首なしデュラハンとナザリック   作:首なしデュラハン

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第19話 ブラックデュラハン【後編】

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カルネ村防護柵・門前

 

時刻は夜八時半頃

 

 

「うわっ!?暗い!」

 

 首無し馬(コシュタバワー)に乗って、カルネ村近くまで転移してきた勝は、街灯が1個もない道に出る。

 当然、真っ暗である。

 

「そっか!今の私は人間だから闇視(ダーク・ビジョン)が使えないのか。えっと〜…ランプとかなかったかな〜。今までアンデッドだったせいか、明かりを灯せるアイテムって、あんまり持って無いんだよなー。」

 

 所持品を漁り、明かりになるようなアイテムを探す。

 

「ヨッシャ!銃に取り付ける用のフラッシュライトがあった!これで夜道を歩けるぞ!」

 

 フラッシュライトを2個取り出し、1個の明かりを付け、口に咥える。

 ついでにD·E(デザート・イーグル)を取り出し、そのままもう1個のライトをD·E(デザート・イーグル)に装着する。

 D·E(デザート・イーグル)は、拳銃の中でも威力の高い銃である。

 

「さて、首無し馬(コシュタバワー)を消して、ユニコーンを召喚──」

 

 そこまで言って、ある事に気付く。

 

「あれ?なんで首無し馬(コシュタバワー)を召喚できたんだろ?今の私は人間だから、種族スキルが使えるのはおかしくないか?それとも、ワールドアイテムのおかげか?」

 

 首無し馬(コシュタバワー)は、デュラハン専用の種族スキルによって召喚する騎乗魔獣だ。

 現在、人間である勝が、デュラハンの種族スキルを使用できるのは、あまりにも変である。

 しかし、ワールドアイテムの効果により、召喚系のスキルや魔法のみ使用可能になってた可能性もある。

 

「ひとまずユニコーンに、義援金の入った宝箱を移さないと…。」

 

魔獣召喚(サモン・ビースト)』を使用し、ユニコーンを召喚する。

 一角の白くて逞しい馬が現れる。

 ライトを口に咥え、照らしながら取り替え作業を始める。

 首無し馬(コシュタバワー)から宝箱を降ろし、ユニコーンに荷物運搬用のベルトを取り付ける。

 取り付けたベルトに、宝箱を装着する。

 

「これでよしっと。首無し馬(コシュタバワー)でカルネ村に行くと、デュラハンの関係者だってすぐバレちゃうからなぁ。」

 

 今の勝は、カルネ村の人達に正体がバレないように服装を変えている。

 いつもの『灰色の軍服』ではなく、今の勝の服装は『黒色の軍服』である。軍帽までしっかり被っている。

 軍刀も、先程手に入れた黒い大剣『邪剣ヒューミリス』と入れ替えてある。

 

「あ。武器の方も、パンドラズ・アクターに鑑定してもらえば良かった…。」

 

 未だに謎が残っている黒い大剣を持ち歩くのは不安だが、蒼の薔薇のリーダーが所持していた物と同じなら、そこまで危ない物ではないだろう。

 

「流石に暗過ぎて、ライト1個では危険だな。騎乗しながら行くのはやめておくか…。」

 

 ユニコーンに乗ると、バランスをとるために片方の手は手綱を握る事になるので、片手で銃かライトを持つ事になる。

 モンスターの群れでも現れたら、すぐに対処ができない。

 仕方ないので、ユニコーンに追従するよう指示を出し、自分が前を歩く。

 

 数分進むと、木材で作られた防護柵と、簡易的な入口門が見えてくる。

 

「あれ?カルネ村に防護柵なんてあったけ?前、上空から見た時は、なかったような…」

 

 エンリという村娘を助けた時を思い出す。

 あの時、カルネ村近くの上空を飛行中に、兵士に追いかけられているエンリと、その妹ネムを発見したのだ。

 

「襲撃があったから、それに備えて村の防衛を高めているのかな?」

 

 門の前までやってくる。

 見張りや警備の人は、一見すると見当たらない。

 門と防護柵の周囲には、人が隠れられそうな高さの茂みがある。

 門を潜らず、立ち止まって気配を探ってみる。

 

「………居るな…。」

 

 防護柵に隠れるように、複数の気配。

 道の両脇の茂みからも、複数の気配を感じる。

 殺気があまりないため、こいつらが門を見張っている警備の者達だろうか?

 

「あのー…隠れている人達、出てきてくれませんか?私、争うつもりはないので。」

 

『女性っぽい』雰囲気で語りかけてみる。

 コチラに争う意思がない事を告げると、何やらヒソヒソと会話する声が聞こえる。

 

(仲間同士で相談でもしているのだろうか?)

 

「夜分にすみません。冒険者の者です。カルネ村に入れてもらいたいのですが…」

 

 身分を明かすと、代表者なのだろうか、1人の人物が現れる。

 

「ちょっとお待ちを、お嬢さん!」

 

「え!?ゴブリン!?」

 

 出てきたのはゴブリンだった。

 てっきり人間が守ってると思っていた勝は、予想外の人物に驚いてしまった。

 

「攻撃しないで下さいよ。仲間もいるんで…」

 

「あ…えっと、ごめんなさい。人間じゃなかったので、驚いただけです。」

 

「それは良かった。今、『姐さん』を呼んでくるんで!もうちょっと待ってもらえませんか?」

 

「姐さん?」

 

 彼等のリーダーか何かだろうか?

 ひとまず、『姐さん』とやらが来るまで、警備の者達と話してみる。

 

「この防護柵は、最近作られたんですか?」

 

「そうっすよ。俺達が作ったんでさ!」

 

「へー、凄いですね。でも、何故防護柵なんかを?猛獣対策ですか?」

 

「ちょっと違ぇやす。カルネ村は数日前に、軍隊の兵士の襲撃を受けたんでさ。それで、村の防衛力を高めるために、姐さんによって『俺達が呼び出された』んでさぁ。」

 

『呼び出された』という言葉が引っかかる。

 

(うーん…何か忘れている気がする。)

 

「襲撃!?大丈夫だったんですか!?」

 

「それが、たまたま通りかかったデュラハンと竜人の三姉妹に助けてもらったらしいんですよ。特に姐さんが、嬉しそうに語るんでさ、その時の事を。あの人達は、『命の恩人だ』、ってね。」

 

 少し顔がニヤニヤしそうになった。

 自分のやった事を語られるのは、嬉しい反面恥ずかしくもある。

 

「へー。デュラハンと竜人達が。へー。その人達、名乗ったりしてましたか?」

 

「デュラハンの名前は、勝さんって言うらしいですよ。竜人達は…えっと、ブラック、ブルー、レッド、という名前だったと思いやす。」

 

「ほうほうほう!それはそれはきっと、優しい人達だったんでしょうね。凄いなー。憧れちゃうなー。」

 

「俺達もでさぁ!だからこうして、村の警備をしつつ、村人達にも弓の使い方とか教えながら、毎日特訓してるんですぜ!姐さんも、『あの人達みたいに、私も強くなって村を守りたい!』と言って、毎日仕事を頑張ってるんでさ!」

 

(くっそォォオォォォお!名乗りてぇ!私があのデュラハンだって!チョー名乗りてぇぇぇ!)

