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─午後六時過ぎ・王都─
夕日が沈み始めた、王都の街外れの平地に人集りができていた。
人々の視線の先にある物のは3つ、
①鋭い歯がならんだ口を大きく開け、舌をだらりと垂らして横向きに転がっているシャドウナイトドラゴンの生首。
②夕日の明かりに負けないほどキラキラ輝く金・銀・財宝の山。
③財宝を守るように守護している竜人2人と、財宝の山に寝そべっているデュラハン&デュラハンに上から抱きついてニマニマしているティアマト
だった。
「すげぇ…なんだよアレ!?」
「昼間見たドラゴンと同じくらいデカいぞ!」
「あのデュラハンが仕留めたらしいぞ。蒼の薔薇のメンバーが言ってたそうだ。」
「あの財宝の山は、あの死んだドラゴンが集めてた物だって聞いたよ!」
「マジかよ…信じられねぇ…」
人々がざわざわと騒いでは、後から来た人々に伝えていく。
【はぁ〜…早く皆戻って来ないかなー…】
現在、勝とブルーとレッドは、冒険者組合に報告に向かったブラックと蒼の薔薇、他二チームの冒険者達の帰りを待っていた。
依頼達成の報告と『回収物』の報告を伝える必要があったのだが、人間達と会話できない勝とブルーとレッドの3人は付いて行っても無駄なので、『回収物』の見張りとして残ったのだ。
ティアマトは、勝とイチャイチャしたいという強引な理由で残った。
【生首と財宝を置いてたら、街の人達が集まって来ちゃったよ…。おまけにティアマトが抱きついてるし…。また、変な噂にならなければいいけど…】
シャドウナイトドラゴンを召喚し、宝物庫の石扉を開けさせ、中にあった財宝を確認。
同行していたミスリルとアダマンタイトの冒険者達に、さんざん迷惑をかけた詫びとして、財布がいっぱいになるだけの財宝(金貨)を渡した後、残った財宝とシャドウナイトドラゴンの生首を回収、ブラック達に輸送させ、現在に至る。
レッドの蘇生で、身体から頭が生えて生き返ったシャドウナイトドラゴンを召喚契約で魂化させたので、切り飛ばした頭が現場に残っていたのを利用し、ドラゴン討伐の証拠として持ち帰ったのだが、置く場所に困ったため、王都の街外れの平地に、財宝と一緒に置く形になってしまったのだ。
昼間の反省を活かし、ティアマトは人間サイズのままにしたのだが、上から抱きついて離れない。
頭の大きな角が邪魔なせいで、添い寝ができないのだ。
大きな胸を、デュラハンの胸に押し付けながら、尻尾をフリフリと動かしている。
「ご主人様〜♥この後の予定はどうするのですか〜?」
【ん?予定?えーと、墓地の整地をするように命令していたアンデッド達から整地終了の知らせをもらったから、この後特に問題がないなら、整地した場所に拠点を作る予定だよ。】
「どんな拠点をつくるのですか?」
【ん〜…いくつか候補はあるんだが、決められなくてね。迷ってるんだ。】
「ハイハーイ!竜宮城!竜宮城にしましょうよ、ご主人様♥」
【ソレ、ユグドラシルでお前が住処にしてた場所じゃねーかwまあ、一応、拠点製作用のポイポイカプセルの中に竜宮城はあるけどさー…】
「私とご主人様の『愛の巣』を作りましょう!そうしましょう!」
【ダーメ!絶対ダメ!皆と相談して決めるんだ!というか、竜宮城はバハムートが嫌がると思うぞ?】
「チッ!…あの炎バカの事なんて気にしなくていいのに…」
【え?今、なんて言──】
「いえ!なんでもありません♥」
【?】
「それよりも、ご主人様?拠点製作をする前に聞いておきたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」
【何かな?】
「その…かなり先の話になるかもしれないのですが、重要な事でもあるので…」
【やけに真剣な表情だな。そんなに重要な事か?】
