいのですか?」

【仮拠点を作るためさ。地表部分は普通だが、地下部分はナザリック用の活動支援拠点を作成し、王国王都近辺での活動をしやすくしようかな、と考えている。】

「流石ご主人様!素晴らしいお考え…む、ご主人様!誰か来ます!仮面をつけた子供のようですが?」

【子供…か?にしては、格好が変だな。】

 

仮面とボロボロのローブ…あきらかに、普通の子供がする格好ではない。なにより、ドラゴンを従えさせた自分達に接触させるのを、周り人間達が止めなかったのが変だ。

つまり、アソコで監視している人間達の代表的な存在なのだろうが…何故、よりにもよってこんな子供みたいな人間を…?

 

「すまない。ちょっといいか?」

「何かようか?」

「私は、アダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』のメンバーの1人、イビルアイという者だ。」

【アダマンタイト級だって!?こんな少女が最高位冒険者って…にわかに信じられん…。】

 

イビルアイという仮面の少女は、自分がアダマンタイト級冒険者だと言う。

こんな少女でもアダマンタイト級冒険者になれてしまうのか、と驚くが、すぐに考えを改める。

 

ユグドラシルでも、子供の姿をしたプレイヤーは居た。

なによりナザリックにも、アウラやマーレ、シャルティアなど、見た目が子供の強いNPCがいる。

なら、この少女が強者でもおかしくはない。

見た目が子供だからと、甘く見るのはよすべきか…。

 

「そうか。私はブラックドラゴンのブラック。竜人族だ。後ろは、妹のブルーとレッド、そしてこちらが、我々のご主人様である、デュラハンの勝様だ。」

 

ペコリとお辞儀する。

 

「我は、我が主人によって召喚された、竜王(ドラゴンロード)のファフニールだ。よろしくな。」

「そ、そうか。これはご丁寧にどうも。それで、失礼を承知で聞くが、ここへは何しに来た?」

 

率直な質問だった。

むしろ、堂々と質問してくる少女の度胸の凄さに感心する。

 

「国王公認の冒険者になりに来た…というのが目的、では駄目か?」

「冒険者に…?何故、冒険者になりたい?」

「資金集めのためだ。」

「何の為に?」

「…何故そこまで言わないといけない?自分で稼いだお金をどう使おうが、我等の勝手であろう?」

「む…それもそうか…。すまなかった。」

 

それっきり会話が終わる。

気まずそうにしているイビルアイを見かねて、勝がブラックにヒソヒソと語りかける。

 

「なら、こちらから質問してもよいか?イビルアイさん?」

「な、なんだ?」

「我々をどう思う?」

「え?」

 

意外な質問にキョトンとするイビルアイ。

 

「我々の事は…信用ならないか?」

「それは…今はまだ…と、言ったところだな。出会ったばかりの相手をすぐに信用するのは無理だ。」

「そうだな。我々も、お前を信用してはいない。」

「……っ!」

「だからこそ、唯一信用しているガゼフ戦士長に頼っているのだ。我々は全員が異形種…人間達に信用してもらう為には、まず国のトップに信用してもらう必要がある…と、ご主人様はお考えになられたのだ。」

「だから、国王公認の冒険者に?」

「そうだ。ただの冒険者では、人間達が怖がって依頼どころではないからな。なにより、街に入るだけでパニックになろう?」

「それも…そうだな。」

「ま、まず冒険者になれるかどうかが問題だ。そのへんは、ガゼフ戦士長の手腕に任せるしかない状態だ。」

「もし、冒険者になれなかったら、お前達はどうするんだ?」

「その時は…潔く諦める…と、ご主人様は言っている。」

「そうか…」

「だが…もし、我々が冒険者になった暁には…」

「…?」

「先輩である蒼の薔薇の皆さんに、いろいろ教えて欲しい…と、ご主人様は言っているぞ。」

「私達にか?何故だ?」

「信用を得るため…では嫌か?親睦を深めるのが、互いを信用できる、良い方法だと思ったのだがな。」

「フッ…そうきたか。中々、面白い事を言うご主人様だな。」

「ご主人様は真面目に言っているぞ?」

「いや、理解しているぞ。そちらの事情はわかった。いろいろ質問して悪かった。」

「コチラも、いろいろ話せて良かった…と、ご主人様は言っている。」

 

勝が前に出て、手を出す。

握手だと気付き、イビルアイも手を出して握手する。

 

【ありがとう。】

「ありがとう…だそうだ。」

「…あなたのようなアンデッドは初めてだ。冒険者、なれるといいですね。」

 