 

「それは良い事です。それをデュラハンの人が聞いたら、かなり喜ぶかも知れませんよ。」

 

 ニヤニヤしている勝に、ゴブリン達が首を傾げる。

 すると、門の向こうから、人間の女性がゴブリンに連れられてやってくる。

 その女性は、勝の知っている人物だった。

 

「あのー、冒険者の人って、貴方ですか?」

 

「エンリさん!?貴方がゴブリンを呼びだしたんですか!?」

 

 勝が最初に助けた女性、エンリ・エモットだった。

 

「え!?あ、ハイ。そうです。この笛を使って…。」

 

「それは、『小鬼将軍の角笛』!あー!思い出した!アインズさんが、エンリさんに渡したって言ってたわ!」

 

 陽光聖典を撃退し、カルネ村に帰還中にアインズが言っていた事を思いだす。

 

「何故、私の名前を知ってるんですか!?それに、アインズ様の事まで!?」

 

「しまった!うっかり、口を滑らせてしまった!」

 

 ビックリした拍子に、心に思った事をに出して言ってしまっていた事に気付く。

 今まで声が出せなかった影響か、声が出る状態に慣れてないのだ。

 

「姐さん!下がって!コイツ、怪しすぎるぜ!」

 

 ゴブリン達が武器を構え、勝を囲みだす。

 

「お嬢さん、何者ですかい?」

 

「あー…そのー…実は…ですね…」

 

 エンリを見る。

 

(エンリさんなら、真実を打ち明けても大丈夫な気がする。)

 

「エンリさん。貴方、デュラハンに助けてもらった時、ポーションを渡されたでしょ?」

 

「な!?何故、それを知ってるんですか!?」

 

「魔法やドラゴンについても質問されたでしょ?」

 

「そこも!?」

 

 エンリが驚いている。

 あの瞬間の事は、エンリと妹のネム、デュラハン達以外知らないハズだからだ。

 

 勝が軍帽を脱ぐ。

 

「私の顔に、見覚えありませんか?」

 

「……あ!ブラックさん!?ブラックさんですか!?」

 

「ブラックって、カルネ村を救った竜人の名前じゃねぇか!姐さん、どういう事です!?」

 

「うん、まぁ、半分正解かな。」

 

 勝がポーションを取り出し、片膝をつく。

 それは、エンリにポーションを渡そうとした時のポーズだ。

 

「そのポーションは…」

 

「エンリさん。私はブラックではなく、首無し騎士デュラハンの方です。今は、人間の姿なんですよ。」

 

 「「「えぇぇぇ!?」」」

 

 エンリとゴブリン達が驚く。

 

(まあ、当然ですよね。)

 

「勝…様なんですか?」

 

「はい。今は、『リュウノ(竜之)』と名乗ってます。できれば、リュウノと呼んで下さい。」

 

「本当に、カルネ村を救ったデュラハンなんですかい?」

 

「あー、なら!これを見せれば、証明できるかな?」

 

 リュウノが、チャリオット付きの首無し馬(コシュタバワー)を召喚する。

 

「この馬とチャリオット!間違いありません!勝様が、私とネムを運んでくださった乗り物です!という事は、本当に勝様なんですね!」

 

 その瞬間、周りにいたゴブリン達が武器を下ろし、平伏する。

 

「申し訳ありませんでした!俺達の無礼をお許し下さい!英雄様!」

 

「英雄様!?そんな大層な者じゃないから!今の私は、リュウノ!普通の冒険者として扱って!お願いだから顔を上げて!」

 

「お前ら!英雄様のお帰りだ!皆を起こしにいくぞ!」

 

「起こさなくていいから!もう夜九時近いから!」

 

「歓迎会の準備だ!急げ!食いもんと酒も用意するんだぁ!」

 

 「エンリさん!アイツら止めてぇぇ!」

 

 

 

 

 

 ───────────────────

 

 

 

 

 

───とある馬車内───

 

 

 

「じゃあ、シャルティアがアウラと仲が悪い感じなのは、ペロロンチーノさんの設定に従っているだけで、本当はそこまで嫌いじゃないんだ!?」

 

「そうでありんす。ペロロンチーノ様とぶくぶく茶釜様はご姉弟でありんした。なので、ぶくぶく茶釜様によって作られたアウラの事は嫌いではないでありんす。ペロロンチーノ様が、アウラを嫌うよう、私に設定なさったので、からかっているだけでありんす。」

 

「へー。てっきり、シャルティアはアウラの事を本当に嫌ってるのかと、思っていたよ。」

 

「アウラの方は、私の事を良い友人のように思ってくれているみたいでありんすからねぇ…そこまで酷く嫌いにはなれないでありんす。」

 

 たっちとヘロヘロは、NPC達と談話しながら様々情報を得ていた。

 

 1つ目は、NPC達が、ナザリックが異世界に転移する前の出来事を覚えているという事。

 

 シャルティアが、ペロロンチーノとアインズが、エロゲ話やぶくぶく茶釜の声優の仕事について語っていた事を覚えていたからだ。

 

 2つ目は、NPC達は自分に与えられた設定を守っているが、設定に無い部分は創造主の性格に似る、あるいは真似する傾向がある、という事だ。

 

 シャルティアは、ペロロンチーノによって細かく設定が盛り込まれているため、ペロロンチーノの性格が入り込む隙がない。

 

 が、あまり設定が細かくされていないセバスは、創造主である、たっち・みーの真似をする事を良しとしており、『困っている人が居たら、助けるのは当たり前』という、たっち・みーと同じ考えをもって行動するらしい。

 

 3つ目、NPC達は、自分の創造主を1番慕っており、創造主のためならば、至高の御方とすら戦うつもりで居るという事だ。

 

 例えば、シャルティアに、

 アインズとペロロンチーノ、どちらかに味方しろ!

 と、命じた場合、シャルティアは躊躇なく創造主のペロロンチーノの味方につく、という事だ。

 

 一通り会話を楽しんでいると、ソリュシャンがヘロヘロに質問する。

 

「ヘロヘロ様。以前からお聞きしたかった事があるのですが、質問してもよろしいでしょうか?」

 

「う、うん。いいよ。」

 

「その…気分を害してしまう質問かもしれません。それでも構いませんか?」

 

「わかった。言ってみて。」

 

「では、ご質問します。ヘロヘロ様は、約2年程、お姿がお見えになられませんでしたが、どちらに行かれていたのでしょうか?

 

 ソリュシャンの質問は、ユグドラシルに約2年程ログインしていなかったヘロヘロが、どこで何をしていたのかについての質問だった。

 

「それは…」

 

 言葉に詰まる。現実世界の話をNPCにして良いのか迷ったからだ。

 

 シャルティアもセバスも真剣に見ている。

 二人も気になっているのだろう。

 

「説明してあげたいけど…えーと…これって話してもいいんですかね?たっちさん。」

 

 咄嗟に、たっち・みーに意見を求めるヘロヘロ。

 同じプレイヤーであるたっち・みーの意見次第で話そうか判断しよう、という考えなのだろう。

 

「え!?そ、そうですね…うーむ…」

 

 たっち・みーも悩む。

 NPC達が、現実世界の事を理解できるのかどうかも問題ではあるが、

 1番の問題は、自分達が現実世界で人間として生活している事を話す必要がでてくる事だ。

 

 仕事のため、あるいは生活のために現実世界に行っている、とNPC達に説明した場合、

 

 ナザリックで生活すれば良いのでは?

 仕事は我ら下僕がやりますから!