「はい!それは…そ・れ・は・!」
【それは?】
「か、仮の話ですよ?私とご主人様が、こ…こ!」
【こ?】
「子作りして赤ちゃんを産んだときに、赤ちゃんが安全に暮らせる住処にするべきだと思うのです!」
【こ、子作りって、お前…気が早くないか?まぁ、将来的な考えの1つとしては、一理あるが…】
「バハムートは、住処は火山が良いとか言うに決まっています!しかしですよ?産まれた赤ちゃんが溶岩に落ちて火傷したりするかもしれません!雪山や毒沼も然りです!ですが竜宮城なら、地表に作れば溺れる事もありませんし、城壁に囲まれているので赤ちゃんが逃げる心配もない!一石二鳥なんですよ!」
【それを言うなら、地下洞窟や古代遺跡、古城なんかでも条件に当てはまるぞ?】
「ぐぬぬっ…あ!アレです!拠点にはご主人様も住むのでしょう?なら、暗い洞窟や古ぼけた遺跡やサビれた古城だと、ご主人様の品位が上がりません!立派な装飾!豪華な家具!人間の王城にも負けない広い土地!それらも必要かと思いますよ?」
【う〜む…確かにそうかもしれないが…そんな立派な建物を『人間の王城の真後ろ』に建てていいのか?王族や貴族達から文句言われそうなんだが…】
「よし。そいつ等全員ぶっ殺す。」
【やめろ!マジで!お前が言うとシャレにならないんだよ!】
「てへっ♪」
【はぁ〜…早く皆帰ってきてく──】
そう言いながら、ティアマトから視線を外し、視線を真上に向けた時─
ブラックが、しゃがんだポーズで側に居た。
ちょうど股の所をローアングルからアップで見る形になってしまっていた。
【うおっ!?ブラック!?いつの間に戻って来てたんだ!?】
勝が慌てて身体を起こす。
「はい。ティアマト様の『子作りして─』のあたりから、帰って来てました。かなり将来的なお話をしていらっしゃったようで─」
【ま、待て!誤解だ、ブラック!子作りはあくまで、仮の話で─】
「わかっております。ティアマト様のお戯れに、お付き合いなさっていただけですよね?」
【そ、そうだ!よかった、誤解が解け─】
「あら?私は真剣に子作りするつもりで、相談していたけどぉ〜?」
【ちょっ!?ティアマト!?掘り返さないでく─】
「ティアマト様。いくら
【ブラック!?どうしたお前!?いつもと雰囲気が違っ──】
「はぁああぁぁ!?いい度胸してんじゃない小娘が!私と張り合うつもりぃぃ!?」
「ご主人様の正式な正妻は私達なんです。押し掛け女房のティアマト様は下がっていて下さい。」
「ムキィィィィ!!小娘の分際でぇ!アンタがご主人様のお気に入りじゃなかったら、血祭りにしているところよ!?」
「ご主人様に気に入られてない時点ですでに敗北してると思いますが、ナ・ニ・カ・?」
「キィィイィィィ!!!!オニョレェェエエ工!!!!」
ティアマトとブラックの醜い正妻合戦が始まる。
二人とも両手を合わせ、勝を挟んでグギギッと押し合いをしている。
【あー…思い出したー。確か、ブラックの設定に、
『自分が主人の正妻であり、1番愛されていると疑わない。だが、浮気は許す。』
とか、
『妹達には優しいが、主人に寄り付いて正妻の座を奪いにくる女には、どんな相手でもとことん張り合う。だが、自分が1番の妻なら一夫多妻でも平気。』
とか書いてあった気がする。この辺の設定、確かタブラさんが書いたんだよなぁ…。ギャップ萌え好きのあの人らしい設定だけど、めんどくせぇ設定にし過ぎでしょ!】
勝を挟みながらギャーギャーと言い合う二人を、やれやれといった感じで、ブルーとレッドがため息をついて見ている。
「だったらこうしましょう?どっちが1番、ご主人様を気持ち良くできるか。これで決めない?」
「残念ですがティアマト様、私はすでにご主人様とお風呂で洗いっこした関係なんです。ご主人様がドコをどうすれば気持ち良くなるか、既に知ってるんです。」