最後の口調が妙に優しく感じた。

すると、握手をしたまま、イビルアイが質問してくる。

 

「最後に聞きたい。ツアー、もしくはリグリット、という名前の人物に心あたりは?」

【ツアー?リグリット?知らない名だなぁ…】

「ご主人様は、どちらも知らないそうだ。」

「そうか。なら、いい。今の質問は気にしないでくれ。」

 

そう言って離れようとしたイビルアイだったが、勝が手を離さない。

 

「あの…もう離していいぞ?」

「最後に…ご主人様からアドバイスだそうだ。」

「アドバイス?」

「むやみに握手はするな。強者なら、握手だけであなたの種族を見破るぞ。だそうだ。」

「…!?…まさか、握手だけで…!?」

「手に脈がない。次からは、厚手のグローブか手甲でもはめて誤魔化すといい、だそうだ。仮面を付けて誤魔化すだけでは甘い、という事だな。」

 

ようやく手を離す。

 

「…参考にしよう。ありがとう。」

 

去っていくイビルアイを見送る。

 

「ご主人様、よくあの小娘がアンデッドだと気付きましたね。」

【うん。だって…】

「…?」

【めちゃくちゃ冷たかったもん、あの子の手。薄い手袋じゃありえないくらい。あれなら他人にもバレる。指輪か何かで、アンデッドの気配は誤魔化してはいたみたいだけどね。】

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「イビルアイ、どうだった?大丈夫だったか?」

「ああ。問題ない。」

「どう?話してみて。信用できそう?」

「悪い奴らではない…という事は確かだな。」

「なら、問題はなさそう?」

「それは、これから次第だな。ただ…」

「ただ…なんだ、イビルアイ?」

「フッ…フフ。」

「どうしたの、イビルアイ?」

「アイツらは国王公認の冒険者になりに来たそうだぞ。」

「はぁ!?冒険者ぁ!?それホントかよ!?」

「少なくとも、あのデュラハンは本気らしいぞ。しかも…フフフ…アハハッ!」

「なによ、イビルアイ。何がそんなに面白いの?」

「まさか!あのデュラハンに何かされたか!?」

「違うんだ、フフッ…。あのデュラハンが言っていたんだがな…もし、冒険者になった暁には、先輩である蒼の薔薇の皆さんに、いろいろ教えて欲しい…と。おかしな話だ。私達よりも強い、あのデュラハンが後輩としてやってきたら、私達はどうすればよいのか、なんにもアイデアがでてこないんだからな。」

「ハッ!そういう事かよ。確かにな。ドラゴン連れた奴にアドバイスすることなんて、なんにも思いつかねぇな!ラキュース、リーダーとして後輩の指導、よろしくな!」

「ちょっと!私にだけ押し付ける気!?無理よ!私達より実力上なんでしょ、あのデュラハン達。」

「いよいよガガーランが覚醒してドラゴンと張り合う日が来たか…」

「人間やめるなら今だぞ、ガガーラン?」

「ふっざけんな!ティア、ティナ!お前らは俺をなんだとおもってんだ!?」

 

「あー…いいかな?蒼の薔薇の諸君?」

 

楽しく会話していた蒼の薔薇のメンバーに話しかけたのは、ガゼフ・ストロノーフだった。

 

「これは、王国戦士長様!な、なんの御用でしょうか?」

「ラナー王女に君達を呼んでくるよう、頼まれてな。護衛をお願いしたいそうだ。」

「護衛…ですか?」

「ああ。アソコにいる勝殿達が、国王陛下に謁見するために王城に行くのだが、もしもの時のために護衛として護って欲しい…と、ラナー王女が言っていた。」

「わかりました。引き受けましょう。」

「恩にきる。では、勝殿達と一緒に行こう。アダマンタイト級冒険者チームである蒼の薔薇が一緒なら、民達もあまり怖がらないだろうからな。」

「そ、それもそうですね。でも、流石にドラゴンを連れていくのは…」

「それなら問題ない。私の兵士達が竜王を見張っておく。むやみに近づく者がいないようにな。」

「わ、わかりました。それなら、安心です。」

「では…勝殿ー!国王陛下のいる王城に行くぞー!」

 

勝達の元へ走っていく王国戦士長。

それを見た蒼の薔薇のメンバーは思った。

 

「(完全に打ち解けてる!)」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「そうか、わかった。勝さんも気をつけて…と、伝えてくれ。」