 と、言い出すに決まっている。

 

 勿論、NPC達は現実世界に行けないので無理だ。

 それに、現実世界での生活には、『家族』と暮らす、という意味も含まれる。

 

 独身の者でも、親や兄弟くらいは居るだろう。

 結婚してる者なら、妻と子供もだ。

 無論、NPC達は、至高の御方々に家族、特に親がいるなんて思っていないだろう。

 ペロロンチーノさんとぶくぶく茶釜さんのように、姉弟であるという情報が『事前に』あるなら話は別だが。

 

 

 NPC達からすれば、至高の御方々は、

 

 『ユグドラシルから現実世界へ仕事に行っている。』

 

 という考えが多いだろう。

 しかし、プレイヤーという存在である自分達は、

 

 『現実世界からユグドラシルに遊びに来ている。』

 

 という立場なのだ。

 

 だがら、ユグドラシルの事が全て遊びだったなんて、言える訳が無い。

 勿論、遊びに本気で取り組んでいた者や、それこそ人生の生き甲斐にしていた者もいたかもしれないが。

 

「し、仕事に行ってたんですよね。ヘロヘロさんは。」

 

「そ、そうだよ、ソリュシャン。私は仕事に行ってたんだ…。」

 

 適当な理由で誤魔化すしかなかった。

 

「それは…現実世界に…という事なのでしょうか?」

 

「そうだ。ソリュシャンは、現実世界について知ってるのか?」

 

「いえ、詳しくは知りません。ただ、至高の御方々がよく、『ログアウト』という方法を使って現実世界に帰る、という事をしているところを何度が目撃した事はあります。そうですよね?セバス様。」

 

「はい。私も何度か目撃しております。」

 

「私も何度か目撃しているでありんす。」

 

 NPC達の目の前で、現実世界に関する会話をしたり、ログインやログアウトを行ったプレイヤーがいたのだろう。現実世界の情報を聞かれてしまうのも当然である。

 

「そうか。私達としては、現実世界について説明してあげたいという気持ちはある。が、現実世界に関しては、極秘事項が多くてな。他のギルドメンバーの許可無しでは語れないんだ。特に、ギルド長であるモモンガさ…じゃなくて、アインズさんの許可が絶対必要なんだ。すまないな、ソリュシャン。」

 

 詳しく話すのはやめておこう。

 自分達だけで勝手に判断して、現実世界の事を話す訳にはいかない。

 ギルドメンバーとよく相談してからの方が良いだろうし。

 

「いえ!こちらこそ、答えづらい質問をしてしまい、申し訳ありませんでした。」

 

 NPC全員がお辞儀する。

 

 すると、タイミング良く馬車が停止する。

 

「おっと…どうやら盗賊団のお出ましでありんすね!」

 

「では、ソリュシャン。シャルティア様と一緒に出撃しなさい。異世界での初めての戦闘です。どのような敵がいるか分かりませんので、我々が先に様子を見て、至高の御方々の安全を確保しましょう。」

 

「畏まりました、セバス様。」

 

「たっち・みー様とヘロヘロ様も、それでよろしいでしょうか?」

 

「構わないぞ、セバス。」

「う、うん。大丈夫だよ。」

 

「では、私から行くでありんす。」

 

 シャルティアが扉を開けると、10人ほどの傭兵のような格好をした男達と一緒に、馬車の運転をしていた男、ザックが交じっていた。

 

「へへっ、可愛い嬢ちゃんじゃねーか。」

「俺達と遊ぼうぜー?」

「見ろよ、金髪美女とメイドもいるぜ!」

「男は邪魔だから殺すか…」

「そろそろ新しい女が欲しかったんだよ!」

「拠点のヤツらも喜ぶぜ!」

「あ、後で俺にもヤラせて下さいよ、ふひひっ!」

 

 明らかに悪党らしい奴らばかりである。

 

「さて、誰から来るんでありんすか?」

 

 シャルティアが一瞥し、余裕の表情を浮かべる。

 1人の男がシャルティアに手を伸ばして触れようとする。

 すると、たっち・みーがいきなり立ち上がり、シャルティアを手で優しくどかし─

 

「気が変わった。すまんが、死んでくれ。

 

 シャルティアに触れようとしていた男の腕を切り、相手が悲鳴を上げる前に首を切った。

 ドサリッと、切られた男が倒れる。

 あまりの一瞬の出来事に、シャルティア達は見ている事しかできなかった。

 

「コイツ!殺りやがったな!」

 

 盗賊団達が武器を構える。

 

「た、たっち・みー様…?」

「たっちさん!?」

 

 セバスもヘロヘロも、たっち・みーの突然の行為に驚く。

 

「シャルティア達に殺らせるつもりだったが、お前らのあまりのゲスぶりに腹が立った。」

 

「な、なんだと!?」

 

「盗賊団と聞いていたので、金目の物を盗むだけかと思っていたが、女子供にも容赦ないとはな!」

 

 たっち・みーの言葉を聞いて、ヘロヘロはすぐに察した。たっち・みーには、現実世界に妻と子供が居る。女性や子供にも危害を与えようとした盗賊団達に、怒りが爆発したのだろう。

 

「おい。他にも仲間が居るんだろう?何処にいるんだ?答えろ!」

 

「うるせぇ!皆、この騎士を殺せ!」

 

「そうか。なら仕方ない。シャルティア、ソリュシャン、こいつらからアジトの情報を吐かせるんだ。」

 

「「はっ!」」

 

 シャルティアとソリュシャンが外へと飛び出し、盗賊団達を、あっという間に半殺しにしていく。

 

「セバス、ヘロヘロさんの警護を頼む。」

 

「畏まりました。」

 

「ヘロヘロさん、少し予定を変更します。」

 

「え!?」

 

「私は、シャルティアと共に盗賊団のアジトに行きます。ヘロヘロさんは、セバス、ソリュシャンと馬車で先に行って下さい。」

 

「わ、分かりました。」

 

 その間に、シャルティア、ソリュシャンが盗賊団達を尋問しながら殺していき、情報を入手して帰ってくる。

 殺された盗賊団達は、皆酷い有様で死んでいる。

 盗賊団に情報を流したザックは、ソリュシャンに丸呑みにされたため、死体は無かった。

 

「たっち・みー様、アジトの位置が分かりましたでありんす。」

 

「よし。シャルティア、私と行くぞ。つまらない盗賊団を、ここで壊滅させておく!」

 

「はっ!」

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

 

──再びカルネ村──

 

───夜九時前───

 

 

 

「こ、これは!?」

 

「カルネ村への復興支援として、国王様からの義援金です。お受け取り下さい。」

 

 エンリと一緒にユニコーンに乗りながら、カルネ村に着いたリュウノは、王都から来た『冒険者の配達人』として村長に名乗り、義援金の入った宝箱を渡していた。

 宝箱の中身は当然金貨だ。

 箱いっぱいに詰まった金貨を見て、村長も村人達も腰を抜かしている。

 エンリとゴブリン達は、リュウノの正体を知っているため、ニヤニヤしている。

 エンリの隣にはンフィーレアも居る。

 彼もエンリからこっそり教えてもらったのか、ニヤニヤしている。

 

「ほ、本当に受け取っても良いのですか!?」

 

「こちらに、国王様の直筆の書文があります。ご確認を。」

 

「国王様からの書文!?あ、ありがとうございます。どれどれ…」

 

 村長に書文を渡し、村長がそれを読む。

 

「な、なんと!?皆聞いてくれ!この義援金は、王都で冒険者活動を始めた、勝様から頼まれた物だそうだ!わざわざカルネ村のために、義援金を用意して、国に送って欲しいと頼んで下さったそうだぞ!」

 

 カルネ村の村人達が驚きの声を上げる!

 

「なんと!私達のために、義援金を!」

「村を救って下さっただけでなく、復興支援まで考えて下さるとは!なんと優しい方なのだ!」

「国王陛下からも信頼されるようになってるなんて!やっぱり凄い御方なんだな!英雄様は!」

 

 どうやら書文には、国からではなく、あくまで勝が用意した、という風に書いてあったらしい。

 村人達が、英雄様こと勝に感謝の言葉を呟いたりして歓喜している。

 

 

(あの国王!国からの正式な義援金にするって話を忘れてないか!?

 完全に私からの援助金みたいな感じになっちゃってるじゃねーか!)