「なん……だと……!?チッ!なら、拠点製作にお風呂を追加して、私もご主人様と二人っきりで…!」
「そうはさせませんよ?どうせ、皆で仲良く入る形になるかと思いますが?」
「ぐぬぬぅ〜!!」
勝が、2人の言い合いに口を出さずに聞いていると、街の方からゾロゾロと誰かがやってきている事に気付く。
【お!あれはガゼフ戦士長じゃん。それに、蒼の薔薇と…あれは確か、レエブン侯だったかな?】
「勝殿〜。報告があるのだがー!ちょっとよいかー?」
ガゼフ戦士長に呼ばれたので移動しようとすると、ティアマトとブラックが勝の腕掴み、組んだまま付いてくる。
仕方なく、そのまま移動し、ガゼフ戦士長達の前まで移動する。
「勝殿。実は、国王陛下からの報告で──」
「じゃあ、これは?ご主人様と子作りして、どっちがたくさん卵を産むか。これで決めましょう。」
「──今回のドラゴン討伐の成果を讃え、明日──」
「わかりました。まぁ、私の方がご主人様と子作りする回数が多くなると思うので、たくさん、たーくさん!産むと思いますが!」
「──アダマンタイトのプレートの授与式を行う予定──」
「私がたくさん産むの!」
「いえ、私です!」
「私よ!」
【お前ら、黙れぇぇ!!】
勝が、ティアマトとブラックにゲンコツをかまし、黙らせる。
「アダッ!?」
「痛ぁ〜〜い!?」
2人が頭を押さえながら、しゃがみこむ。
勝が、どうぞどうぞ、というジェスチャーをして、ガゼフに会話の続きをするよう促す。
「あー…ありがとう、勝殿。」
ガゼフ戦士長が礼を言う。
蒼の薔薇が苦笑いを浮かべ、レエブン侯が不安そうな顔をする。
「では、改めて…今回の依頼達成の際に、ドラゴンを討伐し、アダマンタイトを含めた冒険者チーム3つを助けた功績を讃え、勝殿達にアダマンタイトのプレートを授与する式を明日行う事を、国王陛下がお決めになられた、という事を伝えに来た。凄いな勝殿!冒険者活動初日にアダマンタイト級の資格を手に入れるとは!」
ガゼフを含めた他の皆が拍手をする。
【ウソ!?アダマンタイトだって!?マジかよw】
勝が嬉しさのあまり、しゃがんで頭を押さえていたブラックとティアマトの腰に手を回し、持ち上げてクルクルと回りだす。
【イヤッッホォォォオオォオウ!!╰(‘ω’ )╯】
「ぅーー目が回りますぅー!」
「イャ───(*ノдノ)───ン♥」
勝が喜んでいる事が伝わったのか、ガゼフと蒼の薔薇のメンバー達の顔が笑顔になる。
「それでだ、勝殿。本来であれば、昇格試験のような事を行って冒険者のランクを上げるのが普通なのだが、ラナー王女の計らいでオリハルコンのプレートを事前に渡しておく事になった。理由は、異形種で構成された冒険者チームが、ミスリルからアダマンタイトに上がる事が異例すぎて問題になるかもしれないから、という理由だ。授与式の時に、これを付けて来て欲しい。」
オリハルコンのプレート4つが渡される。
勝がお辞儀をしながら受け取る。
【ブルー、レッド、受け取れぇ!】
勝がプレート2つを二人に投げ渡す。
ブルーとレッドが華麗にキャッチする。
【ソレ、今着けてるミスリルのプレートと入れ替えといて!】
「「
【さて、ブラック。お前にも──】
勝がブラックにプレートを渡そうとすると、ティアマトが奪おうと手を伸ばしてくる。
「ご主人様ぁ〜♥私もドラゴン討伐に協力したので、プレート下さいぃー!」
「なっ!?ティアマト様!貴方様は冒険者組合にメンバー登録していませんから、貴方様のプレートはありませんよ!だいたい、討伐したのではなくて、シャドウナイトドラゴンを脅しただけじゃないですか!」
「何よ!アンタなんか、ただ見てただけでしょう!1番頑張ったのは私よ!ワ・タ・シ・!」
【あーもう!どっちもうるさい!なら、今からこのプレート投げるから、先に拾った方が勝ちな!】
「スピード勝負ですか!足の速さなら負けませんよ!」
「あら?