「ブラックからですか?」

「ええ。今から王城に入るそうです。」

「なら、私のシャドウデーモン達にも言っておきましょう。」

 

現在モモンチームは、

カルネ村のすぐ近くまできていた。

昨日エ・ランテルを出発し、道中でゴブリンの群れを撃退、夜は道中で野宿、早朝再び出発を開始したのだ。

 

モモン達は、薬草採取を行うンフィーレアの護衛として付き添っている。

それと一緒に、シルバーのプレートを付けた冒険者チーム『漆黒の剣』が同行している。

 

リーダーは、革鎧の戦士『ペテル・モーク』

レンジャーの『ルクルット』

マジックキャスターの『ニニャ』

ドルイドの『ダイン・ウッドワンダー』

 

の計四人。

チームとしては良好で、モモンの見立てでも、将来中々の冒険者になるだろう、と思われている。

 

ンフィーレアの荷馬車を囲む感じで、漆黒の剣のメンバーと、ペロロンとルプとナーベが歩きながらおしゃべりしている。

それを少し離れた位置から、モモンとウルベルとが歩いている。

 

「懐かしさを感じますね、彼らを見ていると。」

「ええ。昔のユグドラシル時代を思い出します。」

「ギルドメンバー41人で、いろいろやってた時を思い出しますね。」

 

今は亡き、全盛期のギルド時代を思い返す。

それが今では、たったの6人である。

 

「そう言えばモモンさん、1つ聞いてもいいですか?」

「なんでしょうか?ウルベルさん。」

「私達が…その…ナザリックを留守にしている間、勝さんと2人でギルドを保っていたんですよね?」

「ええ。とは言っても、私はギルドの維持費集めをしていたぐらいです。勝さんは毎日ドラゴン退治していたみたいですが。確か、ナザリックがある『ヘルヘイム』以外の世界にも足を運んで、その世界のイベントに参加したりもしていましたよ。」

「1人で他の世界にまで!?流石勝さん、というべきでしょうか。人間種や亜人種から嫌われてないぶん、堂々と出入りできてたんですね。」

 

ユグドラシルの世界には、『九つの世界』と呼ばれる世界があり、ナザリックはその内の1つであるヘルヘイムという世界にあった。

世界によって違うイベントがいくつも開催されていたのだが、世界によっては異形種が不利な世界もあったのだ。

 

「勝さんがたまに、イベントの交換ポイント報酬でがっぽり金貨を稼いできたり、イベントでしか入手できないアイテムとかを宝物殿に預けに来たりしてましたよ。おかげで、私ですら把握してないアイテムがログインしてない時にいつの間にか預けられてたりしてて、ビックリですw」

「そうだったんですかw」

「ええ!ホントですよ!とくに、拠点作成系アイテムのポイポイカプセルがたくさんはいったカプセルケースを見つけた時はビックリしましたよw城、墓地、砦、屋敷、牧場、コテージ、ログハウス、学校、その他etc…どんだけ集めたの!?って感じなくらい。あれだけで国が作れますよ。たぶんw」

「へー…悪魔城とかありました?」

「………」

「…?…何です、モモンさん?」

「勝さんに頼んで、悪魔城の拠点作成系アイテムを貰おうとか考えてません?」

「ちっ!バレたかw」

「ウルベルさんなら、やりかねないなと思いましたよ!」

「イイじゃないですか〜、モモンさ〜ん。」

「はぁ〜…魔王城のカプセルなら見た事ありますよ。悪魔城は…どうだったかな?」

「魔王城……フフフフ…!」

「ウルベルさーん?…ウルベルさーん!?…悪のRP(ロールプレイ)の妄想から帰ってきて下さい!」

「はっ!?私とした事が!つい魔王として、魔王城の玉座の部屋にて待ち構える自分を想像してしまっていました。アハハ。」

「ラスボスか何かですか!?アンタは!」

「残念ですが、ラスボスはモモンさんで。私は、ラスボスより強い中ボスのポジションで我慢しますよw」

「それ、もっとタチが悪い奴じゃないですかwww」

 

「モモンさーん、ウルベルさーん。そろそろカルネ村に着くそうっス。」

 

「わかりましたー。…とりあえず、勝さんが戻ってくるまでは、我慢して下さいね、ウルベルさん。」

「魔王城…楽しみにしておきますね…フフフ…。」




今回は会話文ばかりでしたね。
文章構成など気をつけてますが、
なにぶん私も初心者なので、
いろいろミスがあるかもしれません。
特に、場面展開が難しい…。


これからも頑張って書くので、よろしくお願いします!

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