 

 

「コホン。えっと、渡す物は渡しました。ご満足頂けたようでなによりです。」

 

「ありがとうございました。もし、王都に帰られる際は、皆が喜んでいたと、勝様に伝えて下さいませんか?」

 

「ハハハ!伝えたら、きっと大喜びするでしょう。」

 

(そのメッセージ、既に届きましたよw)

 

「あの!リュウノさん。宜しければ、村に1泊して行かれませんか?もう、夜遅いですし。」

 

「そうですぜぇ!泊まって行った方が良い!夜食も用意しますぜ?」

 

 エンリ達が必死に引き止めようとしてくる。

 正体を知っているからだろう。

 すると、遠くから見ていたモモンがやって来て、同じように引き止めてくる。

 

「リュウノさん、でしたか?夜道は危険です。女性が1人で帰るのも危ないでしょう。どうでしょうか?私達のチームには、女性が二人いるので、私達と同じ宿泊小屋で寝るというのは?」

 

「えーと…貴方も冒険者ですか?」

 

 互いに初対面を装う。

 ポーション繋がりでモモンと知り合いである事は、ンフィーレアにはバレているだろうが、

 あくまで、リュウノとモモンは初対面という事にしておく。

 

「はい。ンフィーレアさんの薬草採取に同行して、カルネ村に滞在しています、モモンと言います。長旅で疲れているのでは?休まれていった方が、安全ですよ。」

 

「そ、そうですね。では、お言葉に甘えて1泊させて頂きますね。丁度、お腹がすいてて、夜食を頂きたいなと、思っていたところなんです。」

 

 エンリ達が嬉しそうな顔をする。

 

「では、夜食を作ってきますね。」

 

「ありがとうございます。わざわざすいません。」

 

「いえいえ、お気になさらず。では!」

 

 エンリ達が夜食をつくるため、家の中に入っていく。

 エンリ達が去ったのを確認すると、モモンと一緒に、宿泊小屋に入る。

 中では、変装したペロロンチーノとウルベルト、ルプスレギナとナーベラルが待っていた。

 

「…では、勝さん改め、リュウノさん。詳しい事情を聞かせていただきましょうか?」

 

「お、おう…。実は──」

 

 人間になってしまった経緯を話す。

 証拠の玉手箱もついでに出す。

 

「──という訳です。」

 

「これが例の玉手箱ですか。…デュラハンに戻るには、24時間後に再び開ける必要があると。」

 

 ペロロンチーノが蓋を開けようとするが、カタカタと音がなるだけで、開く気配がない。

 

「蓋が開かないっスねー。24時間経たないと開かない仕組みなんスかね?開いたら、オレも人間になっちゃう可能性があるんスかね?」

 

「即何度も使用可能なら、私達も人間と異形種の姿を好きなタイミングで入れ替えできたのでしょうが…不便なアイテムですね。」

 

「とにかく、この玉手箱はリュウノさんがまだ持っておくべきでしょう。お返しします。」

 

 玉手箱を返される。

 リュウノが自分のアイテム空間に、玉手箱を放り込む。

 

「しかし、勝さんこと、リュウノさんが女性だったとは…思いもしなかったっス。」

 

「私もです。悪魔である私すら欺くとは!リュウノさんもギルド長も人が悪いですね…。」

 

「リュウノさんの強い希望だったんです。すみません…皆さん。」

 

「モモンさんは悪くねぇよ…私が内緒にして欲しいって頼んだんだ。だから…悪いのは全部私だ。ペロロンチーノさん、ウルベルトさん、ごめんなさい!」

 

 騙していた事を謝る二人。

 ペロロンチーノとウルベルトは、少しの間黙っていたが、顔を見合わせると、クスッと笑う。

 

「顔を上げてほしいっス、リュウノさん。女の子が土下座なんてしたら、R18っぽくなっちゃうじゃないですか。気にしてないから、大丈夫ッス。」

 

「ええ、そうですね。私達が悪者みたいになるじゃないですか。そんなに謝らなくてもいいんですよ。」

 

「ペロロンチーノさん、ウルベルトさん…ありがとう…。」

 

「ルプスレギナとナーベラルはどうなんだ?勝さんこと、リュウノさんが人間である事に、不満はあるか?」

 

 1番気になっていたNPC二人に質問がいく。

 ブラック達は受け入れてくれたが、他のギルドメンバーによって創造されたNPC達は、どう思うのだろうか?

 

「ん〜…不満はないっすね。至高の御方々が、リュウノ様を勝様だとお認めになった時点で、どんな姿でも、勝様は勝様っす。」

 

「私もルプ姉と同じです。それに、リュウノ様の人間の姿は、ブラックと瓜二つなので嫌いではありません。」

 

 NPC二人も受け入れてくれるようだ。

 特に、人間を虫扱いするナーベラルと、人間を玩具のように思っているルプスレギナに受け入れてもらったのは、とても良い結果だ。

 これなら、ナザリックの他のNPC達にも受け入れてもらえる事だろう。

 

「良かった~…ナーベラルは人間蔑視の設定があるから、私の事を虫けらとか、『このゴミめ!』とか言うんじゃないかと思ってたよ。」

 

「さ、流石に、至高の御方である勝様に、そのような事は致しません。たとえ、人間の姿であったとしてもです。」

 

「そっか。なら、ナザリックの皆に話ても大丈夫そうだな。」

 

「そのようですね。ところで、リュウノさん。今日1日の冒険者活動はどうだったんですか?教えて下さいよ。」

 

「えーと…王都の冒険者組合で──」

 

 今日1日の出来事を話す。

 特に印象強く覚えてる部分を中心に話した。

 

 ①蒼の薔薇との自己紹介でやらかした竜王一斉召喚

 ②鉱山でやらかした、死の騎士(デス・ナイト)大量召喚

 ③アンデッドと間違われて、出会った冒険者達にドロップキックされたり、踏みつけられたりした事

 ④ティアマトとブラックの正妻争い

 ⑤竜王達の主人争奪戦

 

 それらを話した。

 

 

 「ぶっはっはっはっww」

 「ダハハハハハハwww」

 「ぷっwwくっwはっww」

 

 まず、3人に大笑いされた。

 それから色々言われた。

 

(恥ずかしい…誰か、私から頭を取ってくれぇぇ!)

 

 

 

「いやいやいやいやwおかしいですよ!自己紹介で竜王(ドラゴンロード)を一斉召喚ってw」

 

「仕方ねーだろ!第六位階より上が有り得ないとか、言われたんだぞ!レッドが第十位階魔法を使った後にブラックが、『ご主人様はもっと凄い』とか言うんだぜ?もう、超位魔法使うしかないじゃん!竜王1匹召喚とか、しょぼく思われるかもしれないと思ったんだよ!」

 

 

 

 

「私でも、死の騎士(デス・ナイト)を大量召喚とかしませんよwww」

 

「効率を考えたんだよ!行ってないルートとか、めちゃくちゃ気になるじゃん!というか、気にならないの!?」

 

 

 

 

「女冒険者からドロップキックされて、踏まれた感じはどうだったっスか?痛気持ちい感じだったっスか?」

 

「痛かっただけだったよ…。なんなら、試してみるか?ペロロンさん。今なら軍服で女子というオプション付きだぞ?」

 

「ちょっ!?リュウノさん!ペロロンさんにそんなセリフ言っちゃダメですよ!」

 

「え!?いいんですか!?ど、どうぞ遠慮なく踏んでください!」

 

「いいのかよ!?」

 

「軍靴とソックス、どっちで踏まれたい?」

 

「ダメです!リュウノさん!ペロロンさんを刺激しないで!」

 

「ぬぅぉぉぉ…!究極の選択ぅ…ぬぅぅぅ~!ソックスで!」

 

「あ。お風呂入ってないから、臭うかも。やめとこ。」

 

「(゚ロ゚)それを洗うなんて!?勿体ない!」

 

「ペロロンさん、いい加減にしないと、羽毟りますよ?リュウノさんも、ペロロンさんをあまり興奮させないで下さい。」

 

「てへっ☆」

 

 

 

 

 

「竜王であるティアマトにブラックが突っかかって行ったんですか!?というか、ティアマトって、第二のアルベドみたいな感じですね…」

 

「アルベドもそんなにヤバイの!?」

 

「どっちが早く結婚するかどうか、シャルティアと言い争いしてましたよ。」

 

「シャルティアと!?ペロロンさんが居るのに!?」

 

「アルベドは…その…ビッチ設定なんですよ…。」

 