【よーし…行くぞ?ソレ!】
勝がブンッ!と、プレートを投げる。
ブラックとティアマトがもの凄い速さで走りだす。
が…
「む?あれは…」
ブラックが何かに気付いたのか、足を止める。
「フハハハハハ!どうしたのブラック!私の方が速くて負けを認めたの?プレートは頂きよ!」
ティアマトがプレートめがけて猛ダッシュする。
「プレート、私が頂いたわ!」
ティアマトがプレートを掴んだのを確認した直後、勝が叫ぶ。
【ブラック!コッチだ!ホラ、これ!】
勝が手の平の上からオリハルコンのプレートを見せる。
ブラックが再び猛ダッシュで走り、受け取る。
「しゃぁぁぁあ!プレートGETォォォ!」
ブラックがガッツポーズしながら勝ち誇る。
「ウソォ!?じゃあ、コッチは!?」
ティアマトが、掴んだプレートを確認する。
それは、勝のミスリルのプレートだった。
「だ、騙されたぁぁー!?」
「ザマァァwwwアーハッハッハッwww」
ブラックが、ティアマトを指さしながら笑っている。
ティアマトが悔しがる。
「そんなー!?ご主人様!酷いですーぅ!」
【許せ、ティアマト。かわりに、それやるから。】
その場で身体を崩し、びえーん!と泣きじゃくるティアマト。
【ブラック、スマンが代弁役頼む。】
「はい!あ、皆さん。アチラで泣いている痴女はほっといて下さい。」
ブラックが、人間達の方を見ながら容赦ない事を言う。
【(女の戦いって、怖いなぁ〜…)】
ブラックの変貌ブリには、ブラック自身の設定が大きく関係している、という事は確かだ。
だが、それだけでなく、ブラックのドラゴン族としての本能も関係していると、勝は予想する。
何故なら、ブラック・ドラゴンはおそらく最も悪意に満ちたクロマティック・ドラゴン(色彩竜)だからだ。
レッド・ドラゴンの方が気性が荒いかもしれない。
欺きと支配に関してはグリーン・ドラゴンの方が野心家かもしれない。
だがブラック・ドラゴンほど残酷なドラゴンは他にほとんどいない。
ドラゴンは、基本本能として財宝を欲しがり、財宝を守る習性があるのだが、ブラック・ドラゴンは特にそれらが色濃くでる。
自分の所有する財宝を、他のドラゴンや生き物が盗んだ場合は、必ず取り返そうとする。
また、自分の財宝を、他のドラゴンや生き物から死守しようとする。
例え、相手が格上の相手だったとしてもだ。
ブラックが、主人である勝を財宝のように大切に思っているのなら、押し掛け女房のティアマトから守ろうとするのも頷ける。
「勝殿、後1つよろしいか?」
「なんだ?戦士長。」
「勝殿に…その…失礼を承知して、お願いがある。」
そう言うと、ガゼフ戦士長が1歩下がり、レエブン侯が咳払いしながら前に出てくる。
「では、ここからは私がお話します。勝さん…でよろしかったですね?貴方様に、今回の『回収物』である財宝の件でお願いしたい事があり、相談に来ました。」
「相談とは?」
「大変申し訳にくいのですが、財宝の『半分』を国に『寄付』して頂きたいのです。」
【寄付か…。(-_-)ウーム…】
「ドラゴンである我らに、財宝を寄越せと!?そう言うのか人間!いい度胸だ!死にたいらし──」
【だ・ま・れ・!】
「アタタッ!?」
勝が、レエブン侯に向かって怒鳴っていたブラックに、ビシビシとチョップをかまし、黙らせる。
レエブン侯がホッとしている。
勝が再び考える仕草をしていたが、しばらくすると、ブラックに向かって何か伝える。
「え!?硬貨の2/3を人間に寄付するのですか!?」