「マジで!?やばいな。私のブラックの設定作成には、タブラさんやペロロンさんも参加してるからなー。変な設定とか、なければいいんだが…大丈夫ですよね?ペロロンさん?」

 

「(ง゜ω゜)ว」

 

「オイコラw逃げようとするなw」

 

 

 

 

「ところでリュウノさん。さっき言った、蒼の薔薇のメンバーについて教えて欲しいっス!」

 

「やっぱり食いついて来たな!エロゲーマスター!」

 

「フッ…当然っス。」

 

「こんな時のために、メンバーの情報をメモっといてやったぜ!と言っても、今日の鉱山探検中に得た情報だけだけど。」

 

「マジッっスか!?サンキューっス!」

 

「まず、蒼の薔薇のリーダー!金髪美女で貴族令嬢のラキュースさん!」

 

「いきなり高得点っス!(゚∀゚)」

 

「だが!」

 

「だが!?」

 

「仲間からの話を聞くかぎり、ラキュースさんは厨二病の疑いがある。」

 

「うわぁ…マジっスか〜…」

 

「次に、双子の盗賊忍者、ティアとティナ。髪はオレンジに近い金色。スラリとした肢体をしており、全身にぴったり密着するような服装をしているぞ。」

 

「こっちもなかなか高得点っスね!」

 

「だが!」

 

「だが!?」

 

「ティアはレズ、ティナはショタ好きらしい!」

 

「なん…だと…!?」

 

「次に、魔術師(マジックキャスター)の金髪仮面少女、イビルアイさん。」

 

「少女来たー!リュウノさん!その子について詳しく!」

 

「その子は、蒼の薔薇の最後に加入したメンバーらしい。なのに、態度が一番デカいというw」

 

「ほうほう!」

 

「だが!」

 

「だが!?こっちにもなにかあるの!?」

 

「シャルティアと同じ、アンデッドなんだよ。」

 

「そんな!?」

 

「しかも!」

 

「まだあるの!?」

 

「ペったんこ。」

 

「うわあぁぁぁぁぁ──!神よ!何故貴方はオレを苦しめるっスかぁぁぁぁ!!_| ̄|○ 」

 

「絶望するほどかよwww」

 

「だって!アンデッドじゃ、成長しないじゃないっスかー!」

 

「最後は、ガガーラン!ゴリラウーマンの戦士。」

 

「あ、もういいっス。美女幼女しか興味ないっスから。」

 

「ペロロンさん、サラッと酷い事いいますね…。」

 

「安心しろ。私も、『ゴリラウーマンの戦士』しか、特徴書いてないから。」

 

「貴方もサラッと酷いですね!?」

 

 

 

 

「竜王も人型になれたんですね。」

 

「ファフニール達が、人間になった私を(つがい)にしようと暴走してさ〜。本当に困っちゃってw」

 

「リュウノさん!ハーレムと逆ハーレムを同時に味わうなんて!うらやまけしからんっス!」

 

「ふっ…ドラゴンに愛されて困っちゃうぜ!」

 

「∑(O_O;)満更でもない!?」

 

「最後は、宝石で生き埋めにして黙らせてやった。」

 

「ドラゴンを宝石で埋める…え?埋める!?どゆこと?」

 

 

 

「シャドウナイトドラゴンと契約を!?初依頼でドラゴンって、ある意味凄すぎません?」

 

「そっちは?」

 

「『森の賢王』とか言う、雌のジャンガリアンハムスターですよ…」

 

「はぁぁあ!?めっちゃイイじゃん!どこに居るの?ソイツ!」

 

「宿泊小屋の裏ですよ。」

 

「ちょっとハムってくる。(`・ω・´)」

 

「ええっ!?今からですか!?」

 

 勝が猛スピードで宿泊小屋から出て、裏側に走っていく音がする。

 そして、外から声が聞こえてくる。

 

「うおおおおぉ!?デケェじゃん!揉みがいがありそう!」

 

「ぬぅお!?なんでござるか、お主!いきなり来て、拙者の眠りを妨げるとは!」

 

「私の名はリュウノだ!いきなりで悪いが、も・ま・せ・ろ・!」

 

「ひぃい!?殿!この人間、めちゃくちゃ強いでごさる!拙者を掴んで離さない、凄い腕力の持ち主でごさる!」

 

「うわっ!?毛がゴワゴワじゃん!抜け毛も酷い!アンタ、ちゃんと手入れしてるのか!?毛の手入れは女にとって命なんだぞ!毛の手入れをちゃんとしないと、雄達にも嫌がられるよ?」

 

「ほ、本当でごさるか!?拙者、子孫を残したいので、雄を探しているのでごさる。」

 

「任せろ!どんな雄でも魅了できる、最高の毛並みにしてあげるぜ!えーと…動物用の毛洗いセットと、お風呂セットと──」

 

「ぬぅお!?なんか色々出てきたでごさるよ!?」

 

「大丈夫!安心しろ。何処に出しても恥ずかしくない、最高のジャンガリアンハムスターにしてあげるから!では、私も──」

 

「なぜ、リュウノ殿まで脱ぐでごさるか!?」

 

「脱がないと、服が濡れるじゃん。さあ!入った入った!」

 

「ちょっと!リュウノさん!?丸見え!丸見えですから!隠して!」

 

「RECっス!誰か、カメラ持って来て!リュウノさんの貴重な裸シーンを録画して──」

 

カーテン設置!ふふん♪覗きなんてさせねーよ!というか、レディの裸を覗いてんじゃねーよ!この変態ども!これでもくらえ!」

 

「うわぁ!水鉄砲が!というか痛い!?水鉄砲なのに!?」

 

「アダダダダダダッ!?痛いっス!でも!カーテンごしに映るシルエットというのもなかなか魅力的!(๑•̀ •́)و✧」

 

「リュウノさん!せめて壁を!壁を作ってー!」

 

「…騒がしいですね…まったく…フフッ。」

 

 

 

『森の賢王』を洗った後、リュウノはエンリの作った夜食をご馳走になった。

 

 大麦と小麦のオートミール

 野菜炒め

 干し果実

 干し肉の切れ端が入ったスープ

 黒パン

 豆のスープ

 

 ナザリックの者達からすれば、

 良質な素材をふんだんに使ったナザリックの料理に比べれば、どれも見劣りする食材と料理に思えただろう。

 

 だが、異世界に転移してから、1度も食事をした事が無かったリュウノにとっては、これが久しぶりの食事だった。ゆえに、普段自分が現実世界で作っていた料理よりも、美味しく感じた。

 

「美味い!こんなに美味しい料理を食べたのは、久しぶりだ!」

 

 そう言いながら、パクパク料理を食べるリュウノを見て、エンリとンフィーレアは微笑んでいた。

 

「リュウノさんが元人間だったって話、本当だったと…今なら信じるよ。」

 

「ええ。そうね。あんなにも美味しそうに村の料理を食べてくれるなんて、相当長い間アンデッドのままだったんでしょうね。」

 

 一方、リュウノは食事をしながら、別の宿泊小屋で寝泊まりしていたシルバーの冒険者チーム『漆黒の剣』と会話していた。軽い自己紹介を終わらせ、モモンチームに対する感想や冒険者になった経緯など、いろいろ話した。

 ちなみにだが、彼等はリュウノがデュラハンである事は知らない。王都から来た、オリハルコンの冒険者だと、本当に信じている。

 

「へー。十三英雄の1人、『黒騎士』または『暗黒騎士』と呼ばれている英雄の『4本の剣』を探すのが、君達の目的なのか。」

 

「はい。でも、4本ある剣の内、1本は既に見つかっているんです。アダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』のリーダーが、その剣を持ってるという情報がありまして──」

 

「ブフォwww!?ゴホッケホッ!」

 

「どうしたのですか、リュウノさん!?」

 

「今、蒼の薔薇のリーダーが持ってる剣って言った!?」

 

「はい。言いましたけど…。『魔剣・キリネイラム』と言う剣です。」

 

「じゃあ、『邪剣・ヒューミリス』って剣も、その英雄の剣だったりしない?」

 

「よく知ってますね!はい、そうです!その剣も、4本の内の1本ですよ。」

 

「私、持ってるよ。ホラ。」

 

 お風呂に入った際に仕舞っていた邪剣を取り出して、漆黒の剣のメンバーに見せる。

 

「えぇぇぇえ!?」

「マシで本物じゃん!流石、リュウノちゃんだ!」

「2本目が既に見つかっていたとは!驚きであ~る。」

「本物を間近で見れるなんて…」

 

 漆黒の剣のメンバー、

 リーダーの『ペテル・モーク』、

 ナンパ野郎の『ルクルット・ボルブ』

 髭もじゃの『ダイン・ウッドワンダー』

 女の子っぽい『ニニャ』

 

 が、驚く。

 

「これをどこで見つけたのですか!?」

 

「ドラゴンの巣穴からだよ。いやー、あのドラゴンは強かったよー。」

 

「ドラゴンと戦ったのですか!?」

 

「そうだよ。ヒポグリフの背中に乗って──あ!私ね、召喚士なんだ。グリフォンとかも召喚できるんだよー。ホラ!」

 

 魔獣(ビースト)の召喚魔法を使って、ヒポグリフ

 やグリフォンを召喚する。

 

「す、凄い!」

 

「この子達の背中に乗って、ドラゴンのブレスを掻い潜り、空中から飛び乗っての接近戦!いやーヤバかったよー。」

 

「おお~!」

 

 本当はシャドウナイトドラゴンなのだが、デュラハン関係に繋がるので、戦いの内容自体はユグドラシルでの経験話にすり替えた。

 

「他にも、ハーピーやミノタウロス、それとそれと──」

 

 その後も、ユグドラシルでのモンスターとの戦いを、こちらの異世界でやったかの様に話、漆黒の剣のメンバーに語り聞かせた。

 

 いつの間にか、ゴブリン達まで来て、

「スゲー!」

「ヤベぇ!」

「英雄みたいな強さだ!」

「もう、英雄様呼びでよくね?」

「英雄だな。」

「英雄様だ!」

 と、さり気無く褒め、サラッと英雄様呼びを馴染ませていったのは内緒である。

 

 その日の夜のカルネ村は、特に騒がしい夜となった。

 そして深夜12時前、ようやく皆が眠る準備のため、各々の家や持ち場に帰っていった。

 

 リュウノも宿泊小屋に戻り、皆と談笑していた。

 まだ眠気はなく、他の皆も、ペロロン以外は眠るつもりがなさそうだ。

 すると、モモンがリュウノに言う。

 

「あのー、リュウノさん。ちょっといいですか?」

 

「ん?何?モモンさん。」

 

「その…まだ眠くないなら…えっと…その…」

 

 何故か、落ち着きがないモモン。

 ペロロンやウルベルの方をチラチラ見ている。

 

「なんだよ。ハッキリ言えよ。」

 

「その!私と!散歩に行きませんか!」

 

 意を決した様に、モモンが言う。

 

「二人で?」

 

「二人で!」

 

「ふーん……いいぜ!二人で散歩デートだな!」

 

「ちょっ!?その言い方は!」

 

 モモンが焦る。

 ペロロンとウルベルがニヤニヤし始める。

 リュウノが、笑顔で言う。

 

「ちょっと、その辺を、モモンと二人で散歩してくるぜ!ペロロンさん達、着いてくるなよ~。」

 

「え!?あれ?誘ったの私なのに!」

 

 グイッと、リュウノがモモンの腕を引っ張り、強引に連れ出す。

 バタンッ!

 と、扉が閉まる。

 

「……ウルベルさん、どうします?アレ、マジデートですかね?」

 

「さあ?でも、着いてくるなと言われると、行きたくなるじゃないですか。フフッ。」

 

「私も気になるっす!ナーちゃんはどう?」

 

「私は…べ、別に…」

 

「フフッ。なら──」

 

 皆の反応を確認したウルベルが、不敵な笑みを浮かべながら言う。

 

「完全不可視化の魔法でもかけて、皆で隠れて見に行きますか。」

 

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

「これで最後ですか?」

「ああ。しかし、なんでゴブリンが此処に陣取ってるんだ?」

「わかりません。もしかしたら、村の人間達を逃がさないために、ゴブリン達に柵を作らせたのかも。」

「とにかく、予定どおり村に侵入するぞ。」

 

スレイン法国の特殊精鋭部隊、漆黒聖典が、村の防護柵を守っていたゴブリン達を皆殺しにしていた。

増援や助けを呼ぶ暇もなかったのだろう。

最後まで生き延びた者でも、門から15m程離れた位置で、後ろから刺されて死んでいた。

 

「村人への被害は最小限に抑えて下さい。少なくとも、デュラハンが見つかるまでは。」

「もし、村人がまだ起きてたらどうするの?隊長。」

「冒険者を装いましょう。冒険者のフリをして近づき…」

「油断したところをブスリ!か?」

「殺すかどうかは、各々の判断に任せます。ただし、拷問したゴブリンから聞き出した人物は例外です。見かけ次第、殺します。」

「じゃあ行くか。俺達、スレイン法国に喧嘩を売った、愚かなアンデッドをぶっ殺しに!」

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 一方、モモンとリュウノは、村の広場まで移動していた。広場の中央にある木製の長椅子に座り、二人並んで夜空を見る。

 

「で?私を散歩に誘った理由は?」

 

「えっと…その…」

 

「なんだよ!わざわざ二人でって言うから、なんか話でもするのかと思ったのに。」

 

「いや、二人で話をしたかったのは本当ですよ?だって、異世界に転移してからのリュウノさんは、デュラハン状態では1人で会話できないでしょ?」

 

「まあな。ブラックか、竜王達か、アンデッドでも召喚しないと、会話できないな。デュラハン状態で、お前と二人で会話なんてできない。いちいち文字で書く手間が増えるからな。」

 

「はい。だから、リュウノさんが人間になってる今なら…二人で会話できるかなって思って…。」

 

「まさか!誘うだけ誘って、会話する話題を用意してなかったのか!?」

 

「うっ…はい。ごめんなさ──」

 

「アッハッハッハッハッwwwお前ってヤツはwwwハッハッハッハwww」

 

「そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!」

 

「フフッwwなら、私が話題を作ってやるよ。(さとる)。」

 

 いきなり、モモンの本名を言い出すリュウノ。

 

「え?」

 

「なんだよ?二人っきりなんだから、別にいいだろ?」

 

「まあ…はい。そうですね。」

 

「ん~…そうだなぁ〜…悟はさ、このままナザリック地下大墳墓の支配者として君臨し続けるつもりか?」

 

「そうですね。NPC達が、それを望んでいるみたいですし。」

 

「やれるのか?お前は確か、サラリーマンだったろ?サラリーマンから異形種の蔓延る墳墓の支配者だぞ?格が違いすぎるだろ。」

 

「それを言うなら、リュウノさんだって同じじゃないですか。オマケに竜王(ドラゴンロード)とか凄い存在まで従えさせて。動物園の飼育員から…その…ドラゴンの飼い主じゃないですか!」

 

「飼い主も飼育員とほとんど変わんねーよww」

 

「仕方ないでしょ!いい例えが思いつかなかったんですよ!」

 

「あるぞ。いい例えが。」

 

「どんな?」

 

「ナザリックで一番の『強欲者』だよ、私は。動物園の飼育員から、ナザリック(いち)の強欲者になったのが私。」

 

「強欲…ですか?とてもそんな風には…」

 

「いや、強欲だよ。といっても、人間の強欲とは違うものだと思うけどね。どちらかと言うと、ドラゴンの強欲に近いかもしれない。」

 