その言葉に、人間達が驚く。
半分どころか、さらにちょっと多く寄付してくれたからだ。
勝がさらにブラックに何か伝える。
ブラックが頷きながら、勝の言葉を受け取る。
「財宝の件について、ご主人様はこうおっしゃっている。」
①財宝の中にある、硬貨の2/3を王国に寄付。残りは、勝達が所属する組織、アインズ・ウール・ゴウンの活動資金にする予定。
②財宝の中にある、武具、王冠(クラウン)、ティアラ、イヤリング、ネックレス、ブレスレット、アンクレット、ペンダント、ブローチ、指輪(リング)、仮面(マスク)、鏡(ミラー)、香水(パフューム)、お守り(アミュレット)、護符(タリスマン)、印章(シール)などの、『身体に身に着ける』可能性があるものに関しては、
③その他宝石、芸術品、マジックアイテムなどは、勝と
という、3つである。
「何故、そのような判断をしたのか、理由をきいても?」
「危険物がないか、調査するためだそうだ。」
ひとくちに財宝と言っても、ドラゴンの財宝は別格である。
ドラゴンの好み次第で財宝の中身が変わるからだ。
財宝と言えば、銅貨、銀貨、金貨といった貨幣の山を想像するだろうが、それだけではない。
うずたかく積み上げられた硬貨の山に混ざるように、きらきらと光る宝石や魔法のアイテムなどがチラホラ入っていたりする。
ドラゴンの好み次第では、食器や絵なども財宝扱いになる。
しかし、それら財宝が全て『安全』とは限らない。いわゆる『呪われた』物や『後遺症』を与える物もあったりするのだ。
万が一、勝達が寄付した財宝の中に危険な物があった場合、勝達が仕込んで『暗殺』を目論んだと疑われる可能性があるからだ。
「という訳なのだが、異論はあるか?」
「いえ、ありません。財宝を寄付していただけるだけでも、我々はありがたいので。」
「なら、話はまとまったな。我々が今から財宝を分別する。硬貨を入れる袋でも持ってくるがいい。」
「了解した。本当に感謝する。勝殿。」
「あ!レエブン侯爵と戦士長に1つ、ご主人様からお願いがあるそうだ。」
「なんでしょうか?」
「何かな?勝殿。」
「スレイン法国に襲撃されたカルネ村や近隣の村々に、援助金を持っていきたいと、ご主人様がおっしゃっている。」
「おお!本当か、勝殿!」
「しかし、大量の金貨をいきなり渡されたら、カルネ村の人々が怪しんで受け取りを拒否する可能性もある。そこで、『国からの正式な援助金』という事にしたいので、国王陛下に書文を書いて頂きたいのだが、頼めるだろうか?」
「そう言う理由なら、国王陛下も賛成して下さるかと。」
「では、よろしく頼む。」
【さて。いよいよ拠点製作ができるぞー!】
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「ソリュシャンお嬢様、シャルティアお嬢様、馬車の用意ができました。」
「上出来よ、セバス。では、『護衛』と『メイド』を呼んできてちょうだい。」
「畏まりました。席の場所は、いかがなさいますか?」
「私達が、『護衛』と『メイド』の隣に座るなど、『ありえると思う』でありんすか?」
「では、私が座りましょう。『護衛』の方も、私であれば大丈夫かと。」
「ええ。それと、『例の男』が盗賊団に関わりがあるようなので、場合によっては、『殺戮』が起きる事も『護衛』と『メイド』に伝えておきなさい。」
「畏まりました。」
「フフ。アインズ様のご希望どおり、人間の死体の回収ができれば良いのでありんすがねぇ…」