「どういう意味ですか?」

 

「ユグドラシルにいた時の私は、欲しいものを集めるだけ集める、それだけの人間だった。それが人間の強欲。なら、ドラゴンの強欲とはなにか。答えは1つだよ。それは──」

 

「それは?」

 

「──『宝』さ。」

 

「宝?財宝の事ですか?」

 

「ドラゴンにとっては財宝であってる。なら、私にとっての宝とは何か。答え、わかる?」

 

「ブラック達…ですか?」

 

「ん~半分正解かな。」

 

「じゃあ、残り半分はなんなんです?まさか!親友の私ですか!?」

 

「ブッwwハッハッハッハwww違ぇよ!まったくw」

 

「なら、なんなんです?残り半分の宝は。」

 

「そんなの、ナザリックに住む皆に決まってるだろ。ブラック達もギルドメンバーもNPCも…そして──」

 

 リュウノがモモンを見つめる。

 

「──お前()も。」

 

 笑顔で言う。

 

お前()も私の宝だ。

 

「リュウノさん…」

 

「だから、私の宝を奪うヤツがいたら、どんなヤツだろうと容赦しない。私の宝が、この異世界に移動したなら、私も異世界で宝を守る。」

 

「なら、リュウノさんは現実世界に戻るつもりは無い、という事ですか?」

 

「現実世界に帰るとか帰らないとか、どうでもいいね、そんなこと。」

 

「え?」

 

「だって、帰りたいって願っても帰れないじゃん?なら、考えるだけ無駄。今の私達が考えるべきなのは、今をどう過ごすかだと思うぞ。」

 

「今をどう過ごすか…ですか…。」

 

「私は楽しく過ごしてる。やりたい事やって、ブラック達や他の皆と楽しく過ごせれば、それでいい。たったそれだけの理由で、私は満足だよ。と言っても、異世界に来たばかりで、いろいろ上手くいかない事の方が多いけどな。」

 

「そうですか…。」

 

「だからお前もさ!皆が望むから支配者になるんじゃなくて、お前の目指す支配者になればいい。今更カッコつけても無駄だぞ?NPC達は、ナザリックが異世界に転移する前の出来事も覚えてるみたいしな。支配者モードじゃない、お前の姿も見ちゃってるだろ。」

 

「えぇぇぇえ!?それ、本当ですか!?」

 

「気付いてなかったのか!?私が初めて竜王(ドラゴンロード)達を召喚した時を思いだせよ!あの時、竜王(ドラゴンロード)達は、私が八竜の竜王(ドラゴンロード)達に戦いに行ってた事を覚えてただろうが!」

 

「あ。そう言えば、そうでしたね…」

 

「とにかくだ。話題は考えてやったんだ!次はお前が考えろ!」

 

「ええっ!?そんな!」

 

「誘ったのはお前だろうが!」

 

「だって!リュウノさんが、散歩デートとか言うから!緊張しちゃって…」

 

「なら…本当にデートするか?私は構わんぞ。」

 

「な、何を言ってるですか!?そもそも私達、現実世界でも付き合ってないじゃないですか!」

 

「……………。」

 

急に黙り出すリュウノ。

モモンが気になってリュウノの方を見ると、リュウノがモモンを睨んでいた。

 

「な、なんです?リュウノさん。」

 

「……この鈍感……」

 

「え?今、なんて言──」

 

「あーー!思いだした!悟、テメー!高校3年のホワイトデーで、私に手作りチョコ渡しただろ?メッセージカード入りの!」

 

「えーー!?なんで今になって、その話題が出てくるんですか!?」

 

「思い出して来たぞ…。そうだ!そのメッセージカードに、『俺と付き合ってくれませんか?』って書いて告っただろ!」

 

「うわぁぁ!?やめてください!それ、黒歴史なんです!」

 

「なんでだよ!?」

 

「だって、リュウノさん…返事くれなかったじゃないですか。てっきり、フラれたと思って…」

 

「当たり前だろうが!」

 

「何故です!?」

 

「あのな、手作りチョコまで渡しておいて、なんで『俺と付き合ってくれませんか?』なんだよ!そこは、『俺と付き合え!』とか、『俺の女になれ!』ぐらいの勢いで書けよ!」

 

「そ、そんなの無理ですよ!」

 

「……………。」

 

リュウノがまた黙り出す。

モモンが不安そうに様子を伺う。

 

「リュウノ…さん?」

 

「…気付けよバカ。ここまでやってわかんねーのかよ…」

 

「え?今──」

 

「うるさい。少し黙れ。」

 

下を向き、不貞腐れた子供のような態度になるリュウノ。

モモンが、ますます困惑する。

 

そんな二人を、4人の人物が見ていた。

完全不可視化の魔法と、音消しの魔法まで使い、二人のやり取りを目の前で見ている。

 

「モモンさん!気付いて!リュウノさんは、貴方からの告白を待ってるんっスよ!」

「もどかしいですねぇ…リュウノさんが告れば解決でしょうに…」

「何言ってるんっスか!ウルベルさん。乙女心というヤツっスよ!」

「そうっす!こうゆうのは、モモン様から告られた方が嬉しいっす!ね!ナーちゃん。」

「それは、まぁ…そうだけど!」

「仕方ないですね…少し、助け舟でも出しましょう。伝言(メッセージ)。モモンさん。黙って聞いて下さい。」

 

モモンがピクっと反応する。

 

「ペロロンさんが、告白するなら今ですよと、仰ってますよ。エロゲーマスターからの助言ですよ?フフッ。」

 

モモンがキョロキョロしている。

見られていた事にようやく気づいたのだろう。

 

「あー…リュウノさん。」

 

「…なんだよ。」

 

相変わらず下を向いたまま、リュウノが返事を返す。

 

「その…ですね…私と…」

 

 

「ガンバレっす!モモン様!」

「ああ!至高の御方々同士が!ついに!」

「行けっス!モモンさん!言っちゃうっス!」

「ここで言うのが男ですよ!モモンさん。」

 

 

「私と…その…」

 

「……………。」

 

「……………。」

 

モモンが何かを言いかけて、そのまま黙る。

リュウノも一切声を出さず、下を向いたままだ。

 

「何やってるっスか!まどろっこしい!」

「くぅ~もったいつけてくれますねー。」

「言うっすよ!モモン様!言わないなら、私が!」

「駄目よ、ルプ姉さん!至高の御方々に失礼よ!」

 

4人が焦れったそうにし始めた時、モモンがリュウノの軍帽を取る。

 

そして──

 

「リュウノさん。ちょっと失礼しますね。」

 

「お?」

「おや?」

「これは…」

「なんと…」

 

 

モモンがリュウノの頭を撫でていた。

リュウノが顔を真っ赤にしている。

 

「な!なんだよ。急に…」

 

「ほら、昔、子供の頃に、リュウノさんが悲しい顔してる時、私がこうやって撫でると、嬉しそうな笑顔になってたじゃないですか。だから…今回も喜んでくれるかな、って思って。」

 

「……ずるい。このタイミングでこれをしてくるなんて…」

 

「嫌ならやめましょうか?」

 

「嫌…じゃない。続けていいから、私の顔は見るな。」

 

「わかりました。」

 

モモンが正面を向いたまま、隣にいるリュウノの頭を撫でる。

その光景を見た4人は、ある事を思う。

 

「似てるっスね。ブラックちゃんに。」

「リュウノさんに頭を撫でられてる時のブラックですね。あれは。」

「そっくりっすね。」

「ええ。本当に。」

 

しばらく撫でた後、モモンが手を下ろす。

リュウノのが少し、名残惜しそうな顔をしている。

 

「リュウノさん。今更かもしれないですけど…」

 

「……何?」

 

2人が見つめ合う。

 

「いよいよっス!」

「ようやくですか!」

「この目に焼き付けるっす!」

「モモン様!リュウノ様!」

 

「私…リュウノさんの事が好き───」

 

そこまで言った時だった。

 

「すみませーーん!」

 

突然、遠くから声が聞こえた。

 

モモンとリュウノ、そして隠れている4人も、声がした方を見る。

 

十二人程の冒険者風の集団が、そこにいた。

 

「チッ!誰っス?アイツら。せっかくの告白シーンが台無しっス。」

「ペロロン様、ご命令いただければ、即奴らを始末しますが!」

「雰囲気が台無しっすねー。最悪っすねー。殺したくなってきたっす。」

「殺せと命じたいところですが…落ち着きなさい、二人とも。今はまだ抑えて。」

 

 

「すみませーん!この村の方ですか?私達、冒険者の者なんですがー。」

 

謎の冒険者集団の1人がモモン達に呼び掛ける。

 

「今、そっちに行きます!」

 

リュウノが立ち上がり、帽子を深く被りながら、冒険者集団の方に駆け出す。

 

「あ、リュウノさん!」

 

「スマン!また、後でな!」

 

モモンの呼び掛けに、笑顔で手を振りながら、走って離れていくリュウノ。

モモンは、その後ろ姿をただ見つめる事しかできなかった。

 

 

リュウノが冒険者集団と合流する。

冒険者集団のリーダーらしい男が話す。

 

「お話中、すみませんでした。」

 

「いいえ!お気になさらず!私は、オリハルコン冒険者のリュウノと言います。」

 

「これはどうも。私達、冒険者なのですが、この村に泊めて頂けないかと思っていまして。村長さんとかいらっしゃいますかね?」

 

「あー、もう寝てるかもしれませんね。今から起こすのも…うーん…そう言えば、ゴブリン達に会いませんでしたか?」

 

「ええ。途中までゴブリンさんが案内してくれまして 。今は、『姐さん』という方を呼んでくると、どこかに行かれてまして、待ってる状態なんです。」

 

「そうでしたか。なら、私も同行して案内しましょう。コッチです。」

 

「ありがとうございます。」

 

 

一方、

リュウノと冒険者集団のやり取りを遠くから眺めているモモンに、ウルベルとペロロンが伝言(メッセージ)を飛ばしていた。

 

「残念でしたね。」

 

「はい…」

 

「そう落ち込んじゃ駄目っス!こういう、告白に邪魔が入るエロゲーもあるっスから!オレのエロゲー知識で挽回できる方法を探すっス!」

 

「でも、ペロロンさん。こうゆう、告白が失敗するヤツって、映画とかだと片方が死んだりしません?」

 

「告白してヒロインが死ぬ作品もありますよ!関係ないっス!」

 

「そ、そうですよね。挽回できる日が来る事を祈って──」

 

その時だった。

 

「リュウノ様!危ない!」

 

ナーベが叫んだ。

しかし、音消しの魔法のせいで、遠くにいたリュウノには聞こえなかった。

 

全員の視線が、リュウノに向けられる。

 

「が──は──ッ」

 

冒険者集団の1人が、背後からリュウノの心臓に向けて槍を突き刺していた。

 

「リュウノさん!」

 

モモンが叫ぶ。

 

槍がリュウノから引き抜かれる。

刺傷から血がドバドバ吹き出し、リュウノが倒れる。

 

「ゴボッ─ゲボッ─」

 

リュウノの口から大量の血が溢れてくる。

 

「申し訳ありません。私の槍は、どんな硬い装甲でも貫く特殊効果付きなんです。」

 

槍を持った男が、倒れたリュウノに向けて言う。

リュウノの周囲にドンドン血が流れ、血溜まりができる。

 

「お前達!何者だ!?リュウノさんを何故刺した!」

 

モモンが武器を構えながら走り寄る。

 

「カッパーの冒険者ですか…丁度いい。質問に答えてもらいましょうか。」

 

冒険者集団が武器を構えながら言い放つ。

 

「首なし騎士デュラハンは何処にいる?この村にいる事は知っています。もし拒否するなら…この女のように、殺します。」

 

冒険者集団の1人、学生服のような衣装の女が笑いながら、リュウノの頭に足を乗せ、グリグリと踏みつけている。

リュウノはピクリとも動かなくなっていた。

 

「リュウノさんに触れるな!」

 

「答えて下さい。デュラハンは何処です?」

 

「まず、お前達が何者か、それを聞かない限りは話せないな。」

 

モモンが相手の素性を問いただそうとしていると、ペロロンから伝言(メッセージ)が入る。

 

「気をつけて下さいっス!そいつ等の仲間の老婆が来ているチャイナ服はワールドアイテムっス!」

 

「(何っ!?ワールドアイテムだと!?)」

 

「ネットで見た事あるっス!それは、『傾城傾国』!相手を操れる、精神支配系のアイテムっス!そいつ等、プレイヤーかも!」

 

「(プレイヤーだと!?言われてみれば、コイツらの服装や武装には統一性がない!クソっ!何故もっと早く気づかなかった!気付いていれば、リュウノさんを…!)」

 

焦るモモンに、ウルベルからも伝言(メッセージ)が入る。

 

「モモンさん!時間を稼いで下さい!その間に対策を考えます。モモンさんは、リュウノさんを助けだし、復活させる事を第一優先に!そいつ等は、私達が処理しますから!」

 

ウルベルさん達の策が成功することを祈るしかない。

相手は十二人。全員が100Lvプレイヤーだった場合、モモン1人では到底勝てない。

モモンが必死に時間を稼ぐ。

 

「デュラハンなら、先程王都に帰りましたよ。ドラゴンに乗って。」

 

「嘘ですね。ドラゴンに乗って行ったなら、私達も気付きます。それに、先程始末したゴブリン達の1人が言っていたんですよ。」

 

「何を?」

 

「英雄様が、お前達を返り討ちにする!って。この女性ですよね?英雄様と呼ばれていたのは。ゴブリンを拷問して聞き出した情報と一致しますし。」

 

「だから殺したのか!?」

 

「はい。殺しました。で、この女性と親しそうに話していた貴方なら、何かご存知かと思ったのですが…期待ハズレでしたかね?」

 

「くっ…!どうすれば…!」

 

最早、万事休すという瞬間──

 

「ぎあぁ──」

 

一瞬、誰かの悲鳴のような声と、ザシュッ!という音がした。

 

全員が音の発生源を見る。

 

ワールドアイテムを身に付けていた老婆が、縦に真っ二つにされていた。

 

「なっ!?」

 

全員が驚く。

モモンも、何が起きたのか分からなかった。

 

すると、全員の視線が老婆に移った瞬間──

 

「ぎぁァァァァ!」

 

今度は、リュウノを踏みつけていた女の足が切り飛ばされていた。

切られた足を抑えながら、女が悲鳴を上げている。

 

全員が、正体不明の攻撃を警戒する。

怪我をした女が叫ぶ。

 

「痛い痛い痛い!誰か、治癒魔法を!私の足が、切り飛ばされて──」

 

「必要ない。お前は死ね。」

 

「──え?」

 

怪我をした女の首が切り飛ばされた。

冒険者集団の全員が、一斉に距離をとる。

何故なら──

 

「リュウノ…さん?貴方、まだ生きて──」

 

心臓を刺されて殺されたはずのリュウノがゆっくり立ち上がったからだ。

傷口からは、まだ血が垂れている。

口からも、血がボタボタと垂れている。

 

でも、リュウノはまだ動いている。

手と首をダラリと垂らし、まるでゾンビのように立っている。片手には、邪剣を握っている。

その邪剣で、怪我して叫んでいた女の首を切り飛ばしたのだ。

 

「馬鹿な!?確実に殺したはずです!何故生きてる!?」

 

冒険者集団のリーダーが驚愕の表情で言う。

 

「さっきの質問に、私が答えよう。」

 

リュウノが顔を上げる。

その顔は、死人のように青ざめているが、目だけは生気があった。

 

「私が、首なし騎士デュラハンだ。」

 

 

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